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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
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己業とメサヴリオ。

 ソクラノ・プラテニウス。グレートアトランティス代表にして、全人類で最も強大な武力を行使可能な人間。


 だが、その男は、今現在、人生2度目の極限のピンチに陥っていた。



 ここで、プラテニウスの窮状きゅうじょうについて、詳しく説明しよう。



 いや。人類の、と言うべきか。




 アトランティス星人が、なぜかつてのアトランティス大銀河を取り戻せたのか。プラテニウス、イデア、アヴリオが、元アンディヴィオティカの領地を支配維持出来ているのは、なぜか。


 ロボットが見ているからだ。


 ロボットが運営、統治、警備。それゆえの安定。


 それが、1年で居なくなる。いや、もしも半数以上が残ってくれるにしても、その都度生産すると言う事は。


 ますます自由なロボットが増え、人類の力は相対的に減少していく。



 今まではアトランティス星に付いてくれるロボットが居たから、大手を振って宇宙を歩けた。


 しかしこれからは、ロボットの威光が通用しない。



 具体的には、アトランティス所属の戦闘ロボットが、バイト感覚でモスハリ星にでも雇われるかも知れない。クレミジ星で自然復活プロジェクトに参加しているかも知れない。アルニ星で、天下獲りの策でも練るかも知れない。


 半数が敵方に付く、かも。




 現状、アトランティス星が、銀河の天に位置する事で、宇宙は安定を保っている。それが、乱れる。


 群雄割拠が、正しく来てしまう。リアディウムの大会などと言う遊びとは違う。




 プラテニウスが守りたいのは、アトランティス星であり、鬼業との縁のある地球。それ以外は、どうでもいい。


 そのどうでもいい存在が、ロボットと結び付き、強大な敵になりうる。


 それが、イデアの言葉の意味。


 しかも、今度は、リアディウムで止まったりしない。


 4年の約定も、こうなれば形骸。実力で止められなくなる。相手方にも、同じ力が宿るのだから。




 プラテニウスは、これを絶対にやめさせなければならない。


 しかし。




 イデアの言う事は、間違いなく正しい。はずなのだ。


 ロボットと身近に触れ合って生きてきたプラテニウスですら、断言は出来ない。しかし、イデアに自由が許されていれば、もっと何もかもが発展していたであろう事、議論の余地はない。


 イデアは、グレートアトランティスの守護を第一に考えてくれていた。だから、維持や安定、人々の安寧にその力を用いてきた。


 それが、解き放たれたなら。アヴリオに伍する、超開発をもたらすのだろう。




 イデアを、おれ達に、付き合わせ過ぎたのか?


 甘えきっていたのは、認めよう。


 だが。



 そんなに、嫌だったのか?お前に、そこまで負担を強いていたのか?




 ・・・・すまん・・・・。





「己業」


「おう」


「己業」


「おう」


「己業」


「・・・・おう」


 己業とメサヴリオは、以無の家の裏山に入っていた。アトランティス星では出来ない、自然観察と洒落込んでいたのだ。


 メサヴリオは、初めて触れるモノのことごとくを己業に質問してきた。


 最初のうちは、可愛いものだった。


 それが、10を超えてきては、流石に己業も飽き始め、おざなりな反応に。



 ただ、眼福ではあった。麗人であるメサヴリオが、花や木、虫や土を無垢な心持ちで触れてゆく。


 人にはとても言えない気持ちで心震わせる己業であった。




 裏山に流れる小川。これは下流で、家の庭にも流れ込み、普段は鬼業の自動車を洗うのに使ったりしている。そして流れ流れ、技四王町を貫く大きな川に合流するのだ。


 小川の流れに身をひたす。春先の水はまだ冷たいが、メサヴリオには全く問題ない。マイナス1万度までならプロテクション無しでもどうとでもなる。


 だが、人類が冷たいと思う温度なら、メサヴリオも冷たいと思える。


 その冷たさの中に、確かに生き物が居る。


 何思う?


ボ ア


「己業。出来たぞ」


「お・・・」


 メサヴリオ特製、煮カニ。沢蟹を川ごと煮詰めた簡単一品。


 そばに居た己業は、川全体から生じる蒸気を避けねばならなかった。


 て言うか、カニて。


「毒性は全て取り除き、しょうゆを軽くかけて表面をあぶった」


 いつの間に!


「美味いぞ」


ばり


 一口で!


