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心機一転。

 己業の小学校1年の夢は、ライトコップだった。光の速さで悪党をとっ捕まえるスーパーポリスオフィサー。しかも、ロボット。


 アメリカ製作のアクション映画、ライトコップ。全世界で上映され、日本でも何度もテレビで流されている、アクション映画史に名を残した作品だ。


 異次元生命体、エクストラ・ライフである主人公、メイプル・シロップ。アメリカの地に偶然降り立った彼は、人間の暮らしを面白く思い、適当に毎日を通常次元で過ごして行く。


 そんなある日、メイプルが観察していた範囲、アメリカ、デトロイト州で犯罪が起きた。無差別殺人だ。老若男女を問わず対象を絞らず、朝に夜に昼に。警察ですら標的となった。


 メイプルは、その様子を静かに観察していた。犯人の姿形を見、犯行の様子さえ見ていたが、それでも、何か行動を起こしたりはしなかった。殺人、と言うものを忌避する心理現象は、メイプルには無かったからだ。草花を刈り取る人間を刈り取る殺人鬼。永遠のいたちごっこを、メイプルは興味深く鑑賞していた。


 そのメイプルが、特に興味を持ったモノが有った。人間の、子供だ。緊急警戒が発動され、街中からは子供の気配が消えた。にも関わらず、その街を闊歩する筋金入りのいたずらっ子が1人。ブレイン君、5才だ。


 ブレインの両親は、既に被害者に名を連ね、現在は同じ州にある祖父母の家で暮らしている。だが、ブレインは、恐怖に屈するを良しとしなかった。懐にパチンコをしのばせ、囮になった自分を襲いに来た犯人を、叩くつもりだ。仇を取るのだ。


 この小さな生き物は、大きな生き物を殺害するのか?「あの犯人」をこの子が?不可能だろう。気まぐれで警察署を襲い、無傷で殺傷し終えた強い敵。この子では、生き残れるまい。


 なら、どうしたら。より愉快になるのだろう。また似たような殺害を見せられても、正直、食傷気味なのだが・・・。


 そして。結論から言えば、ブレイン君は死なずに済み、犯人は捕まり。デトロイトには、新たな守護者が生まれた。




 以無己業の、英雄だ。自身、戦う者であったので、犯人との戦闘をシミュレート。勝てなかった。鬼業の救援が無ければ、当時の己業では勝てない。幼い始業を連れて逃げ延びる事すら、出来ない。その犯人を倒したライトコップことメイプル。己より強い者。


 それに、かっこよかった。警察らしく銃器を用いもしたが、1番の武器は光速行動からの体当たりだ。攻撃ごとに、メイプルの乗り移ったボディは自壊してしまうので、州は大赤字を抱えてしまう。それもまた、物語に組み込まれた要素の1つなのだが。




 今。それが目の前に居る。


 ちなみに、デトロイトに近いカナダ出身のアシッド・アリオラもまた、ライトコップのファンだったりする。映画はかなり有名なので、見た人も多かろう。己業が見たのは、映画とテレビバージョンと両方だ。


 ヴィジョンには、自動車をバラバラに分解した上で、更にそれら部品を組み合わせた人型。それがライトコップの初期型専用ボディだ。自動車への変形を可能とするマシン警察。メイプルが得た人類との絆の力。


 今のおれに、それと向き合う資格は有るか。


 ムミョウを横に飛ばせる。現在、歩法が使えないので、ジャンプを繰り返すしかない。


オン


 音速の3倍ほどで飛んで来る、ライトコップの通常武装。必殺技登録をしているであろう、銃撃、ライトライフルだ。ただ、その軌道はあくまで普通の銃器。動く的を的確に狙うには、それこそクレー射撃でもして修練を積むしかない。ヴィジョンなら、シルエットに練習相手になってもらえば良い。つまり、技四王が日常的にやっている稽古と言う事だな。


 敵の射意を読む。拳を打ち込む瞬間と、理屈は同じ。当たる時に打つのではない。当たりそうになったら、当たりそうに思えたら、打つ。だから、その時を用意してやれば、来る。


 等速で飛ぶ己業。敵ライフルのブレが無くなる。来る!



