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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
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船出。

 クレナイレッドでの練習を1週間積む。その間に各自の専用機を仕上げる。ランカー3人には、各々のシルエットをモチーフとしたオーバーコートを用意した。最も慣れた操作感覚で操れるように。


 プレイヤーでない鬼業と、リアディウムの専門家ではないプラテニウスには、新規のオーバーコートが用意される。


「かっこいいけどよ・・・。かっこいいけど」


 鬼業のオーバーコートは、明王みょうおう。武の神様の名前だ。その姿は、絢爛豪華けんらんごうか。金をベースに赤と黒の紋様をまとわせ、エンジンがかかると、全身が光り輝く。


 はっきり言って、目に痛い。じっと見てられないオーバーコートだ。



 プラテニウスは、それとは真逆。赤と黒と紫が混じっているが、全ては宇宙迷彩効果を引き起こすためのカラーリング。名は、斬里殺ギリシャ



 これで、素体は使い切った。クレナイレッドに用いている物とは違う、最高性能部品で完成させたフレーム。量産性度外視、超性能のみを実現した芸術品。


 もう増やせない。クレナイレッドのための実験用部品しか予備が無い。新造するには、1ヶ月以上かかる。




 各自の実戦練習は、出来ない。実際に宇宙空間でオーバーコートを動かすには、宇宙母艦を用意するにも他の国の衛星などとの航路の兼ね合いを調整するにも、何もかも時間が足りない。


 だから、ヴィジョン内に特殊空間を新設。宇宙、アトランティス星を再現。更に、敵母艦内部構造も。これで、仮にではあるが訓練可能だ。


 鬼業も、やっとヴィジョンに、リアディウムに慣れて来た。流石に、この分野では、知明やテレスらには勝てない。


 自分の身体操作は十全に行えているのに、勝てない。


 これは、鬼業に取っては、かなりの衝撃だった。知らぬ世界とは言え。知らぬ業とは言え。


 このおれが、手も足も出ないとは・・・。



「とんでもねえ。おれは、これでも人間の内では、最強のつもりだったんだ。リアディウムってのは、すげえな」


「ふふーん。でも、鬼業さんも、結構強いですよ」


「ありがとよ」


 知明からの挑発。だが、鬼業は、流した。


 実際、知明には、世話になりまくりだった。ヴィジョンの、センサーによる動きと言うもの。現実の限界を超えた動き。全て、知明に手取り足取り教えてもらった。聞く所によると、日本チャンピオンらしい。すげー。そんな奴にマンツーマンで教えてもらうとか、ちょっと真面目な感じで礼を言う鬼業だった。


 しかし、知明も驚いていた。現実の動作がどうであれ、リアディウムには関係無い。いかに、自分の、より良い動きをイメージ出来るか否か。最高効率の、更にその先が視えるかどうか。


 鬼業には、いきなり自分が全力で当たった。イデアからの指示だったが、自分も、鬼業の人類最強と言う肩書きに興味を持った。どれ程のモノだ?


 想像以上だった。


 現実の鬼業は、生身で100メートルを1秒台で走る。気を使わず、動きと筋力のみで。気を用いると、0秒台に踏み込めるが、そこはどうでもいい。


 知明も、生身にはそこそこ自信が有るが、2秒台が限界。かなりの差が有る。



 そして、テレスとアトムは、知明以上だった。以無の名を持つ鬼業を、遥かに超えていた。




 プラテニウスと酌み交わす暇も、無い。寝る時間以外、全てを修練に当てているためだ。気を抜けば、本当にプラテニウスは、死ぬ。生存能力の向上のため、鬼業は徹底的にプラテニウスをしごいた。


「で。これか」


「仕方有るまい」


 プラテニウスのセッティングした席は、ランチ。お昼休憩に際し、男と男、1対1の会話。


「今回の作戦の成功率を教えてやろうか」


「知っているから、良い」


「ゼロだ」


「良いと、言った」


 軽く溜め息をつく鬼業。あまりショックを受けていなさそうなので、からかうつもりのプラテニウスは言葉を重ねる。


「心配とかは無いのか」


「無い。己業が居るからな」


「愛息か。羨ましい事よ」


 ここは、大真面目に鬼業に向けて言う。真面目に、良いなと思っている。プラテニウスには、妻も子も居ない。肉親が居ないわけではないが・・・。


「お前の部屋だから言うが」


 一呼吸置いて。鬼業は発した。


「テレスとアトム。お前の娘だろ」


「ほう・・」


「雰囲気が、似ている。顔立ちは全く似ていないがな。存在感が、お前や龍実にそっくりだ」


「・・正確に述べるなら、私は彼女達の父親ではない。彼女らの親は、イデアだ。イデアが、手塩にかけて育てた」


 これは、事実。


 室内モニターに、思い出アルバムを展開する。


 今と、ちょっと形の違うイデア。その両手に抱かれる赤ん坊2人。心なしか、イデアの雰囲気も柔らかい。


 その後、スライド形式で現れる成長記。ちょこちょこ、プラテニウスの姿も見える。


「まあ、何と言うか・・・。2人共、おれと同じ遺伝子ではある」


「隠し子、か?」


 だから、父親を名乗る資格は無いと?


