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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
79/89

過去、現在。ゆえなる結末。

 イデアに可能な攻撃パターンは、ほぼ無限。例えば、ムミョウの影を生めば、そのムミョウは貫吼も貫通城も影狼も使いこなすイデアの忠実な手足となる。しかも、反射神経などもイデア基準なので、人間的な進歩の可能性を除けば、己業本人が操るより強く再現される。


 ゆえに、イデアは、その能力をフルに戦う事が出来なかった。全プレイヤーのやる気をぎ落としてしまう。



 自分とアヴリオは似ているのではない。


 高い能力を求めれば、必ず同じ所に至る。結果、似通った。



 ただ、道のりは違う。


 最初から超高性能を持たされて生まれたアヴリオと、最初は人間サイズのボディも持たなかった一隻の船。


 その2者の歩んできた命の様子。



 当然、この試合にも反映されている。




 アヴリオの使命は、人を守る事。そのために、こうして自ら動ける場面では、自分が動く。


 イデアの使命も全く同じながら、イデアは人を動かす。それが影であっても、使えるなら何でも使う。



 超高性能のアヴリオに取って、自らよりも頼れる道具は滅多に無い。戦闘ロボットやお掃除ロボットは、その専門分野に於いて、アヴリオを凌駕する能力を誇るが、それらの頂点がアヴリオなのだ。各幹部級のアヴリオタイプを総指揮するのがアヴリオである以上、全ては自分の手足の延長線上。



 逆に自分の手足を持たなかったイデアは、何かをする時、必ず他を頼らなければいけなかった。他のロボット、他の人間。自分だけでは、宇宙船内しか自由にならない。


 そしてイデアは、自分のボディも他のロボットに作ってもらい、その後、自分自身の指揮で、他のロボットも作っていった。アガペーやエロースなど、管理センターの者達も。


 アトランティス星から命からがら逃げ延びたイデアには、余裕がなかった。人間の生、守護、アトランティス星との戦い。全ての使命に手を抜けない。仲間が、絶対に必要だった。イデア自身の処理能力だけでは、まるで足りない。


 更に、地球と言う星を見付けられたのは幸運だったが、未開の現地人との交渉は難題だった。まだ外宇宙人との同盟も結べていない、どころか出会えてすらいない天然記念物レベルの人類。いっその事、宇宙船に搭載されていた10体の王家守護用戦闘ロボットで地球を掃除する意見も出たが。現地人にも、知性は認められた。その知見は、イデアらが1から地球を調べるよりは楽だ。まあ、利用する前に必ず自前で安全検査するわけだが。


 そしてイデアは、人間を使う事も覚え始める。元々、王家付きの宇宙船として、「非常事態」に備えていた身だ。例外的な事態への対処法。それらの知識はあった。


 例外。その知識が、イデアの源にある。



 逆に例外があってはならないのが、アヴリオ。そんなものを認めていれば、全てが例外として処理され始める。




 この正反対の2人が、今、向き合っている。




 イデアの影の物量は、時間稼ぎ。それはアヴリオも了解している。


 イデアの隠し技の発動にはタメが必要らしい。


 軽い興奮と共に、影を潰し続ける。




 イデアの影は、イデアの見たもの全てを再現出来る。もう少し言うなら、イデアの入手したデータもだ。


 だから、こんな技も使える。



オ オ オ



 宇宙の始まり。無。イデアの周辺以外は、全てが虚空に飲まれた。




 それを、ガードするアヴリオ。


 イデアの防御膜を見て覚えた。イデアの無が広がる寸前に発動出来たのは幸運だったが。




 すごい。今度こそ、イデアは心から感嘆した。


 これが、アトランティスの神。



 だが!


 だから、私が出た!



 イデアにすらアヴリオの状態は把握出来ていない。防御膜の外は、無に覆われている。イデアの視力だろうがセンサーだろうが、何も知覚出来ない。ゴーグルの表示によって、ダメージが入っていない事だけは分かるが。


