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出発。

 寝坊はしなかった。そしたら、始業が起こしてくれただろうが。


 朝食をやっつける。始業の作ってくれた朝ご飯。炒り卵、ベーコン入り。昨日のカレー。ゆでたブロッコリーにマヨネーズをたっぷり付ける。お腹いっぱいにして、歯を磨き、着替え。


 自室の住人達。新入りのプレシオサウルスにも挨拶。行って来るよ。


 居間で普通にテレビを見ながら待っていた雪尽の所へ。


「行って来る」


「うん」


 雪尽が、最終チェックを。服は制服だから、問題無い。私服は大きめのリュックサックの中に。その他、日用品も昨日詰めて、そのまま持って来たので忘れ物は有り得ない。


 威業とロボット犬、エカトも見送りに来てくれた。


「頑張って!」


「頑張って下さい」


 アイルのような口調にしたかったが、この丁寧な感じが忠犬ぽいので、こっちに。想像通り、何もかも雪尽に解説してもらいながら、組み立てていった。カスタマイズは正直、全然分からなかったので、ほぼ標準で置いてある。色合いは、灰色に白の斑点。言うなれば、ダルメシアンに似ているか。だが、グレートアトランティスで会ったような、リアルな造形ではない。フレームがあちらこちら見えているし、明らかに強化プラスチック製の皮膚カバーだ。素人でも修理しやすくしたらしく、その際、自然な毛皮をはぐ、と言う行為をせずに済むように。らしい。小学生の威業よりも小さいのは、そこはやはりロボットと言う事か。


 最優先目的は、威業の保護に設定。そのような事態は無いだろうが。


「頑張って来てね」


「ああ。始業、後は頼む。威業、始業の言う事をちゃんと聞くように」


「怪我しないようにね」


「ああ。雪尽」


 行って来る!


 そこそこ緊張感を漂わせた鍛え上げた肉体の男子高校生は、ちょっと怖かった。




 街中には、アウトドア部全国出場おめでとう!と並び、RDC部全国出場おめでとう!の幕が有る。学校にも飾られている。己業でさえ、ちょっと嬉しいのだから、この道を歩んで来た先輩や戦草寺は、そざかし感慨深かろう。て言うか、アウトドア部は、ほんとにすげえな。


 お。全員集合している。


 戦草寺、先輩、先生。この暑いのに、外で待ってたのか。


「おはようございます」


 日傘を差している先輩。帽子をかぶっている戦草寺。手をかざしている先生。


「おはよう」


「おはよう」


「おはようございます」


 ちなみに、丁寧なのが、先生だ。


「では、早速ですが乗りましょうか」


 皆、似たようなタイミングで来たので、少し話していたらしい。流石に、今日、全力で早く来た人間は居ないらしい。試合は、明日だからな。


 車のエアコンの風が、癒しだ。幸せ。前回と同じく、己業が助手席、戦草寺が己業の後ろ、野牛が先生の後ろ。


 今回の全国大会は、富山県で開催される。富山県富山市、富山県バーサル体育センターが会場となっている。高知県から高速道路で、ノンストップで、ほんの7時間半の距離だ。


 7時間・・。これは、高速道路のシミュレータで出した数字なので、当然休憩時間は含まれていない。3時間ほどは余裕を見て、到着まで10時間としておくか。午前8時出発だから、午後6時到着。向こうで晩御飯でも食べて、ホテルでぐっすり眠れる。はず。何のアクシデントも起きなければ。事故やらで高速道路が封鎖されていると、一般道路を使う事になり、最悪、車中泊だ。己業はどうでもいいが、女性陣はテンションがた落ちだろう。何事も無ければ良いが。


「一応、2時間ごとくらいにサービスエリアで休憩しますが、止まって欲しい時は、遠慮しないで下さいね。私も、のどが渇いたりしたら、普通に買いに行きますから」


「ういっす」


「はい」


「己業。先生に、これを」


「ほい」


 眠気覚ましのガム。用意周到な。


「ありがとうございます。己業君、そこのポケットに入れておいて下さい。後で頂きましょう」


 高速道路に乗り込み、いよいよ遠出だ。計算上、高知県から富山県まで2万円を切る。ドライバーの疲労さえ考慮しなければ、4人で2万円。超リーズナブルだ。2人でも免許を持っていれば、交代しながら走れるので、少しはオススメ出来る。もちろん、1人でノンストップは、運転ミスを誘発するので、ノンノンだ。必ず休憩を挟むように。


