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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
53/89

激闘の予兆。

 グレートアトランティス、12月中旬。


「船は鬼業さんの物を使います。5人乗ると、流石に狭いですが」


「5人?」


 己業の知らぬ5人目が居るのか?


「私も出ます」


「え。イデアさんは、ここの偉い人じゃ・・。大丈夫なんですか?」


「頼める人員が居ないので、仕方無いのです。それに」


 因縁も有る事ですし。


「いえ。何でもありません。それより、覚悟の決まらない人は、無理に行く必要は有りません。もちろん、秘密は守って頂きますが。雪尽さんは、過度のストレスを感じていませんか?」


「多分、大丈夫、だと思います。おれも、あいつを宇宙に連れてった経験は無いんで、確かな事は言えませんけど」


 だが、雪尽は、バカではない。己業とは比較にならないレベルで賢い。飛び出て、全く身動きも取れぬ有り様になるようなら、自己申告して来るはず。


「それより、滴さんは、大丈夫なんですか?かなり参ってましたけど」


「最初だけですよ。ヴィジョンでは、全く不自由なかったでしょう?」


「ああ。それは」


 まさか、あそこまで強いとは。


 嬉しい誤算。本気の大動滴は、ムミョウを本気で操った己業より強かった。ユキテラシにさえ問題無く反応して来た。


 流石はデイズ・グロリアスのナンバーツー。


 そして、先発しているメンバーには、雲技知明が含まれている。いよいよ、あの人に直接会える。


 映像では何度も見た。何度もイメージで戦ってみた。


 勝てなかった。


 父になら、分かる。だが、同年代の雲技知明に、まるで勝ち目が無いのは。


 悔しい、口惜しい、辛い、泣いた、


 笑った。



 まだ、敵が居る。


 この世に、おれが勝てるかどうか分からない怪物が、実在する。


 父や、父の友人らには、成長すれば勝てるつもりで居る。だが、同年代なら、相手もまた同じように伸びる。


 知明を大事にしよう。そう誓う己業であった。


「交代ー。ほい」


パン


 一殺のプレイヤー、遠不真歩とハイタッチ。今まで、雪尽を見てもらっていたのだ。リアディウムに関して、己業はまだ素人に毛が生えた程度。真歩は、1年分、己業の先輩だ。


 そして、別分野でも先輩だった。


「知明さんって、どんな人なんです?」


「またその話?戦えば、分かるよ」


 遠不真歩は、知明の弟弟子でもあった。


 攻防流こうぼうりゅう体術。古より伝わる、古流戦闘術。本来は、防衛術だったのだが、時代と共に先鋭化。奇襲暗殺を得手とする、門外不出の殺人術と成り果てた。


 知明は、その身のこなしのみを学校の後輩に伝授。攻防流を、薄っすらと世に知らしめる。


 真歩は、ただの後輩ではなく、攻防の家に生まれた、言わば己業のような育ちだ。己業でさえ、生身で向かい合い稽古をしなければ、その実力を認識出来なかった。隠密性なら、以無を遥かに超えている。実際の戦闘能力も、始業並みだった。


 オリーブアイランド高校近くにひっそりと生き残っていた攻防流。その修行風景を、家人の目を盗み、こっそり眺めていたのが、知明だ。


 攻防流の伝承者の知覚を出し抜き、毎日飽きもせず遊びに来た知明は、そのまま攻防流に居座った。


 真歩の親は、知明と真歩を親密な関係とさせ、優秀な継承者を作りたかったが。いまだ、そのような兆候は無かった。


 知明には、強く求めている物が有ったから。




 殺すに足る獲物に、会いたい。




 どうやら、見付かったようだ。



「いつ、戦うんです?」


「遠くはない。おれの子らが来たら、すぐさ」


「そうかあ。楽しみだなあ」


 心の底から。子供のような笑顔で、知明は鬼業に頷いて見せた。


 鬼業はその笑顔を見て、危うさを感じた。自分達を全力で棚に上げて。



 鬼業の腹案を実行するため、鬼業の乗って来たライキ・アゴラを地球に戻した。今の人員でも、恐らく十分。だが、ハッタリと数合わせが居れば、便利だ。故に、己業を含む精鋭5名を新たに求めた。選別はイデアに任せる。


