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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
63/89

挑発。

 真歩はストイック過ぎる。もう少し、視野を広げても良い。己業は己業で、欲に従っているだけなので、あれに習えとも言えない。


 4回戦。相手はロボットチーム。


 ロボットしか居なかったブロックをくぐり抜けてきた、のではなく。勝ち上がったチームが精神的疲労によって、敗北してしまったのだ。ロボットの強さは、一定。あるチームに対してだけ、大会中に弱くするのは流石に無理だ。不公平と取られる。


 だが、他の星の人間が勝てるレベルなら、地球人チームが戦う意味は無い。


 ここで己業チームから、アヴリオに対して、今回限りの強さの引き上げを要求。可能な限り上げても、アヴリオを上回れないなら、それで良い練習になる。アヴリオを超えると負けてしまうので、アレだが。


 アヴリオにデメリットは無い。これを受け入れる。己業チームの敗北は、歓迎出来るからな。




 己業と真歩の提案を残り3人は見守った。雪尽は己業の取る行動のほとんどを肯定する。滴は、イデアが何も言わないのであれば、殊更に否定もしない。このチームは、勝利が最優先ではない。


 イデアは、この試合が最後だと思っていた。次に当たるのは、間違い無く、アヴリオの用意したチーム。練習をする余裕は、無い。これが、最後の実戦練習。




 貫通城を、実戦レベルにまで高める。己業が1番手として名乗りを上げた。



 1人目。ロボット、と分かっていても、そう見えない。ロボットチームの中身は、戦闘ロボット。もしこの会場で、何かが起きても即対応出来る。そのような事は起こさせないよう、監視の目も行き届いているが。人にまぎれる能力を持ったロボットは、表情のコントロールまで可能だ。



 可愛い。己業は、そんな事を思った。女性型のロボットだったのだ。人間社会には、当然、女性しか立ち入れない箇所も存在する。女性型男性型の両方が実用されている。




 まあ。己業の思いなど関係なく、手加減の無い戦闘ロボットの実力。教えてもらおうか。


 全員、実は興味津々だった。イデアも含めて。




 開始!



イ!


 早い!


 素早い踏み込みからの、伸びる蹴り。己業も、ちょっと本気で躱した。シルエットは、ロボット本体。やはり他の星の者達と同じく、実際の能力が再現されているのだろう。


 ただ、その場合、勝ち目はほぼ無い。鬼業なら何とか、と言った所か。


 生身でアトランティスの戦闘ロボットと戦う想定をしていない己業達には、キツ過ぎる。



 どうでも、良いがな。


 戦うために来ているのだから!



ゴ!


 ロボットより早く踏み込み!突く!


 100ポイントダメージ。ムミョウのパワーで、これか。かなり堅い。


 だが、クレミジのあの人に比べれば、もろい。あの人と戦っていなければ、恐るべき硬度だったろうが。


 それでも、良い速度だ。己業でも1撃しか入れられていない。拳の勢いを巧く利用して、後退した。


 進んだ科学技術を持っている以上、強力な兵器をり取り見取りのはず。それが、基本身体能力まで高いのか。弱点は、無さそうだ。



 己業は、レーザーを避けながら思考していた。全身全部位から放射されるそれは、大きな回避行動を取らなければ避けきれず、己業と言えど、反撃が出来なかった。


 フィールドはアトランティス星トレーニングルーム。自由に動けるから、回避はしやすいが。


 逃げ場も無い。隠れる場所も。



 正面からなら勝てると言う自負か。



 これは、己業の勘違い。単に、全種族、誰でも実力を発揮出来る環境にしただけの事。



 だが、己業のやる気には火が点いた。



オ オ


 純粋な歩法、以無の戦闘技能を用いて、敵に近付く。踏み込むと見せて、回り込む。左右の移動と見せて、真っ直ぐ。そんな単純なフェイントを、人類の限界速度で実行。


 アトランティスのロボットは、光速に余裕で対応出来る。だが、身体はそこまで付いてこれない。いくら何でも、プロテクション無しではフレームが持たない。そして、ヴィジョン内では、プロテクションの発動は確認していない。これは不可能なのではない。


 実際、鬼業達もオーバーコートの練習をヴィジョンで行っていたのだ。「シルエット」としてのロボットからは、プロテクションをカットしている。それだけだ。


 反応速度は十全。だが、そこから、身体反応の限界が来る。ロボットの視力は、己業の動きの詳細までも見えてしまう。だから、反応を起こす。


 人間の格闘技熟練者ならば、無意識にフェイントと断じ、わざわざ反応しないように目に映ったモノを意識から切り捨てる。しかし、格闘プログラムを仕込まれていないロボットには、そのような技巧は無い。ロボットの身体そのものの硬度さえあれば、技巧など無用。技、と言うものは肉体性能の壁を超えるための力。その肉体の能力で、生物を超えきっているロボットには、戦闘技術など不要だったのだ。


 ロボットには最早、人間を観察する必要も、人間の動きを見極める必要も、無いのだ。



 この1分ほどの戦闘で、己業は見極めた。


 この、真正面からの試合、完全に己業の得意分野。そこで1分は、時間がかかり過ぎとさえ言える。



ピタ


 急に足を止めた己業目掛け、レーザーが来る!


