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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
51/89

呼ばれた己業。戦う鬼業。

 まだ、何かアクシデントが有ったと判断するには、早過ぎる。だが、不安は募る。イデアら、グレートアトランティスの代表者達は決断しかねていた。


 待つか、動くか。地球周辺には、何の異変も無い。出立した5人が帰って来る兆候は全く見えないが、敵襲もまた、無い。


 ・・新たな戦士を出すか。


 ・・・地球最高の人材を選りすぐった先の5人で勝てなかったのなら、誰を出そうと意味は無いのだが・・・。





 鬼業らの出発から3ヵ月後。世界は12月に入ろうとしている頃。


 隕石が落ちた。


 不可思議な事に、その隕石は、太平洋への綺麗な落下コースを取り、更に海面を滑り、静止した。


 そう。グレートアトランティスを出立した、あの5人の船だ!!!



 イデアらは、沸いた。船の識別番号は、鬼業のものだ。鬼業1人が生き残ったのか?何にせよ、良く帰ってくれた。


 生きて帰ってくれれば、情報が手に入る。鬼業自身が見ていなくとも、船の管理コンピュータが捉えている。大丈夫。決して、無駄にしない!



 だが、宇宙船に、鬼業は乗っていなかった。





 期末テストを迎え、ひいひい言いながら雪尽に面倒を見てもらっていた己業に、イデアから連絡が入った。


「鬼業さんの仕事を手伝う気は、有りますか?」


 己業は、二つ返事で承諾した。何をやっているのか知らないが。自分を呼ぶと言う事は、戦闘以外に無い。


 12月、終業式を終え冬休みに入ると同時、己業はグレートアトランティスに旅立った。


 そこで明かされた仕事の内容は、アトランティス星での、鬼業の手伝い。


 龍実には、事前に知らされていた事だ。鬼業は生きている。だが、現在、超激戦区に居る。そこに、鬼業は己業を呼んだ。「己業を旅立たせて良いか、龍実が選んでくれ」。そう、イデアは鬼業からの伝言を伝えた。




「しかし。皆さんは、大丈夫なんですか?」


「・・・・・・た、多分」


「大丈夫」


 呼ばれたのは、己業だけではなかった。


 頭を抱えている大動滴。超然としている、一殺宝仕のプレイヤー、遠不とうふ 真歩まほ。更に。


「お茶もらって来たよ。良ければ、皆さんも」


「ありがとうございます・・」


「ありがとう。君も、己業君と同い年?」


「はい。己業とは、幼馴染で。何雪雪尽と言います」


 何故か、雪尽も呼ばれていた。


 暗い雰囲気で茶をすする滴。それに対して、普通に過ごす真歩。その手に、震えなどは一切見えない。


 雪尽は己業の横に腰を下ろし、なんとなく手持ち無沙汰だった。


 「死地に、一緒に来てくれ」。己業にそう言われ、適当に来てみたが。何をするのだろう。


 死にたくはないが。己業が、1人で死んだら、寂しいだろう。一緒なら、マシかも知れない。己業が、何処に行くのか、知りもしなかったが。付いて来た。




 グレートアトランティスに着いた己業達は、鬼業達が最初に顔合わせをした部屋に集められ、そこで待っていた。


 そうこうするうち。イデア自身が、やって来た。


「ようこそ、グレートアトランティスへ。皆さんの勇気に感謝します」


 イデアの説明によると、遠い星で鬼業は戦っているらしい。何故か、あの雲技知明も一緒に。おれ達は、その手伝いをお願いされている。


 宇宙人て、居るんだな。なんかアトランティスマンみたいだ。すげえ威力の攻撃とか、敵は元身内とか。


「あの。親父は分かりますけど、なんで、知明さんも・・」


「リアディウムの振興ですか?」


 遠不真歩は、思った事を質問してみた。


「いえ。全開の実戦です」


 部屋のモニターに、現地の映像が映し出される。


 鬼業の姿。鬼業は、何か大きな人形の中に入っている。それが、有り得ないような速度で動き回り、不思議な敵と戦っている。


 敵は・・・・なんだ?


