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王者の影。

 やはり、オリーブは怪物だ。戦草寺は、改めて思った。ムミョウユキテラシ。作った戦草寺からして、勝てる気がしないモード。それに、2度も攻撃を当てた。本当に、ケタが違う。


 そして。言うまでも無い事を、言うと。


 雲技知明は、あれより強い。


 今度こそ、戦草寺は恐怖に震えた。・・・人間じゃない・・。


「まだ輝光白蛍は、やっているな。堂々と偵察させてもらおう」


「ですね」


 野牛と己業は、先生から飲み物を受け取り、リラックスしてモニターを見ていた。


 少し、肩の力が抜けた戦草寺。先生が差し出してくれたお茶を受け取った。




 輝光白蛍は、3人目。対するスペシャルフェニックス高校は、4人目だ。かなり粘っている。


 宮崎県代表、スペシャルフェニックス高校は、農業系の多いBブロックの中でも更に抜きん出た、植物系の雄。がっちり結界を張り巡らし、自分のペースに巻き込み、相手を封殺する。1回戦、いきなりの頼光との激戦は、どちらが勝つか全く分からなかった。最後の最後まで接戦だったが、フェニックスがわずかに上だった。


 己業を筆頭に、技四王はその戦いにさほどの興味を覚えなかった。むしろ、負けた頼光に強い関心を抱いた。


 だが、強い。林密の攻撃性を薄め、戦術により磨きをかけたタイプと言えるか。リアディウムに限っては、己業など足元にも及ばないレベルで巧い。


 しかし。そのフェニックスを超えて更に巧いのが、輝光白蛍、前年度優勝校なのだ。


 だからこそ研究もされ尽くされているだろうに、前評判通り、勝ち抜いて来た。全く危なげ無く、堅実に。しかも、準決勝までレギュラーの半数を休ませつつ。尋常な度胸ではない。


 腕前を見せない計算と、それを実行する気骨。頭で理に適っていると分かっていても、実践出来るかどうかは、別だ。


 やってのけて来たから、勝っている。


「どうだ。己業」


「分かりません。正直、全員まとめて1分で勝てそうな気さえします。でも、そんな奴らが勝ち残れるわけがない」


 3人共、似たような意見だった。見た目だけで判断しきれない何かが有る。野牛や戦草寺が去年の映像を見ても、恐らく強いのだろう、としか分からなかった。ネット上の解説サイトを見て、なんとなく分かった気になったが。


 それぐらい、遅いのだ。特に、オリーブ戦を経験した今、輝光白蛍のレギュラー陣も止まって見える。


 だが、己業の言った通り。弱い奴は勝てない。関刃、黒曜石心、ナウマンゾウ。技四王が見て、強いと思った奴らの屍を超えて来た以上、こちらと、オリーブと同レベル以上のはず。


 まだ、こちらには、その強さが分からないのか。相手の力量が分からないのは、未熟の証だが。




 待機中に、技四王は作戦を決めた。順は、野牛、戦草寺、己業。まず、野牛が相手戦術を見極める。チーム戦術を用いる輝光白蛍には、統一された、連なる考えが有るはず。第一に、それを知る。そして、戦草寺が削る。削り終えたなら、己業が潰す。簡単だな。


 ・・・輝光白蛍は、去年のオリーブに勝利している。つまり。先程、己業がムミョウユキテラシまで使ってギリギリで勝った一殺を同じく倒した。


 ちょっと、怖い。3人全員の共通認識だったが、口に出す者は居なかった。表面上、なんてことないツラをしながら、観戦に精を出していた。


 数分後。順当に勝利を決めた前年度優勝校。


「面白くないな」


 神をも恐れぬ発言だが。戦草寺も己業も、そう外れた意見とも思わなかった。


 まこと失礼ながら。心が躍らない。ドキドキしない。どちらが勝つか、誰でも分かる。


 消化試合じゃねえか。


 オリーブ戦を経て、少し心が凍りそうになった戦草寺。自分への怒りで煮え立った野牛。2人の気持ちが、ぬるくなっていた。


 戦草寺は、千誌の表情を見てみた。リアディウムを深く知らない一般人の目線だと、どう見えている?