 回避後、即接近して1発。殴り飛ばす。


 このライトコップは、初期型のはずだ。ライトコップは劇中で2度のバージョンアップを行う。その最初のモデル。特徴的な技は2つ有る。ライトライフルと、ライトブレイク。


 次は、ライトブレイクの番だな。光速の体当たり、と言っても本当に再現すれば、先のスタンコート以上の自爆技になる。ダメージ、速度共に抑えつつ、自身への反動も抑えているはずだ。


 ・・・そうだ。おれは、悪党をぶちのめす瞬間も想像していたが。最も時間を費やしたのは、作中最強の存在との戦いのシミュレーション。


 お前に勝ちたかったんだ。


 お前に、正面から!


 ライトブレイクの発生は一瞬。ただ、真っ直ぐにしか来ない。回避はそう難しくない。


 無論。己業には正面から打ち破る以外の道は無い。


オ オ オ


 気を高め、貫吼に重ねる。ライトブレイクの構えも、終了したようだ。さあ、勝負だ!


オオ!!!


 貫吼を貫いて奴が来た!!


 ムミョウは、衝撃に弾かれ、道場端まで飛ばされた。


 だが。


 勝利。


「何が有ったのか知らんが。己業は己業のようだな」


「はい」


 ライトコップは自身の必殺技で、防御100パーセント消失、自分へ200ポイントダメージを負っていた。


 そこへ、飛ばされ、空で回転する最中にさえムミョウは気を相手に撃ち込んでいた。いかなる状況であれ身体制御を失わず闘技の理に適う動きを取る。己業のやって来た事だ。


 相手を求める余り、わざと窮地に身を置く。それは野牛と戦草寺にも理解出来ていた。強過ぎて、戦うに足る者が居ない。部の2人にとっても、悔しい事実だ。手傷を負わせる程度は出来ても、クレナイの時点で勝てない相手に、ムミョウまで使われては。


 だから、野牛は悔しくても、己業がプロに行けば知明級の相手と戦える。それは、良い事だと思った。


 戦草寺は、そこまで悲観していなかった。現実なら、鬼業が居る。その他、大人には己業が手も足も出ない人類がゴロゴロ居ると、己業自身の口から聞いている。あるいは、その内リアディウムに飽きて、本業に帰るのかも知れない。それが、己業の幸せなのかも、と。まあ、コーチは続けてもらうつもりだが。学校を卒業しても、この戦草寺の格闘戦教養は続けてもらう、職業として。プロになれば、専属コーチの1人くらい雇えるはず。己業が自分の道を進んだとしても、役に立ってもらう。


 逆に言えば、どんな道でも良い。己業が何を志そうと、何をしようと。己業その人なら。それで構わない。戦草寺泉船は、己業を使いこなせるつもりだ。公私問わず。


 300ポイントダメージに、上半身全部位判定。計、650ポイントダメージか。最後の相手が何か知らないが、まだ恐怖を感じられない。危機感を得られない。


 エンドアや滴を始めとして、強者はいくらでも居る。ただ、どうしようもない根本的な問題として、痛くないのだ。痛ければ、己業も戦草寺や野牛に拳を振るえないので、これは無い物ねだりと言うやつだ。


 痛くない、身体にダメージを負わないからこそ、急激な進歩も望める。だが、それゆえに、自分は強い満足感を覚えられないのだろうか?例えば、鬼業と本気の稽古を行った時のような。明らかに手加減されていてなお、震える。


 無論、鬼業クラスと常時戦っていれば、己業でも、もう死んでいる。これこそ、思い上がり。


 だから。リアディウムで敵無しになってから、堂々と思い上がろう。




 5人目。西洋の紳士っぽい服装。白い肌に、唇だけがやけに赤い。


 ドラキュラ?これまた、古式ゆかしい。そう言えば、これも古い映画であったっけ。自分で見た事は無いけど。


 あ・・・。


 楽しい。


 己業の心が温かくなっていた。自分が生まれる前の生き物?と戦えるのか。なんて素敵なんだ。


 楽しいから戦う。その楽しみを、最大限に味わうため努力する。


 戦いを語るには、自分は未熟。せめて鬼業に張り合えるようになってからだ。そうしたら、今度は自分が、このリアディウムに戦いを教えよう。自分が楽しさを教えてもらったように。それで、良いだろう。


 ドラキュラ伯爵。くい以外でも倒せるか、試してみようか!

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