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身近な恐怖

検問をクリアしたゼノスは軽い足どりでレイ、ラインルシアの3人と合流した。


「無事に通れたみたいで良かったです、ゼノスさん」


すぐにルシアが近づいてきてゼノスへ話をかける。


「あぁ、迷宮主ってのがバレそうでひやっとしたけどなんとかクリア出来てよかった」


「ゼノス、それは一体どんな魔法を使ったんだい?」


ゼノスが口にしたことにさわやかな風で髪を少しなびかせているさわやかな男、レイが質問を投げかける


「あ、それのことで、男の記憶を改ざんしてきたんだが、魔力すごい使うし集中しなきゃいけないしでめっちゃ疲れたよ」


それを聞いた3人は何度目ともわからない驚きの表情を見せた。


「ゼノス、君は記憶もいじれるのかい······」


規格外なことの連続にレイは少しばかり疲れた様子を見せながらため息をついた。


「ところでゼノス、これから何かする予定はある?」


珍しくラインがゼノスに話しかける


「いや〜決めてないな」


「じゃあさ、俺お腹空いたから食事したいんだけどみんないい?」


「私もお腹空いてたんで行きたいです」


「僕も良いよ」


3人はまだ知らないが実はゼノス、食事をする必要が全くないのだ。


正しくは外部からエネルギーを摂取する必要がない。


しかしここは、みんなに合わせることにした。


「みんなお腹空くのか······じゃあ俺も行くかな」


こうして4人は食事へ向かっていったのだった。




少し歩いて4人は冒険者ギルドがすぐ近くにある店の前に着いた。


4人が来た店は高さ3m程で木造の建物だった。いわゆる酒場だ。


中にいる人が発しているだろう大声が外にいる4人にまでしっかりと聞こえてくる。


「中にいるやつらうるさいな」


「まぁ、いつもの事だよ········とりあえず入ろっか」


そうしてレイ、ライン、ルシアと入っていき、待ってくれよと言いながらゼノスも店の中へと入っていく。


4人が店に入った瞬間、店内にいる冒険者であろう多数の男達が一斉に4人の方へと目を向けた。


レイ、ライン、ルシアの3人に対しては何度も見た顔だからだろうか、軽く一瞥するだけだった男達だが、初めて見るゼノスに対しては皆一様に魔力オーラを強くして歓迎? している。


反射的にゼノスも少し魔力オーラを強くしてあたりを見渡す。


それだけで男達はまるで時間が止まったかのように動かなくなってしまった。


ちなみにこの時、レイ達も時間が止まったように動けなくなっていた。


しかしそんな中でただ1人、特に何かを気にする様子もなく黙々とご飯を食べ続けている少年を発見した。


(へぇ、面白い奴だ、話してみたいな)


少年のもとへと行く前にゼノスは魔力オーラを弱くした。


その瞬間、時間が動き始めたように店内の男達が動き始めた。皆、顔を青ざめさせて冷や汗をかいている。


(情けない奴らだな)


