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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
76/89

ときめくアヴリオ。

 アヴリオが本気を出したなら、ムミョウは1秒以内に1000万ダメージを負うだろう。しかし、大会中にそれは実現されていない。


 現実に起こし得ない技など、技ではない。警戒の必要無し。


 己業は、いまだにアヴリオに脅威を感じていなかった。




 それにしても、綺麗で強い。知明さんと同じく、欲しいな。


 貫通城を全身から打ち込んだアレ。鬼業の指先から打つのに比べれば大雑把だが、出来る自信はあった。攻撃部位が大きいから、気の収束も比較的簡単。


 親父の試合を見たからな。実戦での実演。これ以上の勉強は無い。


 だから、これも使える。


 多分な。




オン




 完全に体を封じられたままのアヴリオだが、この状態からでもムミョウをすぐさま倒せる。だから、様子見を終わらせられない。


 いつでも勝てるから、いつまでも勝てない。




 ゆえに、己業の勝機が生まれる。




 アヴリオ、200ポイントダメージ。



 この技は・・。テレス・アリストの技ではなかったのか?




 違う。これは、鬼業のオリジナル。


 技名は、影狼かげろう。練習中の鬼業の技を見て、テレスがテレスなりに真似たのだ。


 テレスには気は使えない。だから、カノン・総流の応用で、砲撃のエネルギーを利用。アストラガロスで実現してみせた。



 だから。これが、本物の影狼。



 気を全身から放出。そして、つながりを保ちつつ、拡散。この気には、まだ攻撃性は無い。そのため、放出の段階ではダメージは入らない。


 そして、敵の周囲に行き渡った瞬間に、一気に強化。貫通城の応用だな。




 アヴリオが避けられなかったのは、急激な攻撃だったから、ではない。


 フィールド中に気が満ちていたから、でもない。



 アヴリオを、追ってきたから、だ。


 気が、あたかも獣のように、どこまでも追いついてきた。



 テレスの影狼は、砲撃の固形化による、言わばテレスオリジナル。



 鬼業のそれは、誰にも正式に伝授していない。現役である鬼業は、まだこの技を磨き続けているのだ。影狼唯一の欠点は、用意時間がかかり過ぎる事。強者との仕合で、そんな隙は無い。強いて言えば、持久戦で使えるか。それでも、気付かれれば、容易に外される。もう1つ付け加えると、気の消耗が激し過ぎる。だからとて必殺技と言うには、威力が心もとない。現実では使いにくい技だが。



 このアヴリオ戦では、うってつけなわけだな。



 そして、テレスの影狼とも違ったために、アヴリオも避けきれなかった。準決勝、テレスのそれに当たってしまったのは、逃げ場が塞がれていたためだった。カノン・総流にカノンの一瞬千撃を込め、アヴリオと自身の周囲全てを「固めた」。何をどうしようと、逃げられない空間を作り上げた。ゆえに、アヴリオと言えど、1度食らう事によってしか逃げられなかった。




 アヴリオには、ドロドロの持久戦の経験が無い。同レベルでの戦闘を行った事が1度も無い。


 だから、逃げ切る、と言う発想が無い。




 今までのアヴリオ戦は、常に一瞬で終わっていた。ここまで意味不明な相手と戦った事は、当たり前だが、全く無かった。




 ・・・・いい加減、攻撃しないのか?


 観客には瞬間の攻防であったが、鬼業らにはアヴリオの余裕が見えている。


 なぜ、アヴリオは動かない。


 本当に遊んでいるのか。





 ・・・・・・・・。


 様子見が、必要だ。データは有用。


 まだ。まだ、攻撃しなくて良い。


 まだ。




 それは、アヴリオの思考をのぞける者が居れば、誰にでも分かっただろう。言い訳だと。




 アヴリオの好奇心は暴走していた。生まれて初めて、理性がコントロールを失っていた。


 以無の血、己業と言う男。それらが、アヴリオを揺らした。



 初めての気持ち。




コオ


 貫吼。普通の相手ならば、これを3発も入れれば、それだけで試合は終わる。今まで数多の戦いで世話になった、戦草寺カスタムの必殺技。


 アヴリオには、かすめもしない。


 が。



ピタリ



 貫吼が、止まった。だけでなく、撃った己業もその後の追撃をかけていない。では、止めた意味は?



パン!!



 貫吼が、気の塊が、破裂した。アヴリオは拡散するダメージ源を回避するため、加速。ムミョウの真横を位置どった。



コン



 殴・・られた。軽く、小突くように、だが。




 なぜ、こちらに気付いた。アヴリオの周囲には迷彩がかかっている。全く見えていないはずなのに。




 確かに。己業には、見えていない。匂いがないとか何とか偉そうに述べたが、それでアヴリオ本体が認識出来るほど甘くない。


 だが、自分の事なら、少しは。



 先の影狼以来、気の放出はずっと続けていた。ヴィジョン内でなければ、とっくに体力が枯渇している所だ。


 その気の中を抜けてきた奴が居る。アヴリオの作り出した疑似感覚の中でも、自分とつながっている気の感触は明確に分かる。


 それでも。アヴリオに当てられたのは幸運だったからでしかない。


 アヴリオが本気なら、己業の技量ではまだ届いていない。




 私が、触れられた。奇策でも罠でもなく、一般的な打撃で。




 楽しい。




 アヴリオは、どんどん初めての想いを積み重ねていく。




ヴァン


 フィールドに、アヴリオが数千体現れた。思考の超加速を以っての分身の術。


 しかも、消えない。つまり数千の己を今も平行して動かし続けている。


 そして、その全てのアヴリオがムミョウの数百倍の速度で動ける。



 どうにもならない実力差である。




 ここで、この期に及んで、全く怯んでいない人間が2人。


 1人は実力差の分からぬ何雪雪尽。そして、もう1人は言うまでもない。



 可愛い子が、いっぱいだあ!!!!!!!



