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輝光白蛍の思惑。

 500ポイントダメージ、全身に1回ずつの判定。そして、頭部と左腕の破壊。手傷を負った状態と言って、過言ではあるまい。構えが取れないので、千畳海苔も撃てない。外周必食を撃ってしまい鎧が無いので、防御もゼロ。更に視界がほぼ殺されている。


 うむ。


 ちょっと、厄介だな。



 ただ、かなりの幸運でもあった。敵はボーガンに習熟していた。更に盾をメインに勝ち上がってきた。その上、副武装の扱いも。


 そこまで数多くを修練していれば、当然、格闘の習得など後回しだ。むしろ、格闘にもつれ込む前に倒す予定なのだろう。盾で相手主武装を弾き飛ばす。それからボーガンで削る。それで上手くはまらなければ、トラップに巻き込み、確実にダメージを積む。それが、1人目の想定かな。


 それでも、勝てた。運気はこちらに有ると見る。



 2戦目。敵は格闘タイプか。手甲を装備している。


「今度はオーソドックスなタイプだと思う?」


「ううん。絶対に、何か仕掛けが有るはず」


 だよなあ。己業も注目していた。野牛の戦いぶりに感心もしたが。


 輝光白蛍。面白いじゃないか。あの盾は、本当に面白かった。それを決勝まで使わなかった根性も高く買いたい。


 この戦いも、きっと楽しい。



 開始!


 来る!


 速い。流石にオリーブクラスではないが。少なくとも、泉鬼の速度は超えている。つまり、ミノテリオンでは、絶対に追い付けない。


 遠距離攻撃は・・・有るか。そりゃそうだな。


 敵は距離を保ちつつ、副武装を放って来る。


 クナイ。速さは、そこまででもない。だが、それを、今のミノテリオンは避けられない。見えないから。


 一応、動いてみるが、敵は引き足も速い。斧を投げてみるか?


 いや、下手をすれば掴まれさえするだろう。こちらの選択肢に投擲が有るのは見られているのだ。この状況なら、尚更。


 全く。打つ手無しだな。


「頑張れ・・・」


 静かな声で応援する己業。大声は、出さない。


 己業は、光明を見出していた。細い、か細い光だが。野牛なら、不可能な業ではない。


 頑張れ!


 野牛は、ミノテリオンを進ませる。左右に振って、何とか接近を試みるが。それでも、近付けない。斧を振り回し、退路を制限もしてみるが、当たりはしない。




 輝光白蛍は、気付いた。


「逃げろ!」


「いや、もう無理っぽい。地力で何とかしてもらおう」


 声を出し、指示を送るが。


 後ろが、無い。壁際まで、来ていた。




 野牛なら出来る事。普段なら、斬り合い、殴り合いとなり、このような戦術は無かったかも知れない。しかし、野牛は、先ほどのオリーブ戦を強く覚えている。そう、自身を遥かに超える一殺宝仕が、どのように戦ったのかも。


 壁際に逃げる。最強レベルらしからぬ慎重策だが、見た目を一切気にしない潔さは、好きだ。あれは、速過ぎるムミョウの攻撃方向を制限するための作戦。


 今回は、逆。相手の逃走経路を塞ぐ。後ろに下がれないなら、前か左右。左右は、斧で止める。いくら何でも、斧のスイングスピードを超えて速いわけではない。そして、格闘タイプなら、前に出ても良いはずだ。こちらは片腕なんだからな。更に、打撃戦で視界制限は有り得ないレベルの難易度。それを、格闘タイプの敵は知っているはず。野牛も戦草寺も、なぜか知っている。


 来い。私を殴りに。


 私に、潰されに。


ゴ!


 来た!!!


ゴギイ!!


 右手上段に持っていた斧を全力で振る。千畳海苔が使えない以上、必殺の性能は無い。が。


 重かっただろ?


 敵は、地べたにわされた。


 ちゃんと、受けたのに。左腕をガードのために構え、判定も1回きり。ダメージだって、パワー特化と言え、200ポイントのみ。そこまで甚大じんだいな被害じゃない。


 なのに、一発で潰された。




「回避の重要性は、散々言って来たはずですが」


「あれは仕方無いよ。目の前で見るミノテリオンの斧は、多分見えないよ。それぐらい速そう。あれを避けるには、また壁際まで後退しないといけなくなる。これは、格闘技顧問を招かなかった、輝光白蛍のミス。ウチのミスだよ。個人の問題じゃない」


「そうですね・・すみません」


「良いよ。あなたの認識を超えるレベルの相手って事だから。多分、オリーブを想定しても、そう違わない、ね」


 輝光白蛍主将。3年、火清水ひしみず 谷中やなか。最強校大将、ゆえに現役最強の高校生。ただ。本人は、一殺に1対1で勝つ自信は全く無い。


 だが。


 輝光白蛍は、オリーブに勝つぞ。私は弱くても。私達は、最強だ。




 縦のエネルギーを、真っ直ぐに受けた以上、ミノテリオンのエネルギーを全て食った。例えそれがムミョウであろうと、叩き潰す自信は有る。


 じゃあ、やろうか!


ガ、ガッ、ガン、ガイン!!


 ただ、斬る。それも、縦斬りをただ入れ続ける。もちろん、速度を稼ぐため、敵の体に当てた反動から無理矢理斧を落とし、数秒で決着させた。


 その間、相手は何とか逃げよう、起き上がろうとしていたが。ことごとくを邪魔され、どうにも出来なかった。


おおおおおお


 2人抜き。それも、ミノテリオンは副武装による40ポイントダメージしか受けていない。


 これは、相手が弱かったから。ではない。


 野牛が、相手の、輝光白蛍の思考を見抜いた。


 輝光白蛍の統一された考え。それは、慎重。臆病とさえ言い切れる、堅実さ。1人目は、視界を潰した上で、離れた。2人目は、視界の死んでいる相手に距離を保ち、副武装で削って来た。両者とも、被ダメージの少ない、丁寧な戦い方と言えるが。


 それゆえ、距離を取る事に執心。こちらの斧に過剰反応してしまい、多少のリスクもおかせず、逆に退路を失った。


 そんな遅い戦いで、勝てると思ったか。舐められているのか?




