第1話:転生と悪臭の洗礼
田中ケンジ
三十二歳独身
焼却炉の監視員だった彼は、いつものように仕事場に向かおうとした瞬間、交通事故に巻き込まれ命を落としました。
次に意識を取り戻したとき、ケンジは驚愕しました。
彼は薄暗い世界にいました。
空は鉛色で、そこから差し込む光は不自然な緑色でした。
そして何よりも、彼の鼻腔を襲うのは、化学薬品、生ごみ、燃えカス
そして得体の知れない腐敗物が混ざり合った、耐え難い悪臭でした。
彼は巨大なゴミの山の中に横たわっていたのです。
「ここはどこだ。病院じゃないのか。この臭いは、俺が扱っていた産業廃棄物と生ごみの最終処分場を足して十倍にしたようだぞ」
自分の体を見ると以前のぽっちゃりした体型ではなく
痩せているが筋肉質な、見知らぬ青年の肉体でした。
そして、左の手の甲には半透明なデバイスが埋め込まれていました。
そのデバイスから、声が聞こえるように情報が脳内に流れ込んできました。
【端末名:廃棄物処理ユニットSAD(Systematic Abjection Device)】
【保有スキル:】
S 廃棄物の鑑識と再資源化:あらゆる「ゴミ」や「不要物」の真の構成要素と価値を見抜き、それらを組み合わせて新しい道具や物質に再構成する能力。
A 汚染耐性:毒ガス、異臭、病原体を含むあらゆる汚染された環境下でも、体調を崩さず、健康を維持できる能力。
C 焼却炉の炎:視線を向けた対象を、ゴミを燃やす炉のように高温で加熱する能力。現在は最大で千五百度に達するが、熱量の制御は難しい。
「異世界転生か。だが、なぜ俺のスキルは全てゴミ処理に関するものなんだ。俺が異世界でゴミ拾いをしろとでも言うのか」
ケンジが呆然としていると、頭上の空を覆う巨大な飛行船から、大量の物体が投棄されました。
それは、貴族が利用する天空船からの排泄物や生活廃棄物を溜めたタンクの中身でした。
汚物にまみれたケンジは、反射的に悲鳴を上げかけましたが、ふと、その中身を詳細に観察してしまいました。
廃棄物の鑑識と再資源化スキルが自動的に発動したのです。
「これは、エルフの王族が使う高級な香水の試作品の残りカスだ。普通なら捨てられるが、成分は純粋な魔力濃縮液に近い。そしてこの金属片は、ドワーフの作った超硬合金を研磨した際のクズだ。極めて硬く、加工が難しい」
周囲の人々から忌み嫌われるゴミが、ケンジの目には、この世界では手に入らない貴重な資源の山に見えました。
彼は地面に落ちていた、貴族のトイレに使われていたと思われる砕けた陶器の破片を拾いました。
残渣そして、香水カス、金属クズ、そして聖女が食べたものの残渣を指差し、スキルを使いました。
再資源化プロセス:
素材A(基盤):陶器の破片(魔力伝導性が高い)。
素材B(強化):ドワーフの研磨クズ(硬度と耐久性の付与)。
素材C(触媒):エルフの香水カスと聖女の残渣(魔力と栄養素の抽出)。
結果:汚染と浄化のスティック(魔力を回復する杖)。
ケンジは、自分の職業が与えてくれた、この狂った能力に歓喜しました。
「ゴミこそが力だ。俺はゴミを捨てる貴族どもをあざ笑ってやる。まずは、この最高の廃棄物資源を生み出している、天空船に向かうぞ」
狂ったもの世に出してしまい申し訳ございません




