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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
58/89

超越。

 やっと、3人。長い。あのオリーブと戦っていた時ですら、ここまで試合を長く感じた事はない。勝負は、いつだって一瞬だったはず。


 例外は、一殺と雪辺の2人。・・・・いや、馬新、お前を忘れたわけではない。だから、怒るな。


 もちろん、この宇宙大会では、各種族に合わせたシルエット調整、ステージ構成が取られている。高校大会と一緒くたには出来ないにせよ。


 強い。素人の集まりとたかをくくっていたが。こうまで楽しめるとは。


 礼を、したい。



 4人目。先の砂漠の者と似ているが、もっと暗い色だ。それに、恐らくは年長者。


 それは、最も古いクレミジ星人。クレミジ星初期から存在する岩石への擬態をした者。時代が進み、森や海などの生物豊かな環境に適応した者共が増えても、なお岩場に居続けた意地っ張り。


 実年齢、実に、9万5才である。



 開始!



のそり



 ・・・遅い。己業は、困惑した。最初からユキテラシとなり、全身全霊を以って、地球の強さを返礼とするつもりだったが。相手の接近速度が、思っていたより遥かに遅い。地形は、岩場。まあ、遅くなるのも理解出来なくはないが・・・。


 ど、どうする。相手が、慣れてからにするか・・。


 ちょいと小突くつもりで、相手に殴りかかるムミョウ。


 本当に、どうしよう。まさか、これで終わらんだろうし。とりあえず、4発ほど入れておくか。



 ・・・・。


キィ


 相手ダメージ200ポイント、両腕、胴体部、頭部に1回ずつの判定。


 ムミョウ、400ポイントダメージ、両腕に2回ずつの判定。




「あれは」


「ええ。ラストコアと似た体質の方ですね」


 滴には一目で分かった。あれは、ラストコア。いや、全くの異種族なので、偶然の一致なのだが。チームメイトと同じだ。


 イデアにも理解出来る。思想が、似ているのだろうな。


 だが、ラストコアとの明確な違いもある。




 こいつ。堅過ぎる。


 あのラストコアですら、ここまでの強度ではなかった。・・ならば。



オ!


 貫吼とおぼえ


 敵は避けない。そのような速度は、出せない。だが。


のそり


 50ポイントダメージ。




「堅い。貫吼で、わずか50ポイント」


「これは、計算ミスじゃないんですか?」


「いえ。それは、考えにくいと思います」


 実際に貫吼を食らった事のある真歩の驚き。滴の指摘に答えるイデア。


 もちろん、ヴィジョンスタッフが絶対に間違いを犯さないとまでは言わないが。今回の仕掛けは、イデアらとアヴリオら、地球、アトランティスの双方のチェックが入っているのだ。この両者が共に見逃すとは、思えない。


 なら、これは。敵の強度が、並外れているのか。己業や真歩の地力の速度で、シルエットの速度が引き出されるように。こいつは、本人が堅いのだろう。




 すごい。


 クレミジ星人一同、尊敬の念をあらわにしていた。あの敵のあの攻撃。あれを食っても、微動だにしていない。


 引っ張り出して来た甲斐がある。


 オニオは、クレミジ星中を回り、優秀な使い手を探し求めた。その間、ずっと噂に聞いていた人物が居た。


 1万年以上生きている、クレミジ全生命体で恐らく最長寿の存在。


 交渉は、あっさりと片付いた。


 「出張ってもらいたい」「良いよー」


 気が若い!だから、長生き出来るのか?



