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チョーカー。

「おおっ!」


 己業達は、アトランティスマン体感アクションに挑戦していた。連続で敵を倒せ!攻撃を避けろ!連打しよう!などなど。センサーを活用したアトラクションだ。


 施設を壊さない程度に本気を出して。普段リアディウムのみの戦草寺も、ふらふらになりながら、楽しそうだ。野牛は、意外に動ける。雪尽は、半分ぐらいは、見物に回っていた。プレイする人間の食べ物類を持ってあげたり。


 景品をゲット出来る系のアトラクションは、己業が全員分を勝ち取るまでやり続け、終わった時には、その場の他のお客さんやスタッフの方に拍手を送られた。ちょっと、良い気分だった。


 アトラクションエリア、2番区。「シーズン・イン・ザ・ヴァイキング」。主に、体験系のアトラクションを味わえる激しいエリア。そのため、親御さんは1番区、鑑賞系エリア、「シー・シアター」に子供達を引っ張って行きたがる。子供のペースには付いて行けんよ・・。


 だが、大丈夫だ。この都市には、もちろん癒しの機能も存在する。


 千誌先生が、実際に体験している所だ。


「すみません・・」


「いいえ。誰にでも、覚えの有る事ですよ」


 不慣れな環境で、はしゃいだせいだろうか。千誌は、熱を出して、起きて来れなかった。レストランでの朝食にも顔を出せず。


 朝、龍実に連絡を入れ、今日はホテルで寝ている事にした。それでも、龍実は昼には来てくれた。朝は、ロボットワーカーが世話をしてくれていたらしい。


「すごいですよ。完璧な食べやすさの、おかゆ」


「へええ。教わろうかしら」


 朝から言えば少しマシになったらしい千誌とお喋り。本当は、1人で寝させた方が良い。早く回復させたいのであれば。余計な体力を使わせる事はない。でも、寂しさは、心に毒だ。ちょっとだけ、居たって良い。


「大丈夫です。疲労と判断しました。移りませんので、ご心配なくお見舞いをお楽しみください」


 見舞いを楽しめ、って。すげーな、このロボット。


 医者の風貌、ではない。様々なメディカルチェックを実現させる高機能マシンであるがゆえ、全身に衝撃吸収措置を取られ、かなり重い。見た目同様、鈍重なロボットと言える。それでも、このロボットは、都市全域を移動出来る。脚部球形ローラーによる滑らかな移動を実現した、最初の機体でもある。ロボット犬のように揺れると、不味いからね。


「この方。口は、そうでもないですけど、見立ては正確だと思います。かなり、良くなりました」


「そうですか」


 龍実は、千誌の額に手を当ててみた。少し驚く千誌。


「あ、すみません」


 つい、子供にしているのと同じ行為を取ってしまった。あれで、あの兄妹も病気になるのだ。全身を酷使し、肉体が疲労しきった状態ならば、その免疫力は常人にすら劣る。鬼業も、風呂上りに半裸で居て、良く風邪を引いた。


 龍実の生暖かい微笑み。そのぬるさが、心地よい。熱い眼差しも、厚い手当ても、今はうっとおしかっただろう。


 龍実の去った後。静かな部屋。音楽でもかけましょうか?と医療ロボットに言われた時は、驚いたが。必要無いと返した。その代わり、少し、窓を開けてもらった。ボタン式の窓は、ロボットでも簡単に開ける。ただ、閉める時は、やはりマニピュレータ機能が必要らしいが。


