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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
57/89

様々な生き方。

 青い海、白い雲。白い雲は、遥か上空なれども。


 サンゴ礁の林。その中を自在に動き回る魚達。魚は、物理実体を持っていない。背景の景色と同じ、触れる事は出来ない。


 綺麗な光景だ。戦いと言わず、観光に来ても良いな。



 開始!



 いきなり海中のど真ん中から始まるこのステージ。敵は、この環境に適した生き物のはずだが。同じクレミジ星人ではないのか?


 答え。同じだが、同じでもない。


 同じ地球人でも、泳げる人間とそうでない人間が居るように、水中に適応したクレミジ星人も居るのだ。


 だから、眼前の者は、真っ青だった。海の迷彩。


 色とりどりの体色。バリエーション豊かと言うか、すげえ。




 だが、敵の姿は見えない。開始前の容姿で判断したが、スタート地点は各々バラバラ。己業は、海底岩壁の狭間に居た。今、狙い撃たれればすぐに負けるだろうが、敵からもこちらは見えていない。しかも、敵に近付くまでの時間は基本的に問題無しとされるので、策を練る時間も取れる。


 水中を泳ぐ。ムミョウの重さは、通常の人間として計算される。泳ぎ方も人間のそれで間に合う。



 さあ。お前は、どこに居る?


 敵を探す所から、お楽しみは始まっている。



 周囲を見回しながら、舞台中央に進み出る。


 主役は、目立つものだからな。



ザオ


 来る。見えぬ。見えぬが、水流を感じる。ムミョウは、伊達で獣人なのではない。ふっさふさの体毛が周囲の状況を教えてくれる。こうも濃密な「水」に囲まれているのでは、気を使うまでもない。


 何だったんだろう?敵攻撃と思しきものを回避したのは良い。が、ゆえにその正体は分からずじまいだ。恐らく、敵迷彩が効果を全力で発動している。ために、見えないのだ。


 だが、おおまかな方向は分かったぞ!


ゴ!


 海を蹴る。水を気で捕らえ、固め、蹴り込む。気を操るため、片腕を使用する羽目になるが、良い推進力になる。およそ、時速100キロは出たか。水中では、いかなムミョウと言えど、遅くなる。



 しかし、それでも見えない。侮っていたわけでもないが、先鋒と同レベルなら、さほどの苦労もするまいと思っていたのだ。


 海中では、当然ながら、あらゆる動きが制限される。ムミョウの動きにしてもそうだし、剣撃、砲撃、果ては格闘に至るまで、全てが遅い。


 クレミジ星人が狩人なら、その武器はモリか釣り竿。どちらも、砲撃の速度は出せない。つまり、己業なら容易く躱せる。そう、思っていた。




 が。これは。


 ムミョウは、網に引っかかっていた。漁師の使うアレだ。それが、海中に仕掛けられていた。定置網・・・いや、何となく違う気もするが。問題は、網の種類ではない。問題は、



 破れない!ムミョウのパワーで、引きちぎれない。どんな丈夫さだ。




 モニターを見ていた雪尽は、それでも己業の心配を一切していなかった。己業が、鬼業以外に負けるものか。




 仕方無い。破れぬなら。


 このまま行け!!!


オ オ オ!!!


 幸い、ダメージは無かった。ゆえに、遠慮無くユキテラシになれた。その様は、人類原初の恐怖を呼び起こすに十分だった。


 即ち、捕食者の脅威。



 対戦相手は、混乱していた。網に捕らえたなら、次はモリ(角魚つのうおの角を、流木やサンゴから作り出した柄にくくり付けた武器。最初は親から小さな物をもらい、大人になるにつれ、自分で狩った角魚の角に換えていく)を打ち込むだけで良い。ここは、本物の海ではないので、獲物が弱るまで待つ事は出来ない。普段なら、こんな大物には近寄りたくない。が。


 獲物が突っかかって来る以上、やるしかない!