 9万年の歳月を経て、硬化と成長を繰り返し、化石になるはずの所を再硬化し続け、最早いかなる攻撃にも耐えられるようになった生き物。既に、人間は超えた。




 だが。それだけなら、どうとでもなる。己業には、貫吼があるのだ。遠距離から削り続ければ、楽勝。つまらぬ戦いではあるが。



 もちろん。己業の期待に、相手は応えてくれた。



の・・・


 貫吼を4発ほど食らった敵は、動きを止めた。


 驚くべき事に、貫吼には判定が発生するはずなのに、敵にはそれがなかった。完全に表皮で止まっているのだ。貫吼が、泉鬼副武装のお札と同程度に処理されている。あまりの硬度に、判定を生じさせられていない。


 これは、格闘タイプでないシルエットの格闘が厳密に判定されるのと似ている。触れただけでは、攻撃と計算されない。


 貫吼が、触れただけ扱い。



 敵死角、進行方向とは真逆に回り込み、様子を伺う。亀の如き歩みだが。さて。



とん


 敵の足が、軽く地面を叩いた。普通に歩くより、わずかに踏み込みが軽いか。まさか、高速移動でもするのか?


 そんな己業の予想など、簡単に超えられた。


ゴアッ!!



 地面が、裂けた。地割れに飲み込まれたムミョウは、そのまま落ちる。予兆が無ければ、蹴る意識が無ければ、ムミョウには自律飛行など、出来ぬ。


 そして、敵はまた地面を軽く叩く。


ミシイ


 地割れが、閉じた。当然、ムミョウは、飲まれたままだ。




「クレミジ星人は、それぞれの特質が再現されている、はず」


「と言う事は。あれを、あの人は、現実に行える・・・」


 雪尽も滴も、ただ静かに困惑していた。


 人間を超えたとか、そんな次元ではない。あらゆる生き物を、超え過ぎている。



 ただ、幸いかどうか。当のクレミジ星人も、同じ面持おももちだった。


 同じ人間とは、思えない。どうしてあの方が、人の居ない岩場に住み続けるのか、分かった気がする。


 こんな力を出さざるを得ない環境に居れば、クレミジの星そのものが崩壊する。だから、ひっそりと暮らしていたのだ。


 誰とも会わず、友誼を交わさず。ただ在り続けた。




 こうして、人前に戻ろうとは。また、あの頃のように力を振るう日が来ようとは。何もなかったが、何もかもがあった頃のように。


 この力を必要とする者達のために。




ボア!!


 大地を割り砕き、ムミョウが飛び出た!



「やっとか」


「これは手厳しい」


 真歩は、己業が出て来る事を一切疑っていなかった。パワーのない一殺ならともかく。己業のムミョウが、土に埋もれっぱなしなんて。あるものかよ。ま、イデアも同意見だった。




 こいつ、強い!!!・・・親父より!!!


 200ポイントダメージ、両腕をのぞいた全部位に判定。胴体部は、破壊された。大地に挟み込まれる瞬間、何とか両腕を動かし続け、両腕の破壊だけは免れた。でなければ、これだけの必殺技、300ポイントは堅かっただろう。


 累計、900ポイントダメージ。




 舞い出たは良い。しかし、殴れば負ける。貫吼で削り続けるしかない。


 ・・・・本当に?


 この男に、そんな手段で立ち向かう。立ち向かえる?