 今回の戦乱。以無の自分でも初めて経験する大戦かも知れない。生きて帰れれば、大きな財産となる。身内を特別扱いする事になるが、ま、見逃してもらおう。


 息子も、あれで高校王者らしいし。案外、自分より使い物になるかも知れない。


 応援を呼ぶと言うと、知明から後輩の遠不真歩を呼びたいと申し出が有った。聞けば、前年度準優勝かつ、あの一殺のプレイヤー。鬼業が、その名を覚えたほどの実力者。


 一応、言伝ことづてに含んでおく。



 アトランティス星に到着してから1ヶ月。季節は秋。地球時間で、10月の終わりも見えようかと言う時。


 ようやく、策は成った。


 この1ヶ月に巡った銀河は40を超え、会った異星人の種族数は100を超える。アトランティス星人の爪痕つめあとを強く感じた。


 同行してもらったプラテニウスにも、上手く受け入れにくい感覚を植え付けた。



 母星、故郷の、支配の跡。


 支配は、攻撃は、悪ではない。それが悪なら、人類は現在の支配領域を動物にでも明け渡さねばならなくなる。まさか、現在の住居は、衣食は、神様に与えられたものではあるまい?いかなる「正しさ」の保証が有ると言うのか。


 攻め落とし、奪え。それが正義だ。


 が。


 災いの種を放置したのは、間違い無く過ち。


 異星人など、とっとと絶滅させておけば良かったのだ。


 全く、要らぬ相続をしたものよ。



 ソクラノ・プラテニウスの思想は、それなりに極端ではあったが。彼のそれを誤りと言い切れる人類は、いまだ宇宙には存在しない。誰も、生まれながらにして、「綺麗な土地」を与えられてはいないのだから。




 アヴリオのデータによれば、管理番号38、辺境少数民族クレミジとの会合の様子。


「おれは鬼業。今回のイベントの提案者だ。何か質問が有れば、聞いてくれ」


 クレミジ星人は、アンディヴィオティカに名前だけは連ねていると言った、数多居る少数派の一部だ。


「鬼業。仮に、仮にだが。勝ったとしても、おれ達は同盟の主導権を担えるわけではない。やる意味は有るのか?」


 クレミジ星人代表、オニオはその顔を紫に染めて言う。クレミジ星人は、およそ全員が黄色い肌の持ち主で、アジア系には馴染み安いかも知れない。ただ、脱皮の習慣が有るので、初見ではびっくりするだろう。ちなみに紫色の顔色は、不安や焦燥感の表れだ。喜色満面となると、今度は真っ赤に染まるので、ちょっと驚く。


「勝ちさえすれば、おれ達が守ってやる。この世界の覇権はお前らのものだ。もちろん、だからこそおれ達も全力で獲りに行くがな。誰にも好き勝手にさせない。アトランティス星のロボットが、全員を守る」


「うむ・・・」


「ただし。今大会に出場しなければ、後になって文句を申し出てても意味は無い。黙殺する。もしくは、次大会にて、勝つしかない。ちなみに、次の開催は4年後を目論んでいる」


