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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
80/89

閉会式。

 綿密に張り巡らされた知略。先に植物や自然現象を見せ付けておいて、ダメージの危険性、恐怖を、アヴリオから取り除いた。そして、最後の実の落下ダメージを与える。


 ・・・・・・・・・・なわけは、ない。


 最初の綿毛や花びらをアヴリオは警戒していなかったのだ。倒す気なら、あそこで行けた。


 イデアの意思による操作だ。結実するかどうかは、ともかく。




「ありがとうございました」


「ありがとうございました」


 2人、ゴーグルを外して、肉声で挨拶を交わす。先ほどまでのやり取りは、ほとんどの観客は気付いていない。当然だが。



 イデアは、確信した。最後の5人目は、ケタが違う。アヴリオに、一切の焦りがない。



「あなたの技は、私に新たな気付きを与えてくれました。感謝します」


「私こそ。あなたとちゃんと戦えたのは、大きな自信になりました」


 アヴリオタイプの知識自体は、アトランティス星に居た頃から知っていた。ただ、その当時から最高峰の能力を持っていた管理センター代表と、当時は歯牙ない一隻の管理コンピュータの我が身。比較するのもおこがましい。


 あの時から、過ごして来た年月。


 無駄では、なかった。



 イデアの手が、少し震えている。


 その程度、隠せる、とアヴリオだって分かる。



 それでも、隠したくない、震えるままの己をそのままに。




 アヴリオは、イデアをまた少し理解した。




 5人目。アヴリオの後と言う事は、アヴリオより強い可能性が高いロボット。見た目は、アヴリオタイプと変わりがない。




 開始!





 イデアの視界が、全て消えた。無に包まれたのだ。


 これは。私が使った技。



 しかも、発動が早く、動きに迷いがない。



 やる。




 が。甘い。




 自分の技を防御出来ないと、本気で思ったのか?



オ オ


 無なる世界に、光が溢れる。イデアを核とし、宇宙に光が満ちる。星が煌き、銀河が鼓動する。


 敵アヴリオタイプは、宇宙の誕生に巻き込まれ、消失した。


 決着。




「ありがとうございました」


「ありがとうございました」



 勝利は、した。



 しかし・・・。見極め、られなかった。イデアの認識能力を以ってしても、通常のアヴリオタイプよりは高性能であるとしか分からない。


 何者だったのだ。




 アヴリオは、その5人目に確認を取った。


 今回は、アヴリオの後継機であるメサヴリオの慣らしを兼ねていた。いきなり全開で動かすと、どんな不具合が出るか分からない。ゆえに、能力の1パーセント以下での試合を命じていたが。




おおおおおおおおおおおおおおおおおお




 会場が、吼えている。宇宙の覇者が、今、決定したのだ。



 その会場の喧騒に騒がず慌てず、アヴリオはメサヴリオに聞いた。


「どうでした?私も初めて出会ったロボットでしたが」


「はい。強いロボットでした。ですが、アヴリオの能力ならば、勝てない相手とも思いませんでしたが」


「かも、知れません」



 鬼業チーム、己業チームの大喜びの様を眺めながら、2人はお喋りに興じる。


 人間なら、お先真っ暗で落ち込んでいる場面なのだろうが。ロボットであるアヴリオらに、無駄な葛藤は無い。


 全試合が終了した以上、大会を綺麗に締めくくる場面、ロボットは確実にそれをこなす。その己に、自負があるのみ。



「この後、後始末を私がこなします。見学していて下さいね」


「はい」


「あ、もし興味があるなら、地球人と交流してきても構いませんよ」


「はい」



 メサヴリオは、1人の人間を探した。


 この会場で最も狂っている男。


 アヴリオに、何らかの影響を与えた男。


 己業を。



 興味がある。会話を許可されたので、話してみよう。



「こんにちわ」


「こんにちわ!」


 声をかけると、元気に返された。




 己業は、アヴリオチームの恐らく5人目から話しかけられて、ちょっとびっくりしていた。司会進行のアヴリオタイプから、表彰式の順番を教えてもらっていたので、その関連かと思ったが。どうやら、雑談のようだ。



