自己決定権をその手に
困った。実に困った。
鍛冶屋に刀を研ぎ直してもらおうと思ったら、
「今なら特別! 研ぎ直すだけじゃなく火属性の能力を付加させてやるぞ」
と言われた。
困った。そんなの僕の中のマニュアルにない。想定外の出来事だ。
それに火属性を付加させてもらうことがいいことなのか分からない。
困ったあげく、僕は「お願いします」と言った。
鍛冶屋を出ると、小さい太鼓橋の上で立ち止まり川の流れを見ながらため息をついた。
全く以てドキドキした。「火属性の能力を付加させてやるぞ」か。
マニュアルにない唐突に起きた出来事だからOKしてしまった。
後はせっかくのおじさんの好意を無駄にしてはいけないとも思ったからOKした。
でも、前者の方が強くてOKしてしまった。
……僕は自覚症状があるのだが、マニュアル通りにしか動けない。
マニュアルにない唐突な出来事に対し、僕は対処することができない。
さっきの鍛冶屋でのやりとりでもそうだ。
こんな自分好きじゃない。
もっと柔軟に対応できる人間になりたい。
そう。姉さんみたいに……。
「やめだやめ! 気合いを入れろ僕っ!」
川の流れを見るのをやめると、家路についた。
「火属性の刀ってどんなのだろう」
そう独りごちながら。