 4年とは、あくまで地球時間換算。クレミジ星なら、何年後なのか?同行してもらったアトランティス星の管理センター所属のロボットに計算してもらい、伝える。


「出て、失う物は?」


「無い。移動手段が無いのなら、こちらで用意する。おれ達は、アンディヴィオティカに属する全種族の出場を望んでいる。一番強い奴が、勝つのだ」


 鬼業の迫力は、その発言の全てに重みを持たせた。一体、鬼業とはアトランティス星に於いて何者なのか?なぜ、ロボットを従えられるのか?疑問は山積なれど、鬼業は本物だ。


「なら、出る。5人で行けば良いんだな?」


「良し。試合中は無理だが、試合開始前なら、メンバー交代もオッケーだ。10人くらい連れて来たって良いぞ」


「良く分からないが、分かった。その時が来たなら、船を用意してもらえるか?」


「ああ。迎えをよこす。楽しみにしてるぜ」


 笑った鬼業は、握手を求める。オニオは、戸惑いつつも握手に答える。




「上手いものですね」


「光栄だ。でも、お前なら、絶対おれより上手そうなんだけどな」


「そのような技能を得る必要は有りませんでしたから」


「なるほど」


 アトランティス星、管理センターの入っている施設。鬼業達はそこで生活をしていた。


 アヴリオは、1度腹を割って話さえすれば、分からない奴ではなかった。と言うか、当意即妙、いかなる人間よりも話しやすい。




 あの時。今から、地球時間にて31年と200日、10時間31秒前。


 確かに、私は戦闘終了の指示を出した。アトランティス星人のさまたげとなる敵対種族は、抹消したはずなのだ。


 それが、今。アトランティス本星まで攻め込まれる始末。


 人間の犠牲者は出ていない。全人類3千人を、ちゃんとシェルターにかくまっている。


 だが、ロボットは、船は、それなりに落ちている。このアトランティスの資源を、無駄に使い潰してしまっている。


 この私の不始末によって。



 アヴリオは、最新型の管理ロボット開発を命じていた。己を超える能力を持った機体を。アヴリオに私心は無い。新型に引継ぎ次第、再利用に向かう。





「訓練期間中、ヴィジョンユニットの貸し出しはどうする?」


「しない。コピーされたり、最悪、オーバーコートへの応用まで視られても不味い。わざわざこの星まで来たら、監視の目の中で使用可能と言う事で」


 知明とアトムの会話。ただいま、管理センター屋上で寝転がっている最中だ。昼食後、デッキチェアでくつろぎの時。


「ねえ。アヴリオに勝てる?」


「無理。私とテレスの能力を明らかに超えている。鬼業さんでも、1勝も出来てないし」


「難しいねえ」


 口ほどには、焦ってもいない。今はテレスとアヴリオ、鬼業とプラテニウスが戦っている。


 ヴィジョンでの決戦。トーナメント形式を想定するそれは、しくも高校大会の様とも似ている。まあ、大会など何処も似たり寄ったりだろうが。


 アヴリオに教えがてら、練習試合を幾度かやってみたが。


 勝てない。


 地球最強の4人で、1勝も出来てない。


 練習時はともかく、本気で仕合って勝ててないのが、不味過ぎる。


 こちらの提案によるリアディウムでの決着。これで負けたなら、中々の暗雲たる未来が待っている。



 それでも、知明は楽しかった。


 ずっと想っていた。こんな化け物を殺す日を。ずっと待っていたのだ。


 なんて、幸せなんだろう!



 デモネア・アトムは、ちょっぴり焦っていた。己とテレスの存在意義、優秀性。それが、揺らいでいる。


 まさか、これほどのモノとは。超技術だか何だか知らんが、最新最精鋭の己らなら、容易く勝てると思っていたのだ。



 イデア。私達、勝てないかも知れない・・・。




オオオオオオオオ!!!


「行けええええええ!!!!!!」


 一瞬千撃。砲口が、光より速く瞬く。テレス・アリストのシルエット、アストラガロスの主武装、カノンが軽火器の数百倍の早さで撃ち込まれ行く。


 だが、当たらない。そして、逆に当てられる一筋の剣閃。



「ちい」


 光動こうどう装甲まで使わされるとは。


 原理は、輝光白蛍、雪辺の回復能力、火舞躯裏かまくらと同じ。副武装の意識で反射技を繰り出す、無敵の装甲。デメリットとしては、シルエット本体の速度を90パーセント減らし、単なる木偶と化す事。リアディウム全世界大会ですら、出した事は1度も無い。オーバーコートでの使用を前提とした、反則級の技だ。