 これは、野牛の勘違い。わざと遅くしているのだから。真剣に、大真面目に勝つために。輝光白蛍の戦術の柱は、対オリーブ。対雲技知明。あの化け物と速さで競っては、100万年経っても勝てない。


 だから、遅く。自分のペースを保つ。相手が、目に見えぬ速度だとしても。一手一手丁寧に、確実に。


 そうして、去年はオリーブに勝利した。リアディウムで最も強いのが、オリーブであろうと。リアディウムを最も勉強したのは、ウチだ。


 だが。ここまで不発なのも、認めざるを得ないだろう。2人目は、カウンターと必殺技を出す事無く敗れた。拳より早く斧を叩き込まれた。


 認めよう。技四王は、オリーブと同等。



 3人目。彼女に、戦草寺まで倒してもらおう。そして、3人でムミョウを倒す。




 開始!


オン!


 いきなり斧を投げる野牛。奇襲ではあるが。


 左に避けた敵に、斧を投げると同時に全力疾走に入っていたミノテリオンが襲いかかる!!


オ オ


 火勢。ミノテリオンは、灼熱光に包まれた。


 大筒おおづつ。ロケット砲でもカノンでも良いが、1人目と同じく弾の変更が可能。ギミックの少ない代わりに、遠距離大型火器でありながら、小器用な奴だ。ただ、変更時間は、もちろん必要。プレイヤー自身の判断力が問われる。


 彼女が、準決勝、フェニックスを焼き尽くした。


 火炎放射器、ではない。これは広範囲レーザー。ただ、距離は稼げない。ボーガンの爆発弾と同じだ。縦横の幅は大きいが、貫通まではしない。


 違いは、衝撃効果を含めていないので、かなりダメージが稼げる事。更に光の速さで突っ込んで来るので、理論上避けられない。


 とは言え、遠距離に在って、距離を稼げない以上、必ず相手の進行前提だ。無駄撃ちして、手の内をさらしただけ、と言う結果も有り得る。特に今回は、野牛はまず斧を投げた。あれに即応していたなら、斧の判定は得られただろうが、それだけだった。


 良く、我慢した。野牛は、相手を褒めつつ、火勢を抜けて殴り合える距離まで踏み込んだ。敵は撃った以上、その場に居る!



 カウンター!!




 己業も戦草寺も、感心した。手負い相手に、手の内を明かしまくる。手を、全く抜いていない。


 こいつ、やる。


 最悪なのは、ダメージを食らって要らぬハンデを背負いながら、技を見せて終了、だ。この大筒使いは、技を見せる代わりに、ノーダメージで勝ちに来ている。


 正しい判断だ。野牛を侮っていては、出て来ない結論。




 それはそれとして。カウンターの衝撃を食らい、ミノテリオンは弾き飛ばされた。幸い、ゲームオーバーになるほどのダメージは負わずに済んだ。が。


 累計880ポイント。そろそろ、終わりか。


オ!


 ダッシュ!特攻か!


 ・・とは。技四王の2人は全く思っていなかった。


 敵灼熱の寸前で、前もって決めていたように飛ぶ!!


 レーザーの効果範囲は広い。が、ミノテリオンなら飛べる!


 この野牛の動きで驚くべきは、ミノテリオンの跳躍力ではない。それは、誰でも出来る。尋常ならざる技巧とは、初めて食らった技の効果範囲を見切った事。しかも、野牛の視界は、かなり制限されている。つまり、感覚的にミノテリオンの身体のどこまでを通過したのかを知ったのだ。ヴィジョンの仮の肉体を、完全に我が物としている。


 遠距離高火力型の次弾は、遅い!行ける!カウンターは、もう無い!!



 だが、ミノテリオンは、敗れた。空に在る状態で、敵大筒の振り回しを食った。


「へえ・・」


 戦草寺は感心した。


 大筒で殴ったのに、ちゃんとしたダメージが入っている。何のギミックも無いかと思いきや。銃剣ならぬ、砲剣か。しかし、剣状の物は付いていない。


 それに、いかに飛んだ後で行動の自由が効かない状態であっても、あの野牛が造作も無く食らうとは。もちろん、視界制限はかかっていたにせよ。


 戦草寺にも見えた。己業には、はっきりと。


 あの大砲。加速した。シルエット本体のスピードじゃない。むしろ、あの大筒がシルエットを動かしたように見えた。


「分かるか戦草寺?」


「推測なら・・。あのシルエット、全く動いてない。動きを見せたのは、最初の斧投げを回避した時だけ。多分、遠距離高火力型としても、更に洒落になってないレベルで重いんだと思う。・・1人目と、同じ、かな」


 恐らく。シルエット本体は、本当に木偶に近いレベルで動けないのだと思う。それを、最初の奇襲だけは避けた。読んだのだ。野牛の先手を。最初から動くつもりだったから、回避の用意が出来ていた。


 プレイヤーの腕前が、最低でも野牛と五分。読みに身を任せる度胸も十分。そして、大筒には仕込みが万全。強敵だ。



「参った、交代だ。頑張ってくれ」


「はい。任されました」


 今大会、野牛は最後の出番だったと言うのに。あっさりと。それを受ける戦草寺も、さらりとしたものだ。


「頑張れ!」


「頑張ってください!」


 3人の応援を背負い、戦草寺が行く。

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