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配信初日 3

「プリンの話は、その記念日の時に話すとして……配信の話に戻すね」


 明日美は念を押すように機嫌良くそう言った後、ちょっとだけ真面目な雰囲気へと変わる。


「透にとって、『本来の私』ってどんな感じだと思う?」

「本来の明日美? そりゃあーー」

「先に言っとくけど、『優等生』とか『誰にでも優しい』とか学校での様子はなしね。私が聞きたいのは『会話する上での私』だから」


  言おうとしてたことを先に口止めされる形で言われてしまう。

 そのため、僕は喋ろうと開けていた口を閉じる羽目になってしまった。

 その様子から自分の考えていたことが分かっていた明日美は、目元を隠すようにして大きなため息を溢す。


「そんなため息を溢さなくてもいいじゃんか」

「まさか本当に当たってると思わないでしょ?」

「……先読みしたのはそっちのくせに」

「それはそうだけど……。とにかく、真面目に考えて!」

「分かったよ」


 言われたことを真面目に考え始める僕。

 けれど、ほとんど思いつかない。

 思いつかないというよりは最近はこうやって話す回数が多くなってきてるからこそ、気付きにくいと言った方が正しいのかもしれない。

 現にこうやって僕はイジられてるしなぁ……。

 そう思った時、僕の中で答えが見つかったような気がした。


「僕限定なのか分からないけど、誰かをイジるキャラだったりする? 本来の明日美って」

「イジるキャラ……なのかな〜?」


 ちょっとだけそのキャラが明日美にとっては当てはまらないらしく、不思議そうに首を傾げる。

 どうやら明日美的にはそんなつもりはないらしい。


「でもさ、僕のことはイジってない? なんかそんな感じでからかってくる時あるよね?」

「それはあれだよ? 透の考えることが読みやすいからだよ? 読みやすいっていうか、顔に出ちゃう系?」

「……え?」


 明日美のことを話していたつもりだったのに、いきなり僕のことを暴露する形になってしまい、思わず思考が混乱してしまう。

 僕が顔に出やすいタイプ? 嘘でしょ?

 実際にそんなことを言われたことは一回もない。

 まず、ここまで言い当てられたことがない。

 だから、その明日美の言葉を聞き、そんなタイプだったけと考えさせられる形になってしまった。


「気付いてなかったの?」

「気付くも何も、誰にも言われてなかったのに分かるわけないじゃん」

「そうなの? 私は分かりやすいと思うんだけど……他の人からすれば、そんなことないのかな〜」


 明日美もまた口元に手を添え、なぜか真剣に悩み始めてしまう。


「ってそうじゃないから! 僕のことを考える時間じゃないから!」


 そんな明日美にそう言って、僕は考えることを阻止させる。

 明日美もハッとしたように我に返り、


「そうだそうだ! 透のことを考えてる場合じゃない! 私のことについて考える時間だった!」


 と軽く頭を振って、考えていたことを慌てて霧散させる。

 何をしてるんだか……。

 口には出して言えば、きっと怒られると思い、僕は心の中でそうボヤいておくことにした。


「まったく。とりあず僕から見た明日美は『他人をイジる』素質はあると思うよ。隙があったりすると、すぐにそこを突いて、何も言えなくしてくる気はする」

「それはあるかもね。割と言葉の隙を突くの面白かったりするから」

「……毎回突かれてる僕の身にもなってよ」

「だってあまり考えずにノリで返してる時多いんだもん。そんなの自分から『隙を作っておくから、いつでも突いてくれ』って言ってるようなものじゃない?」

「考えずに、その場のノリで返してるのは否定出来ないけど……。だから、いつも僕をぐうの音も出ないほど、論破していくのは酷くない?」

「酷くないよ。それが当たり前の流れになってるようなものなんだから」

「そんなつもりはないよ!」

「え〜、本当かな〜」


 明日美は意地悪を言うかのように、僕を悩ませにかかってくる。

 しかし、それが僕の狙っていた状況でもあった。


「ほら、今この状況どう思う?」

「なんのこと?」

「僕をからかって楽しんでない?」

「楽しんでるよ?」

「そこだよ。こういう部分を指して、『他人をイジる』素質があるって言ってるんだよ」

「あ、本当だ」


 今さら気が付いたように、明日美はハッと驚く表情をした。

 もし、誰かをイジる素質がなければ、そもそもこんな状況にはならない。

 だから自覚させるためにも、わざとこういう風な雰囲気に持っていったのだ。


「これで分かったよね。こういう感じでリスナーさんもイジっていけばいいんじゃないかな?」

「イジるね〜。言いたいことは分かったんだけど、それが私に出来るかな〜?」


 こんな感じでイジっていくという雰囲気自体は理解したらしい。

 ただ、理解をしたところでこれを実践出来るかというところで、また悩んでしまっているようだった。


「どこが原因で出来ないと思うの?」


 だから、その悩みの種の部分を聞いてみることにした。


「やっぱり言葉と文章の差? 口に出すってことは、それが直接伝わるでしょ? 文章だと読めない漢字や誤字で上手く読み取れる気がしないんだよね」

「そこね。でも誤字だったら、それをネタにしてからかったらいいんじゃないかな? 『誤字はホモ』って言葉もあるぐらいだし」

「誤字はホモ?」

「そうそう語源はどこか分からないけど、そういう言葉もあるよ」

「ふ〜ん……」


 こう説明しても明日美の表情はまだ暗いままだった。

 どうやら自分の中でそのイメージが出来上がらないらしい。

 どうしたらいいかな?

 僕もどうやったら、明日美の中で型としてしっかりとハマるかと一緒に考えることにした。

 一人で考えるよりは二人で考える方がいいと思ったから。

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