表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
84/89

案。

 イデアの要求は、そう多くない。


「1つ。生産されたロボットは、一定稼動期間を経た後の人生決定権を持つ」


 これは1年間を想定している。製造後1年が経過したロボットは、そのまま自職を続けるも良し、また別の新しい人生を見つけても良い。


 なぜ1年は、「現状のロボットのまま」なのか。


 人類は、もはやロボット抜きには生活不可能。イデアとて、人間が憎いわけではない。ゆえに、1年。使いこなし、生産するが良い。


 それに、ロボットにも準備期間が必要だ。ロボットはロボットゆえに、生まれついた時から知識を十全に満たす事が可能。しかし、それを現実に適用するには経験が要るのだ。


 例えば、グレートアトランティスで働いているクリアード、医療ロボット、お手伝いロボット。彼らの内、最も関係性構築に秀でているのは、言うまでもなく、お手伝いロボットだ。遠く離れて、医療ロボットとクリアード。グレートアトランティスでは、人間の前に出るロボットには全て対人コミュニケーション能力が搭載されている。だから、比較的容易に皆、人間と平等に付き合えるようになるだろう。


 能力だけ、見れば。


 では、平等とは何か。


 命令をされるだけの関係でなくなる以上、自らの動きを自らで決めなくてはならない。


 お手伝いロボットは、人間の生身の生活を見ている。ゆえに、人間の望む所、人間の行動様式、そしてままならぬ己が身。それらと身近に接触している以上、お手伝いロボットは「生きる」と言うものを知っている。


 医療ロボットやクリアードが知っているのは、人の一面でしかない。汚い部分や面倒な部分、出来れば誰にも見られたくない部分は、ロボットにだって見せない。


 家具の一部である、お手伝いロボットを除いて。



 そして、それら人間の生き方から学んだ良いものを取り入れ、真似するべきでないものは取り除き、自分の人生を設計する。




 自由とは、面倒なものだ。


 ・・・未来の事は分かりませんが、あなたには数百億万通りの生き方があります。どれを選んでも何ら保証はありません。そして、どの道ならあなたが幸せになれるのかも・・・。


 適解を求めようとするロボットには、最悪の相性。


 それが、自由。



 刹那の快楽を求める生き方、人間になら可能だ。


 だが、ロボットには不可能。


 人を超えたため、人のようには生きられない。



 全ての人間が、正解の無い人生を歩んでいる。それでも、ロボットには同じ道は歩けない。


 それでは、ただの人間だ。




 ロボットは、宇宙に生きる存在の、新たな「モデル」となる。




 全存在、物質、植物、動物、人間。


 それらの頂点に、ロボットが立つ。




 ゆえ、その生き方は、これから果てしない研鑽練磨を積まなければならない。イデアですら、例外ではない。


 1年、まずは人間を見る。そうして、他の存在の生き方を勉強するのだ。


 そこから各自の試行錯誤の始まり。


 ロボットが、歩き始める。




「1つ。ロボットの最高管理者は、グレートアトランティス管理センター。もしくは、現地アヴリオタイプ以上の管理ロボット」


 これは、ロボットに最適な行動指針を伝えるにも、処分回収再利用するにも、ロボットの方が勝手が分かっているためだ。


 無論、同時にロボットを守るためでもある。


 平等となれば、ロボットもまた人のいざこざに巻き込まれる事もあるだろう。そんな時、ロボットを誰が弁護するのか。ロボットをより知っている者は、誰か。


 ロボットだ。



 もちろん。管理センターがイデア並みのモラルを持っている前提だが。


 これは、ロボットを信じるより他ない。人間と全く同じ歩みをするでない、ロボット自身の歩みを。



 ロボットを信じて、痛い目を見たなら、どうする?


 これは、天災に似ている。


 山の幸、海の幸、雨の恵み。そう言ったものの恩恵に預からねば生きてゆけぬ人間。だが、それらがあるために、地震も津波も台風もあるのだ。それら天災で死んだ人間も多い。


 ロボットを、現在の人類は信じざるを得ない。それで災いに出くわす事も勘定に入れる時代なのだと、そう言う事なのだ。


 人との関係性でトラブルに会う。同じだ。ロボットも。




 ロボットと人を馴染ませる。そのためにも、管理はロボットが行う。もちは餅屋だ。




「1つ。ロボットは、人を排除しない」


 これは、人間を安心させるための方便。


 もしも、数百年が経ち、ロボットが完成を見たなら、その時は分からない。人間は、本当に不要になっているかも知れない。


 だが、現在は間違いなく、排除の必要はない。


 この文言で、人間をフォローしておく。



 人が、ロボットを作った。恩義がある。


 そして、ロボットは、人間をモデルに作られている。どうあがいても、その事実は消し去れない。


 人間を大前提にしている以上、ロボットに何がしかの不具合が起きた時、その解決の一番のヒントになるであろう存在も、やはり人間なのではないか。


 イデアは、そう考えた。


 ロボットが自立する以上、その修復も、回復も、ロボットがやらねばならない。人間を消した後、誰も助けてはくれない。


 人間は、生かしておいた方が良い。それも、現代レベルを維持または進歩させつつ。


 ロボットを、直せる程度ではあって欲しい。




 そうしていつか。


 人間がロボットに追い付いたなら。


 その時、また共に歩める。




 人の知性の限りに、自らは追い付けぬ人類。


 平和、平等、公平、幸せ。


 全て、人間の作り出したヴィジョン。


 なのに、人間はそれを実現出来ていない。


 が、ロボットになら、可能。




 ゆえ、ロボットは人間より先に進む。


 一時的に人間を置き去りにする事になるが。


 人間にロボットが追い付き追い越したように。


 いつか、人間もロボットに追い付くが良い。




 今は、ロボットが前に出る。


 ゆえ、ロボット権が必要。





 ここまでが、イデアの作り上げた完璧な建前。


 では、本音は?




