17:メオンの異変
「とにかく! これでこいつらを倒すのよ!!」
二刀流のように大天使の栄光を構えて、メオンが吠えた。
もちろん涙目になりながら。
「……分けわかんねぇけど、この数相手だ。とにかく使わせてもらうしかねーな。説明しろよ、後で良いから」
「そうですよメオンちゃん、後でちゃんお説明してもらいますからね! そもそもこの神器は……」
「良いから戦いなさいよぉ!」
状況は不可思議極まりないものだったが、武器としての性能は疑いようのないほどに本物だった。
ヒイロが先に手に取った最も刀身の長い一本を、チヨコは脇差ほどの長さの、最も短い剣を二刀流にして、それぞれ動き出した。
「よし、一気に片付けるぞ!」
「えぇ、メオンちゃんのこの神器があれば……!」
身の丈ほどの長剣を器用に振り回し、ヒイロが縦横無尽に教室内をかける。
まともな武器をもたずとも常識外れだったその戦闘能力は、デタラメな切れ味を持つ神器によって倍増し、ヒイロ一人でも全ての芋虫達を屠れそうなほどだった。
真っ白だったパーカーが、おびただしい返り血で青く染まっていく。
その背中を追うように、チヨコも一対の短剣を振るった。
ヒイロの流麗な動きと比べると、太刀筋としては滅茶苦茶ではある。
それでも手にした刃の異様な切れ味のおかげで戦力としては十分だ。
二人に負けじとメオンも、二人が選んだ剣のちょうど中間くらいの長さの剣を構える。
「……んはぅ!?」
そして一人、内股になって立ち止まった。
歩けない。
前に進めない。
メオン自身に目覚めた力、黒き歴史の刀鍛冶で何もないはずの空間から神の威光を纏う剣を生み出したその瞬間に感じたものと同じ感覚が、再びメオンの体を舐めるように這いあがってきたのだ。
メオンが戦おうとする意思に共鳴するかのように、ぶるりと背中が震え、下半身に力が入る。
いや、入れなければならない事を悟ってしまう。
「どうした!?」
「メオンちゃん!?」
メオンの小さな悲鳴を聞き逃さなかった二人が振り返った。
その表情は焦りと戸惑いが混じり合ったような、つまりはメオンを心配している顔だった。
「だ、大丈夫だから! ……戦って!」
再びメオンに駆け寄ろうとする二人を、メオンは言葉だけで制した。
足がガクガクと震えた。
立っているだけで精一杯だ。
状況は、かなり危険だとは分かっている。
今、自分の体におこっている異変の正体は、すでに理解できているのだ。
だが言えない。言えるわけがない。
こんな状況の中、尿意がヤバイなど、絶対に言えるわけがないのだった。
2016/10/21 短いですが、重要なシーンなので更新しました。
2016/11/14 次話更新しました。事件発生!
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