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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
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イデアとアヴリオ。

「良くやってくれました。予定通り、アヴリオには多大なるダメージが与えられました。あなたと己業君のおかげです」


「はい。イデアさんも、頑張って下さい」


「ええ」


 真歩は、イデアと交代。


 真歩には勝利は手に入らなかったが。手応えは、得た。残った勝利は、イデアに飾ってもらう。




 イデアとアヴリオには、とある因縁がある。アヴリオは、気付いていないが。


 だから、これは雪辱戦なのかも知れない。


 お互いに取って。




 開始!




「お手柔らかにお願いしますね」


「・・・他の選手は、試合中のコミュニケーションを禁じられているはずです。これはマナー違反でしょう」


 イデアから、試合中にアヴリオへ通信。眼球の発光信号だ。目と目で通じ合う、と言う奴だな。実際にピカピカ光っているのではなく、「瞳の潤み」程度だ。それで十分。


 その様子を見る事が出来るなら、他のアヴリオタイプやテレス、アトムにも読み取れる。


 戦闘の意思無しとみなされても困るので、イデアは適当にアヴリオに殴りかかる。そして、アヴリオもそれを受け入れる。やはり、適当に殴り返す。適当と言っても、どちらも10音速程度の動きだが。



「しかし。本当に、お久しぶりです」


「・・・いえ。私とあなたは初対面ですよ」


 アヴリオの記憶に、イデアの姿は無い。つまり、アトランティス星のデータにイデアは存在しない。イデアがこの星にきた時が初対面のはずだ。


「これが、私の昔の登録情報です」


 イデアからアヴリオへデータが渡った。立ち回りの間に目を合わせれば、会話も文字情報も自由に送り合える。


「・・なるほど」


 確かに、その番号は知っている。


 この星から、人間を「誘拐」した宇宙船だ。


 少し、アヴリオの動きが速くなった。


「ですが、あなたは一介の管理コンピュータ。その体は新調したのですか?」


「はい。デザインは、子供が考えてくれたんですよ」


 なるほど。アヴリオにも、おぼろげに見覚えはあったのだ。これは、アトランティス星の子供向け番組に出てきたロボット。ただ、情報によれば脇役のはずだが。


「かっこいいでしょう?」


「そうですね」


 脇役だが、異論は無い。ロボットは、皆洗練されたデザインをしている。ただ、人間の子供が描いたデザインと言うのは気になる。その子供に、もっと技術を教えてあげるべきではないか。イデアの外見は、とてもではないが効率の良いスタイルではない。無駄が多過ぎる。


 それより。外観などより。


「あれから、それなりに改良したようですね」


「はい。私も、思いもよらない事でした」


 しみじみと呟くイデア。


 本当に、色々あった。


「あなたの方は、順調に磨かれてきたのですね」


「もちろんです」


 アヴリオの受け答えによどみは無い。歩んできた道のりに自負がある。


 お互い、数十年の歳月をかけた結晶。他のロボット達が次々と再利用に回される中、ボディ交換だけで人格を継続してきた。


 それは、この日のためではない。


 毎日のためだ。


 アヴリオもイデアも、管理下にある全てのものを見守るためにあり続けてきたのだ。



 この一戦も、今までと同じ。守るために戦う!




 アヴリオは決着量寸前の己を忘れたのではない。しかし、たかが管理コンピュータに負けるとは思えない。人間が、チンパンジーに学力テストで負けるかも・・と危機感を覚えないのと同じだ。


 アヴリオと普通のロボットではその程度の差がある。


 イデアがどれだけ手を入れてきたのかは知らないが。管理コンピュータのままでは、アヴリオには届かない。




 イデアはイデアで考えている事があった。


 この様子見をしているアヴリオ相手なら、もう勝っている。だが、それは本物の勝利ではない。


 アヴリオに、敗北を認めさせなければいけない。アヴリオが試合の結末を受け入れないと言う意味ではなく、心からこちらに屈服させる必要がある。


 それが出来るのは、イデアのみ。




コ オ


 イデアとアヴリオは、ほぼ同時に光速に達し、お互いの攻撃を避け合った。


「流石は」


 イデアから仕掛けた加速勝負にアヴリオは平然と付いてきた。


「当然でしょう」


 アヴリオには、イデアの意図が読めなかった。いきなりスピードを上げたのは良いが、たかが1光速では。ムミョウ戦を見ていなかったのか?



