原因解明、そして救助
あからさまに拒絶されたことや魔物と一緒にされたことに少ししょんぼりとしながらもゼノスはもう一度同じことを繰り返さないように何故 自分が逃げられたのかを真剣に考えていた。
(ん? そういえばさっきのやつはオーラがどうとか····あ、そうか俺の魔力オーラか!)
その通り、先ほどゼノスが逃げられたのは魔力オーラが原因だ。
魔力オーラは文字通り魔力のオーラのことで、
魔力保持者の魔力量、魔力の質によって
大きく変わってくるものだ。
ゼノスの場合魔力量が信じられないほど多く、それでいて迷宮主という普通ではない境遇によって魔力の質もまた、他の者とは大きく違い濃く、禍々しいものなのだ。
しかもゼノスは超高レベルの迷宮にいたため魔力オーラを抑えなくても魔物が本能でビビるような事はなかったがここは地上、迷宮の常識は通用する訳もなく
魔力オーラを出しっぱなしにしていたため人にも魔物にも逃げられてしまったのだ。
原因を解明したゼノスはさっそく魔力オーラを抑え始めた。
みるみる縮小していくゼノスの魔力オーラはやがて
並の冒険者と同じ程度になった。
「ふぅ、こんなもんでいいかな」
そしてゼノスは再び《魔力探知》を使用して近くの魔力を持つ生物を探し始めた。
運がいいことにすぐに何かが魔力探知に引っかかった
(この魔力の雰囲気は人間っぽいな〜。 これはいくしかない)
こうしてゼノスは 逃げられませんように! と願いつつ探知に引っかかった場所へと走っていった。
ゼノスは現在、冒険者らしき人達と魔物との戦闘を見物している。---空から
今は男性が2人と女性が1人みたいだが近くに既にこと切れている人間が4人ほどいることから最初は7人であの魔物と戦っていたのだろう。
とりあえずゼノスは冒険者らしき人達の情報を軽く見ることにした。
-レイ·カルロス-
レベル60
-ライン·カルロス-
レベル55
-ルシア·カルロス-
レベル53
え? 君たち家族なの?
「くそ、よくもアレン達を!おらァー!」
「待て!お前もアレン達と同じ目にあうぞ」
「じゃあ兄さんには何か策はあるのかよ!」
「やめようよ二人とももう私たちは····
やっぱり7人でギガンテスに挑むなんて無理だったん--「やめろ!」」
いや、やめろ! って言ってるが実際に君たちには無理なんだよ。
あいつらが戦っているのはギガンテス
まるで鎧の様にがっしりとした筋肉を使って恐ろしいパワーの打撃を繰り出す魔物だ。
その威力は俺の迷宮の魔物よりも上であろう。
ギガンテスは基本的に群れで行動することは無い。
なので一体一体がほかの魔物と比べて強い。
ちなみに今回のギガンテスはレベルが90だ。
まぁ俺の敵ではないな。
それにしてもまずいな、このままだとあいつらあんまり時間経たない間に死んじゃうぞ。
地上についての情報も欲しいし····助けるか
「ギャガーーーーー!!!!」
ギガンテスが大きな雄叫びを上げて冒険者らしき人達に迫る。
「クソがーーーー!」
男性の1人が立ち向かおうとしているが強さはギガンテスの方が圧倒的に上なのでこれでは死は免れない。
ギガンテスのハンマーが男に直撃、男は原型を留めない無惨な死を迎える
---ことにはならなかった。
なぜなら男の前に一つの影が滑り込んで来たからだ。
ゼノスだ。
ギガンテスは目の前にゼノスが出てきたことに一瞬驚いたがすぐに武器を振り下ろした。
それに対してゼノスは《障壁》を発動。
ギガンテスの攻撃を受けても障壁には傷一つつかなかった。
障壁の反作用を受けてギガンテスのハンマーは上に弾かれた。
それと同時にギガンテスの体勢も大きく崩れる。
その隙にゼノスはギガンテスの死角に回り込み、
斜めの軌道で軽く《魔力刃》を発動して一閃。
真っ二つになるようなことにはならなかったがそれでもギガンテスには充分な致命傷だった。
血飛沫を上げてギガンテスは前方に倒れる。
その様子を3人の冒険者らしき人達はこれでもかというほど目を見開いて見ていた。少し意識がどこかへいっているようにみえるのは気のせいだろうか。
ゼノスは3人のもとへと近寄って行く
(良かった! 今度は逃げられてない!)
