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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
62/89

歩き方。

 真歩は、試合の1番手に選ばれた意味を理解していた。


 このチームで、今現在、自分が最も未熟なのだ。



 見返すためにも。自分のためにも。より良い戦いを。



 相手はエスティヤトリヨ銀河、アルニ星人。いよいよ、アンディヴィオティカ主導層のメンバーだ。その中でも、穏健派に位置していると言って良いか。ここら辺の知識は、イデアがアヴリオからもらったものだ。


 主導層だからと言って、リアディウムが強いわけではない。むしろ、強烈に叩きのめした方が、後々楽かも知れない。支配するためには。


 主導層からは、2種族のみが出場している。穏健派代表のアルニ星人。そして、実行派のモスハリ星人だ。


 モスハリ星人は、アトランティス星のプロテクションを食らう兵器を発明した、超武力行使派閥。アトランティス星とのケンカに正面から勝つつもりの人間達だ。


 アルニ星人は、それとはちょっと違い、ある程度の膠着こうちゃく状態に持ち込んだ後、和平を結ぶ。殲滅戦争になると、アトランティスは何をするか分からない。また危ないロボットを開発されても困る。追い詰め過ぎず、こちらの生を確保する。



 言うまでもないが。アルニ星人も、プロテクションを食い破る理路は知っている。アトランティス母艦の倒し方も。




 開始。


 舞台は綺麗で清潔な施設。宇宙船の格納庫だろうか。ちょうど、ライキ・アゴラを思い出した。さっきのドマタ星人は全員、荒地のフィールドだったので、新鮮な思いだ。



 事前にイデアから、注意を受けている。油断しないように、と。


 なら、そうしようか。




 対戦相手が1歩踏み出した時には、一殺は背後に回っていた。5発、全部位に当てて決着。



 ダメだ。このレベルでは、何も掴めない。準備運動にでもするか。




 2人目。1人目と同じく、装束も見かけも、地球人と何ら変わりない。妙な戦闘服らしき衣服ではあるが。特殊な能力は持っていないのだ。それなら、素直に標準シルエットでも使えば良いものを。


 何か、理由でもあるのか?


 1人目は問答無用で倒したが、実は技を隠し持っていた?




 油断をするなと言われた。うむ。


 油断せず、私の糧とする。



 とりあえず、後退。どうとでも対処出来るよう、気は抜かず。




 試金石だ。イデアは、真歩の成長を願ってはいたが。ここで伸び悩むのもまた、有り得る現実。


 人間は無限の可能性など、持っていない。


 そんなものが有るなら、人類全員がノーベル賞とオリンピック金メダルを取れていなければオカシイだろう。


 遠不真歩は、間違い無く現時点で世界100位以内に入る逸材。だが、これからも素晴らしい成長をするかどうか、それは分からない。


 伸び悩むあまり、リアディウムが嫌になるかも知れない。また、他の、別の生き甲斐を見い出すかも知れない。専業主婦とか。


 その道の全てが、実は正しい。


 リアディウムなど、やる必要は、無いのだ。


 だから。真歩が自らを鍛え上げようとしているなら。邪魔をしない。勝利から遠ざかったとしても。活路は、どこにあるか分からない。


 願わくば、皆にとって良い未来に近付けるように。




 敵の両腕がせわしなく動く。何かを仕掛ける気だ。


 真歩は小刻みに、定期ペースで円を描き敵の周りを回っていた。いつでも加速して回避出来るように。


 開始、6秒。何も起きない。これ以上待つと、戦闘継続意思無しを取られる。


 まだか。



コ、ア


 発光。まばゆい程ではない。敵周囲が、蛍の光ぐらいに輝く。


 輝光白蛍?


ガ!