 次は、100だ。


 少々の間合いを取ってから、100光速まで身体速度を引き上げたイデア。アヴリオもまた、余裕で付いてくる。


 この時点で、人類最速のムミョウユキテラシを遥か彼方に置き去りにしている。


 だが、この2人に取っては、まだ準備運動に過ぎない。



「あなたの考えが分かりません。ですがそれは、私に取って、楽しい事につながっているのではないか。そんな期待も湧いてきました」


「ふふ。きっと応えましょう」


 アヴリオは、徐々にイデアの動きを心待ちにし始めた。


 あの己業のように、何をするのか分からない。真歩もそうだった。


 楽しいな。




 1千・・・1万。ムミョウを倒した1万光速に到達。



 移動する。ただそれだけの衝撃余波で人間もロボットも消し飛ぶその領域で、2人はお喋りを楽しんでいた。



「やはり。先のムミョウ戦、本気ではなかったのですね」


「いえ。あれは、あの時の本気でした。あるいは全力でした。今は、今の全力が出せているだけですよ」


 これは本当。そもそもアヴリオは嘘などかないが。


 ムミョウ戦で、初めて手加減を外し始めたアヴリオ。慣れは、まだだ。


「では。もう少し上げますよ」


 イデアはそう言うと、10万光速まで引き上げた。



「あなたは、本当に元管理コンピュータなのですか?私でも、現在、移動のみに処理能力の1パーセントを用いていると言うのに」


 アヴリオは、イデアに畏敬の念を持ち始めた。たかが、一介の宇宙船に可能な業ではない。


「本当ですよ。あなたを相手に身分を偽るほどの能力はありません」


 アヴリオの賞賛を素直に受け取りつつも、油断までは出来ない。


 イデアも現在、速度維持のために能力の1パーセントを使っているのだから。


 五分、か。




「敬意を表して。今度は、私から」



カ ア



 1千万光速。いきなり跳ね上がった。


 が。


「ありがとうございます」


 仕掛ける側は、常にカウンターを食らう危険性を秘めている。だから、アヴリオは今までのイデアからの先制に感謝の気持ちを込めて、自らも動いた。それを理解したイデアもまた、感謝を述べる。


 これは、アトランティス星の守護神が行って良い事ではない、気がする。負ける可能性を増やすのは、アヴリオの仕事では絶対にない。


 だが、アヴリオは理性の声を無視した。


 アヴリオは、今まで間違った判断をした覚えが無い。ゆえに、自制が利かない側面が、確かにある。



 そして、1億光速。


 会場モニターには、超スロー映像が流れている。現在、アトムやテレスにすら、おぼろげにしか見えていない。最強ロボットと5人目だけか、はっきり視認出来ているのは。



「流石に、舞台が狭く感じますね」


「ええ。今度は、大規模フィールドも用意しましょう」


「それは。楽しそうですね」


 ニコリと笑んだアヴリオ。イデアも、微笑みを返す。イデアの表情は、決して綺麗な顔立ちとは言えないが。アヴリオも、イデアの心に触れた。



 イデアは、見切った。これ以上速度を上げても、相討ちにしかならない。現在、能力の10パーセントを使ってしまっている。これでは、攻撃に移った際、効果的な動きが出来るか自信がない。


 速度を、落とす。


 1光速まで下げ、ゆるりと身構える。これなら、基本思考のみで動ける。



「いよいよ、あなたの本気ですか」


「ええ。楽しんで下さいね」



 アヴリオは、心からワクワクした。子供のように。


 そのワクワク。イデアなら、それ以上に満たしてやれる。



ゴオ


 アヴリオは、後方からの攻撃を躱した。


 目前には、数千体のイデアが立ち並ぶ。



「先のは、私の錯覚でしょうか?」


「いえ。正しい嗅覚です。これが、私の能力」



 イデアの繰り出したモノが、アヴリオの能力と同じ幻影であるなら、回避の必要性はない。しかし、アヴリオは余裕を持って避けた。危ないと思ったからだ。



 イデアのヴィジョンは、幻影ではない。物理実体を持つ、「本物の影」。


 この世に在らざるモノを現す。


 素材は、要らない。厳密に言えば、必要だが。今回は、イデアとアヴリオ、舞台を動き回る2人の影を材料にしてこしらえた。それだけ。


 理不尽の極地のような力だが、そんなものだ。



 その影共が、やはり1光速でアヴリオに襲いかかる。さばききらなければ、アヴリオには勝利はない。



ヴォン


 ムミョウ戦で見せた、数千の己を平行して操る技。あれで以って、イデアの影を打ち消す。イデアの影は、イデアの意思通りに動き、その動作は決してアヴリオに見劣りするものではない。