 いわゆるエイリアン、じゃない。かと言って、宇宙船とかでもない。


 ただの、石ころと戦っている。と言っても、鬼業の人形よりデカイ岩塊だが。


 大きな人形は、全部で5体。同じ場所で戦っているのではない。宇宙空間と思しき場所で1人、鬼業が1人で地上戦、他に1人と2人の組み。


 更に後衛にロボットっぽいのが居る。ロボット達は、決して前に出ない。・・・・・いや、おかしいだろ。なんで、人間が前に出てんだ。


 4人全員の疑問に答えるように、イデアが話し始めた。


「我々は、この後ろのロボット達を討つために、鬼業さん知明さん達を旅立たせました。・・・ですが。事情が変わりました」


 アトランティス星に攻め込んだ鬼業達。その事情を話しつつ。


 モニターには、石ころが映った。それは、ある星、即ちアトランティス星を襲う。


「宇宙の新たな危機」


 正確には、元々の、危機。


 アトランティス大銀河に無数の「警備艇」を撒いているのは、遊びではない。かつてアトランティス星を襲った未曾有の危機を、再び起こさせるわけにはいかなかったからだ。


 その危機が、来た。








 鬼業は、新たなトレーニング環境に、ちょっとびびってた。


 地球を旅立って、早1週間。銀河系を抜けて、別銀河に到着したらしいが。正直、良く分からない。ロボットの説明を受けて、ふんふん頷くだけの簡単なお仕事に勤しんでいた。


 そんな事より、宇宙空間でも体を鈍らさないだけのトレーニングは出来る。イデア達は、器具をちゃんとそろえてくれた。更に、ヴィジョンも。使い方はお世話ロボットが教えてくれる。それに、接続さえ出来れば、お世話ロボット、クリアード、医療ロボット、管理コンピュータ、全員が対戦相手になってくれる。


 ・・・・結構、負けてた。クリアードが、かなり強い。医療ロボットも、やる。お世話ロボットにだけは完勝出来たので、鬼業はお世話ロボットのボディを毎日拭いてやっていた。管理コンピュータは、バカみたいに強くて、鬼業でさえ負け越している。


 世界って、広い。よわい40を数える以無鬼業も、改めて、知らぬ世界を知った。


「暇は、暇なんだよなあ」


「だからって、これもどうかと思いますが」


 宇宙は、決して退屈な空間ではない。見た事のない星の群れ、体感した事のない距離での遭遇、その星星の狭間に今居るのだと言う緊張感。スリリングな体験だった。しかし、何にせよ飽きは来る。


 鬼業は、宇宙生活に備えて持って来た本にも飽き、新たな趣味を開発し始めていた。


 ロボット達と、お話を作っていた。


 それは、小説だったり、漫画だったり、演劇だったり。台本から書いて、演技も自分達で訓練しなければいけないので、かなり難しかった。


 だから、時間はガンガン潰れて行った。


 シンデレラをやり終え、次は桃太郎。ちなみに、鬼業は王子様役だった。全国民の中から、ガラスの剣を振れる猛者を探し出す王子様。もろく弱い剣を振るに必要なのは、腕力ではない。自分の手足として扱える技量であり、思いやり。未来のお妃様に必要な要素を計るための、ガラスの試しだ。見事、ガラスの剣を以って、大理石のお城を切り開いたシンデレラは、医療ロボット。


 鬼業は、学生の頃、アクションスターを志した時期が有る。自分が輝くための脚本のようなものも、何本か書いている。結局、モノにはならなかったが。


 まさか、宇宙でロボットを相手に、昔取った何とやらとは。


 人生の面白みについて、鬼業はロボット達と語り合う日々だった。


 そうして、地球への土産として、劇団、機会座きかいざの映像は溜まって行った。




 旅立って、3週間と3日。


 浦島太郎を撮り終えた頃。


 ついに敵に見つかった。アトランティス星まで、現在居るこの銀河を通り抜ければ着いた、が。


「出るぜ。爆弾は、サイドポケットだな?」


「はい。載せたままです。ご武運を」


 オーバーコートにて鬼業が出発した後、船は元通りの迷彩を発動。もう、鬼業からも船の位置は分からない。船の偽装した隕石の形からの確認は出来るので、究極的には迷子にはならないが。


