表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

初の宿泊

ゼノス、レイ、ライン、ルシア、リュート、アストル

の五人が訓練場を出た時、既に空は赤みがかっていた。


「空が赤くなってる! あれって火でも出てんのか ?」


初めて見る夕焼けの空にゼノスが興奮していると、

説明役になりつつあるリュートがゼノスに説明を始めた。


「ゼノス、空が赤くなっているのは火が出てるからじゃなくて太陽が沈んでいくからだよ」


「なるほどそうなのか」


「ホントに分かってるの?」


「ああ」


リュートの言葉にゼノスはから返事を返すだけで

ぼーっと空を見続けている。


「もう夕方なんですね。帰りますか?」


「そうだね、そろそろ宿に戻るとしようか」


ゼノスとリュートが会話している一方でレイとルシアも話をしていた。


するとここでレイがあることに気づいた。


「そういえばゼノス、君は今日どこで寝泊まりするか決めているのかい?」


「········」


ゼノスはレイに顔を向けず言葉も発さなかった。


「ゼノスさん?」


ルシアが優しくゼノスの肩を叩くとゼノスは肩を

ピクっとさせてルシアの方に顔を向けた。


「おお、ルシアか。どうしたんだ?」


「え? ゼノスさん、なんの話してたか分かりますか?」


「なんか話してたのか?」


(ゼノス、全然話聞いてなかったみたい)


リュートは状況が全く理解出来ていないゼノスを見てそう思ったのだった。










その後、レイたちと同じ宿に止まることになったゼノスはリュート、アストルの二人と別れ宿へと向かっていた。


「それにしても、ゼノスとあと二日でお別れになっちゃうのか〜」


唐突にラインがそんなことを言った。



それを聞いた三人は訓練場でギルド長がゼノスに明後日から迷宮制覇に行けと司令を出したことを思い出した。


「あれは俺もびっくりしたな。急にあんなこと言われるなんてな」


「ホントですよ。ゼノスさんと別れるの寂しいです」


「付いてきたいけど僕達じゃ足でまといになると思うしギルド長がいいと言ってくれるとは思えないんだよね」


「でも、もしかしたら私たちの分の物資も出してくれるかも知れませんよ。 明日聞きに行ってみましょうよ」


「そうだね。明日聞きに行ってみよう」


四人が明日の予定について話していると近くに並ぶ屋台から料理の匂いがただよってきた。


ギュルギュルギュル〜


料理の匂いを嗅いだからだろう、誰かのお腹が勢いよくなった。


誰もその音について言及するようなことはしない。


しかし音の出どころが気になってしまったラインが目だけを動かして三人を眺め始めた。


まずはゼノス。いつもと変わった様子はなくキョロキョロと周りを見ながら歩いている。


(ゼノスは違うみたいだな)


次にレイ。先程のお腹の音はレイにもしっかり聞こえているはずだがラインのように音の出どころを探すようなことはしていない。


その代わり、お腹が減っているであろう人物への気遣いからか四人でよるための屋台を見繕うために道の隅に顔を向けていた。


(レイ兄さんも違うのか········ってことは)


バッとラインがルシアの方を向けると、顔の赤くなっているルシアがお腹に手を当てて俯きながら歩いていた。


(あ、ルシアだ)


