表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/89

ドレス。

 リアル・ディテール・コロシアム。その真価は。


 強い。己業の目を以ってしても。自分や鬼業レベルは、居ない。だが、これがトップレベルではない。部活をやるようになってから、テレビのリアディウムも少しは気を付けて見ていた。映像を見るだけとは比べ物にならない。


 まあ。このレベルなら、勝てる。景品は、もらいだ。


 今度は、ゆっくり道を歩いて、皆の所に帰る。馬車を使っても良いが。


「ん」


 振動。ケータイだ。そう言えば、ユニオンでプロが参加してるなら、皆がこっちに来るのか。連絡すりゃ良かったな。


「もしもし」


「野牛だ。どうだった?」


「普通にプロも居ました。こっちに参加しましょう」


「了解だ。馬車で向かう。待っていてくれ」


「はい。でも、良く分かりましたね。おれが、それを知ったって」


「おいおい。この島に着いた時、ケータイと島の所在情報システムをリンクさせただろう。私達全員が」


 ・・・あ。


「い、いやだなあ。覚えてますよ」


「そうか。なら良い。ではな」


「はい。お待ちしてまーす」


がちゃり


「やはり、忘れていたぞ」


「こっちまで帰って来るつもりだったんでしょうか?」


「だろうな。威業君。君の兄は、やはり愉快な男だ」


「うん!」


 威業は、兄を褒められて満面の笑みを浮かべた。野牛も、つられてにっこり笑顔になった。戦草寺ですら、ここまで正面からの野牛の笑顔はあまり見た事がない。いつもは、静かな、微笑みと言う表現の合う顔なのに。流石に、子供の前では変わるものか。と、女子は思った。


 所在情報システム。各自のケータイ、と島のマップの情報をリンクさせる事で、迷子を防ぐ。これは義務ではなく、サービスだ。ただ、小学生以下の年齢は、登録しておく事を強く推奨されている。ケータイに表示されるマップで、目的地を指せば、ルートを表示してくれる。何なら、そのまま馬車に乗れば良い。


 そして、このシステムの便利な点は、情報を共有している機体同士なら、お互いの位置が分かる。親が子供を探すのに、すっげえ便利だ。更にケータイの機能を拡張すれば、近くに居るロボットが、子供を確保していてくれる。ただ、これは、お互いの同意が必要。小学生以下の年齢なら、保護者判断で問題無いが。


 ちなみに大人の迷子でも、本人か、別行動中の旅行同行者が助けを求めれば、30秒以内に救助活動が始まり、2分以内に誘導可能だ。本人に、立体映像を見せても、分かるまい。ロボット犬の本領発揮だ。何なら、迷子になりやすい人間は、ガイドとしてロボット犬を借りても良い。そんなサービスも充実している。


 タクシー馬車を捕まえる。3人なので、中型の家族用を。カップル用、個人用、大家族用も有る。屋根は無く、オープンカーのようなものだ。スピードは、人間の歩行速度より、少し速いくらい。かっぽかっぽ音が鳴る。ロボット馬が引いているからね。馬もメタリックシルバーがまばゆい奴も居るし、茶色の安心感を与えてくれる奴も居る。個体によって、色や形が異なる。それらを見つけて行くのも、この街での楽しみの一つだ。


かっぽかっぽ


 広い道の、真ん中を行く。そよぐ風。速過ぎない速度だから、目が痛くなる事もない。良い気持ちだ。深く腰掛けた女子2人は、隣に男の子が居る情景を、少し妄想していた。おくびにも出さないのは、流石と言っておこう。威業は初めての馬車を素直に楽しんでいた。


 己業は、ブルー・ユニオン前にて3人を待っていた。店内の様子からして、そう待つ必要は無い。思ったより広く、何箇所かに分かれてプレイしている。おそらく、1時間も待たなくて良い。茶でも飲みながら観戦しつつ、ゆっくり順番待ちしよう。


 日本は今、真夏だと言うのに。ここは過ごしやすく、外で待っていても心地良い。


「お」


 来た。1頭立ての馬車。ここが、異世界、すごい所に来たのだと分かる。日本でも、所によっては馬車はあるのだが。


「待たせた」


「いえ」


「早く並んだ方が良いでしょうか?」


「だな。4人で予約しよう」


 並んで待つ必要は無い。順番待ちの予約をしておけば、呼んでくれる。ただ、先に人数をそろえて、窓口に行かなければいけない。予約だけして現れないとかは困る、と言う理由が説明されるが。実は、それもまた、都市側のコントロールで何とでもなる事ではあった。ここらは、わざとアナログに仕立ててある。何もかもが便利に過ぎると、人は意味を見失う。遊びの時間を体感させたい。だから、とりあえず集まってもらうのだ。公開されていない理由だが。人は人との触れ合いで、良い感じの脳内活動が起こる。それを、丁度良いタイミングで促してやる。管理センターの仕事は、ナイスだ。


