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2回戦。

 2回戦。土佐女王校。前回の、高知県大会優勝校。全国ベスト16でもある。


「強い弱いで言えば、強い。だが、強過ぎはしない。前回の最強レギュラーは卒業している。私達なら、五分に戦える。そして、己業。お前に決めてもらうかも知れん」


「はい!」


「応!」


 流石に観客も、土佐女王を注目している。言い換えれば、こちらも見られている。己業を隠し通すのは、不可能だな。


 観客の中の己業の家族、戦草寺の家族は、お互いに挨拶をしたようだ。威業と始業の応援の声に、戦草寺の家族が気付いた。


 順番は、同じ。戦草寺、野牛、己業。


「気負うな。全力を出して来い。それだけで良い」


「相手の戦力を出させろ。そうしたら、おれが何とかする」


 各々が、各々のやり方で、戦草寺をリラックスさせようとする。意気が満ちていて、逆にプレッシャーにしかならないようにも見えるが・・。


「はい。小手調べに。4人抜いて来ます」


 戦草寺には、完全に火が点いた。結果オーライ。


「頑張ってください」


 最も普通の声を投げかける先生に軽く礼をして、戦草寺は戦いにおもむく。


 初戦。土佐女王校の戦法は、去年と変わってない。始めから、最強が来る。後になるほど、若く弱い。だからこの組み合わせは、最悪と言って良い。はず。なの、だが。


 敵、騎士タイプ。1回戦の相手との違いは、武器がランスである事。リーチは、薙刀よりは短いが、十分に張り合えてしまう。そして、経験。相手は、全国経験者。去年のレギュラーだ。


 泉鬼は、飛び出す。相手は、待ち構えない。ランスを真っ直ぐに突き出し、突進!


 分かっているのだ。秘呪札先番が、パワーには優れていない事を。必殺技登録をしているから、部位破壊はされる。それでも、吹き飛ばされない。ならば、一発食らっても良い。その隙に、決着量を与える!


にやり


 野牛の浮かべた悪い笑み。幸い、皆の目は、モニターに釘付けだったが。


 かかった!


 千殺万札せんさつばんふ。接近するはずの泉鬼は、敵騎士の周囲を回るのみ。そして、無数のお札が、騎士にまとわり付いていく!


 敵のカウンター技を警戒しつつ、突きまくる。千殺万札の影響は、わずか2秒間。永続効果は無い。自らの防御を5秒間、50パーセント下げる条件を課している。それでも、効果時間は2秒。これは、静止時間を取りたくなかったためだ。隙を最大限、攻撃に活かすために。


 視界を失った敵は、防御を固め、その場からランスを泉鬼の居るであろう場所に撃つのみ。


 腕!足!まず、右足を破壊!機動力の落ちた騎士など、敵ではない!!


 先に腕に攻撃をかけておく事で、本命が足と思わせない。単なる乱打では、ない。


 ランスはリーチが有り、重みも有る。突破力と牽制、両方を備えた便利な武器だ。だが、だからこそ弱点も多い。薙刀に比べて重いため、戻りが遅い。斧に比べれば、手元足元がおろそかになる。故に、ランスでの防御は、出来れば避けたい。増してや、敵の速度がかなり上の場合は。


「む」


 野牛の目が鋭くなった。


 敵ランスが、炸裂した。飛び散り、前方のあらゆる物へ突き立つ。泉鬼へも。


 泉鬼は薙刀をわざわざ後ろへ回し、全身で防御の構えを取った。両手両足に1回ずつの攻撃判定、更に140ポイントのダメージ。


 危なかった。戦い始めにこれをやる思い切りを敵が持っていたなら。負けていたかも知れない。


 武器を持たず、右足の動かない敵は、それ以上の抵抗を許されなかった。


おおおおお


 前回の全国経験者、そして。土佐女王のエースが、初出場校の1年生に負けた!