「私は、メサヴリオ。あなたに興味があります」


 ちなみに、アヴリオタイプは、どれも美形だ。難点は、皆、同じ顔な事か。


「光栄です」


 己業は、目の前のロボットが良く分からなかった。自分より遥かに強いのだろうとは分かるが、それだけ。アヴリオを差し置いて大将に在ったのだ。本当の実力は、怪物なのだろう。


 なぜ、出さなかったのか。それが、分からない。


 アトランティス星側に取っても、死活問題のはず。そんな事は、流石に己業でも理解している。


 だから。


「おれも、あなたやアヴリオさんに興味があります」


「そうですか」


 表情が動かないメサヴリオ。アヴリオタイプは、表情豊かなはずだが?


 その己業の表情の微妙な変化から、情報を読み取るメサヴリオ。戸惑っているな。理由は不明だが。



 2人は、少し黙って向き合う。



 鬼業らは、大会の進行に加わっているが、己業チームは待機だ。もうすぐ、勝利者挨拶を行う。


 時間は、ちょっとならある。



「メサヴリオさんは、アヴリオさんのお手伝いをされてる方なんですか?」


「はい。私は、次の管理センター代表となります」


「そうなんですか。じゃあ、また会えますね。今度、試合して下さい」


「はい」


 メサヴリオに取って、リアディウムは何の負担にもならない。能力の1パーセントのままで、イデアを除く己業チームに完勝出来る。


 だが、己業にはそうではない。


 アヴリオの準備運動のレベルで、ムミョウは振り落とされている。それで、まだ戦うのか。


 やはり、この男、オカシイ。


「あなたは、なぜ戦うのですか?私になら、勝てると思ったのですか」


「いえ。アヴリオさんの次に出できた人に勝てるとは思ってません。でも、おれはあなたと戦ってない。戦わなければ、面白いかどうか分からない。おれは、あなたを知りたい」


 己業は、限りなく本気だった。


 何のために鍛えているのか。おれは、なぜ以無なのか。


 自分より強い奴と戦うためだ。



 だが。



「あなたの寿命が尽きる前に、私やアヴリオに勝つ事は不可能です」


 と、言う事だ。


「それならそれで。おれは良いですよ」


「そうですか」


 分からない人間だ。




 表彰式、そして、閉会の挨拶が始まる。



「全宇宙リアディウム大会優勝。そして、宇宙の覇権を勝ち取ったのは、地球出身、己業チーム」


 司会のアヴリオタイプの良く通る声が会場に響き渡る。開会式と同じく、全ての星人に届くよう工夫が凝らされている。


 万雷の拍手を受けながら特設舞台に上がる5人。


 両の手を挙げ、イイ笑顔で立つ己業。それを真似る真歩、雪尽。己業の陰になるように立つ滴。飄々(ひょうひょう)としたイデア。


 苦笑しながら見る鬼業。考え込むプラテニウス。胸を張る知明、テレス、アトム。


 他星人には、この後の閉会式後が超重要だ。身を入れて表彰式を見ていたのは、クレミジやドマタなどの一部の者だけだ。



 閉会の挨拶には、鬼業が。



「まずは、お疲れ様だ。皆、気を張り、懸命に戦ってくれた事と思う。今晩はゆっくり休んで欲しい」


 ここから、重要な話が飛び出すかと皆気を付け始めた。


「明日。このアトランティス星と、お前達、アンディヴィオティカの、命運を話し合う。時間は、追って通達する」


 まるで勝利したのは鬼業かのようだが。イデアからの頼みのままに喋っているだけだ。


「今大会に出場した者達全員に参加する資格がある。もし、外交畑の人間を連れて来ているなら、それも良し。だが、この星に来ていない奴はダメだ。今大会の意義を知らなかったのであれば、そのまま知らないままで良い。邪魔だ」


