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13:生徒手帳

「これ、私のだ……」


 表紙にの隅に張られた小さな星マークには見覚えがあった。

 お気に入りの髪留と同じメオンが好んでいるマークだ。

 だからこそ、メオンは首を傾げて固まった。

 自分の生徒手帳なら、ケータイと一緒にスカートのポケットに入れて持ち歩いているハズだったからだ。


「あれ? 私の生徒手帳ならココに、ってない!? あれ、なんで……!?」


 メオンが慌ててスカートのポケットをひっくり返すが、今は通じないケータイしか出てこない。


「俺もないな。生徒手帳……」


 その様子にヒイロも自分のポケットを探ってみると、いつも生徒手帳を入れているハズの胸ポケットは空っぽだった。

 学校の近くにある良く行く定食屋で学割が効くため、学生証を兼ねている生徒手帳は忘れないように常に胸ポケットに入れていたハズだが、確かになくなっている。

 落とすような場所でもないハズだ。


「もしかして、委員長もか?」


「えぇ、そのようですね……」


 チヨコも同じようだった。

 三人とも、生徒手帳は普段から持ち歩いていたが、いつの間にか無くしていたようだ。

 混乱もあってか、今まで誰も気付いていなかったらしい。


「あれ、でもこれ……なんかヘンだわ」


 受けとった生徒手帳を開いて、メオンが顔をしかめた。

 他の二人にも見せるように、手帳を開きなおして見せる。


 大きく「真宵ヶ丘高等学校生徒手帳」と書かれた表紙をめくると、一ページ目が学生証の代わりになっている。

 表紙の裏には校訓である三心「訓戒」「賛美」「許容」の文字が並び、その横には顔写真付きで持ち主の名前と学園が記されている。


 一学年 A組 広院寺 芽音


 写真に写っているのは紛れもなくメオンの姿だ。

 名前と学園、クラスも間違いない。


 ここまでは通常通りだ。だが、それだけだった。


 その先に続くページがないのだ。

 めくれるのはどことなく金属質な感触の分厚い厚紙のような一ページだけで、その先に続いているハズの禁足事項や年間スケジュールなどは全てなくなっている。


「何よこれ、こんなの見たことないわよ」


「確かに、見たことないですね。生徒手帳が急に変わるなんてありえませんし……」


「ってことは、これもこの異常の一種ってワケか」


「はい、恐らくは……」


 そのまま三人は顔を見合わせた。

 変質した生徒手帳は危険なものには見えないが、どうしたものか悩ましい。

 持っていた方が良いのだろうか、答えが出なかったのだ。


「チヨコ、これ、どこにあったの?」


「えっと、メオンちゃんの席の上に置かれてました」


 ヒイロとメオンがここに来る前に、チヨコが先に見つけていたらしい。


「つーか、委員長はなんでこの教室に来たんだ? 俺たちの教室は隣だぜ」


「自分の教室に戻ったら誰もいなかったから、となりのココを見に来たのよ。そしたら窓が割れる音がして、入口からあの虫が入ってきたから……」


 それがヒイロ達が悲鳴を聞いたタイミングだったというわけだ。


「……ってことは、チヨコは自分の机は確認してないのかしら?」


「あ、そうだね。うん。誰もいなくて不気味だったから、教室にも入ってないの」


 チヨコのその答えに、ヒイロもメオンが何を言いたかったのかが理解できた。


「なるほどね。だったら、自分たちの机は調べる価値ありそうだな」


 メオンと同じ生徒手帳が、二人の机にもあるかも知れないと予感したのだ。


「行ってみましょう」


「そうですね」


「おう」


 廊下には虫の気配はなく、三人はガラス片を踏まないように気を付けながら、出来るだけ静かに隣のクラスへと移動した。


 隣のクラスには「1ーB」の室名札が掛かっている。ヒイロとチヨコのクラスだ。


「いいか? 行くぞ……」


 ヒイロが先頭に立ち、ゆっくりと教室の扉を開いていく。


「……よし、大丈夫そうだ」


 小さ隙間から覗いた室内にも、虫の気配はなかった。


「……やっぱりあったな。確かに、俺の生徒手帳だ」


 表面に汚れが目立つその手帳は確かにヒイロの物だった。

 メオンと同じように、自分の机の上に置かれている。


「私のもありました」


 チヨコも自分の机から拾い上げ、それを二人に見せる。

 傷一つない綺麗な手帳だ。


「内容も同じみたいね」


 三人でお互いの手帳を見比べてみたが、中身は同じだ。

 表紙の次には一ページしかめくれず、中身は校訓と学生証だけ。

 その先は空白だ。


「とりあえず、持ってた方が良いのかしら?」


「委員長、伝承にはないかないのか? 生徒手帳がパワーアップするとか」


「えぇ、そんな話はなかったと思いますが……。そもそも生徒手帳なんて話に出てきませんし」


 どうやら伝承にはヒントなしらしい。

 ヒイロは何げなく、手帳をいつもの胸ポケットに直しこんでみる。

 ピッタリだ。大きさや厚さは変わっていないらしい。


 それを見て、メオンとチヨコも手帳をスカートのポケットに仕舞いこんだ。

 危険ではなさそうではあるし、何か必要になる事があるかもしれないという予感があった。


「あぁ、そういえばパワーアップと言えば……」


 何かを言いかけたチヨコを遮って、ガラスが割れる音が響いた。

2016/10/11 説明回でしたが、ひとまず更新しました。次回の更新は戦闘シーン盛りだくさんでお送りいたします。


2016/10/16 次話更新しました。戦闘、開始!!


ご感想ご指摘ご要望、お好みの失禁シチュエーションはいつでもお待ちしております。

よろしくおねがいします。

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