ゼノスは男達に呆れながら少年の方へと近づいていき話しかけた。


「お前、面白い奴だな」


話しかけられた少年は嫌な顔をするでも笑顔になるでもなく、無表情でこちらを見てきた。


瞳の色は黒で髪の色は薄い水色、肌は女性と見間違うくらい綺麗だ。


今は座っていて確実にそうとは言えないだろうが

身長はゼノスよりも少し低いくらいだろう。


「ゼ、ゼノスさん! 何してるんですか!」


少年に話しかけた途端ルシアがものすごいスピードで近づいてきてゼノスを止めた。


「ん? 何ってこいつに話しかけてるんだよ」


「この人を知らないんですか!········あ、知らないですよね」


「あぁ、知らん。だから教えてくれ」


「はぁ〜この人はリュート·エイタスさん、ルルブス王国の誇る数少ない超級冒険者です」


それまでゼノスとルシアのやり取りを無表情でぱちぱちと長いまつげを揺らしながら見ていたリュートは

初めて言葉を口にした


「······リュート·エイタス····よろしく」


「あぁ、俺はゼノスだ。よろしくな」


「おい、誰だか知らないけどあいつリュートさんに

タメ口使ってるぞ」


誰もが敬っている超級冒険者とあろうことかタメ口で話をしているゼノスに対して店内の男性、女性関係なく全ての人が好奇の視線を注いでいる。


そんな空気を切り裂いたのはレイだ。


「ゼノス、皆の視線が凄いからその辺にして何か食べよう」


「おぅそうだな」



こうしてゼノス達は店内の端のほうにあるテーブル席に座った。


「皆何食べるんだ?」


「ん〜僕は白銀鳥の竜田揚げにしよう」


「俺もそれにする」


レイとラインは同じものにするようなのでゼノスも同じものを頼む。


ただルシアだけは違うものを頼んだ。


「私は発光カニのパスタにします」


ほどなくして4人の頼んだ料理が運ばれてきた。


「「「いただきます」」」


「なんだそれ?」


「あ、そうですね。ゼノスさんが知らないのも無理ないです。これはご飯を食べる前に言うべき言葉なんですよ」


「ほぅ、そんな言葉があるのか」


ゼノスは改めて自分は地上のことについて全然分かってないなと思いつつ、レイ達みたいな優しいヤツらに会えて本当によかったと思った。


「ところでゼノスは迷宮にいた時はどんなものを食べていたんだい? ········やはり魔物とか?」


「そういえばそのことについて言ってなかったな。

俺は何かを食べる必要がない体なんだ」


何度も驚きすぎたせいでそろそろ3人にも耐性が出来てきた。そのため、少し目を見開いただけに留める。


「じゃあなんで料理頼んだんですか?」


ルシアが不思議そうにゼノスに聞いた。


「何かを食べる必要がないというだけで食べちゃいけないってわけじゃないと思うんだ。それに食べたあと何か変化が起こるのか気になるし、単純にルシア達と楽しくなにか食べたいとも思った」


「なるほど」


3人は 納得 といった表情で各々の料理を食べ始めた


ゼノスも目の前に置いてある料理を食べてみる


(人生初めての食事か。······一体どんな味がするんだろう)


少しドキドキとしながらゼノスはフォークで白銀鳥の竜田揚げを刺し、口へと運ぶ。


舌から発せられた電気信号が感覚神経を伝って脳へとたどり着く。


ガタン!


その瞬間ゼノスは凄まじい勢いで立ち上がった。


同じテーブルを囲み、食事をしているレイ、ライン、ルシアの3人がゼノスを見上げながらびっくりしているのはもちろんのこと、他の席で食事をしている多くの者がゼノスへと一斉に顔を向け奇異の視線を放っている。


「なんだこれは········こんないい気持ちになったのは初めてだ! これが美味しいというものか!」


感激の言葉を口にしながら白銀鳥の竜田揚げをもぐもぐとしているゼノスの耳に静かに、しかしとても頭の奥まで届いてくるそんな声が聞こえてきた。


「········ゼノスさん」


ルシアの声だと判断したゼノスがそちらへと顔を向けながら言葉を返す。


「なんだ、ルシ------っ!」


最後まで言葉を言う前にゼノスの背筋に悪寒が走った。


それもそのはず、ルシアの背後に鬼が浮かんでいるのだから。


鬼も怖いがルシア自身も非常に怖い。


一見笑っているように見えるが目が全く笑っていない


「ど、どうしたんだよルシア」


目を泳がせ、少し冷や汗をかきながらゼノスはルシアに問う。


この時ゼノスは初めて 怖い という感情の存在を感じた。


「座ってください。······皆の視線を集めないでください」


「あ、はい すいません」


このように自然とゼノスが敬語になってしまうぐらい


ゼノスは即座に椅子へと腰を下ろす。


落ち着いたゼノスを見て怒りは収まったのか、ルシアはすぐにいつも通りの笑顔を浮かべ食事を再開した。


「さっ! 食べましょう!」


ふとラインの方をゼノスがちら見すると普通にご飯を食べているように見えたがフォークを持っている右腕が細かく震えていた。


(怖いですよね。分かります)


ついでにレイの方も見てみると、ちらちらルシアの様子を窺い、時折ルシアが体を動かすのと連動してびくっと体を跳ねさせていた。


(怖いですよね。 分かります)


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