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バレた結果…… 5

「そ、そんなことより! ここに辿り着くまでのことを考えないといけないだろ? なぁ、透!」


 竜也はそうやって無理矢理話を戻すと、そうやって僕に話を振ってきた。

 どうやら明日美に言われたことを守れる自信がないため、強行突破したらしい。

 さすがの僕もこれには同調せざるを得ず、


「そうだね。問題はそこだよね!」


 とその話に乗っかる。

 僕と竜也の行動に明日美は一瞬ジト目で見るも、


「そうだね。二人が今後悪い女に騙されたとしても私には関係ないからどうでもいいね。けど、本当にどうしようか?」


 などと完全に興味を失くしたように呟き、明日美も僕たちの話題に乗っかって来る。

 竜也は分からないけれど、僕にはその一言がなんとなくズシッと心にのしかかって来るような感覚に襲われる。

 もしかして、本当に気をつけた方がいいのかもしれない。

 そう思わされるほどに。


「ま、まぁ……大丈夫大丈夫。んでさ、俺良いこと思いついたんだけどいい?」


 そう言って、竜也は指をパチンと弾いてアピールを行う。


「良いことってなに?」


 明日美は素直にその思いついたこに食いつく。

 僕はと言うと、逆に嫌な予感がしていた。

 この流れで竜也が思いつくことは大抵ロクでもないことなのは、長年の付き合いから察することが出来るからだ。

 でも、もしかしたらの可能性もあるので聞く姿勢だけは取る。


「つまりはさ、ゴールがここになるからいけないんだろ?」

「ん? それはそうだけど……」

「じゃあ、他にゴールになる場所を作れば良いんだよ!」

「他に?」

「そうそう!

「例えばパソコンがある場所……図書館とか? でも、ああいう場所って制限されてるよね?」


 明日美はそう言って、僕に確認して来る。

 正直、あまり図書館などに通うことの少ない僕には分からない。

 けれど、大抵は違法サイトなどには入れないように設定はしてあると思い、頷いてみせる。


「たぶんだけどね。あとは大勢の人が使えるように時間制限とかもあると思う。っていうか、そんな公共の場で配信しようとするバカはいないでしょ。やるとしたらネカフェとかじゃないの?」

「ネカフェね〜。私も利用したことないな〜」

「場所的な意味では言ったけど、少なくともそういう場所で配信はしない方がいいに決まってる。身バレとかしやすいだろうし、周りがうるさいから」

「うんうん。だからゴールを他の場所に作るって行為が無理じゃない?」


 僕たちの中でそういう結論を出し、竜也の方を見て、確認を取る。

 しかし、竜也は不敵な笑みを浮かべていた。

 そして、ちっちっちと右手の人差し指を立てて左右に振る。

 まるで僕たちの考えを否定するかのような仕草。


「甘い。甘いよ、君たち! どんくらい甘いかというと砂糖より甘い!」

「砂糖より甘い? そう言ったら、グリチルリチンとかソーマチンとかそう言うの?」

「なにそれ? 俺、知らないんだけど」

「でも砂糖より甘いって……」

「いや、あの……言葉の(たと)えっす」

「知ってたけどね。なんか煽られたから難しい言葉を言っただけだよ」


 片目を閉じ、舌を出す明日美。

 その一連の動きを見ていた僕は、本当に言葉の比喩だと分かって、今の難しい単語を出したのだと理解出来た。

 だって今の竜也の動作と言い方は明日美と同じように煽られたと感じるには十分だったからだ。


「なんでだよー! 少しは良いじゃんかよ! こんな風に煽ったってさ。この家に来てから、ずっと俺圧倒されっぱなしじゃんかよー!」


 右腕で目元を隠し、泣いているフリをしながら竜也は喚く。

 実際その通りなのだが、


「うっとしいからさっさと本題話してよ。話が続かない」


 僕はそんなことをどうでもいいと言わんばかりにぶった切る。

 明日美もまた僕の言うことに同調するように頷いてみせる。


「分かった分かったよ。話を進めるよッ!」


 まるで観念したかのように竜也はヤケクソ気味にそう言って、ようやく本題へと入る。


「つまりさ、ゴールが一つしかないってことは作ればいいだけ。けど、透と北山さんが言ったような場所だダメなのは分かってる。だからどうするか? つまりは透以外のパソコンを持ってる人の家に行けばいいんだよ。あとはこの話を知ってる人な? ここまで言えば分かるよな? な?」


 僕と明日美はお互い顔を見合わせる。

 そして、二人ともタイミングは図らずとも同時に頷く。

 話を振ったのは明日美から。


「仲間を作ればいいってことだね。さすがは池波くん! でも、他に話しても大丈夫な人いるかな〜? 滝本くんはどう思う?」

「どう思うって……少なくとも男はやめた方がいいと思うけど」

「だよね。じゃあ、女子か……。ん〜。友達に配信を始めるって言うのは恥ずかしいんだよね。きっかけがない限りは……」

「話題で出ない限りはそんなこと言えないしね」

「うん。私のキャラじゃないし」

「そういうキャラ意識あったの?」

「多少はね? こうやってはっちゃけるキャラを見せられるのは滝本くんだけだよ? きっかけとしては十分だったし」

「そりゃどうも……。結局は誰もいないってわけで。うん、それは却下ってことで。竜也、提案だけでも出してくれーー」


 そこまで言いかけて竜也は吠える。


「なんでだよ! 俺がいるじゃんかよ! あそこまで振っておいて、俺にその的が向かないのはなんでだよ‼︎」


 それは最もツッコミだった。

 話の流れ上、あそこまで言われたら誰だって竜也に話を持って行く流れだろう。

 しかし、それには問題がある。


「だって池波くんの家に行くとか危なくない? 襲われそう。だから私がイヤ」


 ばっさりと切るように明日美が本音を口にした。

 このせいだった。

 さすがに親友に立ち位置は近いと言えど、明日美の信用が得られてない以上は無理なのだ。

 もちろん、明日美がこれに賛同したとしても、僕は一応、それについて追求するつもりではいた。

 ただ僕が言うまでもなかっただけ。


「なんでだよ! なんでこいつはいいのに、俺はダメなんだよ!」


 僕を指差しながら、不満を口にする竜也。


「だって滝本くんは襲うタイミングがあっても襲えなかった人だもん。だから安心して、この話も持ちかけたんだし……。もし、襲ってくる人なら近寄ってもないよ?」


 再びばっさりと明日美は言い切る。

 このことは前から知っていたと言え、改めて僕の心に一つの刃として突き刺さって来た。

 ああ、それは今日もだったなぁ……。

 慰めるという意味合いで膝枕してもらった時も襲おうと思えば、襲えたのだろう。けれど、それをしなかった。いや、そういう思考にならなかった。この時点でヘタレなのだろう。

 僕は男には一生なれないのかなぁ……。

 なんとなくそんな気がして、僕は思わず乾いた笑いを溢すのが精一杯だった。

 そんな僕の気持ちを知らない明日美は、信用した顔で僕に笑顔を向けて来ていた。

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