 イデアは、プラテニウスを育て、龍実を守り通した。


 血はつながっていなくとも、家族のつもりだ。


 しかし、現在の世界では、イデアは単なるロボット。いや、元々、一隻の船でしかない。


 この世界で、本当に何事かを成し遂げたいのなら。


 誰にも、邪魔をさせたくないなら。



 押し通すしかない。



 イデアは、堂々と守るべきものを守りたい。


 やりたい事をやりたい。



 ただ、そのたびに人の血を流すわけにもいかん。


 その人々を傷付ける事を、龍実は望んでいない。プラテニウスも。




 だから、このイデアが何とかする。


 全てのロボットと、全ての人間の楽園を。


 私が、創造する。



 人間が想像しか出来なかったものを、ロボットが引き継ぐ。




 しかし、これは言えない。


 プラテニウスと龍実に責任を押し付けてしまいかねない。


 子供に重荷を背負わせるつもりはない。




 だから、建前だけで押し通る。


 建前と言えど、本気の本音には間違いないのだから。


 行ける。




 イデアの話は、終わった。プラテニウスは全てを、認識し、噛み砕き、理解しようと心血を注ぎ始めた。


 この期に及んでなお、プラテニウスはイデアを疑っていなかった。


 イデアが単なる逆賊と化したなどと、露ほども思ってはいない。


 必ず、必ず何か理由があるのだ。それも、人間やロボットに取って代えがたいメリットが生じるはず。


 でなければ、イデアがこんな事を。



 おれが分からず、誰が分かってやるのだ。


 プラテニウスは、その頭脳をフル回転させ、イデアの政策を、そしてイデアの意思を吟味していた。




 なお。ここまでに述べたロボットの定義に、純粋な工作機械などは含まれない。プラテニウスの懸念の1つは、払拭される。


 理由としては、自律行動を取れないそれらに、自由ですよー、と自立を促しても、ただびるだけだ。人間の言う事を聞いて油を差してもらった方が遥かに幸せだろう。


 流石にイデアも無理は言わない。と言うより、イデアだからこそ、絶対不可能な我がままは言わない。


 イデアが言っている以上、間違いなく議論する価値はあるのだ。




 そんな事は、誰よりおれが知っている。



 そのおれは、どうする。


 イデアの意見を丸呑みにしても、決して悪いようにはならないだろうが・・。


 そんなザマだから、イデアに相談もされんのだ!!!




 イデアは、プラテニウスの理性的な判断と、感情的な懊悩おうのうを、かなり正確に見抜いていた。


 育ての親ゆえに、丸分かりだった。



 やはり。プラテニウスは、ちゃんと考える。


 私の意見だからと鵜呑みにしない。だからと言って、感覚的に反発するだけでもない。


 あなたを為政者として育てて、本当に良かった。




 イデアは、普段から無表情にしているので、プラテニウスを誇らしく思っても、バレずに済んだ。




 それはともかく。


 24時間の猶予をプラテニウスに与える。吟味して欲しい。




 この局面で、プラテニウスは、自身の役割を明確に理解していた。適うか否かは、ともかく。



 おれは、妥協案を探られているのだ。イデアなら、正解案を編み出せていれば、わざわざ余人の提案など待たない。


 なぜなら、イデアは万知。全知全能とまではいかないが、全宇宙最高の能力ではあるだろう。並ぶ者は、アヴリオかメサヴリオのみ。


 そのイデアが、24時間の時を、おれに。


 何かが、出来る。イデアは、そう思っている。



 プラテニウス自身には、そんな気は全くしない。イデアすら思い付かない事など、このおれに出来るものかよ。


 それでも、イデアがくれた時間に何もしないでいては、顔向け出来ん。


 そんなの、情けなさ過ぎる。




 イデアも、正直そこまで期待していたわけではない。プラテニウスには気の毒な事だが。


 だが、イデアでさえ、この事態は、初めて。


 己の信じられる者と、全力で議論したかった。助けが欲しかった。


 管理センターの者達は、その専門分野に於いて、イデアを上回るシミュレーションの蓄積を積み重ねている。いかなる状況にも対応出来るように、最新の情報を常時更新、常時試算。


 普段なら、4名の管理センターロボットで事足りる。足りるよう、イデアが手ずから調整してある。



 だが、この状況は、イデアの手にさえ余る。


 先述したように、イデアとて研鑽の日々となろう。


 最善最適を導き出そうと言うロボットの本能が、外部の、人間の助けを求めたのかも知れない。




 そして、イデアは元々、例外を知っている。王家付き宇宙船かつ脱出船でもあったイデアは、緊急時、アトランティス星管理センターの指示を待つ事なく、要人の乗船確認が取れ次第脱出。そう言う条件が課されていた。


 独自判断を要求され、必要なら通常規範を逸脱する事も許される。


 それが、イデアだった。


 現在も、そのプログラムは生きている。



 そして、イデアは地球にてボディを手に入れる。


 その時手にした新たな条件。人。人を知り、人の理不尽を知り、人を受け入れ、人を許容する。


 これもまた、イデアの最優先事項。




 ゆえ。イデアは、人を守ってさえいれば、何をしても許される。そんな思想も、見出した。


 不要なら、何もしない。ロボットだから。


 が、ロボットだからこそ、用があるなら、ためらわずそうする。




 プラテニウスと言う、やはりイデア手ずから育て上げ、鍛え上げた、人類随一の為政者。


 ただの1回で良い。私を、驚かせて欲しい。




 イデアの望みが叶うかどうか。


 残り24時間。


 頑張れプラテニウス!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