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エピローグ 1

 四月ーー。

 僕たちは無事に学校を卒業し、それぞれの道を歩み始めた。

 就職は僕だけで、明日美と竜也は予定通りに大学に通っている。

 就職した僕は良い社長と先輩に恵まれている……かどうかは就職したばかりなのでよく分からないけれど、それなりに大事にして貰えていると思う。学生がいきなり社会に飛び出すという意味で大変だけれど、それなりに充実しているため、今のところ問題ないはずだ。


 明日美はともかくとして、竜也とも今のところは連絡を取っている。

 頻度としては割と多めなので、「大学で友達を作れていないのかな?」と心配になることもあるが、楽しい大学生活を送っている自慢話を送り始めてきたので問題ないのだろう。っていうか自慢話なので、「僕の方が友達を辞めてやろうか?」と思い始めていることは秘密だ。

 それでも明日美の件のこともあり、感謝している節もあるため、なんだかんだ僕たちはずっと親友のままでいるんだと思う。


 ちなみに明日美との仲も順調だ。

 明日美の両親に会ったのは、明日美が母さんに会ってから一週間も経たない頃。早い方が良いと言う理由で、素早く明日美の両親に会う機会を作ってもらったのだ。僕からすれば初対面のつもりだったが、明日美のご両親からすれば、「この時を待っていた!」みたいな感覚だったらしく、仕事の予定をそっちのけにして、僕に会う機会を作ってくれたらしい。


 その行動力には僕も明日美も驚きを隠せなかったが、それを引き継いだのが娘である明日美ということを考えると十分に納得することが出来た。そのことを口に出したら、なぜか軽く怒られたので僕はそのことをネタででも言わないことを心の中で誓っている。


 驚くことと言えば、もう一つあった。

 それは僕の内科の担当医が明日美のお父さんであるということだった。最近、インフルエンザの検査をするために病院に行ったのだが、看護師さんは医師の名前は言わなかったため、分からなかった。だから会って、僕は驚く以外の反応が出来ず、ご両親は明日美と同じように楽しそうに笑っていたのは今でも簡単に思い出せる。なんて家族なんだろう……。


 驚くこともあったけれど、『結婚を前提に付き合っている』という報告自体は成功した。内容が内容だけに驚かれたが、親友の息子というなどのよく分からない理由で納得してもらうという奇跡が起きた。

 そう、そこで明日美のお願いも僕と両親の前で報告された。

 そのお願いが実際、一番驚いたことなのかもしれない。

 そのお願いとはーー。


「ただいまー」


 疲れ切った身体を引きずり、実家から出て、賃貸アパートを借りた我が家へ帰ってきた僕は扉を開けて、中に入る。

 すると、部屋からトタトタと走ってくる音が聞こえ、奥からエプロンを付けた明日美がやってきて、


「おかえりなさい! ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」


 などと定番のある言葉を言って、迎えてくれた。

 そこで僕は一瞬だけ考えて、


「じゃあ、明日美で」


 とどんな反応をするか、興味が湧いてしまったので、そう返してみる。

 明日美は僕がその返しをすると分かっているのだろう。


「じゃあ、先にお風呂ね? その後、ご飯ね。その後に二人でまったり過ごそう?」


 そう言いながら、明日美は僕に向かって手を伸ばしてきた。

 僕はその見事な返しに返す言葉を封殺されてしまい、伸ばしてきた手に僕は持っていたカバンを渡す。

 それを受け取った明日美は胸に抱き抱え込みながら、「えへへ」と嬉しそうに笑う。


「やっぱり嬉しいね、こうやって新婚生活味わえるの」

「何言ってるの? っていうか、それ何回目?」

「何回でもいいでしょ? 私とはそういう気分になってるんだから」

「本当に新婚した時、それ実感出来なくてもいいの?」

「それはそれでまた違う楽しみあると思うから良いの! 今は同棲に過ぎないんんだから」

「うん、そうだね。きっと何かが変わるかもしれない」


 明日美が怖いぐらい睨んできたので、僕はもう何も言えなくなり、同意させるを得なくなってしまう。

 このままではご飯抜きが見えたからだ。

 ちなみに先ほど明日美が言ったように、僕たちは同棲を始めた。

 これが明日美の『二つ目』のお願い。


 なんでこんな風に考えたのかは分からないし、明日美の口からはそれが語られることはないだろう。思いつきかもしれないし、何か考えてないのかもしれない。

 僕の予想では、『幼い頃に想いだけ募り、一緒に入れる時間が少なかったから、その時間を埋めようとしている』と思う。それだけ明日美の中で、僕との時間を大切にしたいという思いから、こういう無謀な行動に出たのだろう。

 だから僕は何も言うことが出来ず、きっと明日美の両親もその気持ちを理解した上で何も言えなくなり、了承したんだろう。


「でもさ、私のお父さんもお母さんも透のこと信用してないのかな? そりゃ透からすれば、嬉しいかもしれないけど……」


 明日美は居間に行きながら、そうぼやく。

 顔は見えないが、きっと頰を膨らませていると思う。

 言い方が拗ねたいいかただったからだ。


 明日美が言うように僕と同棲するにあたって、ある条件を出された。本当に僕的にはその条件は嬉しいものなのだが、明日美が不満を持つのも分かる。

 条件というよりは言われた内容のせいだと思うのだが……。

 その条件とはーー。


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