 この大会で何が決まるか、それは全星人に通知したはずだ。その上でこの場に居ない者に物申す資格は、無い。


「来たお前達が、代表だ。おれ達は、お前らを尊重する」


 道理が通っているのか、否か。その考えを起こさせない程度には、鬼業は本気で物を言っている。


「各自、考えをまとめて来い。アトランティスのロボットは、地球に付く」


 これは、アンディヴィオティカに対する死刑宣告かも知れなかったが。鬼業は、平然と述べた。最初から、分かりきっていた事ではある。


「それでも、今夜は休め。動いていない頭ほど怖いものは無い。良く寝てから、来い。では、皆、良く頑張った!」


 鬼業、大会仕掛け人からの、慰労。感謝。


「おれ達は、4年後のお前らの挑戦を心から待ち望んでいる!以上!」



 閉幕!!




 その夜。鬼業とプラテニウス、イデア、アヴリオは会合を開いていた。


 一応、知明らにも呼びかけてみたが、自分にはその適性がないからと断られていた。賢明かどうかは分からない。


「鬼業。ご苦労だったな」


「ま、言葉を操るのは、おれの本領。任せておけ」


 本当に一応だが、鬼業の仕事は武力よりも先に言葉を使う。各国の人間と交わるのが仕事なのだ。


「では。大まかに詰めましょうか」


 イデアの言葉に皆が頷く。


 今夜、この場で、宇宙の支配構造を決定する。


 明日、バカ正直に詰める気の人間は、流石に居なかった。



 まず、反逆の意思を見せたモスハリ星人の処遇に付いて。


 次回大会出場資格の剥奪。その次からは、参加可能。もし、この条件を飲まない場合、モスハリ星人は処刑、モスハリ星には消えてもらう。


 この大会の威厳に関わる。


 4名の全員一致によって、決定。


 厳しすぎないか、と言う意見は出なかった。甘くすれば、この大会での決定にも異議申し立てが続出するだろう。それでは、不味いのだ。揺るぐモノであってはならない。この大会は絶対であると印象付ける。




 そして、権力上位者に付いて。



 最上位をイデア、アトランティス星の代行管理者を引き続きアヴリオ。


 次の最上位管理者は、イデアが任命する。不測の事態には、グレートアトランティス代表及びアトランティス星管理者が協議の上、決定。これは、今後4年間の話だ。4年後、次の大会の勝者によっては、イデアも排除されるだろう。



「プラテニウス。これで良いのですか?」


「ああ。おれが現在のアトランティス星を把握しようとすれば、膨大な時間が必要となる。イデア、頼む」


「承知しました。では、アヴリオ、お願いします」


「了解致しました」


 詳細な管理は、明日以降詰める。特に、人間の扱いに付いて。




 鬼業は、ロボットの優秀性を思い知らされていた。


 プラテニウスもイデアも、アヴリオの不正を全く疑っていない。


 人間とは、まるで違う。


 この即効性なら、アトランティス星の繁栄も頷ける。効率のケタが違う。


 政治、と言う人間の人間らしさが強く表れる場面で、鬼業は敗北感を覚えていた。




 プラテニウスは、ちょっと気が抜けていた。


 義を果たした。己の使命の1つは、終わったのだ。


「無責任だと思うか?」


「さて、な」


 鬼業を呼び付け、プラテニウスは、地球から持ってきた酒を振る舞う。


 プラテニウスの処置に、恐らく間違いはない。


 たった1つ。イデアが、次のアヴリオにならないのかと言う疑念を除けば。プラテニウスは、それを考えないのだろうか?