「隠してはいるが・・・。おれと、何処ぞの女の子供ではないぞ。おれは、遺伝子提供をしただけだ」


「人工授精と言う奴か」


「それとも違う。詳しい事を言っても分からんと思うが、彼女らは人工生命体だ」


 鬼業には、聞き覚えの有るフレーズだ。それも、最近。確かアレは、機械生命体。


 鬼業の表情の変化に気付いたプラテニウスは、語る。


「そう。我らは、保険をかけた。もし、この戦いに負けても。人類が滅びても。「人工」生命体である彼女らは、生き残れるかも知れない」




 テレス・アリスト。デモネア・アトム。体組織の9割以上を工業製品によって成り立たせている、グレートアトランティス産の機械人間。


 母体も、人間ではない。完全に管理された環境で、最高性能を発揮出来るよう調整しつつ、作り上げた。言うなればプラテニウスのクローン。




 プラテニウス、イデアを始めとするグレートアトランティスの代表者達が立てた、人類を保護するための計画。アトランティス星を攻撃、奪還するのが最上の第1案。


 これは、それが破れた場合の、第2案。


 ロボットに、おもねる。


 ロボットに、同じ機械生命体であると思わせる。そうして、ロボット達と共に生き残る。


 そのための機械部品による身体構築。・・・成功するか否か、不明だがな。



「・・・怒らないな?」


「お前が、女子供にあくどい事をやっていれば、な。あの子らは、人生をはかなんでいるようにも見えん。・・・肉体に、問題は無いのか?」


「恐らく。問診では、痛みや異常は無いようだ。イデアに不安、不満を訴えた事も無い。もちろん、一般的な悩みなどは除くが」


 イデアを通じて2人の様子は逐一聞き及んでいる。2人共、健康に育っている。



 もし、虐待でもしているなら。鬼業は、昔馴染みのよしみで、全治半年程度の怪我で許してやるつもりだ。無論、イデアらは叩き壊して、2人を連れ帰る。龍実なら、子供が2人増えても許してくれるだろう。・・・いや、殺されるかも知れねえけど・・・・。





 その2人は。


「私達に作戦成功がかかってるって、イデアは言ってた。頑張らないと」


「でも、鬼業さんも知明も居るから、気負わなくても良いとも言ってた」


「良いのよ・・。私達が、決める。それで、私達の仲間を増やすのよ」


「・・・順々に増やさないと、ブラッシュアップが間に合わない。テレスを叩き台にして、私の性能が向上したように」


 テレスのが、1才年上だったり。とりあえず、テレス、アトムの2人を製造してから、グレートアトランティスは様子見に入っている。果たして、上手く行くのか。仮にアトランティス星を無事取り戻せたなら、この子らも普通に生活して行く必要が有る。また、ロボットと共に生きていくにしても、ある程度以上の性能が無ければ、再利用送りだろう。


 生命部品は、極わずか。身体の成長スケジュールを示す遺伝子情報のみと言っても良い。それ以外の大部分、脳や骨、筋肉、皮膚、内臓の全て、血液。それら全部が金属と油とプラスチックとゴムとでまかなわれている。そう言う人間。生まれが工場なだけの、普通の女子。



 自分達で成功させ、優秀さの証明をする。そして、新しい人類の座を手にする。


 新しい血を、この宇宙に示し、正統なる後継者の地位を勝ち取る。


 私達2人と、イデア達とで、新しい人類とロボットの世界を作る。その、第一歩とする。





 1週間の間に、船の準備も着々と進んでいる。船は、長さ100メートル、全重量1000トンほどの小船だ。迷彩効果を極限まで高め、グレートアトランティスの監視からさえも逃れられるよう設計してある。そして、1年分の荷も、既に積み込んだ。搭乗ロボットにも、宇宙空間での生活プログラムを積み、現在ブラッシュアップの真っ最中だ。




 アトランティス星のロボット達が地球に来るのが早いか。こちらがあちらに到達するのが早いか。


 一応の手は打っているが、何処まで通用する?イデアらの想定を超えていれば、負けだ。地球の正確な場所は視認出来ないように、宇宙迷彩をほどこしている。更に重力バランスも、太陽系内限定だが、誤魔化している。綿密に調べられたら、バレるが。銀河をざっと調べる程度の調査なら、監視の目を逃れる自信は有る。


 そう。


 神様で、そのままで居続けてくれれば。


 常に進歩しているこちらは、超えて行ける。




 準備は終わった。5人全員が、遺書を書き残した。


「長い道のりになると思います。全てが順調に進めば、予定の1ヶ月で完了するでしょう。ですが、苦難も予期されます。皆さん、例え失敗しても構いません。データと共に生還して下さい。無闇に突っ込んで死ぬより、皆さんと言う戦力が戻って来るのが、こちらに取って有利な選択です。生きて、帰って来て」


「心配ない。2ヶ月後、祝勝会の用意をして待っていてくれ」


 プラテニウスの言葉を皮切りに、それぞれがそれぞれの挨拶を済ませ、旅立った。





 それから。



 2ヶ月経っても、音沙汰は無かった。

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