「私は、もう大丈夫です。ありがとうございました」


「そうですか?医療費は、チケットに含まれています。ご遠慮は要りませんよ。ご随意にお呼びくださいね」


 ウインクして帰って行った。製作者は正気なのか。いや、肉体の不調につられた精神の不安定さに悩む患者の、リラックスのためなのだろうが。


 少し、寝る。明日には、治っていると良いな。


 4時間後。


ピンポーン


「どうぞ」


 手近なモニターには、己業達の姿。声に反応して、ドアのロックが外れる。


「お邪魔します」


 生徒達が、入って来た。多いな。


 己業、戦草寺、雪尽の、クラスの子達。野牛、始業、威業も。


「今日のお土産です。お見舞いがてら」


「そうですか。ありがとうございます」


 もう、上体を起こして問題が無い。これなら、明日は平気だろう。監督として来ているはずなのに、全く。


「プリンとゼリーと、どっちが好きですか?」


「そうですね。・・・果物ゼリーが、今は欲しいですね」


「お。ちょうど有りますよー」


 己業が、袋から取り出し、食べさせようとしてくれる。残りは、戦草寺が、備え付けの冷蔵庫にしまっていく。


「あーん」


「はい」


 素直に口を開き、迎え入れる。美味しい。


「ぶどうゼリーです。どうですか」


「美味しいです。甘くて、でもスッキリしますね」


「なんか、そんな風な説明が書いてありましたね。切れの有る味わいとか」


 酒と間違えて書いたんじゃ・・・。


 これもまた、この島で作られた物だ。特産品でもなく、名物でもなく。普通に、普通の物が手に入る。酒、と言ったが、酒も美味い。龍実達と飲んだ千誌には、分かる。


「皆は。今日は、楽しかったですか?」


「はい」


 子供達は、皆、笑顔を返せた。


「良い事です。楽しく行きましょう」


 戦草寺と野牛が、少し看病を申し出たが、医療ロボットに診てもらった事を説明。大丈夫。


「では。おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 そろって部屋を出る。最後に己業が。


「何時でも呼んで下さい。おれが、すぐに来ますから」


 そう言い、出て行った。


 1人の部屋で、千誌は呟く。


「ゆっくり、大人になって下さい。そして。まだ私を覚えていたなら。迎えに来て下さい」


 千誌千歩は、ロマンチックなリアリストだった。


 夕食の時間も、1人、部屋で過ごす。ここで張り切って外に出ると、ぶり返す。完全なプライベートなら、そんなバカも良い。だが、生徒達の居る前で、そんな事は出来ない。


 それでも、体調も戻りつつある。少々、暇だ。お土産とやらを開いていく。


 サラミ、ビーフジャーキー、スルメ、そして後に発見したが、冷蔵庫にはチーズも。誰のセンスだ。嬉しいけど。チョーカー。裏に、己業、千歩と彫られている。休んでいる人間に、チョーカーて。教えるべき事が、沢山ありそうだ。サイズは、まあ普通に合う。お菓子の詰め合わせ。嬉しい。皆で食べても良い。タオル。これも、普通にありがたい。ふむふむ。


 翌日。朝食の席に姿を見せた千誌は、スルメをかじりながら、お菓子の袋を抱きかかえ、チョーカーを付けていた。タオルはバッグに巻き付けてある。


 先生、どうしたんだ?健康祈願のスタイルとか、そんなアレ?鬼業は、こそこそ龍実に聞いてしまった。


「おはようございます。すっかり元気になりました。皆さん、ありがとうございました。今日も楽しく行きましょう」


 それなら、良いけど。


 朝食のパンケーキも食べきった。本当に、健康を取り戻したようだ。


「先生。似合ってますよ」


 超真剣な顔で誉めそやす己業。


「そうですか。ありがとう」


 真顔で返された。


 これは・・・。良かったのかどうか、分からねえ・・。


 緑色の首飾り。一応、健康に気を使ってくれたのだろうか。若葉の色、若芽の色、新緑のモチーフ。


 己業が、いきなりアクセサリーって、と言う女性陣(雪尽含む)のアドバイスを一切スルーして選んだ物。健康とか、そんな事は考えていなかった。良い色で、これを付けた千誌を見たかったから、贈った。それだけだ。


 結局。色あせても、何かの機会には使う千誌に付き合い続ける事でしか、その真意には触れられなかった。


 旅行後、千誌の部屋には、チョーカーを置くための場所が出来た。そこに己業が訪れるまで、緊張感を保った健全なお付き合いが出来たそうな。

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