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学生。

 舞台から降りて、ちょっとした贈呈式。デイズ・グロリアスの面々から、直々にだ。テレビカメラも入り、中々のイベントの趣きに。


「これからもリアディウムを楽しんで下さいね」


「はい。ありがとうございます!」


 己業は、プレシオサウルスのぬいぐるみを。自分で買うと高そうなので、これに。計算の光る選択だ。渡してくれる滴の上半身が隠れるくらいのサイズだ。


「あなた達の道行に、英気の栄えを」


「ありがとうございます」


 野牛は、水牛のぬいぐるみを。シルイエと握手。はっきり言って、有名人と会えて、感激していた。いつか。自分も己業のように、堂々と戦いたい。


「強くあれ」


「はい」


 戦草寺は、薙刀のぬいぐるみを。間近で見るエンドアの迫力。握手をし、感じる強さ。この人に、己業君は勝ったんだ。いつか、私こそが、誰も彼をもひざまずかせたい。


「大事にしてあげてね」


「うん!」


 威業は、ヘルゲートガードナーケルベロスホワイトナイズドエディションバージョンシーズン6のぬいぐるみを。そして、ロボット犬を。箱に入ったロボット犬を、アシッドから大事に受け取る。ちょっと重いので、渡す形だけ取り、己業に渡すつもりだったが。威業はひょいと持ってみせた。


「あれ?君、力あるねえ」


「うん!鍛えてるからね!」


「偉いねえ」


 頭をなでてみる。本当に、普通に持っている。片手にぬいぐるみまで持っているのに。ちなみに、アシッドと威業の身長差は、そんなでもない。だが、少し年上のお姉さんぽさは有った。


 こそっと双頭韻は、隅っこに居た。1人帰るのも、心象悪くなりそうだし、役目が無いから静かにしてるだけなんですよアピールをしておこう。


「双頭韻さん」


「ク・・。はい」


「今度は、本気でやりましょう」


「はっはは、はい」


 すっと去って行った。高笑いか。流石は、強者の自負。


 無論。不意に現れた己業に、上手く合わせられず、どもっただけだ。ぎこちない動きで歩む双頭韻を見る己業は、怪我かな?と思っていたり。


「挨拶も終わったし、撮影行くか!」


 お楽しみの時間だ!何なら、午前中はずっとしてたって良い。


 本当にそうなった。4人での撮影を何百パターンか撮り終え、さあ帰ろうとすると、撮影依頼の長蛇の列が出来ていた。スタッフが誘導している。列整理は任せてください!と言わんばかりのスタッフと、スタジオを1つ貸し切りにした管理センターの判断。己業としても、今日が自分の初舞台。ちょっとお調子に乗った。


「疲れた・・・」


 老若男女問わず、何百人と撮影したのか覚えていない。会場に居た人間より多い気がする。


 その通りだった。リアディウム関連施設に流された映像から、人が流れて来た。久しく見る事の無かった光景だ。旅客用馬車がガンガン走って行った。もちろん、かっぽかっぽ。ゆるりとした走りの中で、ワクワクは醸成される。管理センターは、足を速めるを良しとせず、普段通りの速度を維持させ、馬車量のみを増やした。


「昼にしよう。今日はヴィレッジは、もう良い。どうだ戦草寺?」


「はい。今は見学よりも、己業君と戦いたいです。ハウス・ホイッスルに向かいましょう」


「僕も行って良い?」


「当然。今日は一緒に行くって、言ったろ」


「うん!」


 その前に、荷物をホテルへ。一旦、荷物を置いてから、昼食。


「皆、もう食べたかなあ?」


「どうだろ。買い物が忙しかったら、わざと他の人と昼食の時間をずらしてたりするんだろうか」


 他の者は、それぞれショッピングだった。雪尽は始業と先生と。両親は夫婦で。


「明日は、私も買い物に繰り出す」


「私も。己業君は、どうするの?」


「んー」


 熱が入っている内に、リアディウムをもっと深く広く知りたい気もする。が、あのレベルの者達は居ないらしい。グレートアトランティスに現在滞在している最強は、エンドア。なら、良いか。もっと思い返したい気がする。あの戦いを反芻はんすうし、デイズ・グロリアスの動き、やり方、在り方を理解したい。おれに取って、考えるべき事なのだと思う。


 単純に強さだけを追い求めるなら、リアディウムなどやらず、父と鍛錬に励んでいれば良い。ところが、今のおれは、リアディウムに浸かってしまっている。


 シルイエさんの話を聞いてしまった。父なら、鬼業なら、そうか、と一言交わすかも知れないが、それで潰すだろう。


 以無己業も、悩む年齢であった。そして、学生だった。己業に、何も学ぶ必要が無いのなら、今すぐ社会に出て仕事をした方が良い。自分の金を自分で稼げば、人生を自由に生きられる。好きな場所に住み、好きな物を自分の余裕だけ手に入れられる。だが、己業は高校に通っている。それは、今の自分を完成形とは思ってないからだ。まだ、固まるには、早い。もっと考え続けて良い。


「遊びに行こう?」


「おお・・。そうだな!」


 威業に合わせる。今すぐやるべきは、この旅行を満喫する事。威業が、正しい。ロボット犬の説明書は、雪尽が帰ってから、一緒に読んでもらう。はっきり言って理解出来る自信、無し!