 敵数8。勝てるかどうかは、分からない。管理コンピュータからのアナウンスによれば、イデアらによる数十年分の戦力技術向上試算を超えていないそうだ。なら、オーバーコートで出し抜けるか。


 まあ。何とかしてみるさ。


オ!


 オーバーコートの最高速度は、30光速。外部プロテクションを光化、内臓機械と人間を内部プロテクションが保護。これで、何とかやり合える。それでも、戦艦と真正面からは、自殺行為。言われた通り、攻撃せず、接近。隠し持った爆弾でケリを付ける。


 が。


コオ


 攻撃を受けている。鬼業が、ではない。敵船が、どこからかの攻撃を受けている。多分、レーザーだ。全て表面のバリアー、恐らくプロテクション、によって防がれているようだが。


 8隻全てが、こちらを無視。攻撃の来た方向に向かうようだ。ただ、まだ迎撃はしていない。新たな敵の正体を探るつもりだろう。それが、人間か否か。


 鬼業は様子見に入る。ロボットを攻撃したモノが、例えば知明なら2人がかり。挟撃に移れるが、さて。何者か。


 船に遅れる事、数十秒。鬼業の視界にも、新たな敵の姿が見えた。距離は、およそ2千万キロメートル。今の鬼業なら、一瞬で到達する距離だ、が。




 大きい。多分、月、いや太陽より大きい。オーバーコートがざっと計算してくれ、モニターに大きさが出た。やはり、太陽の倍くらいはある。恒星ではなく、惑星だが。


 それが、こちらに向かって真っ直ぐ向かって来る。速度は、遅い。


 まさか、人工物なのか、あれ。軌道を描かない。


 気になるのは、再度の攻撃が来ない事。先のアレは、引っ掛けか?なら、後ろに回られている?モニター内に、後方の映像を拡大する。だが、異変は無い。迷彩した母艦も無事だ。


 その、巨大建造物のような何かから、何か出て来た。


 石だ。

 

 隕石・・・とも違う。形が意思を持っている。いびつな、自然な形ではない。大きく手を広げたような、そんな形状を、飛び出て来た全ての石が形成している。


 以前鬼業が迎撃した、アトランティス星の探査ロボットにも似ている。


 ここで、ロボット船は迎撃。出力を抑えたレーザーにて、全ての岩石に命中させた。見事。


 だが、落ちない。


 ・・・出力の計算ミス?それとも予想以上に硬いか。


 距離は詰まらない。ロボット船は、後退しつつ、更に攻撃。石は、ゆっくりとしか動かない。


 鬼業は、嫌な考えを起こした。このまま新たな敵が倒れなければ、ロボット母艦は、最高の攻撃を繰り出す。つまり、今居る銀河ごと消される。


 やばい・・。


 母艦に戻る。戻って、全速力で逃げる。この銀河を離れなければ。


 しかし、そのような葛藤は、必要なかった。


 石ころが、膨れ上がる。


 ぜた。


 ?意思を伴った行動と推測するが。ロボット戦艦は、自身の銀河破壊攻撃にも耐え得る装甲のはず。たかが隕石でどうなるものでもあるまい。


 その通り、隕石は、戦艦装甲のプロテクションで止まった。


 いや、止まらない。プロテクションが、船が、食われている。




 え。本物の、エイリアン?怪物?


 とりあえず鬼業は、飛び出し、船の取り込みにかかっている石を潰しに行った。現在、敵同士の戦いになっているのが都合が良い。この状況なら、鬼業の攻撃が通じるか、オーバーコートが有用か、試せる!


