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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
68/89

雲技知明。

「オ」


 発声。知明は、試合前、ゴーグルを付ける前に、一声気合を入れた。本来、攻防の術者にこのような儀式は足手まとい。暗殺者が、目立つ真似をするな。静かに、自然に殺せ。



 だが、今は試合。お客さんの目の前だ。


 お見せしたい。これが、地球のエンターテイメントだ。




 殺戮だけが業ではない。身体操作は、攻防の十八番。


 楽しませてあげよう。全観衆を。




 開始!



キイ!


 鍔迫つばぜり合いの音。知明の出現させた剣と、敵の爪の。



 敵ロボットは、人間体ではなかった。



 神話に語り継がれる、竜。ドラゴンだ。



 ドラゴングレートとは、流石に違うか。知明は思い出していた。デイズ・グロリアス、大動滴のチームメイト、双頭韻そーずぃん 相清さんついのシルエットを。


 しかし、全く違う。ド派手な攻撃技を持ち合わせた彼に比べると、目の前の巨獣は、明らかに地味。



 こいつ、アマチュアだ。双頭韻より、弱い。




 この見立ては、現実的にはほぼ完全に間違っている。が。




オ オ



 竜の吐息が、フィールドの全てを焼き尽くす。いかな知明の身体能力と言え、通常技能では避け切れない。



 拠辺無交、発動。



ゴ!!!



 加速している、目にも止まらぬ知明に、直撃で当たる尻尾。



 竜の尾が、薙ぎ払った。



 直立した竜の全長は、高さ2メートル、横に3メートルくらいだろうか。太い尻尾。たくましい体躯。筋力なぞ、人間が何十人集まっても、比べるべくもあるまい。


 それだけの巨躯でありながら、拠辺無交の実行中にあった知明に当てる速度。最低でも、光速。



 これは、かつてのアトランティス星人が開発した、強襲用ロボット兵器。まだ人間を模した戦闘ロボットが開発されていない時代の事だ。


 今から数百年前。アトランティス大銀河を制し、更なる大宇宙に乗り出そうと言うアトランティス星人が作り上げた、記念オブジェ。


 実物の全長は、高さ400キロメートル、横幅500キロメートル。大体、グレートアトランティスと似たような大きさだ。・・それをシルエットの2メートルサイズまで押し込めるのは、中々大変だ。主催者だからと言って、アヴリオも頑張ったものだ。


 遺跡並みの旧兵器だが、実戦闘能力は、高い。そもそものコストが2、30ケタ違うので、先の最強ロボットよりも強い。・・つまり、同程度の資材をかければ、戦闘ロボットや母艦で編成された部隊が上回る・・。比較するとそこまででもない、現代に於いては流石に博物館行きのモデルだ。これだけの性能を必要とする事態も、無かった。本当に、飾りなのだ、これは。



 それでも、最新のシステムにそっくり入れ替え、慣らしの時間さえあれば、時間稼ぎくらいは務まる。


 唸るほどの資源惑星があるのだ。いくらでも修繕出来る。


 アヴリオはアトランティス星を掌握してから、これをゆっくり修復し始めていた。・・こんなものを修理する余裕があるなら、他の兵器を量産していれば良いものを。何故?



 アトランティスの民のためだ。ロボットが作り出した、ロボットにしか生み出せない創造。人間の業では作りえない、造神ぞうしん


 人類にロボットの偉大さを教えるために。


 人を、より正しく導くために。


 人のために。



 アヴリオは製造されてより、この考えを違えた事は、1度たりとも無い。




ギイン


 炎を避け、尾を乗り越える。長剣を1本無駄にしてしまったが、意味はあった。剣で尾を貫き、諸共に床に突き立て動きを封じる。


 短刀を「取り出し」、突き刺す。毒を塗ってあるこれは継続ダメージを叩き出すので、わずかずつでも削れる。


 更なる炎を、伸ばした棒を回転させ防ぐ。炎の無効化した領域を進み、そして。


ガ!


