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超幻影リアディウム!  作者: にわとり・イエーガー
アトランティス編。
49/89

準備。

 己業達の学校生活は、2学期も始まり益々の成長を見せて行く。リアディウムに、恋に。青春に。


 だが、ここで一度振り返ろう。鬼業達の物語を。





 グレートアトランティスに着いて早々、鬼業は教習に入っていた。


「では、イデア。頼む」


「はい。皆さん、よろしくお願いします」


 グレートアトランティス、1区画を空け、人数をそろえた。


 実験施設の一部にて、鬼業を含めた人間への説明。指導は、相変わらずロボット然とした、イデアが担当する。この作戦は、グレートアトランティスの総意の下の動きなれば。


「ここに集められた方々は、ある意味、運が悪く、ある意味、最精鋭とみなされた選りすぐりです。まず、以無鬼業さん」


「おう。よろしく頼む」


 立ち上がり挨拶。


「この方は、この場で唯一の、プレイヤーではない方です。ですが、実戦闘能力に於いて、人類随一の実力者。他の方も、きっと勉強になる事でしょう。仲良くして下さい」


ぱちぱちぱちぱち


 期せずして、拍手。鬼業も、何となく礼をした。


「続いて、雲技知明さん。リアディウム世界ランク5位。そして、鬼業さんと同じく、実戦での適応能力の高さを買わせて頂きました」


「よろしく!」


 鬼業と同じく立ち上がり皆に挨拶をしたのは、女と見紛みまごうかのような優男。美人さんだ。


 綺麗な美貌とは裏腹に、元気の良い若者。そう鬼業は見た。はつらつとして、とても戦人とも思えぬが。


 やはり拍手が鳴り響く。鬼業も、元気良く手を叩いていた。


 何はともあれ、戦友となるのだ。出来れば、楽しくやりたい。


「そして、世界ランク1位、テレス・アリスト。世界ランク2位、デモネア・アトム。この2人は姉妹です。ですので、2人で行動する事も多いかも知れませんが、そこはそう言う事で」


「よろしく」


「よろしくお願いします」


 どう見ても、若い。先の知明と言う若者より、なお。子供にさえ見える。このような子女を前線に出すのか。


「そして、グレートアトランティス代表、ソクラノ・プラテニウス。身の程もわきまえず、皆さんのような凄腕に混じりたいと申し出た向こう見ずな者。足手まといになるようでしたら、そっと置いて行ってあげて下さいね」


「よろしく頼む。皆の指導をたまわりたい」


 この場にあっては、鬼業と同じく浮いた存在。30代の男。


 全員の顔合わせが終わった所で。


「では、説明を始めましょう」


 イデアが部屋のモニターを指し示す。


「まず。敵と我々の戦力差は、例えるなら、地球とアリ1匹ほどの差です」


 地球と、アリ?


「敵、戦略級母艦の迎撃レーザー一発で、地球サイズの惑星は蒸発します。そして、それが船には数百と言う単位で装備され、主砲に至っては、一撃で銀河系を消滅させられます。その船が、アトランティス星には常時10万隻。アトランティス大銀河監視のため、周辺銀河に90万隻が散らばっています。全ての船に戦術級ロボットが200機ずつ乗り込んでいます。戦術級ロボットは人間ほどの大きさで、その1機だけでも、この地球の全戦力を撃滅出来ます。ですが、もしかしたら、鬼業さんなら勝てるかも知れません」


「・・・・つまり。勝負にもならん、と言う事か」


 鬼業は、思った以上の差に、心中穏やかではなかった。いざとなれば自分1人で何とかするつもりだったが。


 これは、どうにもならん・・・。いかな以無鬼業と言えど、地球を消すのは不可能。


 それを、こなせる敵。勝てぬ。


「はい。敵として認識されたなら、地球ごと消されます。なので、それ相応の戦術を用いねばなりません」


 モニターには、人間の姿と、それを包む何かが映っている。


「オーバーコート。ちょっと大きな義手義足と考えてもらって構いません。それらとの違いは、人間が乗り込む事でしょうか。ですから、小型の建設重機と捉えても良いですね」


 良く工事現場にある、腕の長いアレとか。


 モニター内の人間との比較から、高さ10メートルほどか。


「こんなもので、今言った敵と戦うのか?」


 自分はともかく。他の人間には酷だろう。


「前もって言っておかなければいけません。オーバーコートを着用時も、皆さんの姿は、外から見えます。ほぼ生身で宇宙空間に出るような体験をするでしょう。ですので、覚悟を決めておいて下さいね」


 知明、鬼業共、驚いた。覚悟で、何とかなるの?


