親友と屋上で…… 2
僕も同じように紙袋から焼きそばパンを取り出し、包装を開け、それを食べ始める。
まだ出来て間がないのか、焼きそばパンに挟んである焼きそばはほんのり温かった。
食レポなんてものは出来ないけれど、美味いということだけは分かる。
「やっぱこの学校の焼きそばパンは最高だな」
隣で食べていた竜也はもう全部食べ終わっていた。
美味しいせいか、一瞬で食べて切ってしまったらしい。
僕はその食べる速さにちょっとだけ引いてしまっていた。
味わって食べろとまでは言わないが、胃の消化に悪そうだと思ってしまったからだ。
その視線に気がついたのだろう。
「なんだよ? なんか言いたそうだな」
そう言いながら、竜也は紙袋からあんパンを取り出している。
「食べるの早くない?」
「普通だろ?」
「僕、まだ半分ぐらいあるんだけど?」
「そりゃ透が食うのが遅いだけだ。っていうか朝飯食ってない俺からすれば、このぐらいは普通」
「そのせいね。ちゃんと朝ぐらい食べたらいいじゃん」
「朝食の準備がされてなかったから、面倒で食うのを諦めたんだよ」
「自分で用意すれば? 食パンぐらいあんじゃないの?」
「……すると思う?」
あんパンの包装を破った竜也はそれだけ言い切り、かぶりつく。
僕はその質問に対して、考えるフリをしながら焼きそばパンを口に含む。
あ、冷えかけてる。
その無駄な会話と屋上にいるせいで、ほんの少しずつ焼きそばが冷え切りつつあることに気付いた僕は急いで食べることにした。
そして焼きそばパンを食べ終わってから、先ほどの質問に答える。
「するわけないよね。だいたいの男子が準備をするぐらいなら、コンビニで買うか朝食を抜く」
「正解。俺の場合は今の時期、布団から出れなくて時間ギリギリまで寝てるせいなんだけどさ」
「それは分かる。今の季節、布団やコタツは魔物だからなぁ」
「そういうこと。だから、お昼が待ち遠しくて待ち遠しくてさ」
二つ目のあんパンを食べ終わり、再び紙袋に手を伸ばし、漁り始める。
どうやら三つ目があるらしい。
漁った結果、紙袋から出てきたものは今までよりは小さいクリームパンだった。
「何個買ってきたの?」
「え、三つ。さすがに四つも五つも買う小遣いはねぇよ。あれば食えるけど」
「余裕があれば食えることに驚きを隠せないわ」
「透が少食なだけだろ」
「否定はしないけども」
「もっと食わないと大きくなれないぞ?」
「もう成長止まってるから、これから大きくなるとしたらお腹ぐらいじゃない?」
「……そうだな」
僕の一言に竜也の手は止まる。
さすがに肥満にはなりたくないらしい。
それは僕も同じだ。
しかし、竜也はそれを目を閉じ、口の中に無理矢理放り込む。そして、焼きそばパンを食べる時に開けていたボトルタイプのコーヒーで一気に飲み干す。
「腹八分目っていうし、これぐらいにしといてやるか」
まるで自分自身に言い聞かせるかのようにそう言った。
「これぐらいも何ももうないじゃん」
「そうとも言う」
「そうとしか言わないでしょ」
僕はそれだけ言って、最後になっていたコーンパンを食べ終わり、同じようにコーヒーで口の中を潤す。
こうして二人ともご飯を食べ終わったところで、
「なぁなぁ?」
と僕に何か聞きたそうな感じで声をかけてきた。
「なに?」
「いきなりなんだけど聞きたいことあるんだけど、聞いてもいい? 答えは聞いてない」
「拒否権ないじゃん。あとそのネタ古いから」
その後半で言った『答えは聞いてない」というのは、もう十年前にもなる仮面ライダーのネタの一つ。それを覚えている人はほとんどいないだろう。
たまに動画で仮面ライダー関連を見る流れでそれを知っている人がいれば、別だろうが。
「ネタがどうとか別にいいんだよ。言いたいのは拒否権がないってことだから」
「拒否権ぐらいはくれよ」
「やだよ」
「なんで?」
「真面目な話だからさ」
「真面目な話?」
僕はその言葉の真意を探るため、竜也の方へ顔を向ける。
竜也の方もいつの間にか僕の方を見ていた。
目は真剣そのもの。
まるでこれから大事なことを言うかのような雰囲気が漂い、ちょっとの間、僕はその視線から目を話すことが出来なかった。
不意に思い付くのはBLの流れ。
男同士が『真面目な話』と伝えてくるなんて、告白する流れとしか思えなくなってしまう。
え? マジで?
急いで思考をフル回転させ、その考えを払拭させようと試みる。
無理だった。
どう考えても、この状況下だとその思考しか思い付かず、どうすることも出来なかった。
「気持ち悪ッ……」
そして、思わず率直な自分の意見が口から漏れる。
「は? どういう意味だよ!」
さすがに僕の発言の意味を理解していない竜也から不満の声が返される。
「だって告白するつもりだったんだろ? 悪いけど、僕にはそっちの趣味ないから」
「俺だってねぇよ! なんでそうなったんだよ⁉︎」
「真面目な話って言うからさ」
「言っただけでそんな流れになるとかどんな思考になるんだよ!」
「え? ほら、この流れってあれじゃん。ラブレターの代わりに女子に『今日、体育館裏に来てくれない? 真面目な話があるから』みたいな状況じゃん」
「……そうだな」
「場所が屋上ってだけだから、特に差異はないだろ?」
「それも間違ってない。……って、屋上を選んだのはお前だろうがッ!」
「てへぺろ」
そこを突っ込まれるとは思っていなかったので、僕は舌を出してそう返す。
どうやら真面目は真面目でもそっちではないらしい。
そのことは僕はホッとして、安堵のため息を吐いた。
竜也は今の流れが納得いかないらしく、ブツブツと愚痴をこぼしているが、
「んで、何が聞きたいのさ」
これ以上、からかっても仕方ないため、そう僕から切り出す。
竜也はそこでようやく本題を思い出したらしく、「そうだ」という反応を取った。
忘れんなよ。
そう心の中で突っ込んだのは内緒だ。
「ったく、それが大事だっての。いきなり変なこと言い出しやがって」
「ごめんごめん、それで本当に何?」
「いきなりで悪いけどさ」
「うん」
「北山さんと最近、どうなのよ?」
予想すらしなかった質問が竜也の口から出され、僕の周りの空気……いや、世界の時が止まったような感覚に陥った。




