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バレた結果…… 7

「ともかく二人が言いたいことは分かった。存分に分かった。この話はなかったことにしよう。俺が悪かった。だから、二度とこの話題ーー『俺が北山さんを家に誘った話』をなかったことにしてくれ。それがいい」


 竜也は社会的に抹殺される話を聞いて、この話題自体を封印することに決めたらしい。

 僕もそれが賢明な判断だと思う。

 きっと蒸し返されたくもない話だろうから。

 だから、僕はそれに対して素早く頷いてみせる。


「そうだね。私も聞かなかったことにしてあげるね? だから安心して?」


 脅した側である明日美もまた安心させるように優しい声で言った。

 全然安心出来ない。

 僕はそう感じてしまっていた。

 その優しい声の裏には何かある、とさっきの『女は怖い』という話で思い知っていたからだ。

 しかし、竜也はそのことをすっかり覚えてないようで、ホッとしたような表情をしている。

 これはマズいと思い、


「お、おい……竜也?」


 と竜也に忠告することにした。


「なんだよ。なんで透、そんなビビってんの?」

「さっきのーー」

「滝本くん?」


 が、明日美のその一言で僕の口は封じられてしまう。

 最後まで言わせてもらえなかった。

 明日美の目は怪しく光っており、これからとんでもないことを言い出すことが目に見えていたが、僕にはもうどうすることも出来ない状況になってしまっていた。

 その状況からさすがの竜也も察したらしく、


「いったいなんだよ? 俺、これから死ぬの?」


 と震えた声で冗談を言いだす始末。

 それに対し、明日美は笑顔のまま首を横に振る。


「ううん。死なないよ? ちょっと池波くんにお願いがあるだけ」

「お、お願い?」

「うん。たぶんだけど、今日のこの話の件で滝本くんを脅したと思うんだよね。こういう流れになったってことは。それをチャラにしてほしいんだけど……してないならいいの」

「……」


 竜也は僕を睨んできた。

 そんなこと一切話していない僕は首を横に全力で振って否定する。


「ちなみに滝本くんは何も言ってないよ? 池波くんの性格を考えて、の話だから」


 さりげなくフォローを入れつつも、わりと説得力のあることを言い出す明日美。

 さすがに性格の考慮までを入れられての発言であれば、竜也は何も言い返すことが出来ず、その条件を飲まざるを得なくなっていた。


「分かったよ。『今日の昼飯代の奢り』はなしにするよ。くそっ、一日分浮いたと思ったのに」

「あ、それとこれから一週間、私のジュースを奢ってくれたらいいよ。私がねだったときにね?」

「え? ちょ、ちょっと?」

「社会的抹殺」

「はい、分かりました。奢らせてもらいます」

「うん。ありがとう。あ、滝本くんもいる?」


 さりげなく僕の分までも奢らせようとしてくる明日美。

 それに対し、竜也は僕を殺意を込めた目で僕を睨んでくる。

 こればかりは僕も酷すぎると思い、


「ううん、僕はいいよ。昼飯代チャラになっただけで」


 先ほどと同じように全力で首を振り、断る。


「そっか〜。じゃあ、私の分だけお願いね?」

「はい。分かりました」


 二人の商談はこれにて終結された。

 きっと明日美のことなのでこれ以上、このネタで弄ることはないだろう。いいや、弄ることがないと僕は心の底から信じたいと思った。竜也が可哀想すぎるから。

 竜也は完全に燃え尽きていた。

 そう思えるほど椅子に体を脱力させていた。


「それでも実際どうしよう。全然解決策思い付かないまま、時間が過ぎてる」


 明日美はしれっと話題に戻す。

 ここでツッコミを入れてしまえば、また話が元に戻ってしまうと思い、僕も触れないようにしてその会話に続く。


「そうだね。結局、誰かの協力を借りるってのは無しになるのかな……うん、バレた時が面倒だけど、その時はその時で説明するしかないよね」

「そうするしか……あ、そうだ! 池波くんに頼みたいことがあるんだけどいいかな? あ、もちろん嫌なら断ってもいいからね?」


 そう言って、今度は脅しでもなんでもないことを伝える。

 そこでハッと意識を取り戻したように竜也の体に力が入り、椅子に座り直す。


「何?」

「あのさ、たまにでいいから配信するときにこの家に来てくれない? そしたら、一緒に遊んでる風に見せかけることが出来るでしょ? 遊びじゃなくても勉強を教えてるでもいいと思うの!」

「あー、なるほどね。つまり、俺が偽装工作の仲間になればいいのか」

「うん、ダメかな?」

「この話を聞いちゃった以上、別にいいけどさ。ちなみに断ったら?」


 先ほど明日美は「拒否権がある」と伝えたにも関わらず、竜也はそのことを確認し始める。

 どうやらしっかりとトラウマ化してしまったらしい。

 さすがにここまでトラウマ化していると思っていなかったらしく、明日美は困ったように笑う。


「大丈夫だよ。何もしないから。これは池波くんの時間を奪っちゃうことになるから、強制じゃないよ」

「そ、それならいいんだ! でも、元々嫌じゃないし! ただお願いがある!」

「お願い?」

「おう! ほら、二人ってもう名前呼びなんだろ?」

「うん、配信の都合上ね?」

「だったら俺も名前呼びでいいかな? そんだけで仲間意識生まれるじゃん!」

「え、えっと〜……」


 竜也のこのお願いは、さすがに反応に困ったらしく、明日美は僕を見てくる。

 僕を見られてもなぁ……。

 でも竜也の気持ちも分からないでもないので、


「名前呼びぐらいはいいんじゃないかな? さすがにお礼なしで巻き添えは嫌だと思うし」


 こう言って譲歩案を出しておくことにした。

 さすがに僕に言われて、明日美もしょうがないと思ったらしく、首を縦に振って承諾した。


「えっと……池波……」

「竜也!」

「竜也くんって呼べばいいよね?」

「たっくんでもーー」

「竜也くんって呼ぶね」


 さりげなくニックネームを主張する竜也だったが、明日美はそれを聞く素振りすら見せず、名前で呼ぶことに決定する。

 強欲すぎるって。

 竜也の行動に少しだけ困っってしまうけれど、話としては現状の問題は解決した。

 そのことに僕はホッと安堵する。

 同時に少しだけ寂しさを感じてしまっていた。

 それは明日美と二人っきりの秘密ではなくなってしまったからだろう。

 でも、そんなワガママは言ってられない。

 だって二人のためなのだから……。

 僕はそう心に言い聞かせる。

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