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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
75/89

以無己業。

 フウ。


 熱い吐息を1つ。


 今のまま戦い始めると、飛び出してしまう。少し、やる気を逃がさないと。


 じっと見ていた。雪尽の、滴の戦いを。超上級の戦熱を、感じていた。



 たける。おれも、あの中に飛び込みたい。



 もっともっと、もっと戦いたい。強くなりたい。強くなって、もっと強い奴と戦いたい。



 こいつみたいな奴と。



 開始!


オ!!!!


 深呼吸は、何の役にも立たなかった。己業は、衝動のままに、竜の懐に飛び込んだ。



 知明さんとの戦闘は見せてもらった。


 お前、すごいな!!!



 竜が炎を吐くかどうか、一か八かだったが、上手くいった。尻尾がきた。


 知明戦、滴戦で2度も同じ攻撃を繰り返し見ているのだぞ。


キオ


 躱せる。


 光速を超えた速度で、己業は尾を飛び越えた。どうにも、視力も向上しているようだ。見える。


 これは、例え雪尽が光になっても、その光に追い付くための速度。


 雪尽を抱き締めるための速さ。



 だから、己業には、超えられる。



ミキイ


 竜の腹を右拳で全力で打ち抜く。感触が違う。生き物でも、機械でもない。言えば、柔軟な金属。極小の鎖かたびらの密集した皮膚を、己業はイメージした。


 実際には、自動車より大きい装甲板が無数に張り巡らされ、その下に、自身の動きをスムーズにさせるため、衝撃吸収のための金属繊維が埋め込まれている。無論、人間が殴っても、傷など付かない。




 かぎ爪を、尾を避けていると、炎がきた。これが厄介だ。拠辺無交を使えれば、格好の隙なのだろうが、己業には使えない。



 ゆえに、食らう前に、勝つ。



・・・・ゴオ!


 炎が身を包む前に、竜の決着量を全て削りきった。残念ながら、炎の速度は音速より更に遅い。パフォーマンス用の技だからな。


 竜の大きさで遠距離攻撃の装備など無駄の極み。狙いを付けるにも、複数個所を撃つにも、時間がかかり過ぎる。(竜に比べれば)小型の母艦の砲の出力で、宇宙に敵は無いのだ。竜は、あくまで威嚇。実践的な武装は、竜そのもの。竜の巨体をプロテクションで保護しつつぶつかれば、艦隊だろうが宇宙基地だろうが、粉砕出来る。最も単純な武力にして絶対抵抗不可能の最終兵器。実際には用いた事の無い、夢のパワー。


 戦いが、リアディウムでなければ。己業では、勝てなかっただろう。


 だが、ここはヴィジョン。



 おれももっと強くなるから、待っているぜ。



 己業、ノーダメージで竜に勝利。次は、いよいよアヴリオ。




 真歩は、全神経を集中して見ていた。竜にも敵う自信はないが、アヴリオはもっとだ。それでも、イデアは任せてくれた。


 自分と己業で、やるだけやってみる。そのために、情報が欲しい。頼む己業!




 開始!



 アヴリオには、不安は全く無い。先ほど、地球最強を倒した所だ。今更、地球人に臆する理由も無い。



 ゆっくり、ロボットの強さを見せ付けよう。




 だが。試合は、ムミョウのお辞儀から始まった。





 ?


 アヴリオも、とりあえず返礼のお辞儀をした。


 ?? この地球人、何を考えている?




 今、己業は攻撃を受けていれば負けていた。だが、そうしたかったのだ。間違いの無い、宇宙最強に出会ったなら。


 まずは、挨拶だろう。



 お互い、攻撃せず。不可思議な動きから試合は始まった。



 そして、構えるムミョウ。


オ!


 ユキテラシ発動。いきなり全開で突っ込む気だ。


じわり


 姿勢を整える。早く、速く、全速力で飛び出せるフォームを作る。両の足に力をたくわえ、両の腕を振る手前で止める。



 それは、アヴリオにも分かりやすい挑戦状だった。避けられるのなら、避けてみろ、と。



 受けよう。はっきり言って、この目の前の未熟者を走り出す前に止める事も容易いが。


 正面から、倒す。




 おや。


 知明は気付いた。自分達の時とは、アヴリオの対応が違う。今まで、アヴリオが「構え」をした事は無い。アトムの絶対的な火力を食らう寸前すら、自然体。棒立ちを決め込んでいたのだ。


 気まぐれかな。それとも。


 アヴリオも、遊び始めた?


 試合は、ほぼアヴリオチームの勝利と思っているのだろう。まあ・・負けた知明からも文句は無い。


 己業チームの付け込む隙になるからな。




ゴオ!!!!


 観客の耳にムミョウの駆け出した轟音が響いた時。


 2人は、交差していた。




 ????