 うむ。反応が素直過ぎる。人間なら、恐る恐る、フェイントではないか?と疑いながら攻撃するものだ。


 と、隙だらけになったロボット頭部を掴み、溜めておいた貫通城を打つ。直後、頭を揺さぶり視界を殺す。そして離れる。


 簡単なようだが、レーザー発射時の一瞬の待機時間を狙った奇襲。己業の思い切りの良さが光る。



ギ・・


 おー。効くのか。


 ロボットは、まともに歩けなくなっている。



 一応、己業は後続の4人のために、ロボットのデータを取っている。どの程度、何が出来るのか。


 これは、他の人間のために、と言うよりも。1回戦と同じ。野牛や戦草寺がしてくれていた事を、自分も。確実に丁寧に、こなせるようになりたい。


 自分も、チームメイトとして、働ける男になりたい。


 ・・・他の4人は、己業より強いのだ。仲間のために動く必要までは、無かったりする。



 更に撃ち込まれたレーザーは、己業からわずかに逸れていた。まだ、ロボットの視界センサーが復旧していないのだ。恐らく、バランサーも再調整の真っ最中だろう。それでも、攻撃を選択出来るのは、つまり無理が出来ると言う事。多少の損傷なら、問題無く動けるのだな。



 不安定ながら攻撃し続けるロボットの間合いに、容易く踏み込む己業。



 もうちょっと接近戦を練り上げたら。強敵になるな。



 全部位を攻撃し、決着。もろい部位を見出そうとしたが、どこも堅い。流石。




 弱くはないが。このレベルで、本当に星星を制圧していったのか?・・・無理だろ。


 まだ、手加減しているのか。



 己業は、ちょっと考えた。



 挑発してみるか。




 2人目。全く同じ見た目、女性型だ。ロボットと知っている己業ですら、普通の人間にしか見えない。


 やはり可愛い。しかしそんな思いはおくびにも出さず、己業はムミョウになった。



ゆるり


 遅い。先ほどまでの超高速移動とは全く違う。ただ、歩き、距離を詰める。



 レーザーが体をかすめる。しかし、判定は発生しない。予想程度だが、効果範囲は先の試合で見極めた。


 軽い足取りで、当たり前のように避ける。予兆の無いレーザー射撃だが、敵は何も考えず撃って来る。一定の間隔で回避行動を起こせば、必ず避けられる。


 工夫が、何も無い。



ぽこん


 避けて、打つ。軽く、当てる。それでも、格闘タイプのムミョウは攻撃判定とダメージを与えられる。


ぺこん、ぽこん


 打つ。舞いにも見える動きで。裏拳で以って、遊んでいるかのように。見る者が見れば、その足運びだけで大変な技量と分かるだろうが。


 アヴリオには、分からぬ。格闘術は、そう重要視されていない。人の動きを止めるに必要なのは、電撃や拘束ネット。格闘など不要。ゆえに、アヴリオは、それらの知識を置き去りにした。余計なデータは、余分な処理時間を生む。無駄の処分も、大事な仕事なのだ。



 しかし。メッセージは正確に受け取った。会場中を視ているアヴリオは、はっきりと承知した。


 もう少し、引き上げるか。ロボットの本当の能力を知られるのは、マイナスでしかない。だから、半分ほどに抑えていたのだが。それでも、己業チームに勝てると思っていたのは事実。それが、こうも手玉に取られては、沽券に関わる。恐怖で支配出来なくなる。


 ・・人間が勝てるなどと。


 思い上がるな。




ゴギイ


 最後の一撃は、全力で吹っ飛ばした。ロボットは頭部を地面に叩き付けられ、決着量を満たした。ムミョウには、触りも出来ずに。



 この2体目のロボットの敗北を以って、アヴリオはこの試合のロボットの戦力を8割にまで引き上げた。雪尽には勝てないだろうが。ムミョウだけでも倒せれば、ロボットの面目は保てる。




 3人目。立ち居が、違う。挑発は効いたようだ。


 開始!


オ!


 レーザーは来ない、だがレーザーより早い踏み込みが来る!!!


ゴ!


 これは、打撃音ではない。ムミョウが全力で床を蹴り付け、回避した音。



 開始1秒以内で、己業は余裕を失った。




「不味い」


「そう?」


 雪尽は、正確に両者の力量が分かっているわけではない。だから、ムミョウのピンチなのか、チャンスなのか、全然分からない。だが、己業は、己業であれば。それで良い。


 対して真歩は、2人の比較がかなり正確に出来てしまっていた。


 さっきまでのロボットと、全くの別物。


 ・・・・知明レベルに、見える。





 ムミョウが貫吼で隙を作ろうとした瞬間、ロボットは、背後に回っていた。


ザン!


 己業はその場で直上にジャンプ。ロボットのレーザーを躱した。そして、気を打ち込む。だが、ロボットはもう居ない。




 やる。先ほどまでは感じなかった怖さがある。


 でも。こんなもんじゃないはずだ。


 この程度なら、頑張れば誰でも勝てるだろう。




 親父並みと言うその実力。


 全部、出せ。




 己業の目的は、仮想父を倒す事だった。

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