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21:委員長救出作戦

「……っくちゅん!」


「これ、着てろ」


 メオンが何度目かのクシャミをした時、ヒイロが真っ白なパーカーを差し出してきた。

 本人も虫の体液に染まって青くなったパーカーからいつもの白いパーカーへ着替えている。


 足元にはヒイロのカバンが口を開けていた。

 中には白いパーカーが詰まっている。


「!? な、なんでこんなにパーカーいくつも持ち歩いてるのよ……?」


「え? 普通だろ」


(普通なの!?)


 二人は元居た教室から離れた教室に移動してきた。


 1ーD。


 さきほどと同じ階の、反対の端に位置する部屋だ。

 一階が芋虫だらけだったことや、窓からの侵入があったことから、虫たちは外に、あるいは地表にいることを考え、下の階への移動はしなかった。


 教室の中は寒かった。

 元の世界では夏休みに入ろうかという時期。暑苦しいはずの世界が、今は冬の始まりのような冷たさに包まれている。


「アンタ、良くそんな恰好で居れたわね。熱くないわけ?」


「ここに来る前はもっと熱い国にいたせいかな。パーカー着てないと寒いくらいだったけど」


「ふーん、ヘンなの」


 他にも色々と理由はあるが、説明するのは面倒だったのでやめておいた。


 制服の上に白いパーカーというおそろいの格好で二人は向かいあう。


「……で、どうすんのだ?」


「どうって、チヨコを助けるのよ! 決まってるでしょ」


 即答だった。


「わかってる。そのためにどうするかって話だ」


 トンボ型の巨大生物にさらわれたチヨコの救出が最優先事項だ。

 分かってはいるが、ではどうするべきか。

 それが問題だ。


「あのトンボを探しだすのよ!」


「どうやって?」


「どうもこうもないわよ! とにかく探す! アンタ、トンボマニアなんでしょ? トンボの居そうな場所くらいわかんないワケ!?」


「都合よく人のキャラを変えるな。俺はトンボマニアじゃねぇ」


「何よ、文句ばっかり。だったら、アンタこそ何か良い案はないのかしら?」


「……それを今、考えてるんだろうが」


 ヒイロにもチヨコを見つけ出すための有効な手段が思い当たらない。

 あのトンボの住処を探すのが一番手っ取り早いとは思うが、それが簡単にできるならこうして苦労して頭をフル回転させてなどいない。


「トンボといえば、確か水場に住んでたハズだが……」


 トンボの幼体はヤゴという水生の昆虫だ。

 羽も成体になってから生えるもので、幼体にはない。


 本来のトンボと同じ生態をしているならば、あのトンボも水辺に住処をもつハズではある。


「水場って、川とか池ってこと?」


「まぁ、そうだな。あとは田んぼとかにもいたような……この学校の近くで何かあるか?」


 メオンは考える仕草もみせず、ツラツラと候補をあげていく。

 地元の人間だけあってすぐに知識が出てくるようだ。


「学校から一番近いのは鹿角池ね。鹿の角みたいに伸びたヘンな形の池なの。結構広いから、デカイ化け物でも住めそうだわ。次に近いのは真宵川っていう町の中心の川だけど、これも大きな川だし……田んぼはないわね。昔はいっぱいあったみたいだけど……」


「その二つは近いのか?」


「いいえ、真逆の方向になるわ」


「真逆か……そう都合よくはいかないな。方向は分かるのか?」


「そうね、大体の方角なら……」


「よし、ちょっと待ってろ」


 そういってヒイロは慎重に窓際に向かう。

 ゆっくりと窓の外を覗き込み、化け物の影がないことを確認してからメオンに手招きをした。


「あのトンボ、真上に逃げた気がするが、方向的にはこっちだったハズだ」


 トンボが飛び去ったと思われる方向を見て、指をさす。

 メオンは頷いた。


「こっちにあるのは真宵川ね」


「じゃあ、決まりだな」


「えぇ。行ってみましょう。はやく助けなきゃ……!」


「まて、落ち着け」


 さっそく扉へ向かうメオンの腕をつかんで引き留める。


「ななななによ、離しなさいよ変態!?」


 すごい勢いで振りほどかれた。

 ちょっとだけ傷つく。


「どうやっていく気だ?」


 校舎の出口は一階にある。

 しかし、その一階は異常な虫の群れに覆われている。

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