バレた結果…… 4
僕たちはなぜかトライアングルを作るような形で座っていた。
自然とそうなってしまったらしい。
この中で話の主導権を握っているのは、この家主である僕もしくは今回の件の説明を受ける竜也のはずなのに、なぜか明日美が持っているような気がしてならなかった。
なぜだろう?
僕はその理由についてちょっとだけ考える。
考えた結果、明日美の普段の行動力や優等生という立場から本能的にそう思い込んでしまっているのかもしれない。
こういう結論が出てしまった。
現に司会進行を僕か竜也がしないといけないのに、なぜか話が全く進む気配がない。
そもそも、どういう風に話を切り出せばいいのか、分からないのだ。
五分ほど三人の間で沈黙訪れた結果、
「なんで誰も話をしようとしないの?」
呆れた口調とともに明日美が切り出した。
「さあ? 僕は質問があるのは竜也だから、竜也が何を知りたいか言ってくれないと反応出来ないよね」
そう言って、僕はその罪を竜也へとなすりつける。
「おい、俺かよ! 卑怯だぞ!」
裏切りに近い言い方をした僕にそう反論してくる竜也。
「だってそうじゃん。いったい何を聞きたいの?」
「それは言われると……二人は付き合ってるのかどうか?」
僕は明日美に顔を向けて、その質問に答えるように促す。
それは竜也が来る前に打ち合わせていた流れである。
きっと僕がこういう質問に対して、何か答えれば口を滑らす可能性があるため、基本的に明日美が答えることになっているのだ。
「付き合ってないよ。まず、そこまでお互いのこと知らないし。最近、話し始めるようになっただけ」
「え、そうなの? それなのに透の家に来ている理由は?」
「それは私のやりたかったことに付き合ってもらっているだけなの」
「やりたかったこと?」
「うん、それはねーー」
明日美はそう言って、配信についてのことを話し始める。
もちろん、それは前に僕に教えてくれた家庭事情についてのこと。それが理由で僕の家を借りて配信することになったことなどについて。
その回答について嘘などないため、竜也は「そうなんだ」と納得してしまう。
いや、僕より答え方が数倍上手いため、相手が納得するように答えているだけなのだ。
聞いている側だからなのか、思わず学んでいるという感覚に僕は陥ってしまっていた。
「そっか……それなら仕方ないよなー」
全てを聞いた竜也は腕を組み、一人頷いた。
もう完全に明日美に丸め込まれた状態。
そんな明日美は竜也の目を盗み、僕にウインクしてきた。
さすがっす。
行動には出せないものの、僕は心の中で拍手してしまっていた。
「納得してくれたみたいでよかった。これでもう変な疑問とかないよね?」
明日美はそう言って、これ以上の質問を拒む。
しかし、それについて竜也は難しそうに唸る。
「その変な質問って何の事を言ってるのか分からないけど、二人のために聞いときたいことあるんだけどいいか?」
「変な質問って言うのは『邪な考え』ね。それで聞きたいことって?」
「これから、北山さんがこの家に通うっていう理由付けはどうするのかなって思ってさ」
「そこの話か〜」
明日美は困ったように僕を見た。
僕もそれについては困ってしまい、明日美と顔を見合わせる形になってしまう。
実際、その件についての解決策は未だ出ていない。
竜也が来る前に、説明についての話し合いは済んでいた。そして、あとは竜也が今してきた質問の件に対して考えていたところで、竜也が来てしまったのだ。
僕たちの反応を見て、竜也も察したらしく、
「もしかして解決策出てない感じ?」
と僕たちに尋ねて来る。
「まぁね。僕たちも考えてはいるんだけど、それについてどうすることも出来ないんだよ」
竜也の質問に僕がそう答える。
「というと?」
「結局は最短ルートで来ても、遠回りしたとしてもゴールは僕の家でしょ?」
「おう、そうだな」
「つまりはどのルートを通ったとしても、いつかは誰かに見られるわけなんだよね。今回の竜也みたいにストーカーして、後を追いかけられたら」
「誰がストーカーだよ! してねーよ!」
『ストーカー』という単語が気に入らなかったらしく、竜也は僕にそう突っ込んでくる。
話の流れ上、僕の家に来るということを知っていたため、後を付けてきたからバレたと思っていたのだが違っていたらしい。
僕と同じ結論に至っていた明日美が竜也をジーッと見つめながら、
「本当に違うの? ストーカーしてない?」
完全に猫を被った状態で改めて確認し始める。
「してません。見かけて察しただけだよ」
「本当の本当に?」
「本当」
「今なら本当のこと言っても怒らないよ? 引きもしないから、本当のこと言って?」
出た、フェイク発言。
僕は似たようなことをされたため、この言葉の引っ掛けに敏感になってしまっていた。
けれど、それを当事者として受けた場合どうなのだろうと考える。
たぶん、引っかかるんだろうなぁ……。
そう思ってしまった。
もし意地ででも本当のことを答えなかった場合、泣き落としなどの女子特有の行動を使って来る気がしたからだ。
そもそもこんな甘い言葉を受けて、本当のことを言えない人間なんていないと思う。
「そうなんだ。目に付いたから思わず後を追っかけちゃったよね。うん、ごめんねー!」
現にその甘い発言に乗っかってしまった竜也は、素直にその時ストーカーしたことを言ってしまっていた。
あーあ。
そう思ったのは言うまでもない。
もちろん明日美の反応はあの時の僕と同じものだった。
「最低。人間としてそれはダメだよ。うん、最低すぎる」
ドスは聞いてないもの、声質が冷めたものとなっていた。
「え、ちょっ⁉︎ 怒らないし、引かないって言ったじゃん!」
「怒ってもないし、引いてもないよ? だってこれは注意してるだけだもん」
「……マジで? い、いや……ちょっと……」
青ざめた表情で竜也は僕に助けを求めてきた。
本当にショックだったらしく、体も少し震えている。
しかし、僕に出せる助けなんてなく、首を横に振って、「諦めろ」と伝えることしか出来なかった。
その反応を見た竜也はシュンと落ち込んでしまう。
「本当に二人は友達だけあって、似た者同士だね〜。もうちょっと女性には気をつけた方がいいよ? 演じるの上手いんだから」
明日美はなぜか僕を巻き添えにして、呆れたようなため息を吐きながら、はっきりとそう言い切った。
なんで僕まで……。
予想すらしてなかった巻き添え発言に、僕の心にまで何か鋭い物が突き刺さった気がした。
男はなんて弱い生き物なのだろう。
そう思わされるほどに、僕と竜也は打ちのめされてしまっていた。




