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1回戦突破。

 青森県林密高校。そう目立った活躍を見せた事のない、普通の学校。その認識で、間違っちゃいない。ただ、生徒は、平均よりも少し、マメだった。出場全校のデータをかき集め、風評を知り、対策を講じる程度には。全国大会ならいざ知らず、予選の映像データは公式にも存在しないため、実際に見に行く必要が有る。そのために、全国予選会場全てに部員、部員の親兄弟姉妹親戚友人知人が赴いた。手が、かかり過ぎた偵察だが、林密は手抜きをしなかった。もちろん、リアディウムへの興味関心の薄い者達はいっぱい居たが、そこをなんとかお願いしきり、ちょっとした事でも良いから、見て来て、と誰も彼をも送り出し。全て、かき集めた。


 無論、砕落と技四王についても、情報収集は完璧だった。ただ、技四王への対策は無かった。


 砕落は、あちらの専門分野で対応すると絶対に勝てない。だが、リアディウムルールなら、押し切れる。こちらの流儀で当たれば、押し通れる。


 問題は、技四王。馬鹿強い。特に、武器を失ってからの格闘戦の、えげつなさは、何なのだ。送ってもらった映像を見ているだけで、怖かったぞ。


 だが、少しは分かった。奴らに近付いてはいけない。知明じゃあるまいし、出ていない人間は考慮しなくて良い。たった3人のチームで勝ち進めると、本気で思っていたわけじゃないだろう。使い物になるなら、勝率を上げるため、野牛、戦草寺の疲労した2人を下げて、以無と言う1年も使うべきなのだ。そうしない以上、数合わせでしかない。出せば、敗北必至レベルの。仕方無い。たった3人では、そんなレベルでも居てくれるだけ有り難かろう。人数は力だ。が、それはそれとして。1人は、考えなくて良い。出場した2名を、徹底的にマーク。


 組み合わせが決定されるまでに。大会開始前に、全出場校への対策は、講じておいた。


 砕落には、こちらのペースで。技四王には、とりあえず近付くな。


 そして。


 林密、最後の兵は、ひるんでいた。


 作戦通りに全員が動き、そして、全員が敗れた。1人目はきっちり距離を取り、遠隔で仕留めようとして、無効化され、結果としては手も足も出なかった。お札を手足のように動かすと知っていたが、こちらの武装まで妨害出来るのか。2人目もまた、距離を置いて丁寧に動き、敗北。打つ手が、無い。3人目。お札には結局攻撃力は無いのだから、接近して仕留めるしかない。薙刀を潰せば、あとは徒手格闘。リーチを持った武器で、あくまで得物の距離を保てば。一太刀入れさえすれば、ダメージ総量で勝てる。そうして・・・逆にこちらのビームブレードを奪われた。4人目。明確なダメージを与える事には成功。薙刀だって、破壊した。


 それでも、前に出れない。「星の光」を使い、やはりダメージを与える事には成功。攻撃判定も得た。だが、おれには、接近戦で使える武器が無い。カウンターも1度きり。このまま、格闘戦に持ち込まれては・・・。


 !考えてたら、来た!ちくしょう!!



 「地の光」。大地に埋め込んだ超大型レーザーを発射する荒業。ゆえに、自身もダメージを背負う。自分と相手に200ポイントずつ、プラス全身全部位に1回の攻撃判定。更に、「星の光」の影響下に有る自分は、試合終了まで全能力50パーセント低下状態だ。自分は、100ポイント余計にダメージを受けている。


 これで、足止め出来れば、時間制限まで持てば・・・。


オ!


 躊躇無く来やがった!!


 泉鬼のダメージ量は、洒落になっていない。だが、相手も追い込まれている。自身にダメージを食らってまで、こちらに攻撃を仕掛けて来る。まるで、手負いじゃあないか?何をそんなに焦っている?


オオ!!