「流石の大都市ですね」


「はい。珍しい物がいっぱい有って楽しいです」


「うん」


 千誌千歩、何雪雪尽、以無始業。可憐な女性組みだ。1人男性も含まれるが、己業の女なので、問題無い。


 皆で観光した時は、主に海辺を歩いたので、今日は内陸部を行く。速い乗り物もあるが、とりあえず馬車で良いだろう。


 ショッピング街、「アゴラフォレスト」。グレートアトランティスが誇る勇壮な商店街。恐ろしい事にビル街ではない。焼き鳥の屋台かのように、商品が台に並んでいる。一応、理由は有る。この都市は、ブロック構造だ。短期間に建物ごと入れ替わる。完璧な施設を作る事自体が、不可能。それならいっそ、建物は倉庫として使う。売り場は、外。それも移動可能な店舗を用意。これによって、この街で有効な商売方法が発展して行った。


 ちなみに、高知県の日曜市をイメージすると分かりやすい。


 それでも、立地条件のみで、こんな商売は出来ない。可能とするのは、外部内部ともに、完全に監視下に置かれている世界。海上都市であるこの街から、自由脱出は不可能。海上には常時警備艇が警戒。そして街中にはロボット犬始め、ランダムな監視体制が無造作に息づいている。何より、盗んだ商品を街中でさばく事も不可能。この島で監視されないのは、本当に室内だけだ。廊下、道路、公共と認められる全ての範囲を管理センターが見ている。幾度かの実験も行われた。姿形の似通った人間20人の内、盗人を正確に確保出来るかどうか。答えは、出来る。20人全員の顔、体格による判定、通過経路に残った個人情報の遺留物。それら全てを30分以内に収集、照合。場所を変え時を変え、10度行われ10度成功した。問題無い。


 内部、アトランティスに住む人間だけの理由で、最も大きいものは、捕まるからではない。見られているからだ。言った通り、公の場に於いては、完全な監視下。そして。助けが来る。私室内であっても、登録しておけば、自分の意識が無くなった時、怪我を負った時、5分以内にロボットワーカーが来てくれる。人は、もはや人のみにて生きているのではない。新たな空気、新たな他人、ロボットと共に在るのだ。私用のロボットを購入し、人生のパートナーとして扱っている者も少なくない。全とっかえでなく、部品交換を用いて、長生きさせたいと言う声が殺到するほどには。管理センターは、この声を受け入れた。人間と同じ寿命を満たすよう、パーツ単位での修理を始めた。それは誤作動を引き起こす危険性を秘めていたが。自己診断機能を持たせる事、修理費の上昇の許容。それらによって、クリアとする。そうして得た生活を、失いたくない。だから、犯罪など犯したくない。家族の見ている前で、悪い事は出来ない。


 露店を練り歩く。様々な自動車、馬車の荷台部分が改造され、店舗となっている。店ごとに車種も色も改造の趣きも違う。やはり、見ているだけで楽しい。派手な色合いの店が立ち並び、けばけばしいだけかと思いきや、中に飛び込んでみると、これがぴったり来る。むしろ地味な色合いは、その事によって目立ったりする。クジャクの群れの中のハトだからだ。


 クジャクになりたい3人の可愛い子達は、人の目を楽しませる物を眺めて行く。


 ここは、グレートアトランティス内に、複数有る市場の1つだと言うのに。広大な面積が有ると言うのに。それでも、3人は人の流れに乗りつつでなければ、歩くのも難しかった。


「すごい混雑!」


「ほんと。始業、大丈夫?」


「うん。・・私より、先生が」


「いえ。全然。全然」


 全然大丈夫じゃなかった。千誌は、人酔いしかけていた。


「どっかで座って、冷たいものでも飲もうか」


「出来れば、ぬるいレモンティーをお願いします」


 千誌は、自分で買いに行く事を諦めていた。


「ギリギリじゃないですか。始業、見ててね」


「分かった」


 始業が千誌を支え、ベンチに連れて行く。日陰が良いか。


 成人女性の体を平然と抱きかかえる女子中学生。横たわらせた方が良い?それともこのままで。


 店の通りから少し離れた場所で、休む。


「すみません・・。迷惑をかけてばかりですね」


「迷惑ではないですよ」


 本音だ。始業は平然としたものだ。体調不良を迷惑とか言い始めたら、父や兄に体力で劣る自分は、常時迷惑をかけている事になる。そして、人類の大半は、父に迷惑をかけている・・・?いやいや。


 人それぞれ。私が、それを嫌に思ったなら迷惑。そうでなければ、迷惑ではない。


 千誌千歩は、可愛い人だった。堅い外見によらず、兄の贈ったチョーカーを平然と付けている。この人と一緒に過ごすのは、嫌いではない。


 雪尽のように、好きになれるだろうか。ほぼ、生まれた時からの付き合いの雪尽のように。


「お待たせ」


「先生、飲み物ですよ」


「はい・・」


 少し、口に含む。自販機の商品は温度調節が可能なので、ちょっと熱い程度の温度もすぐに用意出来る。


 ゆっくりお喋りをしながら、先生の落ち着くのを待つ。そして、人混みではなく、静かな通りを馬車で。


かっぽかっぽ


「やはり、気持ち良いです」


「そうですか。これからは、移動に気を付ければ大丈夫ですね」


「お兄ちゃんにも、教えなきゃ」


 うん、と千誌は頷いた。雪尽は、ライバルかと認識した。


 夕方前にホテルに帰ると、皆はまだ帰っていなかった。だが、一度帰った跡は有る。


 先に風呂に入り、夕食のメニューを考えていると、己業達が帰って来た。


「おお。先に帰ってたか」


「うん。お帰り、己業、威業」


「ただいま!」


 己業達も風呂に。そして、夕食は招かれているらしい。


「雪尽も行くだろ?」


「良いの?」


「皆でおいで下さいって言われたし。大丈夫大丈夫」


 雪尽どころか、全員で行く事に。場所は、グレートアトランティス、レストラン街。「フード・フィールド」。


 招いたのは、管理センター。

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