 その棒を、回転させたまま飛ばし、追撃で槍をブン投げる。




「絶好調だな」


「ああ。雲技知明。いつもの実力を遺憾無く発揮している。この大舞台で。流石だ」


 負けた鬼業とプラテニウス。もう、仲間に頼るしか出来ないが、その仲間こそが地球最強の3人。頼りにして、余りある。




 攻防武器を選ばず。


 攻防流は、基本的に身体能力に物を言わせるタイプだが、武器も平気で使う。効率が良ければ、全く問題無く何でも操る。


 ただ、日本国内で銃器は、面倒が多過ぎるので、そう熟練してない。対銃の心得だけだ。


 一殺宝仕が棒を操るのも、容易に入手出来るからだ。近所のホームセンターでも、山の竹でも。どれだけ練習して壊しても構わない道具。真歩に取っては、リアディウムは実戦練習の場であり、遊び。ゆえに、棒以外を必要とはしていなかったが。知明は違う。


 攻防は面白い。だが、どれだけ磨こうと、現代社会では暗殺など出来ない。暗殺を依頼してきた人間ごと殺して良いなら、知明は受ける。だが、自分の意思によらない戦いはしたくない。殺すかどうかは、自分が決める。


 そんな知明が高校生の時に出会ったのが、リアディウムだ。


 攻撃しても、されても、怪我を負わない、死なない世界。


 誰とでも戦え、何度でも戦える世界。


 天国か。


 知明は、リアディウムにのめり込んだ。


 そして、リアディウムを知る。




オ!


 知明の手持ちの銃から、光線が伸びる。レーザー銃だ。




「器用なものよ」


「必殺登録を上限までしてある。お前とは正反対だな」


「不器用で悪かったな」


「ま、人それぞれだが。こうも工夫してくれると、嬉しくなるな」


 プラテニウスは、今だけ大会の意義を忘れ、ただリアディウムプレイヤーに感謝した。それはアトランティス星を取り戻すための手段だったが、それでも自分も参加したプロジェクト。そこでの創意は、とても嬉しかった。




 知明は、主武装を必殺技として登録し、いつでも取り出せるように設定してある。副武装の意識で切り替えが出来、戻す事も可能。


 ただ、ここまで便利でありながら、余人が使わない理由もある。


 数多くの主武装を用いる以上、当然それら全てに習熟していなければ、意味が無い。例えば。何となく扱える剣と槍、それで、剣の達人とやり合う気になれるか?と言う事だな。


 1つの武装を極めきった方が、強い。世界ランカーでも、それが1位2位でも、武装は1つだ。


 知明はその中にあって異様。複数の、11種の武装を使いこなす。


 長剣、短刀、槍、棒、レーザー銃、手裏剣、ブーメラン、早弓、手投げ弾、大筒。そしてメインの格闘。



 確かに、主武装を増やせば、武器破壊を食らった時に頼りになる。だが、それでは、武器を大事に出来ない。


 これは精神論ではない。


 武器の取り扱いから、細心な心配りが抜け落ちてしまう。それでは、性能を引き出せない。全ての武装が、お飾りに成り下がる。


 一本しかないから、壊されない立ち回りをするようになる。技を磨ける。


 ゆえに、複数の武装を推奨する指導者は皆無。己を預けられる武器を選ぶ事を指示する。


 それに、学生レベルなら、複数の武器を練習する時間など、絶対に無い。これは、プロになっても、そこまで変わらない。例え、拠辺無交を実践出来るレベルであろうと、未熟な扱いでは、同じく拠辺無交を使える者には勝てない。まあ、その領域で未熟なプレイヤーは流石に絶無だが。