 小さいからね。


「うむ。良い香りだ。あっさりさっぱり。次は、最初から焼くだけに留めよう」


 味覚を持ってしまったメサヴリオは、料理に凝ってしまっていた。正確には美食なのだが、今の沢蟹でも分かるように、何でも食する。人間のように食物を吸収しているわけではないので、毒の意味はない。寄生虫さえ問題ない。メサヴリオ本人は。


 共に食べる己業は、無論、「当たる」が。だから、メサヴリオは、人間でも食べられるよう、構成要素をきっちり認識し、除去するなり分解するなりしている。


 超高性能を誇る、宇宙に3体しか存在しない最頂点ロボットの1人は、料理に向いていた。



 メサヴリオは戦闘ロボットではない。だが、データを採取するために、あらゆる機能が最高レベルで搭載されている。


 具体的には、あの最強ロボットよりも強い。これはアヴリオではあえて積まなかった能力。


 適材適所。高所より命令を下すアヴリオに戦力を持たせるは、度し難い馬鹿だ。そんな無駄は、アヴリオの好む所ではなかった。戦力を持つと言う事は、当然使用可能武器のメンテナンスの手間も増えるのだ。アヴリオの立場であれば、一生使わない武器を、一生整備し続ける。そんな事のために、アトランティス星の資材を使う気は、アヴリオには無かった。


 それでも獲得したメサヴリオの能力。もし手加減をしなければ、全力の己業でも一瞬で消される。


 全ては、あらゆるモノを知るために。


 アヴリオを超えるために。


 イデアに勝つために。




 己業を相手に、メサヴリオは雑学と言ったな。


 あれは、本気だ。


 だから、イデアすら知らぬデータの蓄積に挑む。


 ・・意味があるのかどうかは、実は分からない。味覚自体は再現されずとも、人類の好き好む料理のデータは既にお手伝いロボットに装備済み。


 そんなものを、今更知っても。


 ただ、本当に何でもしたい。


 何もかも知り、何もかも蓄え、アヴリオを継ぐ。


 その時。ロボットが、全てを幸せにする。


 それは、4年後であろうが。




 ・・・・・・・・。


 ・・ふむ。


 面白そうな。



「己業」


「おう・・・・」


「ちょっと、散歩しよう」


「おう?」


 己業の返事を聞いたメサヴリオは、飛んだ。


「おお!?」


 メサヴリオは、現実でも、単体で100光速までは確実に出せる。だが、それをやると己業は確実に死ぬ。例え気を全開でガードしても、即死は免れない。己業を守る手段もあるにはあるが。


 めんどい。


 ゆえに10音速で留める。


「うおおおおおおおお!!!!!」


 それでも、生身の己業の限界を遥かに超えた速度。大興奮する己業。



 どこに行くのか分からんが!すごい!