「良し!!!」


「良いぞ戦草寺!」


 千誌先生さえ、拳を握り締め、興奮していた。


 勝ち抜き戦では、ダメージは溜まっていく。必殺技の発動条件などは、完全回復する。泉鬼は、既に、全身どこでも数回削られるだけで、部位破壊される。


 次もまた、全国経験者。更に、泉鬼の手の内を目の前で見た。


ガガガガ!


 銃撃。遠距離攻撃か。威力と射撃精度の両立は、難しい。両立しようとすると、大型近接武器並みの重さになる。更に射撃精度にステータスを割り振っているため、その武器を持って走り回るパワーも持てない。


 今回の相手は、弾数を増やす事で威力の代わりとしているようだ。当然、銃弾1発で、通常攻撃1発とは計算されない。正確な数字は、そのチームにしか分からないが、おそらく10回の銃撃で、通常の1発と計算されるはず。まだ、泉鬼は即座には落ちない。だが、時間の問題だ。


 泉鬼は、防御の姿勢を取りつつ接近を試みるが、敵の動きも速い。射撃精度を落とす事で、軽い銃にしたようだな。上手い。欲を張る愚かさを知っている敵だ。


 通常、リアディウムでは、何もせず、時間切れを狙う逃げを打つと、反則負けを取られる。だが、今、敵は攻撃しつつ距離を取っている。その手を休めていない。これなら、決して逃げとは取られない。自分の有利な距離を保つのは、戦術の基本。


 その基本に、泉鬼は追い詰められていた。至近距離に達すると、敵の攻撃精度は上がる。当然だ。だから、距離を決めかねている。中距離のいつもの距離は、敵に取っても有効射程。何処で戦おうと、泉鬼のダメージ量が先に決着量に満ちてしまう。


ブン


ブンブンブンブン・・・


 薙刀を回した。そして、回転させ続ける。敵の射撃精度は低い。そして、威力も10分の1。


 ならば、薙刀の通常攻撃で、弾けるな。


ブン!


 回したまま、接近!敵の必殺技は、考えない!有れば負ける!発動しなければ、勝てる!それだけだ!!


 泉鬼の薙刀と、それを保持していた右腕が破壊された。が、接近しきれた泉鬼は、銃を破壊、そのまま徒手空拳で倒した。


うおおおおおおお


 前回優勝校相手に、2人抜き。開豁かいかつである!


「やったやった!すごいです!偉いです!」


 興奮しきった先生は、戦草寺に抱き付き、全力で褒め称える。野牛と己業は、幸運を思った。一体、どんな必殺技だったのだろう。遠距離高火力系ではなかったらしいが。もしや、防御を抑える事で、連射能力を上げるタイプ?


 惜しい。銃を中段で構え、防御を50パーセント、5秒下げる。それで、10秒間、攻撃力を50パーセント上げる。それが、必殺技だった。中段の構えの最中、当然、逃げる事は出来ない。相手が判断を決めかねている時に実行するのが得策。今回、成功したのだが、戦草寺の思い切りが想像を超えていた。敵としては、足を狙えば勝てていた。足を殺せば、もはや泉鬼には打つ手は無い。だが、武器破壊を優先した。理由としては、武器プラス腕の方が、足より面積が大きく、当てやすいからだ。射撃精度の低さは、こんな所で響いて来る。


 2度の戦いで蓄積したダメージは、400ポイントを超えている。残り、585ポイント。上手く防御箇所を散らして、部位破壊は出来るだけ避けたが。右腕と武器を失った。幸い、泉鬼の必殺技は、武器依存ではない。武器依存は、その名の通り、武器が無ければ発動しない。不便なシロモノだが、強力だ。千畳海苔ほど極端でなくとも、低防御なら、半分の決着量を削るのが普通。しかし、泉鬼は最強技、秘呪札先番でも、100ポイントを削るのが精一杯。正直、火力だけ見れば、何の役にも立たない。だが、武器依存ではない。それが最高の取り。いかなる状況でも、条件さえそろえば、必ず発動する。今回のような、削り合いでこそ真価を発揮する。


 ここから。戦草寺泉船。私が試されるのは、これからよ。


 1回戦での戦いを経て、緊張のほぐれた戦草寺は。完全に実力を発揮し始めていた。

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