 千殺万札。まず、視界を殺す。2メートルまで接近した所で、それまでに展開し終えていた通常のお札と混ぜ、敵周囲を埋め尽くす。千殺万札の効果時間切れまでに、足を潰す。


 敵の足は、速くない。問題無く足を掴み、折る。折り方は簡単。膝を逆向きに折り曲げる。泉鬼のパワーであっても、重装甲でなければ、どうとでもなる。鎧によっては、間接の補強されている物も有るので、その時は諦めて、打撃で沈めるしかない。もちろん、地面に倒してからだ。


 シルエット本体による加撃は、シルエットのパワーパラメータ依存だ。つまり、ミノテリオンと泉鬼が同じ回数分殴り合えば、ミノテリオンが勝利する。無論、己業のように、ボーナスを付加する事も出来るが、現実的ではない。ミノテリオンには、既に大斧を振り回せる腕力を持たせている。あれ以上を発揮させるのは、常人には不可能だろう。


 そんなこんな。両足を破壊した辺りで、敵は抵抗を諦めたようだ。リアディウムに痛覚は存在しない。なので、意思の限り抵抗出来るのだが、当然物理的に可能な事だけだ。泉鬼は、足を極める間、相手の肉体をコントロールし、蹴りや拳を出しにくいように動いていた。


 戦草寺も、野牛も、己業と過ごす時間を大事に使っていたのだ。


 両の腕を胸部正面で交差させ、防御の姿勢を取った敵。それでは、打開策にはなるまいに。


 戦草寺は、敵レーザーを全く警戒していなかった。あれほど速射性能に優れた多判定攻撃技の条件が軽いわけがない。2度目の、大地光だいちこうの直後は相手の決着量が、バカみたいに減った。あれだけ減るなら連発も歓迎だ。


ア、ァア


 正面光しょうめんこう。ダメージ100。・・・のみ?部位破壊が、起こらない。まあ、流石に多判定技を連発出来るバランスにはなっていないはずだ。そんなシルエットは、プロでも聞いた事が無い。


 苦し紛れの目くらまし。で、合ってる。本当は、乱戦の最中いきなり使う事を想定した技だが。このまま何もせず負けては、仲間に、手伝ってくれた皆に、顔向け出来ない。何か、抵抗を。両足の破壊によって、逃げられない。格闘の心得も無い。でも、


 諦めるもんか!!


 己業は、敵の気を見た。レーザーよりも光輝く、意気を。


 また、会おうな。


 泉鬼は、敵部位破壊によるKO勝利をもぎとった。「地の光」によって、あらかじめ削られていたので、かなり倒しやすかった。


 全員で礼。


「ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


 林密は、泣いている。本気でこの大会に挑んだのだろう。だから、涙を止められない。


 1回戦。技四王が2勝した事によって、技四王の通過が決定。千葉砕落と林密の夏は、今、終わったのだ。


 技四王は、彼ら彼女らの思いを背負ったりしない。彼らの思いは、彼ら自身のものだ。誰も、そいつに成り代わるなんて出来ない。


 野牛も。戦草寺も。己業も。各々の思いで出ている。誰かのためじゃない。学校のため、先生のため、名目などいくらでも作れるが。


 でも、そうじゃない。そんな理由で毎日稽古して来たんじゃない。


 砕落の気持ち、林密の思い。そんな物、知らない。けれど。


 奴らとの戦いは、この身に刻み込まれた。スパイクの重みを。楽器で出てくる創意を。そして、決して諦めない根性を。


 覚えた。知った。これを、受け継ぐと言うのか。ならば、ならば、この大会中は、連れて行こう。一緒に行こう。


 何はどうあれ。技四王は、より激しい戦いに向かう。




 他校の模様は。オリーブは、技四王より早く1回戦突破を決めていた。あの激戦区で。知明の母校は、伊達ではないか。


 輝光白蛍もまた、順調に歩を進めている。だが、己業が見ても、強さが分からない。戦草寺以下にさえ見えるが・・。しかし、そんな程度が、前年度のオリーブに勝てるわけがない。手加減か、レギュラーの温存か。実力を隠しているのか。


 どちらにせよ、輝光白蛍の事は、考えなくて良い。次の対戦相手に向けて、頭をフル活用しなくてはいけない。


 相手校もまた、技四王と同じ経験を積んで、1回戦を突破するのだから。

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