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31:水場

「つーわけで、俺たちは伝承にある異世界と交わった別次元の世界に囚われてるらしい」


 ヒイロは旧校舎の古ぼけた黒板に、崩れかけたチョークで図を描いて見せた。

 ただの記号だが、ないよりは分かりやすいだろう。


「なるほどね。学校の伝承と言えば、確かに聞いた事のある話だね」


「まぁな。つーか、俺らの親世代か? 一度、伝承を本気にして騒ぎに起こしたヤツがいたって話あったし」


 ヒイロとメオンの説明を聞き終えて、そう冷静に分析するのは山内で、安藤もそれに頷いていた。


「へぇ、そうなんだ? 詳しいのね、アナタ達」


 メオンの感心した様子を見て、山内と安藤が首をすくめた。


「まぁね。俺と安藤はガキの頃から聞かされてたから。別の面白い話でもないんだけどさ」


 山内と安藤は子供の頃からこの真宵ヶ丘の街で育ってきたらしく、土地の伝承にも詳しかった。

 父親と共に世界中を飛び回っていたヒイロは当然の事ながら、中学時代にこの地に引っ越してきたというメオンも、地元の伝承には疎かった。


「デンショウ? ジャアパニーズトラディション?」


 それ以上に全く分かっていなかったのはチェコだった。

 首を傾げて人差し指で口元をツンツンと突いているのは幼い顔つきの少女だ。


 ブルーの瞳にクッキリとした目鼻立ち。

 こんがりと焼けた小麦色の四肢が日本人離れしたプロポーションでスラリと伸びていて、事実、純粋な日本人ではなくハーフらしい。


 胸は幼い顔つきに比例するように控えめで、年相応といったところか。


 後頭部で結ったポニーテールを揺らして人なっつっこそうな笑顔をこぼす。

 チラリと覗く八重歯がいかにも元気系だった。


「ヘイ、ボーイズ! マイネーム、イズ! チェコだよ!」


 片言感が言葉の端々から収まりきらずに溢れ出ている。


 絶対日本育ちだ。

 キャラ作ってるだろ、とヒイロは内心で突っ込まずにはいられなかった。


 メオンも同じような面持ちなのか、眉の間を微妙に寄せて、テレビで話題のインチキ占い師を見つけた時の様な顔をしている。


「こいつハーフなんだ。いろいろと片言だけど気にしないでやって」


「ヘイ、キャプテン。カタコトじゃないよ。ネイティブね!」


「はいはい。って、だから俺はキャプテンじゃないから」


 チェコが頬を膨らませながら頑なにネイティブであると主張していたが、山内に「はいはい」と流されていた。


 二人が並ぶと頭一つ身長が違う。

 同じ金属バットを揃いで持っていたり、仲の良い兄妹のようにも見えた。


「俺は山内。こいつ、チェコは中学の後輩なんだ」


 体操服姿のチェコとは違い、山内は野球部のユニフォーム姿だった。

 パーカー姿のヒイロが言うのもおかしいが、そんな恰好で動き回って暑くないのだろうかと気になる。


 山内は丸めた頭といい、いかにも体育会系といった風貌で、体つきは逞しいが顔はあどけない少年のようだ。

 なんとなく犬っぽい顔立ちをしている。

 秋田犬とかそこらへん。

 真面目そうな口調が忠犬っぽいせいかもしれない。


「たまたまウチの学校に来てたんだけど……こんな事に巻き込まれるとはな」


 チェコは中学三年生で女子野球部の部長を務めているらしい。

 夏休みには中学と高校の野球部同士で合同練習をする予定だったらしく、今日はその打ち合わせに昼休みの時間を使って訪れていた。


 簡単な打ち合わせが終わり、残った時間でチェコを山内がグラウンドへ案内している間に野球の話に花が咲き、談笑は二人きりの部室で続いた。

 そのうちに気が付けば昼休みが終わってしまい、慌てて部室を飛び出した所でこの世界の異変に気が付いた。


「外は見えない壁に覆われてる。野球ボールが一個、消えてなくなるのを見たよ。素手で触ってたらヤバかった」


 出口を探して校舎の外周を歩いていた所で、安藤の悲鳴を聞いたらしい。

 そうしてこの場の六人が旧校舎に揃った。


「俺は新藤。こっちは……」


「ちょっと、物みたいに言わないでよ」


 抗議するような視線をヒイロにだけギラリを向けると、メオンは精巧な笑顔の仮面をかぶるように美少女スマイルを作って自己紹介をしてみせた。


「私は広院寺メオンよ。よろしくね」


 スカートの裾を抑えてヒイロの側に座り込んだまま小さく頭を下げる。

 それだけでキラキラと背景に星でも見せそうなものだった。


 ヒイロは学園のアイドルとしての片鱗を見た気がした。

 その二つ名は伊達ではないということだろう。


 ヒイロには全くそんな様子は見せてこなかったものだが、やっぱりメオンは美少女だった。


「C組の安藤だ。よろしく!」


「同じくC組の大村です」


 ヒイロにはいつも喧嘩上等のしかめっ面を向けてくる安藤も、メオンが相手では鼻を伸ばしたアホ面になる。

 となりの大村も似たようなバカ面だった。


「……これで全員なのか?」


 一通りの自己紹介を終え、山内が誰に問いかけるわけでもなしに呟いた。


 旧校舎はこの教室に集まる前に全員で見て回ったが、他に誰も居なかった。


「違う。少なくともあと一人、私の友達がいるの……でも……」


 トンボの化け物にさらわれたチヨコの事をメオンが説明した。

 今すぐにでも探したいが、どこを探すべきか迷っている事も。


「俺とチェコは部室棟とかグラウンド、あと校舎の外は見て回ったけど、誰も居なかった。バカでかいトンボも見てないよな?」


「イエスね。キャタピラーしか見てないよ。それとリトルスパイダー!」


「俺たちも、あの蜘蛛野郎しか見てねぇな。そもそも旧校舎から出てねぇし」


 山内とチェコ、そして安藤達もチヨコを探す手がかりを持ってはいなかった。


「そうなんだ……私たちは本校舎にいたけど、まだ全部は見れてないわ。一階は芋虫だらけでとても確認できないけど、誰かいれば悲鳴の一つでも聞こえたハズだし……たぶん人は居ないと思うの」


「そうだな。恐らくは水場だと思うんだけど、池なんてないし……」


 ヒイロのヒントに反応したのは大村だった。


「……あっ」


「大村、どうした?」


 安藤が聞くと、大村は自信なさそうに指を合わせる。


「水場なら、あるかも」


 その言葉にメオンが立ち上がった。


「……本当? どこ!?」


 問い詰める様に接近するメオンに顔を真っ赤にして逸らしながら、大村は答える。


「えっと、プール……確か、体育館の上、屋上にあったよね?」

2017/3/4  更新しました、さらに仲間が増えました。


ご感想ご指摘ご要望、お好みの失禁シチュエーションはいつでもお待ちしております。

よろしくおねがいします。

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