 違う。


 攻撃がきた。蛍火が、突っ込んできた。



 だが。遅い。泉鬼副武装のお札並み。砲撃の速度では全くない。恐らく、副武装の意識で動かしているな。見えにくいのは優秀な兵装だが。


オ オ


 全てを置き去りにして、本体を叩き潰す。


 決着。




 本来。プロテクションを食い破る兵器である以上、スピードは問題ではなかったのだろう。完全機械化が進み、人間のコントロールに依存したシステムなど、どこの星ももう積んでいない。


 だが。超兵器であっても、行き届いた操作が無ければ、ガラクタと変わる所はない。いきなりヴィジョンに適応させるには、難しかったか。特に、人の操作では。



 これは、期待出来ないか。残り3人。


 せめて練習させてもらおう。




 分かりきっていた事だが、真歩は強い。それでも、あまり気持ち良くなさそうだ。自画自賛になるが。自分なら、ムミョウなら、もっと真歩を活かせる。一殺宝仕は、もっと動ける。


 この大会が終わったら。5戦くらい付き合うか。




 3人目。今度は、長剣をたずさえている。



 ・・・そうか。妙に違和感を覚えると思ったら、こう言った未熟な手合いの相手は、今まで剣好宝仕がやってくれていたな。楽をさせてもらっていたのだと、改めて実感。


 棒は出さない。素手にてお相手しよう。



 「意識」しながら、連打。知明に見られていると、不味い。バレなければ良いが。




 同刻、雲技知明は、プラテニウスの試合を見ていたので、そんな心配は無かった。鬼業と一緒に、試合終了後、ちょいちょいアドバイスを入れるためだ。プラテニウスには、まだまだ伸びる余地がある。重点的に鍛えていた。




 己業は、真歩の動きの変化に気付いた。何かを試している。クレミジ星のあの人にやろうとしていた事か。



 雪尽は、己業がより真剣に見始めたのを察した。体が密着しているから、わずかな身じろぎだけで分かる。


 この己業は、僕のモノじゃない。戦う己業は、己業そのもの。以無の己業だ。その姿は、僕を寄せ付けない。むしろ、突き放す。


 生身のままならば。


 シルエットやオーバーコートがあれば、己業の側に居られる。


 でも、今回限りかな。なぜかおじさんに呼ばれたからきたけど。ここは、己業の場所。キッチンが僕の場所であるように。


 こうして遊ぶだけなら、良いけどね。


 絶対的なリアディウムの資質。しかし、雪尽には、やるべき事があるのだ。戦の時間があるなら、雪尽は、料理をしたい。


 誰かの賞賛の声も、表立った評価も、何も要らない。ただ、己業の気持ちだけが欲しい。


 「遊びごと」にかまけて、己業の心を失うのは、絶対に、断じて、嫌だ。


 もちろん、己業との、こうした旅行は素晴らしい事態だ。





 長剣を素手で砕きながら、決着。


 一殺はノーダメージ。剣の判定は剣の腹には無い。そこを突くなり何なりすれば、どうとでもなる。無論、動いている敵の動かしている武器を正確に思い通りに突き抜くのは、常人の業ではない。


 それでも、まだ足りない。技の完成には、遠い。




 4人目。カノン。



 レーザーか。ここにきて、やっとリアディウムらしくなった。しかし、レーザーは動き続ける限り、当たりはしない。


 うーん。もっと慣れてからなら、楽しめたかも知れない。流石に、準備期間が短過ぎたか。高校大会も、1年がかりでシルエット構築、レギュラー決めを行う。


 ここら辺、2ヶ月で全国出場、4ヶ月で全国優勝した技四王が狂ってるのであって、普通は厳しい。その技四王ですら、3名では、今大会の己業チームにも鬼業チームにも、アヴリオ達にも、誰にも勝てはしなかっただろう。


 次の大会までには、何とかしたい。それは、真歩のみならず、戦場いくさばを求める者全員が感じていた課題。・・・・4年も修行を積めば、だいたい伸びるだろ、多分。




 レーザーは一瞬で通り過ぎる。だが、直線の攻撃は読み易過ぎる。


 まあ。練習相手としては、問題無い。



 レーザーを、斬る。棒は出していない。手刀で、だ。このやり方だと、普通に腕部判定をもらうので、そう多くは試せない。破壊されるまでのお遊びだ。


 しかし。自分でやっておいて、あれだが。可能なのだな。


 一殺本体をレーザーの前にさらしながら、着弾前に斬る。「斬る」と言う表現を使っているが、つまり手刀に攻撃判定が生まれているため、本体には届かない。ダメージは着実に溜まっているから、皆は真似しないように。



