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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
59/89

真歩の歩み。

ふう


 唸るほどの傑物だった。本当に、宇宙に出てきて、良かった。


パン


 次の人間とハイタッチ。このチームでは、己業が1番弱い。・・・冷静に考えて、ものすごい事実だ。


 次は遠不真歩。押しも押されぬ、全高校生トッププレイヤーの1人。最上位3名の内の1人だ。


 だが、その戦績は、振るわない。敗北の味しか、知らない。


 優勝経験が、無い。これは、仲間が弱かったとかの理由ではなく。


 敵が、もっと強かったからだ。仲間より、自分より。



 優秀な能力ゆえの、贅沢な悩みだが。


 今大会の敵は、知明を含む超精鋭。あらゆる能力に於いて自分より上の知明が3番手に回るチームと、そのチームで勝てないアヴリオ。


 また、負ける。




 私が、弱いままならば。




 開始!



 敵は、ムミョウを倒した怪物。少なくとも、地球人類では勝てるまい。



 なら。私が勝って、この世の誰をも超えて見せよう。




 そうは言っても。取れる戦術には、限りがある。格闘は通じないと見て良い。ムミョウのパワーで、50。一殺なら20か?


 棒で打っても、反動は来るのだろうな。


 やれば、分かるか。



ゴオ!


 一瞬の風が吹き抜けた時、一殺宝仕の武器は砕け散った。




「速い。いつも通りの一殺だ」


「うん。でも、これからどうするんだろう」


 帰って来た己業は雪尽と並んで観戦していた。


 真歩の動きには全くよどみがない。ムミョウと同等の速さ。


 しかし、真歩には貫吼などの飛び道具が無かったはずだが。一瞬3撃の打ち込みにより、棒は失われた。流石に、シルエット本体にまで反動は来なかったが。




 一殺宝仕の攻撃により、150ポイントを与えられ、累計750ポイント。かなり厳しい状況と言えるが。


 老兵は、相手の動きを見極めた。先の者と同じ、動き回るタイプ。地に沈めるは難しい。なら、あれを。




 拍手の間。敵の両の手が打ち合わされる瞬間に、己が手刀を挟んだ。これで、敵の技は発動しない、かも知れない。更に不発が、敵の不調を招くやも。


 思った通り、腕力は入っていない。多分、単純な力なら己業より遥か上だろうが、格闘のつもりのない相手には、パワーはこもってない。




 防がれた。・・・今更か。手加減は、要るまい。



ビキイ


 右腕が、破壊された。ただ、挟み込まれ続けただけで。手刀を抜こうにも、まるで動かなかった。打撃は、相手からのダメージを招く。抵抗は、出来ん。


 組み技に行く度胸も、なかった。


 組みも、打撃も、無理なら。




 やめておけ。


 知明は、口に出さず真歩に語りかけた。真歩に出来るのは、もうアレしかない。距離ゼロにて発生させる殺傷術。この敵に効くかどうかは分からないが、人前では不味い。


 攻防流には、表に出してはいけない技がある。


 やめておけ。その化け物に負けても、恥じる事はない。



 それに。



 この相手に有効な技は、それではないだろう?




 ・・そうだ。右腕は、捕まえられている。


 好都合だな、この距離。





 敵左足が浮いた、その瞬間。恐らくは地割れを引き起こすつもりだったのだろうが。


 その前に、一殺が動いた。



 あらゆる組み技絞め技は、人間の耐久力を想定している。間違っても、鉄骨などを相手に関節技など、効きはしない。


 だが。例外的に、意味を為す技も、有るには有る。



オオ!


 挟まれた右手をそのままに、相手のあごを右足で蹴り上げる。それと時を同じくして、左足で相手右足を刈り取る。


 転ばせ、大地に叩き付けるつもりだ。


 あらゆる格闘術は、人間にしか効かない。


 だが、落下の衝撃だけは、重力の強さだけは、全ての物体に効き目が有るのだ。投げ技だけは、全物質に効力を発揮する。重力、大地の剛健さは、人間由来のエネルギーではないからな。