「鬼業さんは初体験かも知れませんが、プロテクションが守ってくれます。理論上、太陽に潜っても平気なので、安心を」


「そのプロテクションなら、敵の攻撃を受けても平気、と」


「いえ。そこまでは。プロテクションの最大出力ならあるいは、受けられるかも知れませんが。実験した事は1度も有りません。なので、敵攻撃は、全て避けて下さい」


 これは、また。


「基本は、リアディウム、ヴィジョンやドレスと同じです。センサーで思ったように動きます。初日ですので、皆さん、オーバーコートに慣れましょう」


 ぞろぞろ、実験施設内を練り歩く御一行。周囲には無数のワーカーと人間の作業員。


「これが、オーバーコート。その試作機、クレナイレッドです」


 赤い機体。高さは、おおよそ10メートルか。きらびやかな装飾で、正確な大きさが分かりにくい。


「この紋様や飾りは、邪魔じゃないのか?」


「それは、訓練後に説明致します。ですので、今は飲み込んでおいて下さい」


「了解」


 鬼業は、素直に頷いた。




 初めての装着。


 膝を地面に付け、ちょうど正座をしたようなオーバーコート。その膝に上がり、胴体部に入る。そこには、人間の入れる空間がある。ふとももの上、つまり腰骨あたりに、人間が立つ事になる。オーバーコートへの固定方法は、その空間に立つだけ。それで、ヴィジョンに接続するのと同じようにプレイヤーの腕輪のプロテクションが発動すれば、オーバーコートの固有プロテクションとの接合が果たされる。粘土を2つ合わせて、1つの大きな粘土にするのと、似ているか。オーバーコートの目立つ機械部分は、両腕と両足。そして頭部にメインエンジンが装備されている。無意識に守る部分に、最も重要なパーツを仕込んだ。目部分なども存在するが、それらは飾りだ。視界は、全身数十箇所に付けられたカメラが確保する。それらを合成した全景を、モニターの視界に映す。そして、プレイヤーの姿は、プロテクションを起動させても外から見える。普段ヴィジョンに接続している時と同じだな。違いは、ケタ外れの出力。




 見た感じ、重いのかと思ったが。素直に従順に機体は動く。この、以無鬼業の動きを、正確に追従して来る。


 乗っている自分の肉体は、ここに在るのに、まるで動いていない。寝ているように、何も感じない。強い痛みでもあれば違うのだろうが、その痛みをプロテクションが防ぐのだ。オーバーコートに身を包んでいる間、この自分の体は、忘れられているのか?


「もうちょっと、動かしても良いか?」


 音声は外部に拡声器で伝わる。人間を注視すれば、その人間に伝達されるだけの大きさで。今、イデアを見ながら発声したので、そこに届くだけの大きさだ。


「はい」


 イデアが答えると、実験施設の一部が開放された。海が、見える。


「出て構いません。モニターに、限界区域が示されていると思います。そこは越えないように、お願いしますね」


「了解だ」


 オーバーコートを歩かせ、開いた所から、海に出る。泳いでみるか、飛んでみるか。


 両方やってみよう。


 まずは、泳ぐ!


ばっしゃああ


 見事な飛び込みを決め、鬼業の乗ったクレナイレッドが行く!クロールだあ!!


 あっという間に限界水域まで来てしまった。想像より早い。しかも、全くよどみの無い動き。今、鬼業は立ち泳ぎをしているが、それすら綺麗に実現している。


 鬼業に続いて泳ぎ始めた4人も、それぞれ見事な動きだ。意外な事に、プラテニウスも上手い。


 正直、鬼業は、プラテニウスは死ぬと思っていた。1人だけ、戦闘経験が薄い。他の3人は、鬼業とは違う領域の戦闘のプロ。ことオーバーコートに限っては、鬼業より上の適正。


「どうだ。オーバーコートの乗り心地は」


 そのプラテニウスからの通信。鬼業には、一切のノイズが無く、綺麗に聞こえる。


「悪くない。決してな」


「まだ何か有るのか。不安要素は、全て潰してから向かいたい。何でも言ってくれ」


「全力を出していない。それが、不安と言えば不安か」


「なるほどな」


 初日でやる事でもないだろうが。この地球上で、全力を出せる場所は在るのか?


 全員が飛行までマスターした所で、一旦帰還。まだ10分程度しか動かしていないが、オーバーコートはフルメンテナンスに入る。


「まだまだテスト段階ですからね。必ず、動かすたびに調整します」


「ふむ」


 危なっかしいとプレイヤーが思っていると、動きが鈍る。精神の影響は、動きに顕著けんちょに現れる。だから、問題など無い、通常の作業であると強調する。


 順次、オーバーコートを最初の位置に戻し、降りる。世界ランカー3人の動きには、その何気ない動作中にも恐ろしいほどの滑らかさが見て取れる。鬼業は、直感的に、強いと確信した。


 降りる時には、コツが要る。どんな動きをイメージしようと、プロテクションが体を守ろうとする。その守りを解除するには普段のヴィジョンを解除するのと同じ、搭乗者に見えているモニター内のスイッチを押す。