 高知県から愛媛県へ。とりあえず、山だ。それ以外の光景はない。おお・・。ちらほら民家も見えるが・・。愛媛県から香川県に入ると、海が見えて来る。ドライバーは余所見厳禁ながら、素晴らしい眺めだ。


 香川県で少し休憩。まだ2時間経っていない。


「ふう。私は飲み物を調達しますが、皆さんは?」


「私も行きます」


「じゃあ、私も」


「おれも」


 皆で行く事に。車内では、なんでもないお喋りや、景色で多少楽しい雰囲気だった。それでも、これから赴くのは、楽しいレジャーではない。楽しい競技場だ。緩められる所で、緩めるのが良いだろう。ピークは、明日に持って行きたい。


 自販機とトイレだけの簡素な休憩所だが、必要な物はそろっている。己業は、1人でジュースを飲みながら女性陣を待つ。


「お待たせだ」


「ういっす」


 順番に出てきて、各々飲み物を買う。ここで飲んでいけば、ゴミを持ち帰らなくて済むが、そこまで神経質になる事もない。適当で良い。


「多分ですが、瀬戸大橋では止まりません。休憩所まで、遠いですからね。ですので、飲み物は余分に買っておいても良いでしょう」


「了解です」


 と言っても。エアコンの効いている車内なら、そこまで暑くもない。座っているだけだしな。それよりも、橋の上からの眺めは気になる。少しワクワクし始めた。


 兵庫県のサービスエリアで昼食兼休憩。


「少し早いですが、混雑する前に食べておきましょう」


 現在、午前11時過ぎ。時間には余裕が有る。とは言え、無駄遣いしていては、あっという間に消え失せるだろう。


 美味い。とても、サービスエリアのメシとは思えない料理に舌鼓を打ち、おやつ用のパンも買ってみる。パン屋が在る。すげえ。


 後は道なりだ。やはり海岸沿いを抜け、都市部に入り、山を抜け、そして海岸に出る。


「己業。もう、着くぞ」


「・・・あ。え、おお!」


 寝てた。助手席で寝ているのは、ドライバーへの信頼の証。などと考えていたのでは、もちろんない。車に乗っていると、何故か眠くなるよな。戦草寺も、たまに寝ていた。野牛だけは、先生と同じくずっと起きていた。寝ていて良いと、先生には言われたのだが、1人運転させるわけにも。千誌としては、明日、自分は何もしない。せめて、生徒には万全の状態で挑んでもらいたい。全員寝ていたって、全然構わない。


 午後5時。予約していたビジネスホテルに到着。最近は、何でもネットで済むから便利だ。駐車場の有無、目的地までの距離、今回は体育センターまで、が簡単に分かる。


「お疲れ様でした」


「先生、ありがとうございます」


「お疲れです」


「いえいえ」


 チェックインを済ませ、外に出る。そして、大きく伸び。まだ20代の千誌と言えど、流石に疲れた。自動車は今日のために、車検でもないのに丁寧に点検してもらって来た。長距離運転の備えは、ばっちりだ。


「己業」


「分かってます」


 先生が、よたよたしている。休憩を挟みつつとは言え、座りっぱなしで集中しっぱなしだからな。己業は先生の隣を歩き、危険から遠ざけるよう気を付け始めた。


 せっかくなので、ホタルイカ料理を頂く。皆で、ホタルイカ天丼。富山県は、ホタルイカミュージアムが存在するほどのイカどころだ。


 そして、前回の優勝校は、ここ富山なのだ。優勝校の在る都道府県が、次の開催地となる。ゆえに、富山を、ホタルイカを食らう!縁起担ぎだな。


 いつも通り、己業が1室。戦草寺と野牛で1室。先生が1室。


「早く寝ろよ」


「大丈夫ですって。やる事も無いですし」


「ふふ」


 戦草寺としては、寝る前まで、アトランティスでのようにお喋りをしていたかったが。今回は、学校行事だ。帰ってからのお楽しみとしよう。




 とうとう、来た。もう、後戻りは出来ない。


 我ながら、不思議だ。家に居た時は、あんなにも怯えていたのに。



 たぎる。明日、日本一強い学校と戦える。気を抑えきれない。おれが、このような未熟な真似を。やはり、リアディウムでは、初心者と言う事か。


 叶うなら。楽しい戦いが出来ますように。

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