いざルルブス入国······の前に
思わぬところで仲間に出会うことが出来たゼノスは今
仲間のレイ、ライン、ルシアとともに
心が癒される優しい緑色が広がる大草原を
隣にルシア、後ろにレイ、ラインという形で歩いていた。
「なぁ、ルシア」
「なんです? ゼノスさん」
「あの街ってなんていう名前なんだ?」
「あ〜、前から言おうと思ってたんですけどあれは街っていうか国、なんです」
「へぇ〜、あれは国なのか」
「はい、ルルブス王国っていう国でこの世界で1番強い大国なんですよ」
「凄い国なんだな!」
ゼノスは一体どんなものがあるんだろう、どんな面白いやつがいるんだろう、などといろんなことを頭の中で考えとてもウキウキしていた。
そこへレイが声をかけてきた
「そういえばゼノス、迷宮主って言ってたけど、どの迷宮から来たんだい?」
「あぁ、確か······デウス迷宮····だったっけな?」
ゼノスはスキル《全言語理解》でどんな言語でも読めるし、会話をすることも出来るため自分の迷宮の前に立てかけられていた看板も読むことが出来たのだ
「「「えっ!」」」
「ん? どうしたんだ?」
「デ、デウス迷宮?」
「ああ、そうだよ」
「それってここより少し先に言ったところにある迷宮だよね?」
「だからそうだって」
「そこ冗談じゃないほどレベル高すぎて世界最強の冒険者も行こうとしないやばい迷宮じゃないか」
「そうなのか、だから誰も俺のところまで来なかったんだな、ハッハッハ」
「ハッハッハ じゃないですよ。
······一体何階層にいたんですか?」
笑うゼノスにジト目を向けながらルシアが軽い気持ちで質問すると
「ん〜、500層」
「!!!!」
とんでもない答えが返ってきた。しかし!
いつも予想の斜め上をいくゼノスの回答にそろそろ3人も耐性がついてきた。
なんとか3人はゼノスの回答をスルーしつつ次の質問を始めた。
「ゼノスはルルブスに着いてから何をするつもりなんだい?」
「ん〜どうしようかな。全く決めてないや」
「じゃあまず最初に身分証明書を作った方がいいね
どうせ他の国にも行こうとしてるでしょ?」
「そのつもりだ。で、そのみぶんしょうめいしょ?
って何なんだ?」
いちいち説明するのも大変だなと思いつつもレイは
ずっと迷宮にいたんじゃしょうがないよなと諦めて説明を始めた
「身分証明書っていうのはね、身分を証明するもの
つまり、自分はこういう人なんですよ。っていうのを示すものなんだ」
「そうなのか! でその身分証明書ってのはどうやって作るんだ?」
そのゼノスの質問にレイは少し考え込んで答えた
「いちばん手っ取り早いのはやっぱりギルドで冒険者登録する事かな」
「ほぅ、だが俺は迷宮主だ。冒険者になることなんて出来るのか?」
それに対してレイは苦笑いをながら
そこなんだよね。と返した
「まず迷宮主がギルドで冒険者登録するとかどうとかよりも
迷宮主が地上に出てきたことの方が重大事件どころか世界問題になると思うんだ。それもデウス迷宮となれば尚更」
「まぁそうだよな」
と、ゼノス
確かにゼノスの存在はこの世界にとってこれまでにないほどの異常事態だ。
本来迷宮主とは迷宮を守る最後の番人であるため地上に出るようなことは一切しない。
しかも迷宮主が魔物の姿ではなく人型で尚且つ人間と同レベルの知能を持っているなどとは全く考えられていない。
果たして一体どうなるのかレイにもルシアにもラインにも全く分からなかった。
あれこれ話し、考えているうちにゼノス達の前に人の列が見えてきた。
その光景を見た瞬間レイ、ルシア、ラインの心の中で電撃が走った。
(((まずい!)))
「うお! 人がいっぱいいるぞ! 強いやついないのかな? 面白い奴はいないのかな?」
自分が深刻な状態に陥っているとはつゆ知らず人の列を見て興奮しているゼノスに3人が ささっ と
近寄っていく
「うぁ、なんだよお前らどうしたんだ? 近いぞ」
「それどころじゃないですよ、ゼノスさん」
「何がそれどころじゃないんだ、ルシア?」
ゼノスは何が何だかさっぱりと言いたげなポカンと
した顔で話の続きを待っている
「ゼノスさん! 大変です! 検問があります」
「すまないゼノス、検問のことをすっかり忘れていた」
「おいおい、ちょっと待ってくれ。まずけんもんってなんだ?」
「あ〜もう! ゼノスさんの物知らず!」
ルシアはゼノスの地上について知らなさすぎるところに少しイラッとしつつ説明する
「いいですか? 検問っていうのはですね、怪しい人を国に入れないようにするものなんですよ」
それを聞いたゼノスは
「何を言ってるんだルシア、今ここに怪しいヤツなんて··········俺か?」
理解した
「そうですよ! どうしましょう、まずいです。このままだと絶対ゼノスさん検問に引っかかりますよ!」
「検問って蹴散らしちゃ駄目なのか?」
「ダメですよ!」
話にならないとわかるや否やルシアはレイの方に体を向けて対策を立て始めた
「レイ兄さん、どうするんですか?」
「残念ながら僕もどうすればいいのかさっぱり分からない」
「ライン兄さんはどうですか?」
「カークーカークー」
「もうどうすればいいか分からないからって下手なウソ寝はやめてください!」
オロオロしているレイとルシア、ウソ寝をしているラインを見ていたゼノスは自然と笑っていた。
「ゼノスさん何笑ってるんですか」
「あぁ、すまない、迷宮にいた時はこんな楽しい時間はなかったな〜と思ってたらついな」
「それは良かったです!········じゃなくて、本当にどうするですか?」
話しながらも歩き続けていたため気がついたらゼノス達は検問の列に着いてしまった。
「あ、着いちゃった」
「どうせ考えても何も思いつかないと思うぞ、俺は」
事態を深刻だと考えていないゼノスはそんなことを言う。
確かに、と少し思ってしまったレイ、ルシア、ラインの3人は着々と近づいてくる自分達の番を前にしてとうとう諦めてしまった。
そしてついにゼノスたちの番がやってきた。
検問を行っているのは中年で顎に少しのヒゲを生やし、老いを感じさせない肉体を持っている大きめの男だ。
レイ、ルシア、ラインはもちろんすぐに検問をクリアしていった。
「次の人!」
いよいよゼノスの番だ。3人は心配そうにゼノスを見つめている。
大丈夫だ、とゼノスは3人に目でそう伝えると検問をしている中年男の前に進んでいく。
「身分証明書を持っているか?」
そう聞かれたゼノスはもちろん
「持ってません」
と答える。
「そうか、ではちょっとこっちに来てくれ」
「はい」
男に連れられてやってきたのは検問をしていた場所から少し離れた小屋のような場所だった。
「入ってくれ」
「はい」
小屋の中は余計なものが全くない殺風景なものだった
そんな部屋の中央に一つの机があった。
机の上には赤みがかった石版が置いてある。
ゼノスがそれについて質問しようとしたが、先に男が説明してくれた。
「これは解析版と呼ばれるものだ」
「解析版?」
「あぁ、これは解析したいやつの手を置くことで
そいつの出身場所、ステータス、レベルを見ることが出来るものだ」
「それは凄いですね」
冷や汗を垂らしながらゼノスは言った
(検問なんてどうにかなると思っていたが
········これはまずいな)