 すれすれだった。モリは、それなりの早さで突っ込んで来たが、わずかにムミョウ周辺の水流の圧力に速度を殺されていたのだ。


 しかし。これで、より正確に敵の位置が判明した。相変わらず敵の姿は見えないが、およその方向を目掛け、貫吼。これでダメージが入れば、そこに居る。入らなければ、居ない。簡単な事だ。



ボア


 岩礁ごと打ち砕いた先に、敵は居た。ダメージもちゃんと入っている。


 悪いが、すぐに終わらせる。海は、己業にとって、本領ではない。遊び気分で居ると、死ぬ。


 戦闘開始直後、全力で遊ぶ気だったのは内緒だ。




 先の吹き矢使いとの一戦。2度も直撃を受けた。しかも、己業には一切の制限のかかっていない状態。いや、むしろムミョウとなりあらゆる能力が向上していて、だ。


 先述した通り、吹き矢は猛獣すら殺傷せしめる兵器。それを回避出来なかった以上、己業に在ったのは、死のみ。


 鬼業も、気にかけていた事だ。己業と向き合っていたのが地球人類なら。例えそれがマシンガンだろうが、ロケットだろうが、相手の指が引き金を引くより早く己業は踏み込んでいる。撃つ間など、与えない。そのように仕込んできた。


 その息子が、2度食らった。鬼業自身なら、どうか。己業と同じように遊び気分だったなら、やはり食らっていただろうか。あの背後からの奇襲、気付けた自信は、ない。



 宇宙は、広い。このような人間が、人知れず生きているのか。




 鬼業は、眼前の敵を1秒で潰しながら考えていた。


「ありがとうございました!」


「はい・・・」


 相手は、ザハロプラスティヨ銀河に属するカルプジ星人。アンディヴィオティカでは中間層になるのか。トップではないが、決して無視出来ない層だ。色々面白い能力を持ちつつ、知性も高い。こんなのが大量に居れば、アトランティス星人もうかうかしていられなかっただろう事は分かる。


 皮肉な事に、それを理解したアトランティス星のロボットに滅ぼされかけたのだろうが。・・・アトランティス星人ではないぞ。ロボットの知恵によるものだ。カルプジ星人らは、その能力の高さにより、敵対する前に消されかけた。


 そう言った事情は、しかし地球側で知る者は、それこそイデアくらいだろうか。全ては、アヴリオ指揮下の動き。


 本当に、アヴリオは手を抜かない。



 それはそれとして。良い動きだが、鬼業の相手をするには、20年は早かった。プラテニウスに続いての2番手として出た鬼業が、終わらせた。



 件のアヴリオチームの試合は、もう終了していた。アヴリオが出るまでもなく、1人目が全員まとめて10秒で終わらせている。冗談のような戦績だ。まあ、鬼業チームにも同じ事を可能とする人間が4人ほどは居るが。



 息子の試合は、現在3人目だ。2人目は、接近さえ出来れば水中であろうと以無の敵ではなかった。


 敵武器の秘密は、やはり皮膚組織にあった。網目状に変異した皮膚を放出、獲物を包み込み、捕らえる。器用なものだ。


 そして、こいつは。



「距離を取ろう!」


 真歩の声が響く。果たして、その声は己業に届いているか。



 舞台は砂漠。砂は、少ない。岩石だらけの岩場。背の高い植物の姿はなく、視界は利きやすい。


 その、己業の全てを出せるフィールドに於いて、己業は苦戦していた。



オ!!


 一瞬10撃。重さを与えず、スピードのみでかすめるように打ち込む。突進からの拳撃。回避は、通り過ぎる事で完了させる。


 敵からの反撃は無し。しかし。こちらから与えたダメージもまた。ゼロ。



「完全に止められている」


「ちょっと、信じられない。己業君の拳を止める生き物が存在するなんて」


 滴は冷静に見ているが、真歩は穏やかではなかった。速度はともかく、威力は己業に譲る真歩だ。それが効いていない以上、真歩も通じない可能性が高い。


 だから、真歩は、回り込むのが良いと判断した。一殺宝仕の速度なら、敵壁の展開の瞬間に、敵背後を取れる。ムミョウでも、全く同じ事が出来るだろう。



 敵はクリーム色の肌を持ったクレミジ星人。恐らく、今までの2人より若い。ひょっとすると己業と同年代かも知れない。


 このようなクレミジ星の若い世代は、砂漠への迷彩を覚え始めていた。急速に拡大した砂漠にも生き物は存在する。そこは、灼熱の太陽と乾きを耐えられれば悪い環境ではなかった。


 その2点が、致命的なのだがな。


 それらを克服したのが、即ち、この者だ。



ビシ


 手応えは、ある。破砕は容易。だが、そこまで。


 ムミョウの拳が、敵壁を打ち砕くわずかな間隙。その一瞬で、敵は砂に潜っている。


 この逃避行動、ヴィジョンは正規の行動とみなしている。己業達地球人がやればどうかは分からないが、アヴリオらの事前調査によって、クレミジ星人の正しい行動様式と認定されているのだ。


