大動滴。
アヴリオは敵になりうる2チームの実力を把握した。イデアと言うロボットだけは未知だが。見た目、旧タイプ。いかにチューンしようが、人型サイズに入りきる処理能力の向上ペースには限度がある。それに、最も能力が高いのは、テレスとアトムの2人。あの2人になら問題無く勝てる。なら、イデアも脅威ではないはずだ。油断をする意味は、無いが。無為に警戒する必要もまた無い。
2回戦。相手はタヴェルナ銀河、ドマタ星人。1回戦では運良くロボットチームと当たっての勝ち残り。
この試合、勝敗は火を見るより明らか。問題は、勝負の中身だ。残り数回の実戦練習で、どこまで成長出来るか。
それは、この大動滴に取っても、同じ事。
開始!
滴のシルエットは穿始。1回戦のクレミジ星人と同じく、ほぼ生身。特徴は多彩な技。
相手のドマタ星人は、いわゆる超能力を操る人種だ。ある意味、クレミジ星人にも似て、武装は己の能力と肉体でまかなう。
だが、やはりアヴリオらには侵略価値無しと判断されている。
赤の化粧を身体に描いている。戦の構えだろうか。
攻撃が、来た。
ア
小さい何かが、飛んで来た。視認は出来なかったが、射出されたのは理解したので、とりあえず回避行動を取ってみた。
火力はなさそうだが、見えにくいのは厳しいな。近接で片付けるか。
チイ
鞭。これまた攻撃そのものは見えないが、今度は腕の振りが見えた。どこから発生して、どの経路で攻撃範囲が発動するのか、そして攻撃時間はどれくらいか。
滴の経験は、それらを何となく分からせる。
躱し、攻撃。盆水も鉄砲水も使わない。
使う必要が、無い。
鞭を回避、同時に飛んで来た遠距離火器を更に回避。接近成功。
鞭を発動させる腕だけを固め、ねじ伏せ、馬乗りになり加撃。
決着。
静かな、盛り上がりのない戦い。が、己業と真歩には見えた。
初見の相手との戦いで、ノーダメージ。これは、己業とオニオの一戦を思い出してもらえれば分かりやすい。相手の行動の一切が不明な状況下で、攻撃の特徴をさっくりと見極めた。
戦闘経験が、全く違う。これが熟練。
いつも通り。不安がる必要は無かったかな。イデアは、滴を見くびっていたかも、と反省した。
平静。泰然自若を象ったかのような滴。多くのヴィジョン、ドレス戦を経験したその胸中は。
か、勝った。何とか、なったあああ・・・。
あんまり穏やかでもなかった。シルエットが無意識に動くようになる程度には積み重ねて来た己だが。
油断のない滴には、ゆえに楽な戦いもない。
後ろから沸き立つ己業達の歓声。少し、デイズ・グロリアスを思い出す。そんな長い間、離れているわけでもないのに。なんて遠くに来てしまったんだろう。
2人目。青の外観。1人目より硬そう。しかし、やはり戦法は分からない。
ジャ
腕部が鋭化。手がそのまま剣と化した。
避けて、蹴り。避けて投げ。体を押さえ込み、終わるまで蹴り込む。
決着。
3人目。緑。見た目からは、何も分からない。
オ!
突っ込んで来た!接近戦がお望みか。しかも、2戦で、穿始の能力は見た上で、来る。
オ
滴は、後退。下がりつつ、鉄砲水を放つ。
1メートル範囲内に接近されると、鉄砲水を地面に向けて射撃。その勢いを利して脱出。そして、また撃つ。
決着。相手に何もさせず。
4人目。黄色。
ゴオ!
カノンか。やはり目には見えない。何故なんだろう?
回避行動を取りつつ接近。カノンの射撃間隔は、1秒半。これなら、火力は低いな。食らっても、まあ問題無いか。
とは言え。わざと食らう理由もない。
決着。
5人目。紫。色合いは、最も毒々しいと言うか、怖い。人類の色か、これ。
歩いて来る。接近速度は、遅い。
やばい。滴は盆水を発動、同時に飛び込んだ。
全周囲攻撃を食らって周囲を警戒し始めた相手に勢い良く組み付き、転ばせる。鉄砲水を距離ゼロで撃ち込みつつ、蹴る。
決着。
移動速度が遅いのは、高火力の証。いかなる秘奥があったのか知らないが、出させなければ、無いも同じ。
「ありがとうございました!」
お互いに礼。1回戦を越えて来たチームは、何となく試合様式を知りつつあった。
無難に終わった事に心から安堵しつつ、滴はリラックスし始めていた。いつも通り。やってみれば何の事はない、ただのヴィジョンだ。
雪尽にはまだ分からない。滴のすごさが。だが、己業と真歩には分かった。拠辺無交も使わず、自身の実力の全ても出し切らず。初見の相手を完全に封じつつ、ノーダメージで5人抜き。
尋常な実力ではない。これは、雲技知明レベル。これが、世界か。
イデアは特に驚きもせず、思案していた。次は、誰を出す。そろそろ全員が温まって来ている。誰を出しても良いが。
3回戦も、すぐに始まる。猶予は、そうない。誰を伸ばす?