「くたばれ!!」


 カノン・総流そうりゅう。基礎的な動きだけで、先の一瞬千撃を撃てるテレスが組んだ必殺技。広範囲砲撃を固形化、自在に動く流れとして操る、鞭のような技。発動中、鞭化している砲撃に触れると、大ダメージを食らう。鞭なので、連続でも打ち込めるし、巻き付け脱出困難な状態にも出来る。知明ですら、初見では何も出来ずに負けた。砲撃の発射速度で動き回るために、常人ならそもそも操れもしないのだが。


 それを。


バン


「ふむふむ。掴めて来ましたね」


 レオの必殺技、ライオン・アタック。猛獣の勢いを以っての突進技。技の最中、レオは行動を阻害される事無く、5秒間の優先移動を得られる。


 ライオン・アタックにて、カノン・総流を弾く。砲撃は、己業でも先読み以外では対処不能。その不可能の領域に踏み込めるのは、テレス、アトム、そして。


「アヴリオ・・!」


 標準シルエットの普通の必殺技で、テレス専用シルエットのこの世で1人しか使えない必殺技を受け流された。


ザン


 光動装甲は、常時発動しているのではない。意識的に効かせないと、意味は無い。だが、テレスの反応速度は、光速に余裕で対応出来る。反射で遅れを取るなどと。


ジャ


 斬られる。レオの長剣に、何の抵抗も出来ず。


「オオオオオオオ!!!!!」


 させるか!!!


 確かに、そこに居るレオに向けて砲撃。必ず、当てたはず!!!


 なのに!!!!


「流石は、地球最強を名乗るだけの事はありますね。この技も、有効であると思いますよ」


 回避された。


 原理は、分かる。自分達も、良くやる。と言うか、知明以上のレベルになると、ほぼ必須技能だ。


 超上級回避技能、拠辺無交よるべもなく


 リアディウム、ヴィジョンでの攻撃カウントは600分の1秒単位で計算される。そこから、攻撃の種類や技に応じて、次のカウントがスタートする。


 その600分の1秒を回避出来たなら、攻撃は、当たっていない事になる。例えば、攻撃の発生している時間が、1秒なら。その間の攻撃カウントを全回避する。1秒間に600回回避行動を適切に取って、やっと1回の攻撃を回避可能。常識的に考えて、無理な話だが。真のトッププレイヤーは、実行してしまう。


 問題は、敵攻撃範囲を読めるかどうか。剣を躱すには、その実体部分がシルエットの肉体を通り過ぎるまで回避行動を取り続ける必要が有る。


 これが、全体攻撃なら、敵の技が何時発動するのかをも読まなければいけない。更に攻撃判定の発生している時間中、動き続ける。


 普通、ここまで動けるプレイヤーなら、もっとやりようは有る。


 だが、ムミョウ対一殺のような、頂点同士の戦いになると、新たな技が必要になる。そして、盆水のような技を躱すには、常識的な動きでは足りない。


 これが、知明が高校全国大会で1度の部位破壊も許さなかった秘訣。




 それを初見で真似するアヴリオ。


 そして、レオの通常の斬撃で斬られ、テレスは敗北した。


「参った!くそう!!」


「ありがとうございました。・・・そのような言葉遣いをするものではありません」


 ゴーグルを外し、地団駄じたんだを踏むテレス。それをいさめるアヴリオ。


 提案に乗った以上、この人間達を拘束するわけにもいかない。アヴリオに取っても、試練の時だった。



 この技能を見せたのは、戦略的に不味かったか?テレスは、いささか反省する。鬼業も誰も、何かを教えないように、とは言わない。個人の秘儀ならともかく。共通認識レベルの技なら、平気で教え合っている。


 だからと言って、拠辺無交を教えるのは、早まった気がする。


 うーん・・・・・・。




 そのような葛藤は他所に。


 間も無く、世界の命運が、決まる。

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