 アヴリオは、柔らかく、優しく、包まれていた。ムミョウの暖かな腕に。



 これが攻撃なら。ダメージを生み出すものなら、アヴリオは完全に回避し、かつ反撃している。


 今、ムミョウに抱かれている今でさえ、アヴリオはノーダメージで抜け出す自信がある。しかし。



 攻撃でない動きに対処する備えを、アヴリオはしていなかった。



 だから、ただ大人しく抱かれてしまっていた。




 誰もが舞台上のやり取りに目を奪われていたため、それを見た者は居ない。鬼業の、笑みを。


 計算通り、と言ってしまうと言い過ぎになるが。鬼業は、己業にそれなりに期待していた。それは、実力と言う意味ではない。


 以無としての意味だ。


 以無の血族に最も求められる物は、生存能力。あるいは、子孫を増やす本能。鬼業の3人の子の内、それらに最大に秀でているのが、己業。


 才能なら威業。出来た人格なら始業。だが、生き残るのは、己業。


 その己業を、アトランティス星に呼んだのは。占い。


 己業がここに来れば、皆生き残れる。己業と一緒に居る全員が。己業が何がしかのアクシデントで来れなければ、危ない、かも知れない。己業の中の以無が、己業を生かすために、体調不良ぐらいは起こす。


 今の鬼業は、確かに現役の以無でもあるが、既に子を残した身だ。いつ礎になっても良い存在。そこら辺の見極めが甘くなっているのは否めない。


 その点、まだ子を成していない己業の生存能力は一級品だ。


 己業がきた。その事実のみで、鬼業は安心したものだ。



 これから先の展開は、神ならぬ鬼業には分からない。だが、死ぬ確率は低い。


 己業だけ、であっても。




 その己業。何か考えあっての行動ではない。


 アヴリオの試合を見て、ずっと想っていただけだ。


 こいつが欲しい。




 己業がアヴリオを抱いてから、4秒が経過した。その間、両者に動きは無し。



 良い匂いがする。と己業は思った。


 無論。気のせいだ。




 思考を戦闘に戻さず、間を取らず、ムミョウは動いた。


 己業は、全身全部位で貫通城を打った。頭部、胸部、両腕部、両脚部。その累計ダメージ量は、2000ポイントを超えるだろう。


 当たれば。



 己業の、ムミョウユキテラシの貫通城の発動する1秒にも満たぬ瞬間。アヴリオは、思考を加速。数万分の1秒で、ムミョウの腕の中から離れた。




 上手い。今のは、上手かった。


 鬼業は、己業の戦術を手放しで褒めた。ユキテラシ状態にあるムミョウは、全身に気が満ちている。貫通城の収束もバレないぐらいには。そこから、密着状態で打つ。


 相手がアヴリオでさえなければ、あれで勝っていた。まあ、アヴリオ以外にあの戦術は通用しないだろうが。




 やっと、戦いになった。


 アヴリオは、少しほっとしていた。どうして良いのか、全く分からなかったのだ。


 宇宙の雌雄を決する時に、相手は何をやっているのか。まるで理解出来なかった。それはつまり、今後理解するべきサンプルとして有用と言う事でもある。この地球人は、専用施設をあてがい、観察するべきだ。


 面白い。


 アヴリオの好奇心がうずいた。



ふ、お



 アヴリオのヴィジョン(幻覚)が走った。今、己業には密林が見えているはずだ。真っ直ぐは走れない、ジグザグに動かねばならない。感触も再現しているのだから。


 どうする。貫吼とやらを打ってみるか。



オ!


 真っ直ぐきた!!


 そして、ムミョウは、立ったままアヴリオを抱きすくめる。




 何故、効かない?この人間には、特殊な性能は積んでいないはず。テレス、アトム、あの2人はかなりヘンだが、この者は違う。多少なりとも人間離れした性能だが、そこまで。人間以外の何者でもない。


 目は塞いでいるはず。どうして、木を避けない??




 もし、これが気で全景を探り、偽物と判断したのであれば、己業はかなりすごい。だが、現実は違う。


 アトムの話を聞いたイデアから、事情は聞いている。幻影を映し出せるらしいな。


 そして、木には「匂い」が無かった。1回戦、クレミジ星人と戦ったあのフィールドとは明確に違ったのだ。


 これは、リアディウムの技術を甘く見たアヴリオの油断。自身も加わり、完全に調整したヴィジョンは、アヴリオの幻影にも匹敵するほどのハイレベルになっていたのだ。


 そして、己業の戦場を把握する能力の高さ。いまだ未熟ゆえに、戦場を選ばず戦っていれば、あっという間に死ぬ。そのために現状を知覚する能力は思うより高い。




 これは、言わない方が良いのかも知れないが、付け足すなら。


 特に考えず突っ込んだ。


 己の身の危険は重々承知。はっきり言って、アヴリオの術、事前に知っていても見破れなかった。


 だが、邪魔にならないとは、何となく分かった。この木々は、違う。


 クレミジのあいつが背中を預けた木々とは、決定的に違う。こんなんじゃ、なかった。奴の魂は、もっと強かった。


 だから、己が身で確かめた。ぶつかれば本物。でなければ、偽。


 簡単よ。




 そうとは知らぬアヴリオは、情報が知れ渡っていようと初見で見抜いた己業に少し警戒を払う。この男、先の鬼業チームに劣るものではない。


 ちなみに。アヴリオの能力は触覚までをも再現出来るが、それはダメージになり得ない。何か当たったけど気のせいかなー、で済む。食らう相手プレイヤーの覚悟次第だが。



 もう、終わらせるか。それとも、もう少し情報を得るか。敵としては、油断ならないが、恐れるほどのものでもない。


 抱きつかれたまま、アヴリオは思考を進める。




 それが油断なのだとは、戦人ならぬアヴリオは知らなかった。





 戦いは、第2幕へと続く。

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