 緊張していた。今、緊張感を抜いたようだ。


 ふむ?




 この時。3人に何故、理路に従っているはずの王者の強さがあまり伝わっていないのか。


 強さのタイプが、違うのだ。


 技四王の目指しているものは、これは正しい表現ではないが、鬼業だ。あるいは、知明。理を超えた、常軌を逸した存在。アレになりたい。アレに勝ちたい。


 対して、輝光白蛍を始めとする者達の趣向は、理屈にのっとる事だ。世界中、否、この無限の宇宙の全てが従う理を知り、理に乗る。理に逆らうと言うのは、地球の重力や太陽の暖かさに逆らうと言う事。そんな事は誰にも出来ないし、やってはいけない。


 だから。本能レベルの無意識下で、違和感を感じてしまう。


 水が高きから低きに流れるような、そんな当然の試合運びに興奮出来る人間ではないのだ。


 水の、激流の、ぶつかり合いが見たい。


 ぶつかりたいのだ。




 それでも。輝光白蛍は誇張でなく最強。己業ですら、勝てるかどうか不明。全力を以ってぶつかるべきなのだ。


ふーっ・・・


 テンションが、上がりきらない。呼吸を整える野牛。初めて来た全国大会、初めての決勝戦。人並み程度には緊張している。だが、イマイチ盛り上がらない。オリーブ戦が、衝撃的過ぎた。


「先輩」


「なんだ?」


「勝ったら、おれと付き合えますよ」


「ふっ」


 緊張をほぐす冗談だとは分かるが。


「なら、頑張らないと、な」


「え?」


 己業は、返事が出来なかった。あれー。そう言う返答なの?じゃ、じゃあ、デートプランを一緒に練りましょう・・


 要らぬ事を言いかけた己業を、戦草寺が腕を掴んで止めた。


 ノった。もう大丈夫。




 決勝戦。第1戦目。


 出場選手、野牛海苔子。使用シルエット、ミノテリオン。


 開始!


ゴ!


 全観衆の目が向いている、誰もが緊張から逃げられない決勝の舞台で、野牛はいきなり全力疾走を決めた!


「流石」


「さっきの己業君の言葉で、ちゃんとリラックス出来たね」


 2人の見る所、輝光白蛍1人目は、そこまで強くない。弱くもないが。言えば、今まで戦って来た学校の、2番手レベルか。


 無論、そんな事は有り得ない。これは、明らかにオリーブ戦の弊害へいがい。あの戦いで、技四王全員の強さが引き上げられた。


 対戦相手は、メタリックな装甲に身を包んだ騎士。ミノテリオンとは、がっちり噛み合う形になるか。ただ、今まで早い動きを見せた事は無い。的になるか?


 ダッシュ後、2、8秒で斧の距離に到達する。が。


 敵は試合開始2秒で「先制攻撃」を開始した。


「へえ」


 己業は感心した。なんだ、面白いじゃないか。


 騎士の持っていた盾。ミノテリオンに正対して構えたそれは、防御のため、ではなかった。


 盾が中央から上下にスライド。盾の上と下部分が変形しつつ伸び、つるを作った。



 野牛は、ステップで回避。モーションは見えていた。右方向から回り込む。


 敵の盾は、真ん中を砲口としたボーガンを形成した。中々愉快な武器だ。


 そして、特筆すべきは、この盾のギミックを今まで使わなかった事。見た事の無い物には、どうしても一手判断が遅れる。今まで見せなかったのは、そのため。


 本当の実力を、やっと出して来た。




 戦草寺も、少し、輝光白蛍への興味が湧いた。


 奥が深い。まだ、見せていないモノが有るな。


 もう、最後なんだ・・・全部、出せ。


 その時、会場内で最も貪欲だったのは、先刻、唸るほどの死闘を繰り広げたはずの戦草寺だった。

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