 ゆえ、相討ち。


 正確には、アヴリオはダメージを受けていないが、影を消すと同時に分身もかき消えている。イデアが影を増やさないので、アヴリオもそれに合わせている。



 両者、本体だけで向き合う。試合開始以来、初めて立ち止まった。



「このままでは、勝負が付きませんね」


「ええ。でも」


 あなたは、まだ何かを隠している。アヴリオは、言葉にしなかったが。


 信号も合図も無く、2人は意思を共有し合った。




 お互いノーダメージ。お互いがお互いの強さを認識し合った。


 準備は、出来た。


 イデアも、本気になる。




 イデアの影は、素体を選ばない。何なら、道端の石ころ1つから数億の軍勢を生み出す事も不可能ではない。


 これが、オーバーコートでも実現可能か否かは、秘密だ。ヴィジョン内では間違い無く可能だとだけ言っておこう。


 その影で、舞台を埋め尽くす。物量を以って、圧する。




 アヴリオは、1光速のままで打ち砕きにかかった。スピードを上げれば、楽に殲滅出来るが、イデアが上げていない。


 アヴリオは、負けたくない。試合にではなく、勝負に。


 だから!同速で、勝つ!




 このやり取りは、テレスやアトムにも見えた。アヴリオが、感情的になっている様が。イデアの意図通りなのだろうが、その理由までは分からない。2人は、ただ、イデアの勝利を願っていた。



 鬼業、知明。己業、真歩。地球を代表する猛者共でさえ、この戦場には割り込めない。イデアとアヴリオ。共に、アトランティス星の生まれの2人が、未来を決める。悔しさがないではないが。


 仲間を、全力で応援する。



「やってしまえ!!!イデア!!!!」



 声を張り上げるプラテニウス。




 分かっていますよ。


 イデアには、声援が聞こえる。ずっと、聞こえていた声。


 星を出た時から、ずっと。


 ソクラノ・プラテニウス。イデアの最初のボディに書かれたサインだ。あれだけは、イデアの部屋に残してある。大切な思い出の品として。



 ロボットは、人のためにある。それは、人を教え導くと言う意味かも知れない。しかし。それ以外の意味もあるはずだ。


 この私が、それを知っている。


 アヴリオには、伝わる。この試合で、良く分かった。



 後は、伝えられるかは、私次第!






 イデアの周囲のみを、防御膜が包み込む。それを皮切りに、来る。


 アヴリオは、イデアの準備を見た時点で妨害も出来たが。それでは、面白くない。会場用モニターでは、アヴリオタイプが頑張って編集しつつ見やすいよう映像を流しているはずだ。


 観客も、自分も、相手も。皆が喜びに浸れば良い。



 このアヴリオには、それが出来る。ロボットには、それが出来る。だから、ロボットなのだ。




 イデアも、アヴリオが勝負を受けたのを確信した。


 やはり。アヴリオは、ルールやマナーにのっとれば、必ずそれを尊重してくれる。甘さか、優しさか。それとも、道徳心か。


 それが、もう少し柔軟さを持ってくれれば。今回の大会の必要は無かった。


 そして。イデアは、誰とも交わさず、王家付きの船として寿命を全うしただろう。アヴリオの能力を以ってすれば、非常事態は存在しなかったはずだ。



 プラテニウスを育てた身としては、怒る必要がある。だが、感謝もしている。


 キッカケ無しには、地球にも行かなかったし、グレートアトランティスを建造する事もなかった。プラテニウスも龍実も、鬼業に出会わなかっただろう。


 ある意味。


 イデアの人生が始まったのは、アヴリオのおかげだ。


 このまま、放っておいてくれるなら。実はイデアはアトランティス星の興亡に興味が無い。


 グレートアトランティスの人間を守る。それだけが、イデアの目的。


 これは、アヴリオと良く似ている。


 だが、プラテニウスが取り戻すと言うなら。手伝おう。


 そして。礼をせねばなるまい。


 宇宙を制するは、アトランティス星のロボットではない。


 オーバーアトランティスとグレートアトランティス。2つの力を同時成長させた、我らが獲る。




 アトランティス星の神と、グレートアトランティスの管理人。


 勝者は、どちらだ。

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