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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
56/89

クレミジ星人。

 組み合わせの結果、己業達は、決勝まで行かなければ鬼業チームとは当たらない。そして鬼業チームは、アヴリオチームと準決勝で当たる。そこで、宇宙最強が決まる。


 己業達は、高みの見物と洒落込む。なぜなら、どちらにも勝てる見込みは薄い。相手が何者だろうと譲る道理は、無い、が、己業には鬼業に勝つ自信が無い。真歩は知明に勝てない。雪尽がテレスに勝てるか、これも難しい。唯一、滴はプラテニウスには勝てるか。1対1で当たると言う、非現実的な想像なら。そして、アヴリオには、誰も勝てていない。イデアは、そもそも戦っていない。




 己業らは1回戦第1試合に出向く。相手は、タヴェルナ銀河、クレミジ星人。正直、説明されても、どこの誰か全然分からん。宇宙は広い、と言う事か。


 予定通り、1番手は己業。


「とりあえず初戦。5人抜いて来ますね」


「負けたら罰ゲームね」


「1週間、己業の食事は野菜メインにしようか」


 勝負の前から、真歩と雪尽の言葉に、若干テンションを落としつつ。己業が立つ。




 対戦相手は、己業達地球人とさして変わりが無かった。似たような体躯、似たような頭部。違いは、色だけか。


 緑の髪の毛、緑の肌、緑の目、緑の唇。1色。一本気な民族なのかな。


 何はともあれ、戦闘はヴィジョン。ならば、外見なぞどうでもいい。戦えば分かる。相手は、この世の何者なのか。おれと遊べる相手かどうか。


 だから。


 開始!



 ヴィジョン内でも、相手の姿は生身と変わらない。滴と同じタイプか。


 己業は、戦法を決めた。


 様子を見る。相手は先手を取らなかった。緊張しているのだろうか。なら、緊張をほぐしてやろう。



オ!


 ムミョウは、全速力にて上空に逃げた。そして、木に掴まり様子を伺う。


 そう、この舞台には、木がある。と言うか、密林だ。


 ジャングル。それが、クレミジ星の主だった地形。そこにクレミジ星人は、溶け込む。木があれば、緑に。海、サンゴの森があれば、黄色、赤、青。そうして獲物を待ち構える。静かに、辛抱強く。




 その中で、己業は背後から攻撃を受けた。何かが当たり、胴体部に1回の判定、150ポイントダメージ。とにかく、逃げた。


 敵の姿が、見えない。逃げる時、視界から外したのは不味かったか。だが、30メートルは飛んだ。ある程度、時間は稼げる。まあ、10秒を超えると、戦闘の意思無しとみなされ敗北するが。



 またか!!


 ムミョウは、更に胴体に食らった。全く同じ攻撃を。計300ポイントダメージ。


 見えない。が。どこから「撃った」かは、分かるぞ!


ゴオ!


 敵射撃位置と思しきポイント目掛け、貫吼。更に、敵が経由したであろう木ごと殴り倒す。木の耐久力は、現実と同じ。つまり、己業なら、ムミョウなら、問題無く倒せる。


 だが、当たらない。敵にダメージは入っていない。ゴーグルに情報が入らない以上は。




 オニオは、冷や汗をかいていた。が、すぐに平常心を取り戻した。


 クレミジ星人であるオニオの肉体の特質は、リアディウムでも全く同じように再現されている。


 即ち、迷彩。今、オニオは、ムミョウから見て右前方数十メートルの位置で待機していた。木と同色になり、木に張り付いて。そして、隠れたまま、攻撃可能位置に入れば、即時撃ち落す。


 全速で退避した甲斐あり、ノーダメージで試合は進んでいる。


 勝てば、勝ち続ければ、願いが叶う。



 クレミジ星は、タヴェルナ銀河辺境の星だ。数十年前、アトランティス星のロボット達が観察に来た際、支配しなかった程度の僻地。


 クレミジ星人は、アヴリオらアトランティス星管理センターに取って、人間とはみなされなかったのだ。


 そんなある日。アンディヴィオティカが交渉にやって来た。秘密裏に、自分達に資材を流して欲しい、と。当時のクレミジ星人は、それを受けた。


 そして、クレミジ星からはドンドン木が、石が、なくなって行った。契約通りに。


 決して不平等な取り引きではなかった。安くはない金がクレミジ星に渡ったのは事実。だが、それはアンディヴィオティカ内の通貨。クレミジ星人にあっては、無用の長物。


 クレミジ星人は、木に染まる。木の色になり、獲物を待ち、狩る。だが、通貨に染まっても、何も狩れはしなかった。


 要らない。もう、何も要らないから。


 放っておいてくれ。


 クレミジから、何も持って行くな。


 アンディヴィオティカも、その動く原因となったアトランティスとかも。おれ達の邪魔をしないでくれ。


 だから、オニオは戦う。戦人でもないのに。




 己業は目を閉じた。開けていても、結局相手の動きは読めん。


 ゆえに感じ取る。かつて鬼業が、アトランティス星の監視ロボットに向けてやったアレだ。


 薄く気を張り巡らせる。体から離すと、意味はない。肉体から放出しきらず、体につなげたまま。そのまま、周囲に気を接触させる。そして、反発反動によって、ナニモノカを知るのだ。




 オニオは、完全に気配を殺し、音を立てず射程に入った。後は、撃つだけ。



 そこだ!!


