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16:六枚の羽根

「なんだ、この光……?」


「メ、メオンちゃん!?」


 ヒイロのチヨコが戸惑いの声を上げるのを、メオンはどこか遠く聞いていた。


「これって……」


 ペタンとしりもちを着いたままの格好の、メオンのスカートを透かすほどの光が、ポケットからあふれ出ていた。

 メオンは、まるでそうすることが必然であるかのように、生徒手帳を取り出して、ページをめくった。

 何もなかったはずの二ページ目に、デジタルの文字が浮かんでいる。


『 旅人達のアクセスを確認しました。


  貴方の能力を解放してください。 』


「なにこれ、旅人……? 能力……?」


 メオンがその文字を確認すると、それを待っていたかのように画面が切り替わる。

 次に現れた短い文字は、けれどメオンの心の奥底を揺さぶった。


『 能力解放 』


 点滅する四文字に、メオンの中の得体の知れない直感が働いた。

 急かすような明滅に導かれるように、指先がその画面に触れる。


 瞬間、ビクンとメオンの背筋が跳ねた。

 今まで感じたことのない不思議な何かがメオンの体を駆け抜けたのだ。

 そして衝撃のあとに、余韻のように残ったのは、何とも言えない確信だった。


「これが私の能力……」


 呟く言葉と共に、虚空から現れた六本の剣達が、メオンの周囲を守るようにして教室の床に突き刺さった。


 生徒手帳の画面には、メオンの脳裏に浮かぶものと同じ言葉が映されていた。


「……私の能力、黒き歴史の刀鍛冶ダークパストブレイドスミス


 真っ白な色を基調とした六本の剣は、その二本ずつが対になっており、それぞれがシンメトリーな造形をしていた。

 三種類の剣はそのどれもが細く施された装飾をまとっており、まるで羽のようにも見える。


「……これは、剣なの? いったいどこから……」


 どこでもない。強いて言うならば脳だ。

 さらに正しく言えば、記憶である。

 メオンの中にある特殊な記憶がそれを生み出したのだ。


 メオンの体がぶるりと震えた。

 なぜかは分からないが、理解できている。


 そうだ、これが私の力なのだ、と。


 メオンは立ち上がり、一本の剣を手に取った。

 深く床に刺さっていた事すら気づかせないように抵抗なく、あっさりと床から抜ける。

 羽毛のように軽いが、その感触は夢でも幻でもない。

 本物の剣だ。 


「おい、なんだこれ? どうなってんだ?」


「メオンちゃん、これって……」


 突然の出来事に、二人がメオンの側へと駆け寄ってきた。


「ごめん、私にも良く分からないけど、とにかくこれは私の力よ! 二人とも、使って!」


「うぉ!? 軽いな、剣か……」


 三種類の内、もっとも刀身の長い剣を手にしたヒイロが、迫ってきていた芋虫の体に向けてその剣先を迷わず走らせた。


 芋虫の体はいともたやすく分断された。


「うおぉ!? な、なんだこの切れ味は……!?」


 その切れ味にヒイロも驚いた。

 そこまで力を入れていたわけでもない、牽制気味の一振りだったのだが、芋虫へのダメージはそんな次元ではないものとなった。

 その手ごたえはまるで豆腐かなにかに包丁を落としような、あまりにあっけないものだった。


「……こ、これってまさか! あの神器、『ギフト』シリーズの一つ……?」


「…………え?」


 そして、自ら生み出した武器のクオリティに満足気な顔をしていたメオンの表情は、チヨコの言葉によって固まった。


「委員長、この剣を知ってるのか?」


「知っているも何も、むしろ新藤君は知らないんですか? この聖なる剣の名は……」


 メオンはこの剣を知っている。

 そしてそれをチヨコが知っている事も分かっていた。

 だが、まさか覚えているとは思っていなかった。


「ちょ、待って! チヨコ、これは違っ……」


 それ以上いけない。

 止めようとしたメオンより早く、チヨコはなぜか得意げな顔でその名を唱えた。


大天使の栄光セクステット・オブ・ライト!!」


 大正解である。

 それがこの六本の剣の名前である。

 そしてメオンが付けた名前でもある。


「……え? 何?」


「うわああああああん!!」


 恥ずかしさで顔から火が出るかと思った。

 だがそんなメオンの様子に気づいていないらしいチヨコは、興奮気味に言葉を続ける。


「本当に知らないんですか? 無知にもほどがありますね。かつて神話の戦いの中、悪魔たちの軍勢に追い込まれた幼い天使たちが生み出したと言われる聖なる剣。大天使の証である六枚の翼のように、天使達の光の力が悪を滅する六枚の刃となったという伝説の神器ですよ!」


「えっ? ちょっと待って、えぇ??」


「そうですよね? メオンちゃん!」


「分かったからもう止めてぇぇぇっ!!」


 メオンが泣き崩れた。


 全て正解だった。

 その通りだった。

 それが、メオンが考えたこの剣の設定なのだ。


 中学生時代に、趣味で行っていた創作。

 恥ずかしすぎてもう忘れたいと思っていた黒歴史。

 その中に登場する架空の神話。架空の武器。


 それこそがこの剣の正体であり、メオンの力の正体でもあった。


 黒き歴史の刀鍛冶ダークパストブレイドスミス


 メオンに目覚めたその力は、メオンの黒歴史の中の武器を実体化する力である。

2016/10/16 戦闘&厨二! 書きたかった所まで書いたので続きは次回。


2016/10/21 次話更新しました。重要シーンなので。


ご感想ご指摘ご要望、お好みの失禁シチュエーションはいつでもお待ちしております。

よろしくおねがいします。

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