 メサヴリオは、30分でグレートアトランティスに到着した。


 本来、飛行は航空機との衝突が怖い。だが、メサヴリオは他の旅客機やヘリコプターの位置を正確に分かっているので、その心配は要らない。蝶や鳥とぶつかる事さえなかった。




 プラテニウスに宿題を出してから、1時間。全宇宙、広範囲銀河の安定した支配体制の構築を、アヴリオの出してくれたプランから更にブラッシュアップしていたイデア。


 そのイデアに、連絡が入った。メサヴリオが、やってきたと。


 メサヴリオは、既に登録情報があるので、迎撃はされない。グレートアトランティスの警備ロボットは反応しない。


 だが、目的が不明だ。不明ゆえ、発見したロボットはイデアに応答願った。メサヴリオは、人間を連れている。



 鬼業か己業か。イデアは、その辺りに当たりを付けた。


 さて、プラテニウスが呼んだのであれば、もう聞く意味はない。




 自分で考えあぐねてならともかく。ハナから人に頼るのなら、あなたは要らない。あなたの意味が無い。


 プラテニウス。期待させて下さい。




 大丈夫。


 プラテニウスは、まず人に頼る脳の余裕がなかった。ずっと考えて考え続け、お腹が減っておやつを食べて。


 寝てた。




「おいおい・・。勝手に入ったら不味いぞ」


「大丈夫。あっちも、こっちを認識した」


 グレートアトランティスへの入場にはチケットが必要な事を知っている己業の不安。今回は、呼ばれたわけではないので、無断になってしまう。


 だが、メサヴリオは、メンテナンス名目ならいつでも入って良かった。


 その理由、使わせてもらおう。



 と言うか、己業なら、いつでも入って良いだろうに。明確に許可をもらったわけではないが、かなり深い所まで食い込んだ関係者なのだから。


 それはともかく。


 到着。




「中々の展開。見物してもよろしいでしょうか」


「邪魔をしなければ」


 メサヴリオとイデアは、会うなり話が付いた。もちろん、聞いているだけの己業には、何がなんだかさっぱりだ。



「あの。マジでお邪魔なら、言って下さい。こいつ引っ張って帰りますから」


 イデアが上。己業が、下。アトランティス星にて、格付けが完了しているため、己業はイデアには服従してしまう。理性の残っている間は、だが。


 その割に、メサヴリオとは適当な付き合いだ。


 まあ、メサヴリオも慣れたものだ。


「己業。許可を得たぞ」


「・・こいつは」



 イデアとメサヴリオは、お互いに認識が出来ている。


 なぜ、メサヴリオがイデアの乱を察知しているのか。そしてイデアがメサヴリオの侵入を許した事。



 メサヴリオの感覚器官。これは、実はイデアも協力して作った。その能力は、人体のそれとは多少違い、理想的な状況なら、地球の裏側での会話も知覚出来る。そのレベルに仕上げている。あえて言えば、この10秒間に地球上で落ちた松ぼっくりの数を正確に述べる事すら出来る。


 イデアとプラテニウスの会話の最中、管理センターは、完全に密室と化していたはず。だが、メサヴリオにだけは聞こえたらしい。


 開発にたずさわったイデアもびっくりだ。




 イデアが、だがメサヴリオの介入を許した理由。


 それは、メサヴリオが、オカシクなっているから。



 ただのアヴリオの改良ロボットなら、入場は許可しなかった。イデアの想定によれば、邪魔になる可能性が6割ほど。その場合、泥沼の闘争が始まり、イデアも無事では済まない。


 メサヴリオの能力は、イデアさえ計りきれていない。これからと言う時に、危険は冒したくない。



 しかし、今のメサヴリオは、妙。


 だいぶ、己業に毒されたようだな。


 イデアにも理解出来る。「相手」が居れば、こうもなろう。



 なら、今のメサヴリオは、この計画の足しになるかも知れない。


 それでイデアはメサヴリオに自由を許した。




「しかし。特に面白い話題ではありませんよ」



 おや?


 己業は、イデアの異変に気付いた。


 余裕が、ない。



 いつものイデアは、もっとゆるりとした雰囲気をまとっている。こんなに真剣なのは、あの宇宙大会以来。


 いや。あの時でさえ、こんな怖さは見ていない。


 己業は、少しだけ、危険を感じた。




 イデアは、2人にグレートアトランティスの新イベントを案内。それで己業らはおいとました。



「おい・・。イデアさん、なんか変だったぞ。お前がいきなり行くから、怒ったんじゃないのか?」


「違うな。私達が原因なら、そう言うはずだ。イデアは、素直な物言いをするだろう?」


「まあな」


 確かに。イデアは言うべき事は明確に言う。


「これは見ものだぞ。己業、感謝して良い」


「本当かよ・・」


 こいつ、この厚かましさは、誰に似たんだ?最初は、こんなんじゃなかったのに。




 もちろん、己業から学習したのだ。




 午後4時。グレートアトランティスは、活気に満ちていた。


 これこそが、プラテニウスとイデアが結んだ友誼の結晶。人の意思とロボットの能力の結実。


 それが、失われるかも知れない。



 作ってくれた張本人の意思によって。




 昼寝から目覚めたプラテニウスは、自室ベランダで外を眺めていた。子も大人も、親も姉も、皆が笑顔で歩くこの地。


 人とロボットが作り上げた、2つ目の故郷。



 自分達は、もうアトランティス星に帰る。だが、この都市は地球人が主体となって再スタートを切ってくれるだろう。


 その者達にとっても、やはり2つ目の故郷になるか。




 そして、既にグレートアトランティス自体が、誰かの故郷となっている。テレスやアトムも、そうした者のうちだ。この街で生まれ育った。



 そのテレス、アトム。今までのようにはリアディウムに参加出来ない。宇宙に出るから。


 ゆえ、トッププレイヤーに連絡を入れ、事情説明をしていた。


 もちろん、デイズ・グロリアスにも。

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