 己業の気の範囲に、敵の弾がのめり込んで来た。どこから撃たれたのか、正確な敵射手の位置も特定出来る。


 更に、気の結界からムミョウへの通過まで、数メートルの距離があった。そこから反射神経のみで、己業は攻撃を回避していた。


 ほう。吹き矢か。


 攻撃を避け、全速力で相手方向に突っ込んだ己業には、敵の姿が見えた。


 木の迷彩色に染まった体に、武器。


 吹き矢。伝統的な狩猟器具として地球でも有名だ。毒さえ仕込めば、大型の猛獣にすら効いてしまう恐ろしい武器だが、日本ではスポーツ吹き矢が健康のために良いとされている。時代の移り変わりを如実に感じるな。


 そして。敵は高隠密性、遠距離攻撃、本体の回避技能、低。


 狩人か、こいつ。己業の地元にも、狩猟者は居る。銃器や罠を扱える彼らだが、素の身体技能が高いわけではない。回避運動も、特に練習はしていないだろう。攻撃性が高い割に防御を磨いていないのは、取っ組み合いをしない証拠。接近の予定は、無かったのだろう。



 追い込まれているのはこちらだが。


 相手は、見えた。


 相手を見極めた気になった己業は、ゆえに失念していた。目の前に居たはずの敵から食らった、真後ろからの初撃を。





 全速力で飛び込み、相手をブチ抜いた一撃は、しかし空振り。ダメージは、入っていない。



 なんだ、これ?ムミョウの拳には、緑色の布が引っかかっていた。


 忍者の、隠れみのの術?己業は、忍者など見た事もないが。


 実は、真歩の家系は、それらしかったりする。案外、身近に居るものだ。




 忍者では、もちろんない。ただの脱皮だ。


 クレミジ星人は、狩猟者としての生を全うするうち、皮膚の簡易交換が可能になった。人間で言えば、伸びた爪を簡単に切れるようなものだ。全身の皮膚が、即ち伸びた爪状態。いつでも、取れる。


 こうなった経緯は詳しく知られていないが、現代ではクレミジ星人の縄張り争いに重宝している。脱いだ皮の大きさによって、お互いの強さを計り合い、同種間での戦闘を未然に防いでいるのだ。その場に捨て置けるので、自分が同じ場所に留まる必要もない。


 これをヴィジョンが再現すると、身代わりの抜け殻の完成となる。まこと、便利な世の中だな。



 ちなみに。縄張り争いは、日増しに増えている。オニオが子供の頃より、明らかに森が減っているからだ。


 鬼業らがクレミジ星に到着した時。間違っても、自然豊かな星とは思えなかった。砂漠のあちこちにポツポツ緑がある。そんな感じに見えた。


 だからオニオは、星を取り戻す。



 鬼業は、その心を知りながら、クレミジ星人をそそのかした。


 アンディヴィオティカ主導者層の、内部への疑心を育てるために。





 己業は、考え込んでいた。


 おれが、通用していない。高校チャンピオンにして、以無の後継者の、このおれが。


 全力を出して良い相手か。


 己業は、全身に気をたぎらせた。


 輝く銀熱。なびく威風。



 ムミョウ・ユキテラシ始動。




「1人目で出す。その思い切りの良さは評価したいかな」


「確かに」


 ある意味、己業の切り札。隠しておけば、ここぞと言う場面で効いて来るはずのムミョウ最速形態。それを、惜しげもなく出した。真歩には、好ましく映った。滴としても、事態を好転させるための手を打たず、座して終わりを待つのは趣味ではない。動いた事そのものを評価していた。




 オニオは、次の射撃可能位置に到着した。木の隙間をすり抜けるコースを狙う。これなら、敵の追尾から逃げやすい。


 ためらう事なく、普段通りに撃つ。これを、クレミジ星で、また行うために。故郷を、元に戻すために!



 己業の気の結界に敵弾が触れた瞬間。ムミョウは、敵の眼前に現れていた。


「強かったぜ」


 決着!!




 良く、分からない。オニオには、謎が残った。速過ぎたのか、移動が見えなかった。あいつ、なぜ最初からあの動きをしなかったのだ?


 オニオの思考には、まだ戦いを楽しむと言う発想は無かった。



「ありがとうございました!」


「あ、ああ」


 ふむ。高校生大会なら、全員が間違い無く挨拶する。そう、決まっているからだ。まず、そこから教える必要があるか。


 己業は、最低でも全員をリアディウムの観客にするつもりなので、人々の意識を知るのは必要不可欠な行動だった。


 良く観察し、良く知る。それが、己業の願いを叶える確実な道。




 次の舞台は、海中。楽しみだな。

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