 ただ、アヴリオも条件は同じ。心理的にも、こちらの技を待ち望んでいるはずだ。




 真っ暗闇、ではない。宇宙の始まりに、色は無い。それは、暗黒の世界ですらない。人間レベルの視覚では、見えないのだ。存在しないと言うか。


 それが例えイデアやアヴリオクラスの認識能力であろうと、存在しないものを見る事は出来ない。闇、ではない、無認識の世界。


 黒すら「見えない」。




 その世界に、光が差す。



コ オ



 後光をまとって、イデアが現れる。




 光が見えると言う事は、そこには認識出来る何かが存在する。


 創ったか、世界を。宇宙を。



 アヴリオの、イデアを真似た防御膜は特定温度に達すると消える。そのようにイデアが構成したからな。


 その仕込みに一瞬で気付いたアヴリオだが、再度張り巡らしもしなかった。


 受けたい。イデアの攻撃を。


 自分の見た事のないものを、見たい。




 世界を創ったイデアだが、これは挨拶のようなものだ。自らの実力の誇示。アヴリオへの、自己紹介。


 技は、ここから。



ふわり


 アヴリオの肩に、たんぽぽの綿毛が。


はらり


 頭部に、桜の花びらが。


ひらり


 つま先に、紅葉が。



 ダメージは、来ない。なぜだ。いや、何の意味が。




ぞわり


 肩から、たんぽぽが生えてきた。一気に成長し盛大に綿毛を散らしたそれは、アヴリオの視界を塞ぐ。


みしり


 頭頂部から根付いた桜の木。根っこが頭部を完全に覆いつくし、5メートルにも達した高さは、アヴリオの身体バランスを著しく損なう。


びきい


 つま先から生えた紅葉の木は、アヴリオの足を大地に縫い止めた。そして、密集した落ち葉から、足から顔からを熱するようにき火が始まった。中には、芋も入っている。いや、栗もマシュマロも缶コーヒーも側にある。



 なんだ、これは・・・・。


 アヴリオは、香り豊かな生命の炎にあぶられながら、立ち尽くしていた。


 ダメージがまだ入ってこないのも、不気味。




 モニターを見ている観衆の心も一致していた。


 なんだ。これは。




 そして世界は、雪に包まれた。


 たんぽぽも桜も紅葉も、全てが白く染まった。




 次々と変わりゆく世界は、観客の目を喜ばせはするが。



 アヴリオには、まだイデアの真意が分からない。


 何を、狙っている。これで、何が起きる。




ざん



 雪ダルマが現れた。


 アヴリオのたんぽぽも桜も紅葉も、全てが雪ダルマと化した。



 重い・・。それに、この世界では自然に解けもしないだろう。


 しかし、それが・・・・。



ぴちょん


 解けた。


 雪ダルマが解け、水が流れる。



 オカシイ。アヴリオは、リアディウムの専門家ではない。だが、この現象が有り得ないのは分かる。


 雪ダルマを現す技であるなら、雪ダルマは跡形もなく消えるはずなのだ。


 ここは、自然界ではないのだぞ。


 思えば、植物も何かヘンだった。



 ・・これがイデアの狙い?純粋なパフォーマンスか。


 それならそれで、私に事前に伝えてくれれば。私も何かを操作して協力出来ただろうに。




 安心して良い。これは、ただのパフォーマンスではない。


 意味のあるパフォーマンスだ。




 アヴリオは、戦意無しとみなされないために、攻撃を仕掛ける。イデアの技が終了したのか否か、判断が付かない。終わったのなら、アヴリオはアヴリオの十全を出して、イデアを倒しにかからねばならない。




ぽわり



 流れた水の跡から、芽が出た。


 アヴリオが足を止めたその目の前で、芽は伸び、瞬く間に花をつけた。



 ヴィジョン内でも、ここまで再現出来るのか。


 ふと。アヴリオはそんな事を思った。アヴリオの記録にある植物の育成の模様と全く同じだ。今や、アトランティス星では、記録の中にしかない光景。全てが人工栽培ゆえ、こうも野放しな育ち方は、現実では見た事がない。


 雪解けもだ。アトランティス星には、厳密な意味での自然は、もう存在しない。雨天、降雨量、風速。それら全ての自然現象と呼ばれるものは、完全にコントロール下にある。アトランティス星は、人間の理想的な飼育環境として完成を見た。その守護、維持に当たるのが、アヴリオを始めとする管理センターだ。


 だから。他星に赴く母艦や戦闘ロボット以外、つまりアヴリオも、本物の自然は知らない。


 興味深い。こんなテーマパークを作っても良いな。





こん



 あいた。


 アヴリオは、痛みを感じた気がした。リアディウムに痛覚は存在しないと言うのに。


 大きく育った柿の木が、実を落としたのだ。熟してなくて幸いだったと言うべきか。緑でもないので、痛烈な硬さでもない。


 100ポイントダメージ。決着。





 え?





 全観客、己業らも含め、ぽかんとした。



 最後の一撃は、柿の実・・・・。




 アリなの!!??




 アリだから、決着。

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