 右腕破壊。600ポイントダメージ。腕が壊れると同時、敵背後に現れた一殺は、1秒以内に決着量を満たした。



 決着。




 マナー違反ギリギリの状況だ。舐めた試合運びと言われても、反論は難しい。非紳士的行為は無かったにせよ、格下をいたぶったのが事実。


 あまり褒められた事では、ない。



 真歩の「試し」を知っている己業らはともかく。観客のレベルでは、一殺が何をやっているのか理解出来なかっただろう。知明に理解されても困るので、それはそれで良いのだが。



 だが、違反でないのなら。


 人目など、真歩はどうでも良かった。まだ左腕が残っている。もう1度だ。




 5人目。マシンガン。時代が、さかのぼってないか?と疑問を持ったが。


ゴゴゴゴ!


 音が、違う。リアディウムに於いては、軽火器に属し、弾数で勝負するタイプの武装だ。それが、この音。


 カノン並みのダメージを実現しているのか?



 その、砲撃級のダメージを叩き出す連撃を、造作も無く真正面から回避し続け、ゼロ距離にまで接近。敵の攻撃は、全く緩んでいないのに。




 あれは、実際にやられると、心が折れる。はずだが、真歩と己業にはその経験が無いので分からない。回避されたなら、当たるまで攻撃し続ける人種なので、諦める選択肢が無いのだ。・・敵の強さと己の弱さにブチ切れて、更なる勢いで襲いかかる事は、良くある。


 滴だけが、不味さを覚えた。もう少し、接戦を演じても良い。もしくは、圧倒的な力で打ち倒すなり。


 この超回避も、恐怖を覚える光景なので、今大会に限っては問題無いが。


 一般観客が入る舞台では、絶対に不味い。




 左腕一本で、敵武器から始まり、部位を破壊し続ける。相手の装甲もそれなりだったようで、全部位を破壊した後もなお攻撃しなければならなかった。



「ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」



 どちらのチームも、すっきり爽やかとは行かない。アルニ星人は恐怖と悔しさ、己業チームは足踏みするような感覚を得た。



 滴は、真歩に話しかけた。


「真歩。あなたは何も間違った事はしていない。けれど、お客さんが沸いていない。もっと人を楽しませなきゃ」


「私は、まだプロじゃない。滴さんの言葉でも、従う道理は」


「プロになったら、いきなり出来るようになるの?」


ぬう


 真歩は、言葉を返せなかった。


 そんな事は不可能だからこそ、自分は技を磨いている最中なのだ。自分の考えた技すら自在にならないのに、他人を思いやった行動が即日取れたりするものか。



 真歩が通りすがりの赤の他人なら、滴はこんな事は言わない。


 真歩は、必ず世界戦に顔を見せる、つまり後輩になる。世界で戦う日本人戦は必ず盛り上がる。真歩が試合の「こなし方」を知っていれば、もっと。


 強さを競う試合も面白い。それはそれで間違っていない。


 だが、それで楽しくなければ、問題だ。


 観客は練習風景を見に来ているのではないぞ。


 己業などは、大真面目に強さを突き詰めながら、しかし遊びたい気持ちもありのままに押し出す。それが、結果として面白い試合を作っている。リアディウムの才能なのかも知れない。


 真歩はそこに、意識しさえすれば、たどり着ける。


 滴にとっては、強敵、商売敵の誕生だが。「ライバル」の居ないプレイヤーにはドラマが生まれにくい。己業は知明と組む。真歩は、まだフリー。


 おや。私もフリーなんですよ。



 大動滴は、単なるお人好しではない。


 考えているお人好しだ。

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