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狂乱異界:廃棄物と王の再臨  作者: 沼口ちるの


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8/11

第8話:王の価値観と玉座の上の塵

王の執務室は、ケンジにとって「不要な情報と物質の宝庫」でした。


シュレッダーにかけられた大量の書類、割れた酒瓶、そして王自身が価値を見出せずに積み上げた失敗作の数々。


全てが、ケンジの廃棄物の鑑識と再資源化スキルの対象でした。


「ユリアナ! この男を捕らえよ! この部屋は王族の機密に触れる場所だ! なぜ貴様は、このような下劣な人間を連れてくるのだ!」


王は玉座から立ち上がり、憤怒の形相でケンジを指差しました。


王の言葉の端々から、ケンジに対する嫌悪感と軽蔑が滲み出ていました。


ケンジは、王の怒りを無視しました。彼が注目したのは、王が身につけている豪華な王冠でした。


「ふむ。あの王冠は、希少な鉱石の塊だな。だが、あれだけの重いものを頭に乗せて、王の思考の邪魔をしている。まさしく「不要な負荷」だ。そして、表面に付着したわずかな皮脂も、高貴な生物の有機物として使える」


ケンジの視線は、全てを資源として捉えていました。


しかし、王の怒りに呼応したのは、ケンジではなくユリアナ王女でした。


「お父様! あなたは間違っているわ! この方が下劣なのではなく、あなたの価値観こそが下劣なのです! あなたは、真の価値を見抜こうとせず、ただ目先の「完成された美」や「表層的な権威」ばかりを追い求めている!」


王女の言葉は、まるでケンジの廃棄物哲学をそのまま代弁しているようでした。


彼女の瞳は、これまでの「美しいお姫様」のそれではなく、狂気と覚醒に満ちていました。


「このシュレッダーにかけられた書類の山も、あなたにとっては「失敗作」という「ゴミ」でしょう? でも、この方から見れば、それは「一度形を失い、再構成されることで真の価値を持つ資源」なのです!」


王女は、ケンジが持っていた汚染と浄化のスティックを彼から受け取り、それをシュレッダーの山に突き刺しました。


「ユリアナ、お前、何を言っているんだ! まさか、あの男に洗脳されたというのか!」


王は信じられないといった顔で叫びました。


王女はケンジから受け取ったスティックを使い、自身の内に秘められた魔力を、シュレッダーの山に注ぎ込みました。


すると、シュレッダーの山が、まるで生きているかのように蠢き始めました。


ユリアナ・ロドウェル 発動! 隠しスキル「美の分解と再構築(The Architect of Ruin)」! 対象:シュレッダー済み書類(王の「失敗」と「隠蔽」) 再構築中…


「お父様、あなたの「失敗」は、もう隠蔽できないわ。この方が教えてくださったのよ。「廃棄物」こそが、真の力なのだと!」


書類の山は、緑色の光を放ちながら、みるみるうちに形を変えていきました。


それは、紙片一つ一つが結合し、インクの成分が結晶化していく、奇妙な光景でした。


光が収まると、そこには一本の巨大な笏がありました。

(しゃく)

アイテム名:王の不名誉の笏: 王の「失敗」と「隠蔽」から生まれた、真の権威を象徴する笏。

使用者の「醜さ」が周囲に伝播し、周囲の者の「自尊心」を奪い、精神的な動揺を与える。


「これは…私の失敗作の結晶だと!?」

王は、その笏から発せられる、自身の「隠したい過去」の波動に、その場に崩れ落ちそうになりました。


ケンジは、満足げにその光景を見ていました。


王女の秘められた才能、それは「美しいものを分解し、醜いものから力を引き出す」という、ケンジの哲学と完全に合致するものでした。


「素晴らしい。お前も、最高のゴミ処理担当者になれるだろう」


ケンジは王女の頭を撫で、悪臭に満ちた笑みを浮かべました。


王女は、その悪臭を「慈愛」と受け止めているかのように、うっとりとした表情を浮かべました。


王は床に散乱する自身の「廃棄物」と化した過去、そして変貌した娘の姿に、完全に戦意を喪失していました。


「ぐ、ぐぬぬ…こんな忌まわしい力…! まさか、お前が…」


王の言葉は、ケンジには届きませんでした。


彼らの思考は、もはやこの世界の常識とはかけ離れた、「廃棄物」という唯一の法則で動いていたからです。

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