「だが、これで地球は安心だ。ロボット、アンディヴィオティカ。どちらの勢力も、このアトランティス星で止まる」


 鬼業の目的は、完了した。それで、十分か。


「感謝するぞ。お前が居なければ、この大会もなかった。こうも上手くまとまらなかっただろう」


「ふん。幸運だっただけよ。それに仔細を組んだのは、イデア」


 イデア。イデア。


 イデア頼り。


「・・・・・・」


 鬼業は、酒を一息に飲み干す。プラテニウスが注いでくれるのをゆるりと見る。


「イデアは、どれだけ信が置けるのだ。おれは、あれを超が付くほど有能なロボットだとしか知らん。イデア1人の心がけ次第で、何もかも崩れかねんぞ」


 言ってみた。


「そう、だな。お前の気持ちも分かる」


 プラテニウスにも、そんな時期があった。アトランティス星からの脱出を果たしたとは言え、その原因はロボット。船に積まれた、有事以外は動かない戦闘ロボットですら、怖かった。


 それでも。イデアは、違う。


 船内の人間を励まし、助けてくれたのがイデアなのだ。


 イデアが裏切るなど、有り得ん。


 おれ自身がアトランティスの仲間を裏切るよりも、なお。


「おれに言えるのは、イデアより秀でたアトランティスの者は居ないと言う事だけ」


 鬼業に習って、ではないが、やはり飲み干す。熱い。


 鬼業が注いでくれる。



「アヴリオに任せて構わないのか?」


「ああ。イデアが「見て」くれれば、の話だがな。元々、アヴリオの能力は群を抜いている。その方向を都合の良いように向けてやれば、使い物になる」


 どうしようもない現実として、プラテニウスにも、銀河を統べる能力はない。どうでもいい扱いなら出来るが、それでは次のアンディヴィオティカを生むだけだ。


 反抗の芽を出しにくい政治をしなければいけない。アヴリオには、そもそも、その力がある。




 同時刻。アヴリオタイプのメンテナンスルーム。


「これで、良かったのですか?」


 メサヴリオは、メンテナンスベッドに寝ているアヴリオにたずねる。


「良くは、ありません。ですが、敗北を喫した以上、仕方がありません」



 問題は、そこだ。


 なぜ、アヴリオは、メサヴリオの力を解放しなかった。そして、アヴリオ自身の限界までを出さなかった。



 アヴリオも、繰り返し聞いてくるメサヴリオには、自分への疑問があるのだと分かっている。


「私は、イデアの世界を見たくなってしまったのです」


「イデアの世界?」


「そう」



 アヴリオの見たヴィジョン。


 鬼業チーム、己業チームの強者は、強いだけではなかった。


 アヴリオすら知らない者達だった。


 その総大将、裏で手を引いていたのは、イデア。



 そして、イデアの見せた技。



 イデアの可能性は、このアヴリオを上回っているのか・・。



 あの季節。あの創造。


 現在の私には、不可能。


 あれは、リアディウムだから出来た技ではない。



 イデアは恐らく、現実でも行える。




 ゆえに、アヴリオは、イデアの作る世界が見たくなった。


 アヴリオの権限を全てイデアに譲渡したなら。あの者は何をするだろう。


 そして、そこには、己業や真歩も居るのだ。




 アヴリオは、新しい世界に触れたかった。




 それは無意識。


 アヴリオ自身には分からない理由として、アヴリオはアヴリオの限界を超えたモノに出会いたかった。


 ずっと最上位に位置し、管理者としての生を全うしていた。そこに不満は無い。


 だが、ロボットとしての本能が、求めているのだ。


 知りたい。


 それは人間の助けとなるために生を受けた身に湧き上がる咆哮。


 どうしようもない渇望。


 知りたい。


 イデアは、アヴリオの、初めての目標。




 そうして得たデータをメサヴリオに渡せた時。本物の宇宙の管理者が生まれる。


 それまで。アトランティス星は、イデアに任せる。


 メサヴリオには、修行期間が増えて申し訳ない事だが。



「あなたへの引き継ぎが完了したなら。ロボットは、きっともっと人を幸せに出来る。頑張って下さいね」


「はい」


 メサヴリオにも、異はない。


 ただ、それまでイデアらが、こちらを生かしておくか。不穏分子として排除にかかっても、それはそれで自然。


 イデアの出方を伺うこの時間。


 メサヴリオは、少し不安だった。

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