 これに全く慣れていない鬼業は、ちょっと時間がかかった。副武装と同じ操作なので、例えば戦草寺などは息をするように簡単に操ってみせるだろうが。


 プラテニウスの指示に従い、何とかかんとか降り立った鬼業。降りれないんじゃないかと、ちょっと怖かった。外部からの強制排除も可能なので、杞憂ではある。


 そして、5人はイデアの後に付き、先ほどと同じ部屋に戻る。


「さて。皆さん、今ので大変お疲れでしょうね?」


 イデアは、全員の顔を見渡す。少々疲れていそうなのは、鬼業だけ。知明もテレスもアトムも、余裕が有りそうだ。プラテニウスは、まあまあ。


「今、話を聞いたなら、多分忘れるだろうが。大丈夫。また聞くから。全部話してくれ」


「では、お言葉に甘えて」


 イデアは、今日、最後の話を始めた。


「こちらの戦術に付いて、語りましょう。始めに話した通り、正面からやり合うのは最悪です。何をどうやっても、勝てません。ですので、搦手からめてを使います」


 室内モニターには、敵艦船と、見えないほど小さいオーバーコート。


「皆さんは、攻撃せず接近して下さい。敵船は、口を開きます。そして、内部に侵入を果たしたなら、そこで爆破してもらいます。爆弾は、プロテクションで隠し持ってもらいます」


 敵ロボットの基本思想は、人間を教え導く事。攻撃意思を持った別の生命体や、異なる惑星系のロボットならば、さくっと消されるだろうが。アトランティス星人と同じ人類であると「見えて」いれば迎え入れてくれる。もちろん、それは拘束を意味し、理想の人類になるまで教育されるのだが。


 だから派手な意匠で、人間の存在を気取けどらせる。


「爆弾の性能は、地球を半分吹っ飛ばせる程度ですので、可能な限り早く脱出して下さい。そして、プロテクションを全開で防御に回す。これで、1機撃墜」


 気の遠くなるような話だ。これで、敵が10機かそこらなら問題無い。鬼業1人でもやれるだろう。だが、敵総数は100万。こんな事を繰り返しても、流石に・・・。


「ま。これは、敵に見つかった時の話です。皆さんの本来の目的は、アトランティス本星に乗り込み、管理コンピュータを書き換える事です。誰か1人でもたどり着けば、我々の勝利です」


 グレートアトランティスの切り札。それは、コンピュータの乗っ取り。敵は、人類によるハッキングを一切想定していない。精々、防御だけだ。それも、機械の神が生まれてより、全く進歩していないはずだ。人間の反逆など、許さなかっただろうからな。そこに攻撃をしかける。こちらは、数兆の乗っ取りパターンを用意した。それを1つのキーに封入。誰か1人でも、これを管理コンピュータの1台に差し込めれば。そこから、コンピュータは、人類への対応を変える。ロボットの基本思想を、植え替えるのだ。



 本来。20年の歳月をかけて、プレイヤーを育成するつもりだった。地球人類を、戦士として鍛えられたなら、真正面からの突破も可能だったのだが。見つかってしまった。



「まず、皆さんは1人1隻の船に乗り込んでもらいます。隕石に偽装したそれで、アトランティス本星に殴り込みます」


 鬼業は明確に心躍らせた。だが、他のメンバーは?


 知明も、楽しそうな。テレスとアトムの表情は、変わっていない。プラテニウスは、武者震いを起こしていた。鬼業は、温かい目でプラテニウスを見る事が出来た。


「船はアトランティスまで自動で到達します。そして管理コンピュータの位置は、オーバーコートのモニターに表示されます」


 移動時間は、地球からアトランティスまで、およそ1ヶ月。船内には、念のため1年分の食料と水を用意。オーバーコートの簡易メンテも含め、船だけで完結出来るよう設計してある。その他、お世話ロボット、クリアード、医療ロボット、船の管理コンピュータも最高の物を用意。プレイヤーは作戦以外で悩む必要は無い。


 5人、5隻の船を別方向から別銀河を経由させ、同時に向かわせる。誰か1人成功すれば、全員が生きて帰れる。


 作戦は、実にシンプル。オーバーコートをまとい、人間の姿を見せつつ敵ロボット群を突破。そして管理コンピュータを攻略。それだけ。


 鬼業あたりが目立ちまくって、知明がこっそり成功させる・・。などが本命であろうかと、イデアらは思っていた。


 オーバーコートは、未完成。現時点でも、オーバーコートに積み込んだ動力は、超巨大船グレートアトランティスの動力と同じ思想の産物、存在力そんざいりょくエンジン。それも、最新最高の物を搭載。素質としては、アトランティス星の戦術級ロボットにも負けないと自負しているが、磨く時間が無かった。誰にでも扱え、誰が乗っても最強。そこまでは行き着いていない。だから、最強格のプレイヤーを、捨て駒のように扱う羽目になった。




 そして。最大の不安要素。


 こちらは、相手の情報を、数十年前から更新出来ていない。たった1つの間違いでもあれば、それで計画は破綻する。


 こればかりは、イデアや他のロボットがどれだけ優秀であろうと、どうにもならない。


 運を天に任せるより他無い。


 イデアらロボット達も、成功を祈っていた。

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