だってぇ、聞いてくれなかったんだもん
掲載日:2026/10/15
月のない夜。
敵に囲まれた部隊がいた。塹壕の中で、隊員たちは息をひそめている。隊長の周りには、疲れ切った顔がいくつも並んでいた。
副長が言った。
「ここにとどまりましょう」
「いや、夜のうちに進もう」
隊長が答えた。
副長も食い下がる。
「近くに地雷原もありますし、敵に見つからずに包囲網を突破するなんて無理です」
「敵に見つかるのは時間の問題だ。明るくなれば必ず全滅する」
「いいから行くぞ」
結局、部隊は夜のうちに進むことになった。
副長は口をとんがらせた。
しばらく進んだ。
隊長が言った。
「そういえば、地雷原はどっちにあるんだ?」
副長は、ため息をついた。
「そりゃあ、ここらへんですよ」
ドーン!
部隊の一部が爆発した。
「ほーらね」
閃光が一瞬、副長の満面の笑顔を照らした。
「……お前、知ってたのか」
「だから言ったでしょう」
敵に見つかった。部隊は全滅した。
ーー
「……ということで、この案で行くぞ」
部長が会議を締め括った。
副田は口をとんがらせながら、立ち上がった部長が手にしたスタバのタンブラーの蓋が開いたままなのを黙っていた。