 レーザー銃からの光線が、ことごとく弾かれる。直撃しているのに。


 竜の装甲は、プロテクション無しでも、それなりに堅い。戦闘ロボットクラスのレーザーを弾く程度には。


 知明の持っている銃は、シルエット標準の威力を超えていない。武具に特殊な性能を持たせていては、制限が重くなる。全ての武装が、並みなのだ。


 しかし、硬い。剣は良く刺さったものだ。



 この気付きは、重要だ。いくら堅いと言えど、シルエット準拠ならば、竜もそこらの重量級と変わりない。突破は不可能では、ない。


 光速で移動し、最強級のプレイヤーの動きに平然と付いてくるだけの、ただの重量級だ。


 どうってことは、ない。




 走れ、天裏開白てんりかいびゃく大宝仕だいほうし




 それは、日本最強の称号。


 天地万物の全てを屠る者の名。



 世界有数の実力者でありながら、そのシルエットの真似をする者は居ない。


 なぜなら、天裏開白大宝仕のパラメータは、ゼロ。


 ムミョウのように、パワーとスピードに割り振って、防御ゼロなのではない。最初から、制限無く、ゼロなのだ。全ての能力が。


 その代わり、必殺技登録をしたいくつもの武装を引き出せる。減らした能力分の「浮き」が存在するからだ。


 とは言え。全ての能力値がゼロとはつまり、シルエットは、プレイヤーの素の身体能力のまま。



 現在、知明は、生身でアトランティス星の守護竜と戦っているのだな。




「鬼業さんもあれだけど。知明は、怖いね」


「うん。多分、私達を殺せる。要注意人物」


 テレス、アトムには、色々な意味で警戒すべき人物だった。ライバルであり、もう1つの意味での敵になり得る人物。




 竜が1度身震いしただけで、長剣を振り解かれた。と言うより、尻尾の中に突き入れた剣が、尾の動きによってへし折れたのだ。あまりにも硬度差が有り過ぎる。


 だが、接近戦なら、行ける。遠距離では話にならないが。レーザーで目を狙ってすら、ダメージが入らない。生身の人間のプレイヤーなら、ヴィジョン内処理によって見えにくくされるのに。ロボットはすごいな。


 実は、ここら辺の処理は知明にも詳しく分かっていない。オーバーコートと同じく、無数のカメラがある設定なのか、それともシルエットとしては竜の両目がカメラなのか。まあ、その場合、竜は視覚以外の能力でこちらを察知していると言う事で、もっと不味いのだが。



 拠辺無交に、更に自前の隠密を混ぜる。鬼業の感覚からすら逃げる自信は有るが。




 いとも簡単に捕われた。竜のかぎ爪が、右腕に食い込む。これだけで、400ポイントダメージ。やってられんな。



ガガガ!


 そう思いつつも、武器を出し続け、刺し続ける。敵の速度は、確かに速い。だが、攻撃のパターンが限定されている。


 敵爪に、手裏剣を刺し込み、ブーメランで押し込み、更に早弓のつるで極め、固定。それぞれ、必殺技を食らうか、3回の攻撃判定をもらうまで、持つ。指をこじ開け、脱出成功。



 甘いのだ。敵ロボットは、恐らく、実戦なら1撃で相手を抹消出来るのだろう。しかし、そのままで、リアディウムを戦ってしまっている。




 ここでは、君の攻撃は、何者をも消せないし、消す必要も、無いんだよ。





 距離ゼロで大筒を撃ち込み、爆発の衝撃を利用して離脱。威力の無い大筒には、自分への判定が発生しない。


 そして、ここが勝機。




 拠辺無交から、攻撃にかかる。


 先ほどは迎撃されたが、さて。


ゴ!!


 やはり!!尻尾がきた!


 これを食らうと終了。避ければチャンス。分かりやすくて、好みだ。



 速度自体は、竜のが早い。それでも、その体さばきは練れてない。ドラゴンの本当のサイズなら、身体のこなしなど、考えるだけ無駄。無意味な情報だったのだろうが、今の大きさでは、重要なポイントだ。


 このように。



 自身の数十倍の速度であろうと、同じルートを通る攻撃など、読める。見える。


ゴオ!!


 掴み、投げる!尻尾を引き込み、竜を頭から叩き付ける!



 君の本来のサイズじゃあ、投げられた事は無かったでしょ?


 楽しいよねえ。自分のものではない力で体を振り回されるのって。




 竜の動きを待たず、腹に手刀を打ち込む。知明の本気なら、素手でロボット兵を真っ二つにするぐらいは出来る。


 どうやら、竜にも効くようだ。


オ・・


 炎を吐く気だった竜の口を、蹴って塞ぐ。


 そして、尻尾を背中にひいて仰向けの竜が起き上がるためには、横に転ばなければいけない。


 これは、ワニや亀に似ている。武術家のたしなみとして、猛獣殺しをこなしている知明には、何となく推測が立った。


 やはりこの竜、格闘戦の経験が全く無いのだ。




 これから知っていけば良いのさ。


 今日が、君の始まりだ。




 何とか起き上がろうとしていたが、流石に上からの無数の拠辺無交での加撃には太刀打ち出来なかった。どれほど速かろうと、出足の速度だけはどうにもならない。「本来の」大きさも、それを助長してしまう。超大出力エンジンを数万基搭載して、ようやっと実現する体格なのだ。


 シルエットであろうと、重い。一度、体勢を崩されれば、そのような想定を全くしていない竜は、倒れたままだ。



 決着。


 勝者は、ドラゴンキラー、雲技知明。




 今回の相手は、もっと経験を積めば、もっと楽しい戦いが出来るはず。イデアに相談しよう。


 知明は、この大会の次を考え始めていた。

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