「お前達大丈夫か?」
ゼノスに話しかけられて3人はようやく意識が完全に戻ってきたようだ。
「あ、あの! 助けていただきありがとうございました!」
まず最初に話しかけてきたのはゼノスよりも小柄な女の子だ。
淡い肌色に美しく、サラサラとした金髪をあわせ持っていて、暗い黄色の瞳を持っている。黙っていたらとても美人なクール系になりそうだがこちらは表現豊かで元気っ子感が出ている。
「いや、こんなのなんてことない。気にするな」
「私、ルシア·カルロスっていいます。ルシアって呼んでください! あとこっちの2人は私の兄でレイとラインです。」
「長男のレイです。助けていただきありがとうございました」
「次男のラインです。ほんとお礼の気持ちでいっぱいです。」
ゼノスは魔眼で既に知っているが知らない風を装い接していった。
「俺はゼノスだ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします····あの、ゼノスさん」
「なんだ?」
「私達の仲間、ギガンテスの攻撃を受けて動かないんです! どうにかなりませんか?」
ルシアは目を潤ませながらゼノスに仲間のことを質問する
ゼノスはそこで少し表情を暗くした。
それを見て察したルシアは
「無理そうですね······」
と呟いた。
「あぁ」
ゼノスは苦虫を噛み潰したように顔を歪めそう言った
「嘘だろ? ア、アレン達が、アレン達がそんな」
ルシアと同じで肌の色は淡い肌色、短めの金髪は少し癖っ毛なのだろう、ところどころピョンピョンとはねていて、瞳も暗めの黄色な次男のラインは仲間が死んでしまったことにショックを隠せないようだ。
そこで
「アレン達が死んでしまったのはとても悲しい。
····正直俺も泣きたいくらいだ。でも、もう死んでしまったら生き返らない。これはしょうがない事だ、
だから今は悲しさに明け暮れるだけでなく同じことを繰り返さないように工夫することが大事なんじゃないか?」
冷静にそう発言した者がいた。レイだ
ゼノスよりも少し高めの身長で
これまた淡い肌色の肌に暗い黄色の瞳を持ち、髪は
金髪、ラインとは違い少し長めで癖は無さそうだ。
「分かってる、分かってるけどうぅ」
ラインはとうとう泣き出してしまった。
ルシアもつられて一緒に涙を流していた。
ただ1人、レイだけは3人の中で涙をぐっと堪えていた
(強いやつだな、レイ)
ゼノスは心の中でレイに感心していた
「せめて俺が土葬しておこう」
「僕達も見ます」
「······そうか」
ゼノスはスキル《地面操作》を使い、地面に穴を作った。そしてそこにレイ達の仲間の亡骸を入れていく。
再び《地面操作》を使い、蓋をして埋葬を終えた
しばらく時間が経ち、気持ちを切り替えることができた3人にゼノスはここから少し遠くに見える街を指さしてこう質問する。
「ルシア達はあそこから来たのか?」
「はい、私達ギルドの依頼を受けてギガンテスを討伐しに来たんです。でも私達では無理みたいでした」
「その ぎるど ってなんだ?」
「えっ? ゼノスさんギルド知らないんですか!? てっきり超級冒険者かと思いました」
「超級って凄いのか?」
「凄いどころじゃないですよ! 初級、下級、中級、上級
超級っていうランクの1番上ですよ! この世界にも数える程度しか居ないんですから」
「そうなんだ。ルシア達はどれ位なんだ?」
「私達はみんな上級冒険者です」
「えっ!」
「えっ! ってなんですか〜私達そんな弱く見えます?」
「すまない。てっきり駆け出しかと思ってた」
「ゼノスさんの基準が高すぎるんですよ〜!」
ルシアは頬を少し膨らませながら怒ってる風を出している。
(かわいい····迷宮にいた時はこんなこと思わなかったから
なんかいいな)
「なぁゼノスさん」
「ん、なんだいレイ?」
「言いづらいんだけど、ゼノスさんって
----なにものだい?」
え〜ちょっと答えずらいな。
··········どうしよう