 己業達の前の客が、装備を付けて行く。かっけえ。


「すごいですね」


「ああ。私も、ドキドキして来た」


 リアディウムプレイヤーとして、己業の何倍もの思い入れを持つ2人は、興奮を抑えきれない。


「楽しみだな、威業」


「うん」


 威業も、ピカピカの装備品から目が離せない。


 各自の、自前シルエットの装備。それが、各々の身体のサイズに沿って具現化されている。もちろん、こんな場所に専門のプロテクターは居ないだろうが、十分だ。


 試合は、どうやら勝ち抜き戦。チームは5人までで、5回勝ち抜くと、豪華景品がもらえる。参加賞は、好きなマスコットのぬいぐるみ。己業は、参加賞のどれをもらうか、真剣に考え始めた。無論、もらった物以外は、買って帰る。自室の住人が、増える。ふふふ・・。


 幸い。己業の前に並んでいた女子達は、鎧、戦闘服をまとう目の前のチームを見ていたので、己業の満面の笑みは見られなかった。


「次のお客様は、お持ちでしたらデータをお出し下さい」


 威業のみ、クレナイの装備。それ以外は、専用シルエット。


 初陣だぜ、ムミョウ。お前の業を、見せてやれ!


 戦草寺が1週間で完成させ、予選終了後も調整してくれている、己業専用シルエット。接近戦特化、高速移動と高火力を実現させたハードアタッカー。その代わり、防御力は無いものと思って欲しいと言われた。


 実に、おれ好みのシルエット。流石は戦草寺。


 敵の攻撃など、全て避ければ良いしな。問題点の1つも無い、無敵のシルエット。戦草寺に、本当に頭が上がらない。


 戦草寺は語る。「ええ。とにかく、速度と火力。それだけを考えて構築しました。あっさり負けたら、その時はその時で」。


 にこりと笑った戦草寺は、割り切りと言う言葉を知っていそうだった。目の前で、己業の目に見えない程の速度の移動を体験した人間の言う事は、説得力が違う。


 自分の身体データと、シルエットのデータをすり合わせる。そして、プロテクターマシンで製造されるドレス。いや、ひらひらのアレでなく。本当に、ドレスと呼ぶのだ。現実の装備を。


 今回のように、簡易に速攻で作られるドレスは、強化プラスチック製ではあるが、簡単に壊れる。簡単に脱ぎ着するためであり、万が一体に違和感を覚えた際、すぐに外せるようにするためだ。プロのためのドレスを作る時にも、こうして先に仮に作るものだ。


 野牛のシルエットは、皮鎧に牛兜。それを実現するのか。己業の胸の高鳴りを表現するのは、やめておこう。男子諸君なら、言わずとも分かろうと言うものだ。


 そんな期待をよそに、当然、服の上から装備を着た野牛に、己業は複雑な笑みを送るしかなかった。


 戦草寺も巫女服を同じく、自前の服の上に羽織っている。そりゃそうだ。


 ちょっとテンションの下がった己業も、皆に遅れて自分のシルエットの装備を羽織る。犬か狼の毛皮だ。犬耳の付いたフードをかぶる。なんか、着ぐるみみたいな。腕、足の毛皮は、それぞれ独立しており、腕カバーみたいな感じだ。爪や牙は無い。重りになる事を懸念し、完全に素手だ。そのため攻撃の重みは、自分で生み出さなくてはいけない。ミノテリオンの斧のように、武器自体が強力とは行かない。


 可愛いが、己業が着ると、ある種迫力も見える。特に、部内でその強さを大真面目に味わっている2人には、圧力すら感じられた。圧倒的な強者の威。


「かっこいい!」


「おお。威業は、可愛いな」


 クレナイの装備は、忍者服。クノイチの。それでも、完全に女性服と言うわけでもないので、男子である威業が着ても違和感は無かった。だが、まだ大人の片鱗を見せない威業が、女性ものを羽織っている様は、恐ろしく可愛かった。


「うん」


「かわいい」


 女性陣にも好評のようだ。己業は、後で撮影サービスも使う事に決定。ドレスは、プレイ後、店内で回収される。お土産として持ち帰る事も許されない。仮のドレスは、速成可能な代わりに、もろい。人間を傷付ける可能性が高く、管理センターは、これを堅く禁じていた。ちゃんとしたプロ仕様のドレスも、もちろん作れるが、それは高価だ。この島に、正規ルートで乗り込めるレベルなら、ためらわず作れるが。


 そのため、ブルー・ユニオンなど、ドレス体験の出来る店には、撮影スタジオが存在する。店内でなら、オッケーだ。店の外に出る事は、許されないが。ドレス姿でパレードなどやれば、すんげえ楽しそうだが、そうも行かない。


 だから、外で人がドレスをまとう方法は、大きく分けて2つになる。


 勝つか、買うか。


 プロライセンスを取れば、リアディウム公式スタッフがドレスを作ってくれる。と言うか、作って与えなければ、ライセンスを渡す意味が無い。繰り返すが、一般人が普通に買えるほど安くはないのだ。


 そして、普通に買うパターン。洒落になってない金持ちなら、それこそプロテクターに直接依頼して、好きな素材から作ってもらえる。もちろん公式のプロ仕様も問題無く購入出来る。取り扱いのための講習は受けてもらうし、個人登録も必須だが。


 己業達は、無論、勝つしかない。別に、紙や布で自作して雰囲気を味わうのも悪くないが。


 己業に、そんな器用さは、無い。作ってもらうしか、ない。


 頑張ろう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