表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/24

11 誰がこんなもの作ったんだよ

 モフモフは全員が袋を受け取ったことを確認し、声をかけた。

「さあ、みなさん、それではアミューズメントパークへ出発します。次はちょっと変わった枝橋ですよ」

 何が変わっているのか聞く前に、子供たちの歓声が上がった。

「わあ、すごい! 滑り台だ!」

 イヤな予感しかしない。

「さあ、きみたち、押しちゃダメだよ。ええと、お子さまをお連れのみなさま、しっかり手ををつないでくださいね。さて、パークのあるアゴラは、ここより少し低い位置にあります。そこで枝橋の中央部分をU字型にくり抜き、滑って降りられるようにしています。U字の上の部分はオランチュラの糸で編んだセーフティネットで覆われています。ちなみに、途中ジョイントはなく、こちら側の枝が向こうまで伸びていますから、ご安心ください。なるべくこの葉っぱのシートをお尻にしいて、お一人ずつ進んでくださいね。お子さまはご一緒で結構です。尚、出口の外にも丈夫なセーフティネットが張ってありますが、くれぐれもスピードを出しすぎないよう、ご注意ください」

 見ると、直径2メートルぐらいの枝をU字型に深くえぐり、内側をツルツルに磨いた滑り台がずっと向こうまで続いている。

「それでは、安全確認のためわたくしが先に行きますので、慌てず順番に来てくださいね」

 モフモフが行った後、アッくんとお母さんも、日曜日のパパも、ためらいもせずに次々と滑って行く。それを見てビビっているおれとは違い、黒田夫人は目をキラキラさせていた。

「中野さん、悪いけど今度は先に行くわよ」

 そう言うや否や、黒田夫人は「イエーイ」と叫びながら滑って行ってしまった。

 唖然として見ていると、横に立っていたご主人が、ポンとおれの肩をたたいた。

「ふん、おてんば婆さんめ。あいつの絶叫マシン好きにも困ったもんだ。わがはいはゆっくり行くよ。中野くんも気にせず、自分のペースで行っていいぞ」

 そう言うご主人もまんざら嫌いではないようで、嬉々として滑って行った。

 続いて行こうとする黒レザーの女を制し、髭男が「念のため、自分が露払つゆはらいを」と行ってしまい、ついに女とおれだけになった。

 女はおれを見て、皮肉っぽく笑った。

「どうするの。怖いなら、抱っこして一緒に滑ってあげてもいいわよ」

 くそっ。なんだってこんな時におれは顔を赤くしてるんだ。

「い、いや、別に怖いわけじゃない。レディファーストでいいよ」

「ふーん、そう。じゃあ、お先に」

 女は軽く助走をつけ、カッコよく滑っていった。

 誰もいなくなると、自然に膝がガクガク震えだした。レディファーストどころか、本当は動けなかったのだ。その場にへたり込んでしまったおれは、この後どうするか悩んだ。

 思い切って行くのか、誰かに助けを求めるべきか。助けを呼ぶとしても、どうやって連絡をとるのか。それとも両替所まで引き返すのか。いやいや、そんなことをすれば、またあの女に笑われる。

 おれは渾身こんしんの力を振り絞って立ち上がり、ヨロヨロと滑り台の前まで近づいた。

「そうだ。下を見るからいけないんだ。上を向こう。昔の歌にもあるじゃないか。空だけを見ていれば大丈夫だ」

 その時、おれの視界の隅に、何か白いものが飛んでいるのが見えた。先ほどのチョウではない。もっとずっと大きい。たぶん、宙港のある山の上で見たのと同じものだ。どう見ても人工物で、しかも、人間がぶら下がっているように見える。

 ハングライダーという言葉が頭に浮かんだ。

 確かめようと穴から身を乗り出した途端、おれは前のめりに滑り台に落ちてしまった。

「わああああーっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