 己業は、アヴリオの胸に飛び込んだ。


 今なら、迷彩を打ち破るためと言う言い訳が効く!行くしかない!!


 全てのアヴリオを抱きに行く!!!!



ゴ!!!!!



 アヴリオの数十分の1の速度で、ムミョウはアヴリオの群れに突っ込んだ。だいたい、80光速ほどは出ているか。もう、鬼業にさえ確実な視認は不可能だ。


 見えているのは、テレス、アトム、イデア、アヴリオ。後は最強ロボットと、アヴリオチーム最後の1人にも。




 流石の己業も、無策で突っ込んでいるのではない。ムミョウの手をせわしなく動かし、前方に位置したアヴリオ全てを砕いている。


 本物には、まだ会えていない。




 この者、更に速くなった。1回戦より、4回戦より、先ほどより。


 面白い。


 だが、戦術はつまらない。これで、私と戦える気か。


 そこまでか。




 アヴリオは己業の性能を、戦闘ロボットよりは高い、と見切った。


 ま、少しは楽しめた。



 本体に迫りきたムミョウを、絶対的なカウンターで迎え打つ。基本速度がまるで違うのだ。本気のアヴリオにとっては、現在のムミョウでさえカタツムリよりも遅いスピードでしかない。どうとでも料理出来る。



 では。オシマイ。




 千を数えるアヴリオが、一斉に動き、ムミョウを打ち抜く。まさにその時。





 影狼。




 カタツムリは遅い。が。カタツムリより速い生き物を認識出来ないわけでは、ない。


 敵がわざわざこちらに来てくれるなら。迎撃くらい出来るさ。


 気は、前もってずっと散らし続けていたから、影狼の発動にも苦労はなかった。




 どうも。アヴリオは気を認識出来ていないのでは?


 予断は死を招く。だが、アヴリオは影狼を2度も直撃で食らっている。断定しても良かろう。



 気はエネルギーの塊。一般戦闘ロボットでも容易く視認出来るはずのソレを、なぜアヴリオほどの最上級ロボットが見えない?



 最上級だから、こそ。


 戦闘ロボットの思考なら、人間の残りとも言える熱量を注意、警戒も出来よう。だが、アヴリオは管理センターの代表。アトランティス星の実質的な支配者。


 人間を、人と言う生き物を恐れる回路が、存在しない。



 ヴィジョンなら、アヴリオは最強に近い。だが、それは最適の処理回路を持ったロボットと言う意味であって、対人戦闘技能が発達したのではない。


 人間の気、それ自体は見えている。


 しかし、いつでも躱せる事実が。今まで全力を、全身全霊を以って敵に相対した事の無い己の意識が、足を止める。



 最適の対処は分かっている。アヴリオの速度なら避けられる。


 それでも。


 本気に、なれない。ならないのではなく。



 アヴリオに取って、人間は教え導くべきもの。敵対した者、同じ人間を害する者は戦闘ロボット「が」排除する。


 丁寧に、完璧に役割分担を果たしているロボットは、融通が利かない。


 頑固な奴よ。




 己業が知れば可愛いとでも思うだろうが。数十段下であっても、己と比べられる領域に達したムミョウを、アヴリオは倒しきれなくなってしまっていた。


 知明やテレス、アトム。あれらとの戦いは、遊びだった。アヴリオの能力を以ってすれば、暇潰しにもならない程度の。


 しかし、ここに来て、ヘンなのと出会った。


 何をするか予測が付かない。興味深い対象。


 遊んでいるつもりが、ロボットの威を見せ付けているつもりが、本気にさせられていた。


 そして、アヴリオは、自身が本気になった事が1度として無い事を忘れていた。



 アヴリオのフルスペックは、いまだ使用されていなかった。そのような事態に出会った事が無かったから。


 アンディヴィオティカを撃退した時、アトランティス星を差配するようになった時。いつでも、能力の5割は温存していた。非常事態に対処するため、全ての人間とロボットを活かすため。そうして、徹底的な役割分担が生まれた。



 そのさび付いた能力は、今まで全く発揮されなかったそれは。




 今、初めて、花開こうとしていた。




 全ての幻影が消え、アヴリオは本体を現した。その肉体は、少し、震えていた。


 興奮が、震えを引き起こしていた。いわゆる、武者震い。


 これも初めて。





 己業は、この試合が始まって、初めて、危険を感じた。



 アヴリオが放ったのは、ただの右突き。拳を真っ直ぐ突き出しただけ。


 己の身に、数千の己を「重ね合わせ」1万光速のスピードで打つ。そんな、アヴリオのオリジナルではあったが。




 決着。ムミョウは、ノーダメージの状態から決着量の全てを消された。


 計測された全ダメージ量は、1億を超える。




 己業には、避ける事もカウンターを試みる事も、何も許されなかった。


 反応すら。




 これが、宇宙を統べる者。

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