 この若者の能力は、皮膚の硬質化。体表面層から水分を取り出し、内部に回す。そして乾いた皮膚を日除けとして使う。つまる所、全身が髪の毛になったようなものだ。地球なら、黒い服装で日除けとするが、そんな感じだ。皮膚の分離による働きなので、当然、身体そのものは攻撃に弱い。


 だが、攻撃は皮膚で止まる。そして、現実ならこのように使い捨てには出来ず、再びの硬質化は1ヶ月は間隔を置く必要があるが。ヴィジョンは、違う。クレミジ星人の特質として扱われるので、容易に連発出来る。




 壁を、貫けない。


 貫吼なら。壁ごと飲み込めるか。だから、真歩も拳に意識を囚われず、距離を取れと言っている。


 しかし。


 己業の経験上、こんな事は山と海でしかなかった。独立した物体なら、鉄板ぐらいは抜ける。自信はある。


 これは、鉄と比べれば、やわい。だが、こんなもろい壁なのに貫通出来ない。本体まで、通せない。己業が壁を崩している間に、敵の姿は失せている。


 山の土をどれだけ掘り返そうが、その先には、また土があった。地球の裏まで掘った事は、いかな己業と言えど、ない。それに、海を抜いた事もまたない。大昔の偉人は海を割ったらしいが、今の己業には不可能な話だ。昔の人は、すごいなあ。




 これは、クレミジの、新たな進化。地球そのものへの擬態。


 か、どうかは知らない。そんな難しい事、己業に分かるか!!



 分かっているのは、こいつが、堅い事!




 壁が、すぐに崩せないなら、どうする?


 もっと速く!壁の出来上がる端から、打つ!




 壁を張った。しかし、それ以上の行動が取れていない。敵の攻撃速度が速過ぎる。本来、壁ごと押し込むなり、壁裏から回り込み攻撃するものだが。攻撃の手を出せない。壁を作るそばから崩される。何も、出来ていない。


 そんな悩みを抱えつつ、それでも突破口も見えないクレミジ星人は、自分の出来る事をやるしかなかった。


 己業の新たな動きまでは。




・・・・ゴオ!



 決着!



「ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


 おお!


 己業の2人目までの挨拶を見ていた若者は、それを真似してみた。己業、ちょっと感動。



「さっきのは、ああいう技なんですか?」


「技じゃあ、ないです。単純にスピードですね」


 相手との軽いお喋り。




 先ほどの決着。ムミョウの攻撃音より早く、決着量がゼロになっていた。


 音を、数秒、置いてきた。




「成功したようですね」


「あれも、拠辺無交の応用なんですか?」


「応用と言うか。拠辺無交は、基本的に、音より早い移動の事です。1秒間に600回の回避行動。その速度で攻撃すると、己業さんのようになります」


 雪尽の質問にイデアが答える。


 更に言えば。単なる速さで言えば、ムミョウは、始めからその速度領域で動いていた。己業が操るムミョウは、1音速などと言う遅さではない。


 それでも己業が拠辺無交を使えなかったのは、「移動し続ける意識」が無かったからだ。己業の意識は、緩急自在。行動と静止を交互に行う。でなければ、フェイントなど使えないし、移動し続けていては、いくら何でもスタミナが持たない。


 そこが、現実で肉体を鍛えている者の壁。どうしても、鍛え上げた過程は、意識に刻み込まれている。


 人間は、今までの自分をいしずえに立っているのだ。積んで来た経験、トレーニングを、完全に忘れきりなさい。そう言われても、簡単に出来るものではない。


 だから、忘れられない、執念のままに強くなろうとする、エンドアのような男も出てくる。それはそれで良い。イデアは、エンドアの在りように口出しをした事はない。


 それに。リアディウムには、壁が無い。強くなる方法は、1つではない。イデアらは、拠辺無交を基本としているが、エンドアのやり方が間違っているとは限らない。現時点では、効率の良い方法とは言えない・・それだけだ。そこに、意地があるのなら。何も、間違ってない。



 己業は・・意地か?今の試合は、意地で通した。回り込む、貫吼などの戦術を取らなかった。


 具体的な戦法としては、壁破壊と壁発生の隙間を縫って拳を入れた。破壊されてから、0、2秒以内に相手は壁を作っていた。その0、2秒を超え、複数の打撃を入れる。2発程度なら、敵も耐えるからな。




 イデアは、己業の成長を見届け、ほっとしていた。今、己業のやる気が失われるのは、痛い。テンションは、チームの仲間に如実に影響する。


 次は、遠不真歩の成長に期待したい。全員が、最低でも拠辺無交を使いこなせたら。面白くなる。



 残り2人。1回戦で、己業は完全に仕上がるかな。

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