 それでも。



「強過ぎる」


「これって、全周囲攻撃とかも効かないのか?」


「さあ・・」


 知明は、想像以上の相手にじんわりと汗をかいていた。鬼業に話しかけられても、上の空と言った所だ。


 話しかけた鬼業も、答えを期待してはいなかった。


 大地を割り、空をす。


 人間業では、ない。


 そして、今も。




 一殺宝仕は、本気の速度で転ばしにかかった。最初の蹴り上げ1つで生身の人間なら死んでいる所だ。


 それで。


しん


 微動だに、せぬ。本当に、1ミリも動かせていないだろう。右足一本で立っている敵を、崩せない。重みが、まるで違う。


 真歩は、あたかも惑星そのものと戦っている感覚さえ湧いて来た。




 右の蹴りで50ポイント与えたが、100ポイントもらった。何なら、これを繰り返すだけでも勝てる。敵は、残り200ポイント。削りきれる。


 右手が、掴まれたままでなければ、な。この体勢では、まともな蹴りが打てない。貫吼と同じく、かすめた程度に扱われるのではないか。




 先ほどの若者と言い、皆、動きが早い。だが、元気で結構。


 若者よ、受け取れ。


たん


 浮いていた足が、踏み鳴らされた。やはり、軽く。



 また地割れか。だが、こうして絡み付いていれば、落ちは・・



ゾア



 隆起した大地、その鋭利な岩槍により、一殺は串刺しになった。


 その場に縫い付けられた一殺を置き去りに、敵は歩き去る。


 自らも食らったはずの攻撃なのに、相手はダメージを一切受けていない。どうにもならないレベルの堅さ。




 このままでは、負ける。己業が削り取った敵、戦法を見終わった敵に、何も出来ず。


 



「う、」



 ?



「う、おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



 老体は、ちょっと驚いた。ヴィジョン内では、相手の声は聞こえない。発声と言うシステムは、積んでいないのだ。だが。意気は、届いた。


 元気!



ジア


 刺さっていた岩を、左手刀で斬り捨てる。



「すげえ」


「あんな能力は、ないよね?」


「ああ。あれは、真歩の地力」


 雪尽の腰を抱いて観戦する己業。滴もイデアも、あまり気にしないようにしている。


 一殺宝仕には、パワーは無い。だが、操るは攻防流後継者、遠不真歩。その力量は、己業の妹、始業と同等。なれど、技量は、己業を超えている。


 石の1つや2つ、素手で切断出来るさ。



 やるしかない。目の前の相手は、石より堅い。それでも。



 何もせずに負けるなんて!!!!嫌なこった!!!!!



オ オ!


 あの、ムミョウとの戦いより、なお速い移動。観客でも、目に見えたのは、少数だろう。残像すら残さず、一殺は動き続ける。



 だが、それでは、あの空圧が来るぞ。どうする。



 現状。胴体部、右足に1回ずつの判定。そして、右腕の破壊。ダメージは900。右手を挟まれた攻撃が、3回効いたのが痛かった。それでも、あれで良く生き残った。理由が、相手の気まぐれだとしても。



 敵は残り200。削る自信はある。


 だが、それは己業ありきの勝利。


 これはチーム戦なのだから、それで良い。と、普段の真歩なら思うが。



 己業の、あの意地を見せ付けられては。自分も。何かをしないでは、いられない。




 こんな場所で見せる気は全く無かったが。仕方無し。それに、今の自分が打っても、知明には当たらなかっただろう。


 試しとしては、最高だ。幸運と、するか。



チ・・



 あの手・・。


 老兵は、一殺の左手刀に恐怖を感じた。それは、2千年前の大地震以来の感覚だった。


 知る者は、誰も居ないが。




 ただ、兵は動いた。


ゴ、ロ


 雷光がフィールドを埋め尽くす。


 決着。



「ありがとうございました!」


「ありがとうございました」



 悔いは、ある。未熟のゆえに、最後の攻撃を仕掛けられなかった。しかし。実戦に於いてのタメ時間の長さも知れた、し。ケタの違う人類と戦えたのは、何物にも代えがたい財産。



「強かったね。頑張りなさい」


「え、はい!」


 今度は、こちらが言葉に詰まる番だった。真歩は、何とか相手に全力で返事が出来た。己より遥かに強い生き物。敬意を表するに余りある。



 古強者ふるつわものは、自らの役割を知りつつあった。なぜ、自分がこの場に招かれたのか。



 クレミジ星人達にも、もう驚きはなかった。この方なら、天雷を操ろうと、何の不思議も無い。


 とてつもない人を呼び出してしまった。




にいいい


 その笑みは、鬼業もプラテニウスも、見て見ぬ振りをするしかなかった。


 あいつ。最後の技は、僕も知らない。何を出す気だった?


 雲技知明は遠不真歩の成長を、確かに見た。




 そして3番手、何雪雪尽。初陣ういじんである。

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