 このおれが、それだけしか出来ない、だと。



 己より強い者に、そんな程度の技で挑むのか。効かぬと分かりきった手で、それでもデータ上の勝利を手にするか。



 嫌だ。おれは、嫌だ。



 もっと、もっと何かあるはずだ。



 この男に報いる方法が。



 しかし。偉そうな物言いをしても、触れれば終わる。その事実は、変わってくれない。


 なら、触れない。触らずして、打つ。


 気を全身にたぎらせる。しかし、胴体部が破壊されているため、ユキテラシにはなれない。


 それで、良い。これが、今の、おれならば。


 そして、技は拠辺無交ではない。・・・昨日今日知った小細工に頼るな。おれが、行くのだ。





 ・・感じる。確かに、攻撃を受けている。先ほどまでの柔らかな手触りとは違う。かつて感じた痛み・・それと似た重み。懐かしい。



 この老体。目鼻をガードするなどの条件さえそろえば、アトランティス星母艦のレーザーさえ防ぎきるだろう。オーバーコートの全力なら、「多分」、倒せるか。


 その身に、ほんのわずかとは言え、きしみを生じさせる一撃。




 これは、シルエットの技ではない。ヴィジョンに登録されている貫吼などとは違う。


 これは、鬼業直伝、以無の奥義。




「・・・習得したか」


「嬉しそうだな」


「そうか?」


 知らず笑んだ鬼業の口元を、プラテニウスだけは見ていた。




 貫通城かみつき。己業も、技だけは知っていた。中学の卒業祝いに習った技だ。


 対城門用、破砕秘法。古より、最も堅牢な門こそ、最も人の守備が薄い。その扉さえ打ち破れれば、出入り自由。


 頑丈を砕く技だ。



 理論的にはそう難しい技でも、ない。


 気を全身に溜める。それとは別に操る気で、コースを作る。敵城門に対しての道だ。そして、そのコースに真っ直ぐに気を向ける。そして、「溜め続ける」。更に別個の気が、放出を抑制している。そうして、解放された時、溜まり続けた気は、出口に向けて破壊的なエネルギーを存分に吐き出す。


 つまり、パンパンに空気を入れられた風船が破裂した時、その空気の行き先が一点になっている。そういう技だ。単純に、鉄砲の原理でもあるな。


 鉄砲との違いは、射出口が針の穴ほどの大きさであると言う事。複数回打ち込み、その穴を数箇所こしらえて、門を叩き割る。


 技を教わってから、およそ11ヶ月。己業は、ずっと覚えられなかった。気の操作が満足に出来なかったからだ。ただ放出するのではなく、最低でも3つのエネルギー量の違う気を同時操作。それを、敵が存在するイメージの中で実行。とてもではないが、上手くいかなかった。



 認めたくないが。独力では、今も操れなかっただろう。


 リアディウムの世界を知ったあの日から。貫吼を操るムミョウを作ってもらい、そして、それを実践し放題のヴィジョンの仲間達と出会った。


 皆が居たから、出来た。



 おれは、今までで最も弱い以無かも知れない。


 それでも。おれは、拳を交えられる者達を得た


 この宇宙に自慢したい。


 おれ達は、最高だと。




 そして。この敵に、穴は開かないようだが。



 効いては、いる。



 同じ50ポイントしか与えられていない。恐らく、おれが現実に殴っても、痛痒も与えられるまい。薄皮すら削れんのだろうな。


 それでも。貫吼とは違う。


 敵は、反応を示している。


 ポイントは同じでも。




 既に累計600ポイントとなった老体。再びの地割れを引き起こそうにも、ムミョウは動きを止めない。普通に打っては、当たらない。


 このままでは。



ぱち


 敵が、両手を正面で打ち合わせた。ちょうど、神社でお参りしているような感じだ。軽く、音が出る程度に拍手をしただけ。だが。


 己業は、最大限の注意を全周囲に届かせた。


 間違い無く、やばい。



 ゾクゾクする。



 楽しい!!




 己業の期待は、絶対に裏切られない。この敵の底は、まだ見えない。




ゴオン!!!!



 空間が、破裂した。全周囲、全フィールド中の物体が破壊された。岩が、大地が、粉砕抹消される。



 決着。



 一応、気による防御はしたのだ。それこそ、ユキテラシになれる気を、完全に身を守る事に使った。


 それで、500ポイントダメージを食った。いくらムミョウの防御がゼロでも、これは。



 己業、公式戦での初めての敗北。それは、悔しさと、多大な喜びを伴っていた。



「ありがとうございました!」


「ありがとうございました」


 おお。正しい、正しいが、年長者に同じ話し方をされると、落ち着かないな。


「めちゃくちゃ強かったです。もし良ければ、また戦って頂けませんか?」


「え」


 老人は、そこまで考えていなかった。勝っても負けても、自分の出番は、この大会限り。そう思っていた。


「あ、ご迷惑でしたら、申し訳ないです。今日。あなたと戦えて、幸せでした」


 己業は、心からの感謝を述べ、去った。


 次は、真歩の出番なのだから。

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