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バレた結果…… 8

 話の解決するタイミングを見計らったかのように、僕のLINEの通知音が響く。

 迷うことなく、僕をそれを見た。

 親からだった。

 もう少しで家に着くから、鍵やチェーンロックを開けといてくれという意味の内容。

 スマホの時間を見るといつの間にか午後八時を過ぎていた。

 二人もまた僕がスマホを見るタイミングで、同じようにスマホを確認している。


「んー、そろそろ帰ろうかな。時間的にもちょうどいいし」


 おもむろに明日美はそう言って、大きく伸びをする。


「そうだな。俺も帰るか。今日は配信はしないんだろ? するんだったら見てから帰りたいけど」

「さすがにしないよ。もうそろそろ透のお母さんが帰ってくると思う時間帯なのに」

「それもそうか。じゃあ、俺も帰るかな」

「竜也くん」

「ん?」

「せめて宿題ぐらいはしてよ? 最低ラインとしてだけど。そもそもテスト勉強しなさい」

「……うぇーい」


 明日美の忠告を嫌々返事をする竜也。

 僕から見てもやる気がないのが思いっきり伝わってくる。

 呆れたように明日美は竜也を見ながら、


「なんなら明日からテスト勉強一緒にする? 口実としてはちょうどいいと思うんだけど」


 そんな地獄の提案をしてくる。

 さすがに男同士でやるテスト勉強は地獄ではあるが、女子が一人いるだけでもやる気が出てくるのは分かる。

 けれど、あまり乗り気ではなかった。

 なんとなくスパルタのような気がしてしまったからだ。


「えっと……さすがにそれは明日美に悪いから辞めとこうよ」


 だから僕はやんわりと断りの言葉を入れる。

 が、僕の考えを理解していない竜也は、


「お、マジで? いいね! やろうぜ!」


 とまったく先ほどのトラウマを忘れてしまうほどノリノリで答えてしまう。

 このバカは……ッ!

 僕は目頭を押さえるように右手で顔を覆う。

 そんな明日美は少し勝ち誇ったように笑みを溢す。


「竜也くんがノリノリだったら仕方ないね。ここでいいよね、勉強会?」

「わかったよ。いいよ。するよ。」

「じゃあ、明日から集合ってことでいい? 一応、帰りは三人で帰ったほうがいいかな?」

「そこは任せる。流れでいいんじゃない?」

「うん、そうしよ。じゃあ帰ろう」


 明日美は椅子から立ち上がると、自分の荷物を手に持つ。


「俺も帰ろっと」


 竜也は上機嫌で同じように荷物を持ち、立ち上がる。

 この中で浮かないのは僕だけらしい。

 なんとなく身体が重いような感じがしたので、「よいしょ」と自然に言葉漏れ、ベッドから立ち上がり、部屋のドアを開ける。

 それを待っていたかのように二人が出て、僕が部屋の電気を消し、ドアを閉める。

 二人が玄関に着き、靴を履いてる時に「ピンポーン」と玄関のチャイムがなる。


「あ、帰ってきたのか」


 僕は二人には悪いと思いつつ、二人を押し退けるようにして靴を履き、チャーンロックを外した後、鍵を外す。

 玄関のドアを開けると、そこには先ほどLINEで連絡が来てたように母さんの姿があった。


「おかえり」

「ただいま……あれ? お友達?」

 

 ドアを全開まで開けたため、明日美と竜也の姿が見えたのだろう。

 母さんは僕にそう尋ねてきた。


「うん。今まで……ちょっとテスト勉強してたんだ。分からないところがあったから教えてもらってたんだよ」


 さすがに内容までは言えないため、僕はとっさにウソをつき、説明する。


「そうなの。えっと、池波くんに……」

「北山明日美さん」

「北山さんね、いつも透がお世話になってます」


 母さんはそう言って、明日美にそう簡単にだが頭を下げ、お辞儀する。

 ちなみに竜也のことは何回か遭遇しているため、もう説明する必要はない。むしろ遅くまで居ようが、特に気にする必要がないぐらいになっているのだから。

 しかし、驚いたのは明日美への挨拶だった。

 まさか母さんがそうやって明日美に挨拶すると思っていなかった。


「いえ、こちらこそお世話になってます。今日は遅くまですみません」


 けれど、明日美は慣れたような感じで母さんに挨拶し、急いで外へ出る。

 同時にのんびりその様子を見ていた竜也の袖も引っ張っていたらしく、無理矢理竜也も外へ出された。

 竜也はそれにびっくりし、「ちょ、ちょっと」などと言っていたが、誰も返事することはない。

 どうやら僕の母さんを少しでも早く家に入れてあげようという気遣いからの行動らしい。


「遅くまですみません、お邪魔しました。ほら、竜也くん、行くよ」


 明日美はそう挨拶した後、そのまま無理矢理竜也を引っ張って行く。

 それに抵抗するが、本気ではないらしく、


「お、お邪魔しましたー!」


 と竜也もそれだけ言い残し、僕たちの前から去って行く。


「あの二人付き合ってるの?」


 それは母さんからの素朴な疑問だった。

 はたから見れば、そう見えるらしい。

 しかし、実際は違うことを知っている僕は、


「ううん。どっちかっていうと主人と下僕……もしくは飼い犬かな?」


 と現実を伝えた。


「なるほどね。それであの二人は家の方向一緒なの?」

「ううん、違うよ」

「じゃあ北山さんを送って行ってあげて来なさい。その間にご飯の準備しておくから」

「そう言うと思ったよ。上着取って、行ってくる」

「ほら、急いで急いで」

「はーい」


 僕は母さんに言われた通り、靴を脱ぎ捨てるようにして脱ぎ、自分の部屋へと向かう。そして、流れで消した部屋の電気をもう一度点け、厚めの上着を選ぶと再び電気を消し、来ながら玄関へと舞い戻る。


「じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 そう言うと靴を履き、玄関を出ようとした時、不意に母さんの顔つきがなぜか気になってしまう。

 なぜだか悩んでいるような、哀しんでいるような、そんなよく分からない顔をしていたからだ。

 僕は靴を履きながら、そのことを尋ねることにした。


「なんかあった?」

「何が」

「なんとなくそんな気がしただけ」

「……北山さんって言ったわよね?」

「うん。それがそうどうしたの?」

「聞いたことがある名前だなって……」

「あー……学校で優等生だからじゃない? いろいろ賞状とか貰ってるし、学級通信みたいなのにも名前載ってるからかも」

「それでかしら? うーん」

「そうじゃないの? ともかく行ってくる」


 よく分からないことを言っている母さんをそのまま放置し、僕は少し駆け足で二人の後を追う。

 けれど、心の中では少しだけ気になっていた。

 でも解決するにもそれ以上のことを知らない僕にはどうすることも出来ないのだから仕方ないのだ。


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