ラインが音の出どころがルシアだと気づいたのと同時にレイが口を開いた。


「あそこに美味しそうなのが売ってるみたいだね。

ちょっと寄ってかないかい?」


「ん? 俺はどっちでもいいいぞ」


食物を摂取する必要がないゼノスはレイに委ねることにした。


一方お腹がすいている様子のルシアはレイの提案を聞いて、その言葉を待ってました! と言わんばかりの表情でレイを見ていた。


そんなルシアの視線を感じとったレイがルシアに意見を聞く。


「ルシアはどうする?」


「私はちょっとお腹がすいたので寄りたいです」


少し食い気味にルシアが答えた。


「ラインは?」


「俺もお腹すいたから寄りたいな」


ラインも賛成の意思を示す。


「じゃあ行こっか」


ゼノス、レイ、ライン、ルシアの四人は周りの人たちの間を掻い潜り、屋台へとたどり着いた。


屋台には値段が高めの牛肉、鶏肉や値段が低めの魔物肉など値段の違う数種類の焼かれた肉が串に刺されて売られている。


ゼノス達は揃って鶏肉の串焼きを頼むことにした。


「すいません、これ4本」


「はいよっ!」


レイが鶏肉の串焼きを指さしながら屋台の親父に注文すると、親父の元気な返事と串焼きが素早く4本届いた。


レイは懐から財布を出し、いくつかの硬貨を親父に渡して支払いを終える。


「お待たせ」


支払いを終えたレイが串焼きを手に持って三人のもとへ帰ってきた。


「今日は僕の奢りでいいよ」


「えっいいんですか? 鶏肉って結構高いですよ?」


「そうだよレイ兄さん」


「大丈夫、大丈夫。たまには奢るのも悪くないし今はそこそこお金あるしね」


はじめは心配そうな表情をしていたルシアとラインだったが、レイが笑顔で返答したことで安心し、謝意を伝えて串焼きを受け取っていた。


「はい、ゼノス」


「ありがとう、レイ。········そういえば昼ご飯食べた時も俺の分払ってくれてたな、そっちもありがとう」


「どういたしまして。じゃあ宿に行こっか」


三人に感謝されて嬉しくなったレイはいつもよりも軽い足取りで歩き始めた。


そんなレイに三人もついて行く。


「なぁレイ」


「どうしたんだい? ゼノス」


「こういう食べ物とか買う時にレイが店の人に渡してた丸い鉄みたいなのあるだろう? あれはなんなんだ?」


「あぁ、あれはお金というものだよ」


「おかね?」


「うん。生きていくために必要なものだね」


レイはゼノスにお金には下から魔硬貨、龍硬貨

王硬貨、聖硬貨、天硬貨があり、レートは

魔硬貨100枚で龍硬貨1枚

龍硬貨100枚で王硬貨1枚

王硬貨100枚で聖硬貨1枚

聖硬貨100枚で天硬貨1枚だということを説明した。


「なんか王硬貨くらいからわかりずらいな。王硬貨を魔硬貨にしたらどれくらいになるんだ?」


「10000枚だね」


「結構すごいな」



「王硬貨でも大金だけど天硬貨なんてもっとすごいよ。魔硬貨にすると1億枚」


「1億枚だと! そんなの持ってるやついるのか?」


「天硬貨なんてものを持ってるのは王族ぐらいだろうね」


「王族は金持ちなんだな」


そんな会話をしている間にルシアが串焼きを食べ終えていた。


「ごちそうさまでした」


「ルシア早いな」


「そ、そんなことないですよ〜。········みんなが遅いだけです」


ゼノスに言われたことが少し恥ずかしかったルシアは

頬を赤くしながら反論するが、次第に声が小さくなっていってしまった。


「ゼノス、そういうのは言わない方がいいと思うんだ」


女性との接し方について心得のあるラインがそっとゼノスにアドバイスした。


「そうなのか。今度から気をつけよう」


「それがいいと思うよ」


そうしたことを話しているうちにレイ達が現在泊まっている兼ゼノスがこれから泊まる予定の宿に到着した。


比較的新しめな外観の二階建てで、薄い青の外壁が特徴的な宿だ。


「っとここだね」


「ここがレイ達の泊まっているところか」


「そうだよ。まぁ行こうか」


四人はレイを先頭に宿の中へと入っていく。


宿の中は暖色系の間接照明により、落ち着いた空間となっていた。


「綺麗だし落ち着くな」


「いいとこだよね」


「おう」


するとそこへカウンターに立っていた受付の20代前半ぐらいの若い女性がやってきた。


「おかえりなさいませ」


「ご苦労様です。あ、ひとついいですか?」


「はい、なんでしょう?」


「こっちの人を今日と明日宿泊させられますか?」


レイがゼノスの肩に手を乗せてそう言うと受付の女性は、全然大丈夫です。むしろお願いしたいぐらいです〜と快諾した。


レイがゼノスの代わりにチェックを済ませたあと、ゼノスは受付の女性に二階の部屋へ案内された。


「こちらがゼノス様のお部屋になります。そしてこちらがこの部屋の鍵になります」


女性から渡された鍵を鍵穴にさし、ゼノスが自分の部屋のドアを開ける。


部屋の中はシンプルな家具が置かれていて長期宿泊にも対応出来ているようだった。


また、一階と同じで暖色系の間接照明が使われていて、普通の人ならすぐに夢の世界へいけそうな雰囲気の部屋になっていた。


「おお、下と同じで綺麗だな」


「ありがとうございます。それではごゆっくり」


女性はぺこりと頭を下げてその場を去っていく。


それを見届けたゼノスは部屋に入った。


「さて、何をしようかな」


ゼノスが部屋に案内される時、レイ達もそれぞれの部屋へ戻って行き、休息に入っている。


いくら無神経のゼノスでも、人のプライベートに足を踏み入れるのは良くないと思い、これからの時間は一人で過ごそうと決めていた。


しかし、睡眠をとる必要が無いゼノスは完全に時間を持て余している。


考え込むこと数十秒、ゼノスは暇つぶしになることを思いついた。


「そうだ! なんか作れるようにしてそれをレイ達へのプレゼントにしよう」


独り言を呟いたあと、ゼノスは《武器錬成》を使って短剣を作り出し、床に置いた。


その短剣に向けて手をかざし、ゼノスがぐっと力を込める。


だが短剣に変化は見られなかった。


今ゼノスがやろうとしているのは《武器錬成》で出した武器を別のものに変形させることだ。


「流石に一発じゃ難しいか」


次にゼノスは武器に触れて魔力を流しながら、頭の中で変形させたいものをイメージしていく。


すると短剣が淡く光だし、微かに短剣の形が歪になった。


「おお! ちょっと変わったな。この調子でやってみよう」


ゼノスは先程よりもさらに集中し、短剣に触れながら丁寧に魔力を込めていく。


(イメージしろ、イメージしろ おれがつくりたいものを!)


今回も短剣から淡い光が出始めた。そして徐々に短剣の光が強くなっていく。


しかし途中でほかのことを考えてしまったことで光は消えてしまい、中途半端に変形した短剣だけが床に残っていた。


「まだまだ!」


その後もゼノスはもう1回、もう1回と無尽蔵な魔力を惜しみなく使って短剣を変形させることに挑戦し続けていたため、ゼノスが気づいた時には夜が更け始めていた。


「もう朝か。ちょっくら散歩にでもいくか」


ゼノスはよれた服を直しパンパンと埃を払ったあと部屋のドアを開けて一階へと降りていく。


宿の人も寝ているのだろう、カウンターにはだれも立っておらずゼノスを引き止める者はいなかった。


そしてゼノスは早朝の街へ歩いていくのだった。



これから受験シーズンの関係で少しとうこうペースが落ちますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