雪尽の挑戦。イデアの思惑。
追白姫の武装は使える。
次は、回避だ。
開始!
2人目のロボットも、同じ。拠辺無交からの打撃がメイン。レーザーなどの武装は無い。格闘攻撃オンリーぽい。
雪尽も同じく拠辺無交を発動しながら、1分間、敵の間合いの中で回避に徹する。
イデアには見えた。己業と真歩にも。ヴィジョン内でなければ、滴にはちょっと厳しい。
追白姫は、いつでも相手を攻撃出来た。雪尽なら、薄凍で以って敵回避範囲を削り、重ね光を的中させられる。余裕のある動きだ。
これは、雪尽の挑戦。
ふむ。
遠不真歩に取って、雪尽はあくまで己業のオマケだった。確かに自分より強いが、正直、どうでも良かった。雪尽を倒したいと言う気持ちになれない以上。自分より高度なプレイヤーである事に異論は無いが。
だが。面白い奴じゃないか。真歩は少し、雪尽と戦いたくなった。
雪尽に取って、リアディウムは遊び。親父に言われて連れてはきたが。雪尽の負荷になっていないだろうか。もしおれが、勉強で雪尽並みになれと言われたら、泣きふけるだろう。
大丈夫か。雪尽。
大丈夫。何雪雪尽は、以無己業のパートナー。
己業が力仕事なら雪尽の料理を手伝えるように。雪尽も、自分に出来る事なら、己業の手伝いが出来る。
相手の攻撃の先を読みながら、重ね光を撃つ。命中。
決着。
雪尽は、相手の行動パターンを完全に読み終えた。もう、得る物も無いか?
いや、まだあった。
3人目、開始!
拠辺無交からの攻撃を、迎撃する。重ね光ではない。重ね光の元の、通常のレーザーだ。
一瞬600撃。拠辺無交の、攻撃への応用。
収束した重ね光ではなく、全周囲からくる打撃に対し、1つ1つ丁寧に迎え撃つ。
迎撃のレーザーと敵との衝突時間は、数分の1秒。システム回避可能時間を超えている。即ち。
決着。
ヴィジョン内に、リアディウムに限定されるにしても、この雪尽の戦闘能力は、鬼業と伍する。
その事に、滴とイデアは気付いた。
己業と真歩には、分からない。戦人である2人は、鬼業と雪尽が五分などと、ちらりとも思わない。
だが、雪尽は、そこに踏み込む。
これが、己業への助けとなるならば。雪尽は、無理の無い範囲で、攻める。
4人目開始!
オ
今度は先手を取る。
早い。誰にも分かった。
光速に近付く攻撃速度。これは、拠辺無交ではない。
己業の先の試合での動きを見た雪尽による、真似。更にそれを拠辺無交の意識で加速。そこまでやっても、素の身体能力が違い過ぎるので、ムミョウほどの速度は再現出来ない。
だが、近い。
相手ロボットは、1秒を待たず終わった。決着。
5人目。
同じく、更なる加速を目指す。
体が、重い。この領域に入ると、実感する。己業達とは、違う。
拠辺無交は、あくまでシステム上の意識で済む。だが、そこからの加速は、身体のこなしも重要になってくる。なぜなら、意識限界が、音速だからだ。己業や鬼業、知明は生身でそこに居るので、光速の壁を感じない。テレスやアトムも同じく。
だが、雪尽は、生身ではただの高校生だ。拠辺無交の移動ですら、能動的に意識的に行っている事。それ以上の速度を、無理矢理叩き出すのは、きつい。
意識限界、とは。
いかな雪尽の頭脳でも、光速のイメージは難しかった。乗ってきたライキ・アゴラの速度は、もっと速いが、自分で惑星間の移動速度を把握しているわけではない。
生身で感じ取れる速度感覚の「物差し」が無いのだ。
光速とは、光の速度。太陽光と同じ速さになれ、そう言われて簡単に実践出来るものではない。
音速は、「やまびこ」の確固たるイメージがあったので、ある意味簡単だった。あるいはそれなりに多くの人が、イメージ出来るのではないか。
だが、そこからの再加速は、もう雪尽では操りきれない。仮に発動出来ても、止まれないだろうし、止まっている相手に的中させる程度の事も出来なくなる。これは、全力疾走中に、置かれてあるだけのドリンクを取りこぼすマラソンランナーのようなものだ。普段なら、難しいとすら感じない動作も、他の動作に気を注いでいる状態では、難易度が跳ね上がる。
分かりやすい話、弓道の上級者でも、流鏑馬には別の技能が必要。まず、馬に乗れないからな。
音速の実現にまで持っていった雪尽の才覚は本物。だが、それでも、アヴリオには及んでいない。
雪尽の目的は、己業にすごいと思ってもらう事ではない。
己業と一緒に居る事。
そのためには、このアトランティス星の戦雲、取り払う必要がある。
イ
ロボットは、瞬きよりも早く薄凍に巻き込まれ、終わった。決着。
やっと。ここまで出来た。
己業と仲間のねぎらいの言葉を受け止めながら、雪尽は、少しの自信を手に入れた。アヴリオチームの実力は知らない。それでも、これなら、少しは己業を手伝える。
頑張る。
準決勝までを見てきたイデアは、決勝の順番を決めた。
1番手、雪尽。
2番、滴。出来れば、この2人で竜までを倒して欲しい。
3番、己業。
4番、真歩。そして、この2人でアヴリオにダメージを与えて欲しい。
5番、大将。イデア。
自分とアヴリオは全く同じダメージの与え合いになると想像している。最初に削ってもらえれば、勝てる。
アヴリオチーム最後の1人は、正体不明。見た目は、ただのアヴリオタイプにも見える。だが、微妙に重量バランスが違う。それは、絶対に些細な差ではないはずだ。
私も、挑戦の時か。
皆には悪いが。美味しい所をもらったかな?