オ、ア


 拳の1撃で敵岩塊は、砕け散った。そこに気を撃ち込む。消滅した。


 なんだ。効くじゃないか。


 しかし、何故レーザーは効かなかった?はっきり言って、今の、明王でも地球を破壊する自信までは無い。それを容易く実践するロボット母艦の攻撃が、何故。


 考えている間にも、鬼業は動いていた。まず、石ころをぶちのめす。ロボットを完全に取り込まれ、石が自由行動をし始めたなら、今度は鬼業達が危なくなる。下手をすれば、地球まで来る。人類の危機を救いに来たのに、これを見過ごしては何の意味も無くなる。


 太陽より大きいが。無限ではない。


 明王。お前の力を見せてみろ!!


 オーバーコートは、気を増幅させる。と言うより、鬼業も体験して初めて分かったが、このプロテクションと言う物。気で出来ている。正確には違うのかも知れないが、プロテクション発動時に気を発生させると、効力が高まった。イデアにも見てもらったが、危険だとは言われなかった。むしろ、推奨された。



 約2千万キロを一瞬で詰める。そして、手当たり次第に殴り抜く。光速の拳撃は、撃ち込むそばから数百キロ半径を消し飛ばす。これなら、何とかなるか。


オ!


 レーザー!


 ・・・死ぬかと思った。強化されている現状でも、直撃で受ける気はしない。


 光速で突っ込んで来る攻撃を回避、ちゃんと母船に当たらない位置関係である事も認識済みだ。


 しかも、鬼業が回避行動を起こすまでに、ロボット母艦が、鬼業を守ろうと前に出た。単なるレーザーなら、戦艦のプロテクションが絶対に通さない。


 ふむ・・。おれよりも反応が早い。流石は、アトランティス星のメカ。


 敵砲塔らしき物体を蹴り飛ばす。文字通り、消し飛ぶ。


 その後、人口惑星を削り取っている内に、その後方から船が逃げ出た。脱出艇ぽい。追うか?


 いや、そちらはアトランティスの船が追いかけている。


 こちらは深追いせず、逃げよう。幸い、あちらは敵惑星を追うようだ。先だって食われそうになったのに、ご苦労な事よ。



 味方母艦、ライキ・アゴラに帰還。自分も船も、無事だった。


「ふう」


 オーバーコートを元の位置に戻し、離脱。やっと一息ついた。空気が美味い。格納庫からトップルームへ。


 管理コンピュータが、今の戦闘を解析してくれている。その間、鬼業はお世話ロボットの用意してくれたシャイニングフューチャーアゲインドリームコーラを飲んでいた。今回の戦いのために調合された特殊飲料だ。名前から分かる通り、必勝祈願の飲み物だ。


 オーバーコートの整備は、完全にオートでやってくれる。整備機能のみの単純メカが働いてくれているのだ。


「分析終了まで、数時間はかかるでしょう。お休みになられますか?」


「あー・・・」


 出来れば。明王の中で待機していたい。先の戦闘は、中々に不可解。こちらに、ロボット母艦が1隻も追って来ない。完全に情報を捉えたからか?何時でも追尾出来るから、即応しない?


 それと、正体不明の敵も気になる。戦艦はプロテクションごと食われてたのに、なんで明王は無事なんだ?いざとなれば、自分自身の腕輪のプロテクションを利用して脱出するつもりだったが。


 あれが、アトランティス星と戦争をやらかしているなら、パワーバランスが崩れるのは不味い。どちらが倒れても、次は地球の番だ。


 しかし、待機していても、しょうがないしな・・。


「生身で稽古してる。トレーニングルームに居るから、何か有れば呼んでくれ」


「はい。行ってらっしゃいませ」


 お世話ロボットの声を背に、単純な筋力トレーニングに励む。この世の何処に居ようと。おれに出来る事は限られ、おれのやりたい事も、そう多くはない。



 ロボットも、石ころも、両方強そうだった。


 出来れば。星の命運など関係の無い所で戦いたかったな。

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